【口腔機能の低下】オーラルフレイルと口腔機能低下症がキーワード

オーラルフレイル フレイル・サルコペニア
リハビリくん
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こんにちは! リハビリくんです!

  

今回は、口腔機能の低下と【オーラルフレイル=口腔の虚弱】について解説させて頂きます。

  

皆様が考えている通り、口の中の機能は生活する上で非常に大切なものとなります。

  

「食べる」「話す」といった口の機能が低下すると、食事やコミュニケーションがとりにくくなり、日常生活に支障がでてしまいます。さらに食事やコミュニケーションの障害は、意欲の低下にも繋がりやすく、身体機能だけでなく、うつ傾向や認知機能の低下といった問題も大きくなります。

  

口は身体の重要な器官であります。口の中の細菌が増加し、それらが気管から肺に侵入(誤嚥)することで、誤嚥性肺炎のリスクとなります。特に要介護高齢者は複数の病気をもっていることが多く、栄養状態も良くないことから、誤嚥性肺炎などの感染症は重篤化しやすい傾向にあります。

  

また、口の中の細菌は歯周炎だけでなく、口の粘膜の炎症の原因になります。これらの炎症は口から全身に波及し、発熱などを惹起するため、低栄養や脱水に陥ったり、免疫機能や体力の低下を招いたり、血管など他の身体の臓器を障害したりします。口は身体の一部であり、当然口の健康は全身の健康とも繋がっております。

  

そこで今回この記事で、老化により口腔器官がどのように機能低下するのかを解説させて頂きます。

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です

現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!

  

主な取得資格は以下の通りになります

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級


「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!

  

3学会合同呼吸療法認定士/認知症ケア専門士/透析技術認定士/糖尿病療養指導士/終末期ケア専門士等の医療系資格の勉強はアステッキをご利用するのも良いと思います。独自のeラーニング講座と専用アプリが搭載されており、隙間時間に学習を進めることができます!

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高齢者の口腔の諸器官の老化

歯について

エナメル質は石灰化の進行により、透過性が低下し色調が暗くなります。また、硬く、脆くなり、亀裂を生じやすくなります。更に、咬耗や摩耗することで咬み合わせが悪くなり、咀嚼能力が低下します。

象牙質の内側に新たな象牙質が添加されるため、内部の歯髄は狭くなります。また歯髄の細胞成分
が減少するため、線維化し歯髄の活性が低下し、疼痛閾値も上がります。

歯周組織について

歯肉は退縮するため、歯根のセメント質が露出し、虫歯になりやすくなります。歯根膜は細胞が減り、咬合力の緩衝作用が減少します。

口腔粘膜について

上皮・粘膜固有層・粘膜下組織が華薄化(特に舌)し、乾燥も相まって傷つきやすくなります。

唾液腺について

大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)からの唾液が大部分を占めます。小唾液腺(口蓋腺、口唇腺等)からの唾液は10%以下となります。

腺房細胞の萎縮・減少、間質の線維化、脂肪細胞の増加などにより唾液分泌量は低下します。(若年者1〜1.5ℓ/日が高齢者では1/2〜1/7に減少)特に、服用薬の副作用により唾液分泌量が低下します。

唾液量が減ると、唾液の作用である「歯の石灰化・緩衝作用」は低下し、虫歯になりやすくなります。

また「食塊形成・消化・味覚」が低下し、咀嚼・嚥下が困難になります。「抗菌・自浄作用」が低下するため、歯周病や感染症のリスクが高まります。

顎骨と筋について

骨密度・骨量が減少するため、皮質骨の多孔化や骨梁の減少を生じます。歯周病があると歯の回りを支えている歯槽骨が減少し、歯を失うと歯槽骨は喪失してしまいます。

サルコペニア同様、筋線維の萎縮や減少を生じるため、収縮力が低下し機能が低下します。顎関節は可動範囲が広がるので、開口が大きくなり習慣性・陳旧性顎関節脱臼が発生しやすくなります。

顔貌(歯の喪失)

皮膚は弾性が減少し、しわ・しみ・たるみ・乾燥・いぼが発生しやすくなります。

頬部は咬筋が萎縮し、脂肪が増えて皮膚がたるむので頬が下垂します。皮膚がたるみ、口裂が下がるので、話すときに上顎前歯が見えにくくなります。

歯を失うと、いわゆる老人様顔貌(口元が後ろに下がり、下顔面が短くなり、しわが増え、赤唇がさらに薄くなる)となります。

舌について

筋線維の減少や脂肪組織の増加により、弾力性が低下し弛緩します。そのため、巧緻性が低下し、咀嚼障害、嚥下障害、構音障害を生じやすくなります。

口腔清掃状態が悪いと舌苔の付着も増加します。粘膜の萎縮、味蕾の減少、代謝異常により舌が平坦化し、味覚閾値は上昇します。味蕾の数が減少するので、特に塩味と苦味で閾値が上昇しやすくなります。

咽頭・喉頭について

知覚・反射の低下や、喉頭下垂により、嚥下が低下し誤嚥のリスクが増加する、さらに口内の不潔や免疫機能の低下があると誤嚥性肺炎を発生しやすくなります。

口腔内の不潔や免疫力の低下は誤嚥性肺炎だけではなく、不顕性誤嚥を引き起こす要因にもなります。不顕性誤嚥のスクリーニングとして咳テストという検査法があります。このテーマについては、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【咳テストの評価方法についての記事はこちらから

高齢者の口腔機能の老化

オーラルフレイルと口腔機能低下症

口腔の諸器官の老化や全身的な問題により、口腔機能は老化に伴い低下します。

「オーラルフレイル」とは、口腔の虚弱であり、4段階で進行する一連の現象・過程となります。

口腔機能の低下を放置していると、食事量の減少や低栄養から「サルコペニア」や「フレイル」などの心身の機能低下に大きく影響します。

以前は第2レベル「口のささいなトラブル」のことを「オーラルフレイル」と呼んでいたが、現在は上記で示したような一連の過程のことを「オーラルフレイル」と呼びます。

また、第3レベルの「口の機能低下」が「口腔機能低下症」と定義され、2018年4月からその検査と管理が健康保険に導入されています。

サルコペニアわフレイルについては、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【フレイルとサルコペニアの違いについての記事はこちらから

口腔機能低下症の検査

7項目の検査を行い、3項目以上が該当すると口腔機能低下症と診断します。口腔機能低下症の診断方法について更に詳しく調べたい方は、以下のリンクからご確認ください。

日本老年歯科医学会ホームページ

口腔機能低下症に対するアプローチ

口腔機能が低下している場合、口腔機能のさらなる悪化を予防する必要があります。口腔機能の維持・回復を目的とし、栄養状態や全身の状態にも配慮して、生活指導や栄養指導を行います。

指導の結果、栄養状態や口腔機能が維持・回復されているかを臨床的観点から評価します。生活指導や栄養指導の内容としては、低下している項目に応じて口腔清掃・唾液腺マッサージ・食物選択の指導・発語練習・舌トレーニング・咀嚼練習・嚥下練習などの指導が効果的となります。

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まとめ

最後までお読み頂きありがとうございます!

この記事では口腔機能の低下とオーラルフレイルについて、まとめさせて頂きました。

加齢による口腔器官の老化は健康な人であっても誰にでも起こる問題です。そのため、口腔器官が老化することが問題なのではなく、口腔器官が老化したことをしっかり認識して、その後の対策を怠らないことが重要になります。

私自身も患者様の口腔内の変化を提示的に捉えるように心掛け、適切なケアができるように取り組んでいきたいと思います。

今回は、口腔の虚弱についてまとめさせて頂きましたが、身体的なフレイルについては他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【フレイルの症状と予防についての記事はこちらから

リハビリくん
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【理学療法士、作業療法士の転職について】

リハビリテーション専門職であれば「転職」するべきなのか悩む人が多いのではないかと思っています。「転職」する、しないは置いといて、1度話を聞いて自分自身の客観的評価をしてもらった方が良いと思います。

  

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参考文献

  1. 平野浩彦.オーラルフレイルの概要と対策.日本老年医学会雑誌.52巻,4号,2015,p336-342.
  2. 靏岡祥子,高守史子,山下佳雄.オーラルフレイルに対する自覚度合と口腔機能低下症の検査結果の相違に関する臨床的検討.老年歯学 第36巻,第1号,2021,p53-64.
  3. 平野浩彦.今なぜオーラルフレイルが注目されるのか老年学の視点から.JICD,2018,Vol. 49,No.1,p15-19.
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