
こんにちは!リハビリくんです!
今回は意識障害の概要と評価方法についてまとめさせて頂きます。
意識障害と聞くと「脳に何か問題でもあるのではないか?」と疑うと思うのですが、脳の器質的疾患以外の原因であることが意外にも多いので、脳の問題と決めつけず、あらゆる可能性を考えるべきです。
意識の評価は日頃から行うことが多く、リハビリテーションを行うにあたって、かなり身近なものだと思います。
しかし、JCSやGCSについては良く理解している人が多いと思いますが、それ以外の方法でどのように意識を評価するのかについては難しい要素もあると思います。
そこで今回、意識障害の定義について振り返り、身体所見や神経学的所見からどのような評価が有用であるのか解説していきたいと思います!

【簡単に自己紹介】
埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です
現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!
主な取得資格は以下の通りになります
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!
3学会合同呼吸療法認定士/認知症ケア専門士/透析技術認定士/糖尿病療養指導士/終末期ケア専門士等の医療系資格の勉強はアステッキをご利用するのも良いと思います。独自のeラーニング講座と専用アプリが搭載されており、隙間時間に学習を進めることができます!
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意識障害とは
意識とは「覚醒」と「認知」が組み合わさったものになります。覚醒は脳幹の網様体賦活化系が、認知は大脳皮質が担っています。
意識の障害は「覚醒」と「認知」のどちらか、あるいは両方が機能不全に陥っている状態を指します。
ここで注意したいのは、脳の機能不全だからといって、その原因は決して「脳の器質的疾患」のみによるものではないということです。
意識障害のおよそ半数は低酸素、低血糖、アンモニア、電解質異常などに随伴した「質的な機能低下」が原因となります。意識障害が起きているからといって、脳神経疾患か頭部外傷と決めつけずに、あらゆる可能性を疑うことが重要になります。
意識消失と意識障害は異なる
意識消失とは失神のことになります。失神とは脳血流の低下に伴う「量的な機能低下」であり、これは心血管系の症候となります。
その多くは血管性迷走神経反射などを含む反射性失神になります。失神の場合、短時間(長くても数分)で意識が回復し、神経学的な後遺症が出現することはありません。
失神を意識障害と混同してしまうケースは意外と多く、失神の原因が循環器系疾患であることに気付かず、脳神経外科医に紹介され、外科症例ではないと適切なフォローがなされないことがあります。
医療従事者として、意識障害と意識消失の病態の違いを正しく認識する必要があります。

意識障害の評価
意識障害を認めた場合、緊急搬送・転院することを考慮し、正確な意識状態を評価する必要があります。
昏睡、半昏睡、昏迷、傾眠などの表記よりも、Japan Coma scale(JCS)、 Glasgow Coma Scale(GCS)で点数化したほうが経時的変化にも対応しやすいため現在も広く利用されています。
Japan Coma scale(JCS)

もともとは、脳卒中や頭部外傷による脳ヘルニアの進行を評価するために開発された尺度です。そのため、それ以外の意識障害に用いることは本意ではありません。
へルニア進行による脳幹障害の程度、つまり「覚醒」の内容を評価することを主体としています。そのため、肝性脳症や認知症などでは正確な評価は困難なことがあります。
しかし、9段階評価で簡便であり、評価方法の認知度も高く、医療従事者であれば誰でも判定可能となります。
急性の意識障害、特に経時的な意識の変化を捉えやすいため、初期対応時にJCSで評価しておくと、その後のレベルの変化で緊急性の有無が判断しやすくなるため有用な評価となります。
Glasgow Coma Scale(GCS)

開限・言語・運動機能の3つの因子を用い、それぞれの最大刺激による最良反応をもって評価します。
当初は頭部外傷による意識障害を評価するツールとして開発されましたが、JCSと異なり「覚醒」の内容を評価しないため、3つの機能を独立して評価できる利点があります。
欠点としては、総得点の3〜15点の間に120通りの組み合わせがあるため、同じ点数でも内容が異なる場合が多々あります。
そのため、不用意に合計点のみで評価をせず、常に「E:◯点、V:◯点、M:〇点」と表すことがポイントとなります。
とはいっても、合計点8点未満は重症であり、意識障害のために気道確保ができない可能性が高く、この合計点をもって気管内挿管の1つの目安ともなります。
身体所見による意識障害の評価
頭部外傷や脳卒中では患者の客体は刻々と変化します。JCSやGCSだけではなく、身体所見から意識状態を評価することも必要になります。
呼吸

中枢神経の障害部位と異常呼吸には関係があります。呼吸の評価については、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【呼吸困難の評価方法とメカニズムについての記事はこちらから】
両側大脳皮質下〜間脳:Cheyne-Stokes呼吸
小さい呼吸から1回換気量が漸増し大きな呼吸となった後、1回換気量が漸減し呼吸停止(10〜20秒程度の無呼吸)が起こり、その後再び同様の周期を繰り返す呼吸となります。
1周期は30秒〜2分位のことが多く、心不全による循環不全や低酸素脳症、その他種々の疾患の末期にも起こり得る症状です。
中脳下部〜橋上部 :metronomically regu-lar hyperpnea(規則的過呼吸)
呼吸数は25〜30回/分以上になり、深く力強い呼吸で換気量は正常の1.5〜4倍になります。
橋下部〜延髄上部:群発呼吸
頻呼吸が数回起こると、不規則な休止期が続き、これを繰り返します。
延髄:失調性呼吸(不規則な呼吸)
中枢神経障害以外による異常呼吸としては、尿病性昏睡や尿毒症などによる代謝性アシドーシスに対する代償反応である Kussmaul 大呼吸があります。深く速い呼吸で規則的過呼吸と似ているため、鑑別する必要があります。その他に肝性昏睡でも過呼吸を呈します。
脈拍と血圧

徐脈があれば脳圧の急激な亢進、頻脈であれば脳循環不全も考慮するべきです。急激な血圧上昇は脳出血や脳梗塞をきたしている可能性があります。
意識障害を伴う高血圧、特に収縮期血圧が170mmHg以上の場合、頭蓋内病変を有している率が極めて高くなります。
一方、急激な血圧降下があるときは頭蓋内病変よりも二次的な脳循環不全が原因の可能性が高いことが考えられます。心不全は言うに及ばず、肺塞栓でも頻脈と低血圧をきたし昏睡となることがあります。
また外傷などの外部出血がなくても腹部内臓出血などを疑います。糖尿病性昏睡でも血圧は低下します。
意識障害を認めた場合には血圧測定を必ず実施するかと思います。血圧については、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【血圧の正常値と管理方法についての記事はこちらから】
体温

高体温においては頻脈と発汗を伴い、その後の経過で意識障害となります。高体温となる可能性があるのは敗血症、甲状原クリーゼ、熱中症、悪性症候群、セロトニン症候群などが挙げられます。
脳炎、髄膜炎、脳腫瘍などの中枢神経系の感染症の場合は、意識障害(昏睡)に陥る前から発熱していることが多いです。逆に意識障害の後に発熱を伴うときは中枢神経の障害を疑うべきです。脳室穿破を伴う脳出血や脳梗塞・出血による脳幹部の広範囲の障害で発熱を来します。
低体温はバルビツール系の中毒や、脱水、末梢性の循環不全で起こります。
外観、皮膚、粘膜
まずは頭蓋、顔面の外傷性変化、出血に注意する必要があります。受傷時に結膜出血や鼻出血を伴うことがあるためです。
耳や鼻からの血性の髄液漏出は頭蓋底骨折を示しています。Battle signは耳の後側に皮下出血を認めることですが、これも頭蓋底骨折の徴候となります。
外傷による内臓出血や骨盤骨折などがあれば、血圧が低下し顔色の蒼白を認めることが考えられます。顔色等の皮膚の変化にも注意が必要です。
低血糖

糖尿病の病歴がはっきりしていない症例だとしても、全症例で血糖測定は行うべきです。70mg/dl未満が低血糖の定義となりますが、意識障害をきたしてくるのは50mg/dl未満と考えられます。
50mg/dlを下回ると倦怠感・無気力となり、さらに低下すると動悸・冷汗・震えを伴います。30mg/dl未満となると傾眠から昏睡へと変化します。
血糖値については、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【糖尿病患者のリハビリにおけるリスク管理についての記事はこちらから】
神経学的所見による意識障害の評価
意識障害を評価するといっても、患者の協力が得られない状態であることは少なくありません。患者の協力が得られなくても評価可能な神経学的初見を紹介します。
髄膜刺激徵候
外傷による頚髄損傷の可能性を否定したうえで項部硬直を確認します。項部硬直が陽性であれば、くも膜下出血や髄膜炎などを疑うことができます。
頚部の屈曲以外に回旋や伸展でも抵抗があれば、頚椎疾患やパーキンソニズム、ましてや昏睡なのであれば除脳硬直も疑います。したがってその場合はKernig 徴候も確認します。
四肢・姿勢の異常
指示動作もなく自発的な動作もなければ痛みなど種々の刺激を加えてその反応を確認します。これらの刺激を振り払う、逃避するなど合目的な動作があるか、その動作に左右差や上下肢の差があれば片麻痺や対麻痺だけでなく、関節を含む外傷・拘縮による可動域制限の可能性もあります。
それもなければいわゆる昏睡状態であり、刺激により次のような肢位をとれば緊急性を要する頭蓋内疾患を疑います。
除皮質肢位
肩関節内旋、肘・手・指関節屈曲、下肢は伸展・内転位であれば除皮質肢位が疑われます。内包、視床などを含む大脳広範囲の障害でみられます。中脳赤核よりも上位の障害とも言い換えられます。
除脳肢位
四肢が伸展・内旋、足関節が底屈位であれば徐脳肢位が疑われます。中脳赤核以下の脳幹が部分的ではあるが両側性に障害されていることを示しています。
眼症候
意識障害時の眼の所見は重要になります。開眼していれば、眼裂の左右差・斜視・瞳孔不同に注意する必要があります。これらは動眼神経、滑車神経、外転神経の障害を示しています。
閉眼していれば眼瞼を持ち上げて眼球の位置を確認します。昏睡では輻輳調節が低下しているので眼球は両側とも正常より多少外側を向いていることが多くなります。
眼球共同偏倚
両眼が持続して一側に偏倚します。水平方向では、テント上の病変で障害側を、テント下の病変で健側を向きます。
垂直性では下方視が異常であり、視床や中脳の障害で認められます。上方視は睡眠時に起きますが、てんかん・失神・Cheyne-Stokes 呼吸の無呼吸期に一過性に認めることがあります。
斜偏倚
一側の眼球が内下方へ、他側が外上方へ向きます。実は水平方向についてはあまり意味がなく、上下方向、つまり垂直性閑散が本態であります。病変は脳幹の「どこか」であり局在徴候としての意義は少ないですが、中脳被蓋に大きな病変がおると顕著に認められることがあります。
瞳孔異常
瞳孔不同を確認します。意識障害があり片側だけ散大している場合は、急性硬膜外血腫などの頭蓋内の急速な病変の拡大を疑います。この場合、進行に伴い対光反射も消失します。
両側の瞳孔散大は脳の重症なアノキシアや低血糖などで起こります。
片側の縮瞳はホルネル症候群、両側の著しい縮瞳はpinpoint pupilsと呼び、橋出血に特有な症状となります。縮瞳は多くの代謝性脳症で交感神経系の異常により起こりますが、いずれも対光反射は保たれます。
対光反射
対光反射の消失は、光を入れた眼の視神経・動眼神経の障害であり、中脳だけでなくその周辺構造物である下垂体、海綿静脈洞、内頚動脈などの病変を疑う必要があります。
毛様体脊髄射
頚部をつねって両側の瞳孔が1〜2mm散大すれば正常です。反射が消失していれば脳幹障害とされますが、この反射弓は頚髄〜上位胸髄に存在するので脳幹障害とするにはエビデンスに欠けるかもしれません。
角膜反射
昏睡時には両側で微弱あるいは消失します。意識障害で一側のみ角膜反射の異常があれば、反対側大脳半球の障害か同側の脳幹あるいは三叉神経・顏面神経の末梢性障害を意味しています。
脳幹障害がある可能性が極めて高く、一側性であれば障害側の外眼筋麻痺が考えられます。
顔面神経
一側の顔面に痛み刺激を行い、顔をしかめるか、その反応に左右差はあるのかを評価することで三叉神経と顔面神経の所見となります。
瞼持ち上げ試験は、患者の両眼瞼を持ち上げて急に離して判定します。障害側の上眼瞼は健側に比べてゆっくりと下降し健側ほど完全には閉じません。もし眼瞼を持ち上げるのに抵抗を感じれば意識障害は軽度であり顔面神経の障害はないと考えられます。
耳元で大きな声で呼んでみてまばたきがあれば、聴神経と顔面神経は機能しており橋下部は保たれ
ていると予想できます。
意識障害があっても患者が開眼している場合、眼に向かって検者の指を突っ込むような動作(視覚
性おどし反射)を行います。これで閉眼すれば視神経から外側膝状体、脳幹、大脳皮質、顔面神経を含めて中枢神経の大部分が機能していることを意味します。動作でなくても光を当てまばたきが起これば同義となります。
四肢の麻痺側の判定
麻痺側の肢位は、上肢前腕は健側より回内し、下肢は伸展位で健側より外転・外旋する傾向があります。四肢を屈曲・伸展させて筋緊張の左右差を確認します。
一側の手足はよく動くが、他側は動かない&動きが少ない等ですぐに麻痺側が判定できる場合は必要ありませんが、意識障害があり痛み刺激でも四肢を動かさないときには次の誘発テストを行う必要があります。
アームドロップテスト
上肢を垂直に持ち上げて急に離します。麻痺側はそのまま落下し顔面に当たることもあります。健側であれば顔面を避け、体の側方に落下します。
レッグドロップテスト
受動的に膝関節を屈曲させ膝を立て、そのまま手を離します。麻痺側はすぐに外側へ倒れますが、健側はそのまま保つか、膝を自ら伸ばして伸展位とします。
感覚検査
感覚検査は痛み刺激で行います。一側の刺激で手足を引っ込めたり、呼吸数が増加したり、顔をしかめたりの反応が見られる場合に、他側で消失していれば半身の感覚障害となります。しかし深昏睡ではかなり強い刺激(針刺激や睾丸の圧迫)でもはっきりしないことが多いのが現実です。
反射検査
上下肢の腱反射、腹壁・挙筋反射などの表在反射、病的反射を調べます。反射検査は必ず両側を比較し左右差がないかみることが大切です。つまり反射の亢進や消失があっても両側対称性であれば診断上それほどの意義をもたせることはできません。
まとめ
最後までお読み頂きありがとうございます!
この記事では意識障害の概要と評価方法についてまとめさせて頂きました。
多くの場合は情報収集に加え、身体所見評価、神経学的評価を行うことで、原因疾患の予測はつくと考えられます。
急性発症の意識障害は救命救急にかかわることが多く、場合によっては直ちに搬送することが必要になります。
意識障害の評価において留意したいことは、緊急の外科治療の適応であるのに、闇雲に意識障害に関する多くの検査を行うことは患者にとっては不利益になります。意識障害になった経緯と全身状態からある程度予測を立て、意識状態の評価を行うことが重要になります。
私が勤務する病院は慢性期機能をもつ療養型の病院であるため、重症度が高い患者様が非常に多い特徴があります。
神経学的所見による意識障害の評価は、重症度が高くても評価することが可能であり、意識の経時的評価にも有効であると思います。眼症候などは苦手意識があり、看護師に任せてしまう傾向が強いため、今後は積極的に評価していきたいと思います!
今回、意識障害をテーマに様々な話をさせて頂きましたが、てんかんについても意識障害を認めた際に注意しなければならない病態の1つとなります。てんかん発作については、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【てんかん発作の症状と対応方法についての記事はこちらから】

参考文献
- 八巻智洋.意識障害慢性期の評価方法.Jpn J Rehabil Med.2020,57,p11-14.
- 卜部貴夫.意識障害.日本内科学会雑誌.第99巻,第5号,平成22年,p168-175.