
こんにちは!リハビリくんです!
今回はフレイルとサルコペニアの違いについて解説させて頂きます!
フレイルとサルコペニアというワードについては、ここ数年で随分耳にすることが増えたと思います。何となく虚弱や身体機能低下というイメージはあるかと思いますが、具体的な意味合いであったり、診断基準、進行過程について、あやふやな方もいらっしゃるのではないでしょうか?
以前は私もその1人でしたが、リハビリテーション専門職としてフレイルやサルコペニアへの対策は今後ますます重要になりますので、この分野については、しっかりと知識を深めた方が良いポイントだと思います。
健康な状態からサルコペニア、サルコペニアからフレイル、フレイルから要介護状態に至るまでを解説していきます!

【簡単に自己紹介】
埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です
現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!
主な取得資格は以下の通りになります
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!
3学会合同呼吸療法認定士/認知症ケア専門士/透析技術認定士/糖尿病療養指導士/終末期ケア専門士等の医療系資格の勉強はアステッキをご利用するのも良いと思います。独自のeラーニング講座と専用アプリが搭載されており、隙間時間に学習を進めることができます!
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フレイルという言葉の意味合い
2019年の国民生活基礎調査によると介護や支援が必要となった主な原因としては、「認知症」が最も多く約17.6%を占めています。次いで多いのが「脳血管疾患:16.1%」、「高齢による衰弱:12.8%」、「骨折・転倒:12.5%」、「関節疾患:10.8%」で、「関節疾患」は要支援の原因として最も多くなっています。
3番目に割合が高い「高齢による衰弱」ですが、海外ではこのような要介護の原因となるような高齢者の状態に、frailtyという表現を使っています。
Frailtyに関して、2014年の老年医学会のステートメントでは、その日本語訳についてこれまで「虚弱」が使われてきましたが、「老衰」「衰弱」「脆弱」といった語訳されることもあり、”加齢に伴って不可逆的に老い衰えた状態”といった印象を与えてきました。
しかし、frailtyには、しかるべき介入により再び健常状態に戻るという可逆性が包含されているとされています。「フレイル」という言葉にはこのような意味合いがあるということを、まず理解する必要があります。
筋量の低下と栄養障害はフレイルを引き起こす可能性が高い
フレイルは様々な局面で使われる用語ですが、高齢者に限定した場合、多くの臓器の生理学的な冗長性が全般的に障害された状態と表現することができます。
このフレイルに関連して、疾病に対する抵抗性の低下、自分自身の体ないし環境に内在するストレス要因に対する脆弱性、生理学的および心理学的なホメオスターシスを維持する能力の制限などが起こります。
75歳以上の高齢者が集まると、その20〜30%がフレイルであると考えられており、その調合は高齢化するに従って高くなります。
フレイルは高齢者に特有の疾患の発症リスクの増大、周囲に対する依存、 様々な障害、長期入院、施設入所および死亡率の増大などの高齢者の生活全般に影響を与える重大な帰結に繋がることが分かってきております。
フレイルを引き起こす要因は、完全に解明されたわけではありませんが最も可能性の高いものを2つ挙げるとすると、サルコぺニア(筋量の低下)と栄養障害だと考えられます。
栄養障害については、消化吸収自体の問題と嚥下障害が関与している可能性があります。このため嚥下障害を伴い、なおかつリハビリテーションの対象となる病態は、当然フレイルの原因となります。
フレイルの前段階をプレフレイルと表現することができますが、栄養障害(サルコペニア)は更にその前段階にあたります。
『栄養障害(サルコペニア)→プレフレイル→フレイル』このように線形の進行が認められ、また可逆性も期待できることから、栄養障害へのアプローチがフレイルの予防に大きな役割を果たすことになります。特に嚥下障害に対するリハビリテーションは、このことに大きく寄与できる可能性があります。
フレイルの診断
リハビリテーションにおいて、フレイルやサルコペニアであるのかないのかを知ることは重要なことになります。しかし、残念なことにフレイルと判定するための国際的に統一された基準はまだありません。
フレイルの概念は複数存在し、代表的なものとして表現型(phenotype model)と障害累積型(deficit accumulation model)が存在します。
表現型のフレイルとは「加齢に伴う症候群(老年症候群)として、多臓器にわたる生理的機能低下やホメオスターシス(恒常性)低下により、種々のストレスに対して身体機能障害や健康障害を起こしやすい状態」を示します。
わかりやすく言うと、フレイルを加齢に伴う生体機能の低下により表出してくる症候を捉え、自立と要介護状態の中間の状態を指す。このフレイルは可逆的で適切な介入により自立に戻すことができる状態と考える。
現在、世界的に最もよく使用される診断基準はFriedらの提唱したCHS基準になります。Friedらの考え方としては、表現型のフレイルに対するものが主となります。
Friedらは身体的フレイルの定義として、1)体重減少 2)疲労感 3)活動量低下 4)歩行速度低下 5)筋力低下の5項目を診断基準(CHS基準)と提唱しております。3つ以上に当てはまる場合はフレイルとして診断し、1つまたは2つ該当する場合はプレフレイルと判定します。

CHS基準は5項目それぞれの具体的な基準値などは定められていません。そのため、日本では佐竹らがFriedの定義に準拠した基準を作り、それを改訂日本版フレイル基準(J-CHS基準)として広く活用されています。

フレイルの症状についてや、理学療法士や作業療法士の専門性を活かしたフレイルの予防法については、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【フレイルの症状と予防についての記事はこちらから】
サルコペニアの診断
サルコペニアは基本的には筋量の減少になりますが、加齢が原因で起こる「一次性サルコペニア」と加齢以外にも原因がある「二次性サルコペニア」に分類することができます。
欧州老年医学会などの研究グループ:EWGSOPはサルコペニアを「筋量と筋力の進行性かつ全身性の減少に特徴づけられる症候群で、身体機能障害、QOL低下、死のリスクを伴うもの」と定義しています。
EWGSOPの診断基準としては、「骨格筋量低下」が必須条件とされ、それに筋力低下または身体機能低下のどちらかが加われば、サルコペニアの診断に至ります。なお、骨格筋量低下のみの場合にはプレサルコペニア、骨格筋量低下、身体機能低下、筋力低下すべてがある場合には重度サルコペニアとされています。
骨格筋量
EWGSOPは、骨格筋量の評価法としてDXA法を推奨しています。また、四肢除脂肪量を身長の2乗で除した値をSMIとして用いることを推奨しています。
筋力低下
筋力の指標の1つとして、握力測定を参考にすることができます。男性28㎏未満、女性18㎏未満を筋力低下として判定することができます。
身体機能低下
身体機能の指標の1つとして、歩行速度を参考にすることができます。男女関係なく、6mの歩行速度が、1.0m/秒 以下の場合を身体機能低下として判定することができます。
サルコペニアについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【サルコペニアの原因4つと対応方法についての記事はこちらから】
サルコペニアとフレイルの進行過程

フレイルとサルコペニアの診断基準を整理すると、健康な状態から要介護状態に至るまでの経過は上図の通りとなります。健康な状態からサルコペニアとなり、サルコペニアからフレイルへと進行していき要介護状態へと移行していきます。できるだけ早期に健康な状態から逸脱していることに気づき、対策を立てることが重要になります。
推奨される栄養評価方法
実際にフレイルもしくはサルコペニアであると診断できた場合に、どのような栄養評価を行うのがいいのでしょうか。
栄養障害の存在を知るうえで頻用されているのがMini Nutritional Assemet(MNA)高齢者の栄養アセスメントに用いられるスクリーニングテストになります。
簡便性があり、他の栄養指標との相関が高いのが特徴になります。考案されてから30年以上も経過しており、近年感度が過剰であるとの批判があるものの再評価され、特に短縮版(MNA-SF)が臨床現場で使用されています。

このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【MNA®-SF:簡易栄養状態評価表についての記事はこちらから】
生化学的指標としてはCONUTが良いと考えられます。CONUTは、総コレステロール・アルブミン・総リンパ球数の検査値を点数化して、入院中の栄養低下を検出する目的で作られました。

これまで悪性腫瘍や消耗性疾患の予後予測指標の1つとして使われてきましたが、その有用性のため近年では、回復期リハビリテーション病棟におけるサルコペニアにかかわる栄養評価としても、使用されるようになってきています。
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まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!この記事ではフレイルとサルコペニアについてまとめさせていただきました!
要介護状態を防ぐという介護予防的な観点で考えれば、サルコペニアやフレイルに陥らないようにすることや、進行予防を図ることが重要になります。何よりサルコペニアやフレイルの進行過程においては可逆性が認められるため、正しくアプローチすることができれば健康な状態へと近づけることができます。
そこで大事になってくるのは、やはり継続的な評価になるかと思います。サルコペニアやフレイルの診断基準にも使用されている握力や歩行速度を定期的に測定しなければ良くなっているのか、悪くなっているのか捉えることができません。
この進行過程を見逃してしまうと、気づいたときには重めのフレイルになっていたり、介護が必要になっているかもしれません。可逆性があるといっても少し悪い状態から戻すのと、うんと悪くなってしまってから戻すのでは、全く違うと思いますので、これらを意識してフレイルとサルコペニアに立ち向かっていきましょう!
フレイルやサルコペニアと聞くと、どうしても身体機能について考えてしまいがちですが、口腔機能の虚弱についてはご存知でしょうか?このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【口腔機能の老化とオーラルフレイルについての記事はこちらから】

参考文献
- 葛谷雅文.超高齢社会におけるサルコペニアとフレイル.日本内科学会雑誌.104巻,12号,p2602-2607.
- 沓澤智子.サルコペニアとフレイル.日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌.2021年,第29巻,第3号,p359-364.