
こんにちは!リハビリくんです!
今回は下部尿路症状(LUTS)について解説させて頂きます!
日本人の平均寿命は年々延び続けており、現在では男女ともに80歳台を超えています。ただ、健やかな体で長生きするためには、平均寿命だけではなく健康寿命も伸ばし平均寿命と健康寿命の差を埋めることが重要になります。
歳をとると排尿関係のトラブルや悩みを抱える方が、男女を問わず多いかと考えられます。排尿については日常生活における重要な構成要素であることは間違いありませんが、排尿関係の悩みは、人に相談しにくいところでもあると思います。
そこでこの記事で、下部尿路症状(LUTS)を評価する方法を、質問票を通して説明させて頂きます!

【簡単に自己紹介】
埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です
現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!
主な取得資格は以下の通りになります
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!
ここ近年はコロナ禍の影響もあり、外部の研修会などにも気軽に参加できなくなりましたよね。私の勤務先では、職場内での勉強会も規模が縮小していまいました。あらゆる方面で、以前と比較して自己研鑽する機会が減少してしまったように感じております。
そのような状況ではありますが、医療職として知識のアップデートは必要不可欠になります!
そこで、私自身も活用しており、大変役立っているのが下記の「リハノメ」です!
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高齢者が抱える排泄に関する悩み
近年の高齢者の関心は平均寿命から健康寿命に、注がれるようになってきています。個人の健康観は様々でありますが、排泄がその重大構成要素であることは間違いないと思います。
なかでも、頻尿・尿失禁・尿意切迫など下部尿路症状と訳されるものは、高齢者共通の悩みであり、これを的確に評価・対応することは医療者全体に求められています。
下部尿路症状(LUTS)について
LUTSは生活に大きな支障を与える
21世紀になるまでは、尿の貯留や排出に関係する症状を一般的に排尿症状と呼んでいました。しかし排尿症状といっても症状は多岐にわたり、このような状況を整理して定義することが診療上必要となり、2002年に国際禁制学会で下部尿路機能に関する用語基準が報告されています。このころからいわゆる排尿症状を下部尿路症状(LUTS)と表現するようになりました。
LUTS は男女ともに加齢に伴い増加していきます。多くの中高年者がLUTSを生活する上での煩わしさと感じ、身近な医療機関を受診します。多少の症状であれば人間の特性上、放置することもあることは皆様もお分かりになると思いますが、それでも医療を頼って受診してくる人が絶えないということは、それほどLUTSが生活に支障を与えているということになります。
LUTSの構成要素
高齢者のLUTSは、主因が加齢であるため高齢者共通の症状でもあります。LUTSが「主観」で「客観」ではないことは、病態生理の理解で最重要になります。
LUTSの構成要素は下部尿路機能障害(LUTD)だけでなく全身機能障害・外的要因に加え、心理的要因も含まれます。
また、LUTDの主要因として「前立腺肥大症」が広く知られた名称であったが、現代日本ではその要因としての重要性の比率は低くなってきています。
現代の高齢者LUTSの主要因は加齢で、その悪化速度を速めるものがメタボリックシンドロームや種々の合併症になります。
また、排尿機能は中枢神経全体で制御されているため脳卒中などの中枢神経疾患では必ず障害され、古くから神経因性膀胱という用語が使用されています。
LUTSのメカニズム
排尿機能は、膀胱に尿を溜める蓄尿相と尿を排出する排尿相の2段階から構成されます。蓄尿相において正常の排尿機能では膀胱内圧は低圧に保たれ、蓄尿料の増加とともに適度な尿意を感じるようになっています。
膀胱排出路は安静時においては閉鎖されており、腹圧がかかっても閉鎖が保たれます。また、膀胱の無意識の収縮が起きることはありません。排尿相においては、膀胱平滑筋の適度な収縮と尿道平滑筋および横紋筋の弛緩が強調して起きます。これらの機能は大脳から脊髄に至る排尿神経中枢によって調整されています。
これら一連の排尿機能に何かしらの異常を来して起きる症状を下部尿路症状(LUTS)と呼びます。下部尿路症状といっても多彩な症状があり、以下のように分類されます。
LUTSの3大症状
多彩な症状があるLUTSですが、中でも重要な症状は、蓄尿症状、排尿症状、排尿後症状の3つになります。
蓄尿症状
膀胱に尿が貯留していく蓄尿相に感じる症状です。蓄尿機能が低下したために発生する症状であり、頻尿や尿失禁などが代表的な症状になります。尿排出機能の障害によっても蓄尿障害が出現する場合があり、症状だけから障害を特定することはできないので注意が必要です。
排尿症状
膀胱内の尿を排出する排尿相に感じる症状です。尿排出機能が低下したために発生する症状となり、力まないと排尿できない、排尿に時間がかかるなどの症状があります。ただし、蓄尿障害のために排尿がしにくい場合などもあるため、鑑別が必要になります。
排尿後症状
排尿後の症状をいい、残尿感や排尿後尿滴下などがあげられます。残尿感の病的な意味はほとんど解明されておりません。排尿後尿滴下は尿道に残った尿が排尿後に流れ出るものであり、軽度のものを含めるとかなり多くの方が経験しているかと思います。
その他の症状
- 膀胱部痛症候群:膀胱に原因不明の炎症が起こり、それに伴い頻尿や尿意切迫感、膀胱痛などの症状を呈する疾患
- 過活動膀胱:膀胱が過敏になって、尿が十分にたまっていなくても、ご本人の意思とは関係なく膀胱が収縮する状態
- 膀胱出口閉塞:排尿時の器質的あるいは機能的閉塞(尿流に対する尿道抵抗の亢進)を来した状態
LUTS評価には質問票が有効である
臨床でのLUTS評価には質問票が不可欠になります。質問票は、LUTSを数値化し重症度および治療効果判断に容易であるばかりでなく統計処理も可能としています。
質問票は多数ありますが、世界共通である国際前立腺症状スコア(IPSS)とQOLスコア、過活動膀胱症状スコア (OABSS)が有名になります。
国際前立腺症状スコア(IPSS)とQOLスコア
国際前立腺症状スコアは前立腺肥大症の自覚症状を評価し、重症度を判定するための質問票で、患者さん自身が記入し、自覚的重症度を判定するものになります。
また、QOLスコアにおいて、これらの症状によりどれくらい困っているかを判定します。

国際前立腺症状スコア(IPSS)とQOLスコアの評価表をダウンロードできるようにしてあります!
評価表が必要な方はこちらからお願いします。
過活動膀胱症状スコア(OABSS)
過活動膀胱症状スコア(OABSS)は、下部尿路症状を評価し、重症度の決定や治療効果を判定するツールとして提唱されています。
昼間頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁を問う4つの質問から成り立っています。
過活動膀胱診療ガイドラインでは、尿意切迫感スコアが2点以上、かつOABSS合計点が3点以上を過活動膀胱の診断基準としています。
5点以下を軽症、6~11点を中等症、12点以上を重症と判定します。

まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では下部尿路症状(LUTS)についてまとめさせて頂きました!
国際前立腺症状スコア(IPSS)とQOLスコア、過活動膀胱症状スコア(OABSS)双方にいえることですが、質問の項目数も少なく、内容も理解しやすいため、簡便に実施することができます。
また、合計点から重症度も判定することができます。排尿関係のトラブルが出現し始めた悩みのタイミング→泌尿器科などの専門家を受診する前の段階で利用したりするのも効果的であると思います。
冒頭でも説明しましたが、排尿は日常生活における重要な構成要素になります。そのため、下部尿路症状(LUTS)の病態を理解し、質問票を活用したLUTS評価を実施できるようにしておけば、自分の身近な人や患者様および利用者様の力になる機会があるはずです!
下部尿路障害を誘発する要因の1つが加齢になりますが、歳をとると様々な機能が衰えてくることがわかっています。特にサルコペニアやフレイルのような身体機能の衰えは代表的な症状となります。このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【フレイルとサルコペニアの違いについての記事はこちらから】

参考文献
- 鈴木康友,齋藤友香,近藤幸尋.高齢男性における下部尿路症状 LUTSとは?.日医大医会誌 .2010,6(3),p130-134.
- 曽我倫久人,杉村芳樹.加齢に伴う下部尿路症状変動の分析.日泌尿会誌.95巻,6号,2004年,p766-772.