
こんにちは!リハビリくんです!
ここ近年で理学療法士の実習生の受け入れ方については大きく変化してきました。
実習中の時間の使い方に関しても、できるだけ自宅で学習をしないようにといった方向性で工夫されているかと思いますし、実習生が行っても良い理学療法士行為についても今までグレーゾーンだった部分が随分明確になってきたのではないでしょうか?
何故、ここ近年で臨床実習の在り方が変わってきたのでしょうか?
疑問に感じている方もいらっしゃると思いますので、今回は現在の臨床実習について、過去の流れや法律的なところも踏まえて解説していきたいと思います!

【簡単に自己紹介】
埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です
現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!
主な取得資格は以下の通りになります
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!
3学会合同呼吸療法認定士/認知症ケア専門士/透析技術認定士/糖尿病療養指導士/終末期ケア専門士等の医療系資格の勉強はアステッキをご利用するのも良いと思います。独自のeラーニング講座と専用アプリが搭載されており、隙間時間に学習を進めることができます!
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実習生は理学療法行為をしても良いのか?
法律的な話を踏まえて解説していきます!
医師法第十七条では、医師でなければ医業をしてはならないとし、医師以外が医行為を行うことを禁止しています。
理学療法士が行う診療の補助行為は、保健師助産師看護師法(以下:保助看法)第三十一条で看護師の業務独占であると規定されています。
この法制度のなかで、理学療法士が診療上の補助として理学療法を実施しても、保助看法違反に問わないことを規定したのが、理学療法士及び作業療法士法第十五条、「理学療法士又は作業療法士は、保健師助産師看護師法第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として理学療法又は作業療法を行なうことを業とすることができる。」となります。
すなわち、理学療法は保助看法のもと理学療法士による実施が認められた診療の補助行為であり、理学療法士以外による実施は保助看法違反となります。
医療機関における臨床実習は、診療の補助行為としての理学療法士の実施にほかならないため、形式的には学生の行為は違法である可能性があります。
したがって、資格を有しない学生が理学療法行為を行うには、保助看法を意識し、違法性阻却を考慮する必要があります。違法性阻却って何のこと?という話をつぎの項目で説明していきます!

臨床実習で学生が行う行為の違法性阻却に必要な4条件
上記で説明した通り、医療関係職種の臨床実習では、学生は資格を持たないため、形式的には学生の行為が違法ではないかという問題があります。そのため、各医療職種の臨床実習では、違法性阻却のための条件を定め、その条件に従い実習を行うことで実習生の医行為を認めてもらう必要があります。
医学生の場合
医学生の臨床実習では以下のような経緯でその条件が示されています。
1948(昭和23)年に制定された新医師法では、医学部を卒業した後に1年以上実地修練(インターン制度)を経なければ国家試験を受けられず、さらにその間は「学生でも医師でもない」という中途半端な身分のまま、ほぼ無報酬で医療行為を行わされるという状況でありました。
インターン生のみならず患者をも危険にさらす状況に強い不満を持った医学生が、当時隆盛だった学生運動の流れに乗り、大規模な国家試験のボイコットを行いました。これを契機として1968(昭和43)年に医師法が改正、インターン制度は廃止されました。
この後、「学生でも医師でもない」という中途半端な身分のまま、ほぼ無報酬で医療行為を行わされるということはなくなりましたが、医師法第十七条のため実習内容は主として医療の「見学」と一部の「介助」にとどまっていました。
そのため、医学生でも指導・監督下である程度の医行為が実施できるようにしてほしいとの要望が高まりました。このような状況で臨床実習中の学生が行う医行為に対して1つの指針を示したのが、1991年に厚生省から出された臨床実習検討委員会最終報告(以下、前川レポート)です。
前川レポートでは、「医学生の医行為も、その目的・手段・方法が社会通念から見て相当であり、医師の医行為と同程度の安全性が確保される程度であれば、基本的に違法性はないと解することができる。」と記されており、臨床実習で学生が行う医行為が基本的に違法性はないと解する条件として、以下の4つの条件を示しています。
①侵襲性のそれほど高くない一定のものに限られること
②医学部教育の一環として一定の要件を満たす指導医によるきめ細かな指導・監督の下に行われること
③臨床実習を行わせるに当たって事前に医学生の評価を行うこと
④患者等の同意を得て実施すること
この4条件は、歯科医師、看護師などの実習においても公的な文書として明示されています。このように、医師や歯科医師、看護師の学生は、臨床実習の違法性阻却の条件を整え、実習にて医行為を経験することができています。
理学療法士の学生の場合
理学療法士の臨床実習における4条件の整備は、2017年12月に厚生労働省から出された理学療法士・作業療法士学校養成施設カリキュラム等改善検討会報告書で初めて行われました。
この報告書には、「臨床実習において実習生が行うことのできる行為については、あらかじめ患者に同意を得た上で、臨床実習指導者の指導・監督の下、事前に養成施設と臨床実習施設において心身の侵襲性がそれほど高くないと判断した行為については行うことができる。なお、上記行為を行う場合には、臨床実習前に実習生の技術等に関して、実技試験等による評価を行い、直接患者に接するに当たり、総合的知識及び基本的技能・態度を備えていることを確認する必要がある。」という記載がありました。
要するに、理学療法士の臨床実習でも学生が行う理学療法行為が違法性はないことを証明するための条件を示してくださいね、ということになります。その条件が以下の4条件になります。
①実習生が実施できる理学療法行為の範囲(事前に養成施設と臨床実習施設において、心身の侵襲性がそれほど高くないと判断した行為)とその水準にしたがって行う
②適切な能力を有する臨床実習指導者の指導・監督の下に行う
③臨床実習前に実習生の能力と適正(総合的知識及び基本的技能・態度)を評価・認定すること
④対象者もしくは対象者の保護者の同意を得て実施することと事故補償の確認
より詳しく確認したい方は以下のリンクから日本理学療法士協会が作成している臨床実習教育の手引きを確認して頂ければと思います。
日本理学療法士協会により学生が実施可能とされた基本技術の水準
理学療法士の学生の違法性阻却の条件①にあるように、臨床実習において学生が実施可能な基本技術の水準が定められております。その水準については日本理学療法士協会が作成しており、以下のリンクで確認することができます。
日本理学療法士協会:臨床実習において学生が実施可能な基本技術の水準について
理学療法士の臨床実習ではこの水準を指針として、各養成校と実習施設との間で学生が実施可能な基本技術を作成したうえで臨床実習を行うことが望まれます。
水準Iは、指導者の直接監視下で学生により実施されるべき項目であり、直接監視下であれば、学生が実践可能な行為となります。
水準IIは、指導者の補助として実施されるべき項目および状態であります。
水準IIIは、学生にとってはやや高度な技術(スキル)やリスク管理が要求される行為でありますが、見学に終始するのではなく「何かを手伝いながら経験する」という項目となります。
例えば脱臼の危険が高い右人工股関節置換術(total hip arthroplasty:THA)後の介入であれば、右股関節の運動に関しては水準IIIということで見学にとどめるべきですが、上肢や左下肢の運動に関しては、水準Iもしくは水準IIに当てはまると思いますので理学療法行為の実施が可能になります。
まとめ
最後までお読み頂きありがとうございます!
この記事では、2022年現在の医療職種の臨床実習の在り方と理学療法士の実習生が行ってもよい理学療法行為について解説させて頂きました!
現在、新型コロナウイルスの影響もあり、いままで通り実習生を受け入れている施設もあれば、制限あるいは受け入れを中止している施設もあるかと思います!
ここ近年で理学療法士の実習生の受け入れ方については大きく変わりましたよね!実習中の時間内に診療の経験からレポートやレジュメの作成まで完結するように養成校からお願いされることが多いのではないでしょうか?
実習の方法としても、1人担当をもってその1人に対してケースレポートを作る従来型から、指導者と臨床を回りながら学習する診療参加型臨床実習(クリニカルクラークシップ)へと移行してきているかと思います。
個人的には、いい方向性で臨床実習が変わりつつあると感じております。私が実習生だった時には、デイリーレポートの作成も義務付けられていましたが家に帰ってから、デイリーレポート、ケースレポート、レジュメとそれぞれを行うというのはなかなか大変でした。寝不足にもなりますし、その状況で患者様に理学療法行為を行うのってそもそも失礼ですし、安全性にも問題ありますよね。
理学療法士として働き始めてからも実習生を何人も担当してきましたが、単なる作業(作らないといけないから作成した)として作成したデイリーレポートって見る方も大変です。デイリーレポートを見る時間があったら、一緒に診療を行い、現場でしか気づけないことを教えてあげた方がいいと思っていました。そのため、こういった臨床実習の方法的な要素のアップデートは嬉しく思っています。
今回は、法律的な要素も組み込まれ少し複雑である臨床実習に関することをまとめさせて頂きました。実習生を適切に教育して、次世代の理学療法士を育てるといったところも私たちの大切な仕事になると思います。私たちに求められていることを捉え、臨床実習に活かしていきましょう!

参考文献
- 長谷川 真人,横田 一彦.診療参加型臨床実習の実践.理学療法ジャーナル.54巻,3号,p.331-336.
- 吉田素文.診療参加型臨床実習(クリニカル・クラークシップ)の現状.日本内科学会雑誌 .第96巻,第12号,p17-22.
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