
こんにちは!リハビリくんです!
今回は、介護におけるケア技法として最近良く耳にするユマニチュードについて解説させて頂きます!情報量が多いため、全4回でまとめていきます。
私の勤める医療機関にも多くの介護士が勤めており、入院患者の介護をして下さっております。リハビリテーション専門職と介護士の連携というのは質の高いケアをする上で重要なものであり、助け合いながら一緒に仕事をさせて頂いております。
一緒に働いていることで気付くことも数多くあり、やはり介護の仕事は大変だと感じております。常に人手不足問題が発生しているため、1人あたりの業務量が増え、体力も非常に使う仕事です。そんな中で1人1人の患者様であったり、利用者様に向き合って介護をしますが、忙しすぎてケアの質を思うように高められないといった実情があると思います。
そんな方に、意識していただきたいのがユマニチュードです。ユマニチュードは技法は、単に介護することではありません。患者の「人間らしさ」を尊重することを重視しています。突き詰めれば「人間とは何か」「介護をする人とは何か」を問う学問とも言えます。または、そのような問いに基づく実践的な技術がユマニチュード技法です。

【簡単に自己紹介】
埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です
現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!
主な取得資格は以下の通りになります
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!
3学会合同呼吸療法認定士/認知症ケア専門士/透析技術認定士/糖尿病療養指導士/終末期ケア専門士等の医療系資格の勉強はアステッキをご利用するのも良いと思います。独自のeラーニング講座と専用アプリが搭載されており、隙間時間に学習を進めることができます!
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認知症に対する施策と日本の高齢化問題
2013年12月、「主要国(G8)認知症サミット」が英国で開かれ、各国が研究費を大幅に増やすことで合意しました。
日本では、2015年1月、新たな認知症対策となる「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を決定しました。その基本的な考え方は、「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す」と掲げられました。
日本が超高齢社会に突入していることは周知の事実であり、2013年に65歳以上の高齢者が 3,186万人(高齢化率25%)、75歳以上は1,560万となり、2035年には3人に1人が高齢者になると見込まれています。
認知症有病率は加齢とともに高くなります。そのため、認知症有病率は同じでも、高齢化が進めば認知症の患者が増加することになります。
認知症有病者は2012 年には462万人と推測されていましたが、2025年には各年齢の認知症有病率が一定の場合には 675 万人、糖尿病有病率の増加に より上昇すると仮定した場合には730万人に激増することが予想されています。
いずれにしても、2025年の認知症有病者数は約700万人(高齢者の約5人に1人)と推定されます。 認知症の人が家族による介護だけで地域で暮 らしていくのは非常に大変であり、認知症を正しく理解したうえで、社会の支援をうまく活用することが重要であることは間違いありません。
認知症について理解するには、まずは認知症の種類について理解を深める必要があります。このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【4大認知症の特徴と対応についての記事はこちらから】
国・自治体レベルでの認知症対策はもちろん重要ですが、家族・医療ケア従事者・地域という認知症有病者により近い立場の人々において、有効なケアの啓発・普及が急務となります。
有効なケア方法ということで、最近注目されているユマニチュードについて後述していきたいと思います。
ユマニチュードとは何か
ユマニチュード®はイヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティの2人によって作り出された認知症ケアの技法になります。
ユマニチュードは、知覚・感情・言語による包括的コミュニケーションに基づき、「人とは何か」「ケアする人とは何か」を 問う哲学と、それに基づく150を超える実践技術から成り立っています。
2人の創始者は体育学の教師ですが、1979年に介護者の健康を損なうことなく患者を移動させることができる「管理技術」 を教えるように要請され、その後35年以上、ケアを実施するのが困難といわれている人々を対象にケアを実践してきました。
彼らは体育学の専門家として、「生きている者は動く。動ものは生きる」という文化と思想をもち、病院や施設 で寝たきりの人々へのケアの改革に取り組み、「人間は死ぬまで立って生きることができる」ことを提唱しました。ユマニチュードはそのような経験から生まれた技法になります。
ユマニチュードを活用した介護で大切なこと
介護をするうえで大切なことは色々とありますが、最も大切なことは、「相手と良い関係を結ぶ」ことと「その人が持っている力を奪わない」ことの2つになります。
相手と良い関係を結ぶ
私たちは自由にいろいろなことができます。誰もが平等な権利を持っています。介護をする人も介護を受ける人も、ともに自由で平等であり、同胞の精神を持つ存在であると考えれば、そこには互いを尊重する気持ちが生まれ、両者の間にはよい関係が結ばれます。言い換えれば、介護を通じて相手とよい関係を結ぶことが、介護をするにあたって最も重要なことなのです。
しかし「よい関係を結びたい」「優しく介護をしたい」「あなたのことを大切に思っています」と心で思っているだけでは相手に受け取ってもらうことはできません。大切なのは、そう思っていることを相手が理解できる形で表現し、受け取ってもらうことです。
その人が持っている力を奪わない
介護をするときには、「何でもして差し上げる」のがよい介護であると考えてしまう人もいます。しかし、その介護は「その人が本来できることを代わりにやってしまうことで、その人の持つ能力を奪ってしまっている」可能性があります。
たとえば、下半身の更衣動作を考えてみます。長い時間安定して立ってられない方の下半身の更衣は、多くの場合がべッドに寝たままで行われていると思います。
しかし、もし短い時間であれば立っていられるのであれば、ベッドの柵につかまり立ちしてもらいながら下着やズボンを脱いだり履いたりしていき、立っていることに疲れたら座る。
このように立ったり、座ったりすることを組み合わせて脱いだり履いたりすることで、立つ能力を保つことができ、寝たきりになることを防ぐことができます。
人は起立動作を行わないと、立つ力は失われていきます。その人の「立つ能力』を、介護をする人が奪ってしまうことになるのです。
このように、その人が持つ能力を奪わないことが、ユマニチュードの介護で2つ目に大切なことになります。
優しさを伝える技術
「あなたのことを大切に思っている」ことを伝えるための技術
「あなたのことを大切に思っています」ということを介護を受ける方が理解できるように伝えるために、ユマニチュードではケアをするときにはいつも、4つの柱「見る」「話す」「触れる」「立つ」を用いて行います。
「見て、話して、触れる」は当然介護をする上で行なっています、という意見もあると思うのですが、それは「自分がやりたいことをするために」行っていることがほとんどだと思います。
たとえば、食事の介助をするときに口元を見たり、車椅子に移乗するときに「さあ、立ちますよ」と話しかけたり、体を洗うときに手首をつかんで腕を持ち上げたりしています。
これらの行動は食事、着替え、入浴、というような、いわば「作業」のための動作で、この動作に「あなたを大切に思っていますよ」というメッセージを見つけるのは困難です。
もちろん、食事をしたり、着替えをしたり、入浴をしたりすることは必要なことですが、これを単なる「作業」の時間にするのではなく、この時間を「あなたのことを大切に思っています」というメッセージで満たされた、コミュニケーションの機会であるととらえ、介護を受ける人とよい関係を結ぶ時間になっていくように心掛ける必要があります。
4つの柱「見る」「話す」「触れる」「立つ」は無意識的に行われることもある
私たちは自分が大切だと思っている相手に対しては、ユマニチュードの4つの柱「見る」「話す」「触れる」「立つ」を無意識に行っていることがあります。
例えば、赤ちゃんを目の前にしたとき、誰もがその目をのぞき込んで、見つめながら「かわいいね」と話しかけ、赤ちゃんの手に触れたりほっぺたを触ってみたりしてると思います。
大好きな恋人と過ごしている時も、とても近い距離で見つめ合ったり、素敵な言葉をささやいたり、しっかりと触れ合ったりするのではないでしょうか。
このように、生涯を通じて良い関係を結びたいと思うときには、人は無意識的にこの行動をとっています。
介護を受けている人には、それを意識的に行う
しかし、その対象が介護を受けるような脆弱で、言ってしまえば赤の他人の場合には、このような行動を自然に行うことは誰にとっても難しいと思います。
そのため、「あなたのことを大切に思っています」というメッセージを届けるためには、大切な人に対して自分が無意識に行っている行動を、意識的に行う必要があります。
つまり、「自分が大切だと思う人を自分はどう見ているか、話しかけているか、触れているか」を改めて振り返り、それを「技術」として実践することが必要になります。

まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「ユマニチュードとは何か?」というところを重点的にまとめさせていただきました!
ユマニチュードについては全4回でまとめています! 第2回:【記憶の仕組み:短期記憶と長期記憶】、第3回:【認知症の中核症状と行動・心理症状】、第4回:【ユマニチュード技法における4つの技術】の方も見ていただけると幸いです!

参考文献
- 竹林洋一,本田美和子,Gineste Yves.ユマニチュードの有効性と可能性.The 29th Annual Conference of the Japanese Society for Artificial Intelligence, 2015,p1-2.
- 本田美和子.優しさを伝えるケア技術:ユマニチュード.Jpn J Psychosom Med.2016,56,p692-697.