
こんにちは! リハビリくんです!
訪問リハビリテーション等の在宅診療で嚥下機能を正確に評価したいから「嚥下内視鏡検査(VE検査)」や「嚥下造影検査(VF検査)」を実施したいところだけど機器がないからできない!
このような経験をしたことがある言語聴覚士の方は数多いのではないでしょうか。
これは言語聴覚士だけに言える話ではなく、理学療法士や作業療法士でも同様の悩みがあるかと思います。STEFを用いて簡易上肢機能検査を行いたいけど、「院内から持ち出せない」だったり「重くて持って行けない」だったり訪問リハならではの悩みもあるかと思います。
嚥下評価の話に戻りますが、院内や施設で努めていたとしても、VEやVFのような高価な機器は取り扱っていないケースも結構多いのではないかと思います。
そこで重要性が高くなってくるのがスクリーニング検査になります。高価な機器や取り扱いが大変な検査器具を用いなくても、在宅にあるもので簡単に検査ができたら便利ですよね。
今回は在宅診療に有用な嚥下評価についてを、スクリーニング検査を紹介しながら解説していきたいと思います。

【簡単に自己紹介】
埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です
現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!
主な取得資格は以下の通りになります
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!
3学会合同呼吸療法認定士/認知症ケア専門士/透析技術認定士/糖尿病療養指導士/終末期ケア専門士等の医療系資格の勉強はアステッキをご利用するのも良いと思います。独自のeラーニング講座と専用アプリが搭載されており、隙間時間に学習を進めることができます!
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摂食嚥下リハビリテーションにおけるスクリーニング検査について
スクリーニング検査はその名の通り、「スクリーニング」つまり「ふるい分け」するための検査です。摂食嚥下リハビリテーション診療においては、スクリーニングによって嚥下障害の有無や嚥下機能に関する問題点を大雑把に把握することが目的となります。
スクリーニング検査が行われるのは、嚥下障害の疑いがある人の診察場面に加え、健診など明確な症状がない場合もあります。スクリーニング検査の結果「嚥下障害あり」とふるい分けされた場合は、精密検査に移行していきます。
訪問リハビリテーション等在宅診療の場では、職下障害が疑われる場合のスクリーニングがほとんどであり、摂食嚥下の間題を評価して適切に対応することが求められます。
しかし、在宅診療では精密検査の選択肢は少なく、スクリーニング検査の重要性はより高まります。したがって、在宅診療にかかわる職種は、各スクリーニング検査の目的と方法、判断について十分理解しておく必要があります。今回はスクリーニング検査の中でも、機器を用いないものについて解説します。
感度と特異度について
スクリーニング検査の際に理解しておくべき数字が2つあります。それは感度と特異度です。
感度とは、真の陽性の中で、スクリーニング検査で陽性と判断された数がどのくらいの率かを示す値です。
特異度は、真の陰性のスクリーニング検査で陰性と判断された数がどのくらいの率かを示す値です。
つまり、感度が高いほど真の陽性者(異常)の発見率が上がり、特異度が高いほど真の陰性者(正常)を陽性と誤る率が減ります。いずれも1.0が最高値になります。
感度、特異度ともに高いことが理想となりますがそのようなスクリーニング検査はなかなかありません。通常、スクリーニング検査の後に精密検査が控えているので、正常を異常と間違えても大事に至らないですが、異常を見逃すことは可能な限り避けなければなりません。
つまり、スクリーニング検査に求められるのは「異常をなるべく見逃さないこと」すなわち感度の高さが最低限求められます。
一方、特異度が低いと正常を異常と捉えてしまうため不要な食形態の変化や禁食につながる懸念があるため、そこは注意しないとなりません。
摂食嚥下障害に対する問診

摂食嚥下障害に関して問診を行うには、質問紙の利用が効率的です。聖隷式嚥下質問紙とEAT-10が感度、特異度も高く有用であるといえます。
聖隷式嚥下質問紙

15項目の質問から構成されており、質問内容には肺炎・栄養状態・咽頭期・口腔期・食道期・声門防御機構など、摂食嚥下にかかわる部位が網羅されています。嚥下障害検出の感度は0.92、特異度は0.90となっています。

10項目の質問から構成されているEAT-10もよく使われています。EAT-10は構造が単純で使いやすい反面、肺炎・口腔期・食道期に関する質問がなく、総合的には評価しにくい面があります。EAT-10の誤嚥検出の感度は0.76、特異度0.75となっています。
スクリーニング検査の紹介
反復唾液嚥下テスト(Repetve Swallowing Test :RSST)
RSSTは簡便で安全なスクリーニング検査で、随意的な嚥下の繰り返し能力をみる検査となっています。繰り返し嚥下することを命じ、30秒間に何回空嚥下できるかをカウントし、嚥下回数が3回未満の場合を陽性、つまり問題ありとします。
嚥下障害患者を対象とした研究では、RSSTの誤嚥検出の感度は0.98、特異度は0.66と報告されています。
経口摂取していない患者へのスクリーニング検査としては最初に実施すると良いと考えられます。ただし、認知機能の低下などで指示に従えない患者は実施しにくいという欠点があります。
このテーマについては、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【反復唾液嚥下テスト(RSST)についての記事はこちらから】
改定水飲みテスト(modified Water Swal-lowing Test :MWST)

MWSTは少量(3ml)の冷水を安全に嚥下できるかを観察する検査となっています。とろみのない水分を使用するのは危険だと判断される場合は、冷水の代わりにとろみ水を用いて検査する場合もあります。
方法としては、冷水3mlを口腔底に注ぎ、嚥下を指示します。評価点4点以上であれば、最大でさらに2回繰り返し、最も悪い点数を評価点とします。また、実施した体位などの情報も書き留めておきます。
摂食嚥下障害者を対象とした研究で、MWST(カットオフ値4点)の誤嚥検出の感度は0.70、特異度は0.88と報告されています。RSSTと比較すると感度は低くなりますが、ごく少量の水を用いるために安全性が高く誤嚥のリスクのある患者への初期評価としては使いやすい評価です。

このテーマについては、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【水飲みテストの種類と評価結果についての記事はこちらから】
水飲みテスト(Water Swallmwing Test:WST)
30mlとMWSTよりも多い量の水を安全に嚥下できるかを観察する検査です。誤嚥する可能性の高い患者に対しては、MWSTを先に行ったほうが良いと思います。WSTは30mlの常温の水を手渡し、コップからいつも通り飲んでもらい、水を飲み終わるまでの時間や様子をプロフィールとエピソードに照らし合わせて判定するテストとなっています。
広く用いられてきましたが、脳卒中患者でのWSTの誤嚥検出に関する感度は0.51、特異度は0.79と報告されています。

フードテスト(Food Test)

フードテストはティースプーン1杯(約4g)のプリンを嚥下してもらい、安全に嚥下できるかを確認するテストです。
方法は約4gのプリンを舌背に置き、嚥下を指示します。スコアの付け方は MWSTとほぼ同じですが、嚥下後に口腔内を確認し、残留が中等度以上であれば3点をつけます。
摂食嚥下障害患者を対象とした研究で、フードテスト(カットオフ4点)の誤嚥検出の感度は0.72、特異度は0.62と報告されています。

サクサクテスト(SakuSaku Test:SST)
咀嚼機能のスクリーニング検査としてSSTがあります。ただし、全く経口摂取していない患者にいきなりSSTを試すと誤嚥や窒息のリスクがあるため、この検査を用いる場面として考えられるのは、ミキサー食やペースト食を食べられている方が、固形物も食べられるかを試したいときなどになります。
なお、丸呑みの傾向がある患者については、誤嚥・窒息のリスクが高いので検査の実施が難しい場合もあります。
SSTは食べやすいせんべいなどの菓子(ハッピーターン・亀田製菓)を用いて、咀嚼運動が可能かどうかをみる検査です。一連の摂食嚥下運動の中での咀嚼機能を評価できる利点があります。
咀嚼運動を試す前提として、まずは歯牙や咬合が問題ないか、著明な口腔乾燥がないかなど口腔内を評価します。
SSTはハッピーターン半量(約2g)を一口で摂取し、摂取中の下顎運動を評価します。下顎運動の軌道として、涙型もしくは楕円に近い形の回旋運動がみられれば咀嚼運動良好と評価します。下顎が縦方向の上下にしか動かない場合は咀嚼運動不良と評価します。
粉砕(口腔内で噛み砕く)の程度に対しての感度は0.73、特異度は0.93、食塊の凝集度の感度は0.45、特異度は0.91、誤嚥検出の感度は0.25、特異度は0.85と報告されています。
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まとめ
最後までお読み頂いてありがとうございます!
この記事では、機器不要で評価できる嚥下のスクリーニング検査について解説させて頂きました!
食べることは人生の生きがいの1つになると思います。そのため、リハビリテーションを行う上で本人および家族から「再び口から物を食べれるようになりたい、なってほしい」といった希望はとても多いです。
VEやVFなどの精密機器が使える環境であれば、それらで検査して判定していけばいいと思いますが冒頭でも説明した通り、VEやVFを使用できない環境もありますので、まずはスクリーニング検査を効率的に行えるようにすることが重要だと思います。
また、これらのスクリーニング検査は言語聴覚士だけに任せるのではなく、理学療法士や作業療法士も知っておくべきだと思います。
特に、RSSTは安全に実施できるスクリーニング検査となっていますので理学療法士や作業療法士でも実施できます。感度も0.98と高く、方法も複雑ではなく比較的に簡単に実施できます。言語聴覚士が在籍していない職場もあると思いますので、そういった環境でもRSST等のスクリーニング検査は有効に使えると思います。
こちらの記事ではどちらかと言えば、嚥下機能に特化した言語聴覚士よりの評価を紹介しましたが、理学療法士ならではの嚥下機能評価が知りたい!という方は、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【摂食嚥下障害の理学療法評価についての記事はこちらから】
今回は、在宅診療で有用な嚥下障害の主なスクリーニング検査などについて解説させて頂きました。これらの検査はどの職種でも実施できる侵襲の少ない嚥下評価の1つになります。ぜひ身につけて明日からの摂食嚥下リハビリテーション診療に活用して頂ければと思います!

参考文献
- 大熊るり,藤島一郎,小島千枝子,北條京子,武原格,本島豊.摂食・嚥下障害スクリーニングのための質問紙の開発.日摂食嚥下リハ会誌 .6,2002,p3-8.
- 西尾正輝.摂食・嚥下障害の評価と治療.理学療法科学.2001,16,p5-16.
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