【痙縮の定義と病態を解説】明日から臨床で使用できる痙縮の評価方法

病態理解を深める
リハビリくん
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こんにちは! リハビリくんです!

 

今回は痙縮の病態と評価について解説させて頂きます!筆者は慢性期病院で勤務しているのですが痙縮には非常に悩まされることが多いです。

 

「痙縮」ってとても厄介ですよね?関節可動域制限が進行し、拘縮をつくる要因となりますし、当然ADL低下にも繋がります。また、痙縮の程度が強いと、骨盤が捻れ、股関節膝関節に屈曲拘縮が呈すこともあります。

 

そうするとベッド上では臀部や踵等の骨突出部に局所圧が集中し褥瘡が発生することもあります。これらのことから、痙縮の存在は生命予後に関わるものだと感じながら働いております。

 

痙縮についての悩みをお話しさせて頂きましたが、痙縮ってメカニズムも複雑なんですよね。痙縮は、定義・病態いずれも不明瞭な点が多く、今までに様々な仮説が立てられてきました。

 

しかし、痙縮に立ち向かうためには、まずは痙縮に対する理解を深めることが重要だと思いますので今回は痙縮のことがわかるように解説させて頂きます!


リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です

現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!

  

主な取得資格は以下の通りになります

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級


「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!

  

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痙縮の定義について

痙縮は上位運動ニューロン症候群の陽性徴候の1つであるが、実際には痙縮の言葉の定義は狭義から広義にわたります。

広く知られている1980年のLance の定義では「腱反射亢進を伴う緊張性伸張反射の速度依存性亢進を特徴とする運動障害」とされています。ここで表現している「腱反射亢進」という言葉は、最も知れ渡ってしまった誤称とされています。

腱はハンマーで叩く部位にすぎず、腱への刺激によって筋が伸び、筋紡錘が引っ張られることで反射が開始します。「緊張性伸張反射の速度依存性亢進としての筋緊張は、検者が関節を受動的に動かし、感じる抵抗によって評価されます。ゆっくりとした受動運動では抵抗は少なく、速度が速くなると抵抗が大きくなります。

この反応は、健常人でも筋の伸張の速度が相当速ければ生じます。しかし上位運動ニューロン症候群では、緊張性伸張反射が生じる閾値が低くなり、伸張速度を増加させることでさらに抵抗が強くなることが特徴となります。

後に、Lance は痙縮について「緊張性伸張反射の速度依存性亢進」が主、「腱反射亢進」が副であると考えを述べています。その考えに至ったのは、パーキンソン病では腱反射は亢進しませんが、緊張性伸張反射が亢進しているためです。

しかしKottkeは、痙縮は相動性伸張反射の亢進であり、固縮が緊張性伸張反射の亢進と述べています。

また、Nathan の定義では、伸張反射が低閾値で腱反射が亢進し、クローヌスが起こりやすい状態を示しております。

一方で広義な定義では、上位運動ニューロン症候群の陽性徴候のいずれもが「痙縮」と表現されることもあります。上位運動ニューロン症候群における運動障害は、主に3つに分けて考えることができます。その3つは、陽性徴候、陰性徴候、非神経性の変化です。

陽性徴候として、(狭義の)痙縮、屈筋反射の亢進、痙性姿勢異常、病的共同運動、病的同時収縮を挙げることができます。

陰性徴候として、巧緻性の低下、筋力低下、運動麻痺が認められます。運動麻痺による筋の不動によって、筋硬直・拘縮・線維化・萎縮など、いわゆる非神経性の変化が生じ筋の粘弾性が高まります。

陽性徴候としての痙縮に加えて、筋の粘弾性が高まることは、痙縮をもたらすもう1つの要因となります。

痙縮の病態について

このように痙縮の病態について考える際、その病態が完全に解明されていないことを念頭に置く必要があります。脊髄反射や伸張反射の神経生理機構を示したうえで、Nathanの定義に沿って解説していきます。

脊髄反射

筋・関節・皮膚の各種受容器からの感覚は、神経内の電気の信号(インパルス)として脊髄に入ります。それが脊髄の神経機構を介して、様々な筋の運動ニューロンを促通もしくは抑制します。これを脊髄反射と呼びます。

γ運動線維

筋紡錘には2~12本の錘内筋線維があり、錘内筋線維は核袋線維と核鎖線維の2種類に分類されます。核袋線維はさらに動的核袋線維と静的核袋線維に分けられます。

舗内筋線維に終始する感覚神経であるIa群線維とII群線維のうち、 Ia群線維は核袋繊維と核鎖線維の両方に終止し、その終末は一次終末といいます。II群線維は主に核鎖線維に終止し、その終末は二次終末といいます。筋が一定の速度で伸張すると一次終末と二次終末いずれも発射します。

これを静的反応と呼び、このとき筋の長さの情報が伝えられます。一方、筋を一過性に伸張すると主に一次終末が発射します。これを動的反応と呼び、このとき筋長の変化する速さの情報が伝えられます。

γ運動線維は、動的γ運動線維と静的γ運動線維に分けられます。動的γ運動線維は動的核袋線維に終止し、筋紡錘の動的反応を調節します。静的γ運動線維は静的核袋線維と核鎖線維に終止し、筋紡鍾の静的反応を調節します。

運動の種類に応じて(座位・立位・歩行・走る:運動の激しさによる)どちらの運動線維が興奮するのかは異なります。

伸張反射について

骨格筋において筋紡は筋の長さをモニターしています。筋肉が伸展されると、筋紡錘からIa群線維が発火し、後根神経節を中継して、先ほど伸展された筋(同名筋)を支配するα運動ニューロンに興奮を及ぼします。

こうして同名筋が収縮することとなり、筋長は一定に維持されます。これを伸張反射といいます。

筋の伸張時には、核袋線維と核鎖線維の両方に終止している一次終末が発射して、動的反応が起こります。また動的核袋線維に終止する動的運動線維が動的反応を調節します。

このときに起こるのが相動性伸張反射です。筋の伸張が維持されている際には、一次終末と二次終末が両方発射して、静的反応が起こります。

また静的核袋線維と核鎖線維に終止する静的γ運動線維が静的反応を調節します。このときに起こるのが緊張性伸張反射となります。

痙縮のメカニズム

伸張反射が低閾値となるメカニズムとして、筋紡錘からの入力は正常であるが反射回路の制御に支障をきたしていること(下行性ニューロンのインバランス)と、そもそも筋紡錘から脊髄に過剰な入力がなされていること(α-γ連関の異常)が考えられてきました。

現時点では、後者は微小神経電図の結果から否定的とされているため、前者のメカニズムの方が妥当だと考えられていますが両者について解説します。

下行性ニューロンのインバランスについて

痙縮は錐体路の障害とされる一方、純粋な錐体路の障害では痙縮が生じないことが報告されています。脊髄下行路には錐体路、つまり皮質脊髄路以外に皮質-網様体-脊髄路や皮質-赤核-脊髄路、前庭脊髄路などがあり、このうち網様体脊髄路や前庭脊髄路が脊髄の伸張反射を調整することで痙縮に関与していると考えられています。

橋網様体由来の網様体脊髄路は伸張反射に対して興奮性に、延髄網様体由来の網様体脊髄路は伸張反射に対して抑制性に出力を送ります。

前庭脊髄路には、外側前庭脊髄路と内側前庭脊髄路があります。外側前庭脊髄路はすべて興奮性で、同側の頚髄・胸髄・腰髄に終わる内側前庭脊髄路は興奮性と抑制性があり、両側性に下行してほぼ頚髄で終わります。このような経路が痙縮に関わると考えられています。

α-γ連関について

運動指令はα運動ニューロンにも錘内筋を支配するγ運動ニューロンにも伝達されます。γ運動線維はα運動線維よりも伝導速度がはるかに遅いのが特徴になります。

速度の速いα運動ニューロンによって筋肉は収縮します。遅れてきたγ運動ニューロンからの運動指令は筋紡錘の錘内筋線維を収縮させ、その収縮がIa群線維に伝わり同名筋を支配するα運動ニューロンに興奮を及ぼします。

つまり伸張反射と同じ経路を辿ることになります。そうすることで、筋肉が収縮した状態でも、筋紡錘は感度を保つことが可能となり、伸張反射は絶えず変化し続ける筋長と負荷を補償します。γ運動ニューロンが興奮すると、筋紡錘の錘内筋線維が収縮し、筋紡錘の感度が上昇します。そうすると伸張反射が起こりやすくなり、筋緊張が亢進することになります。

しかし、この機序は微小神経電図から否定されているため、上述した下行性ニューロンのインバランスによって痙縮が成り立っていると考えた方が妥当だと考えられます。

痙縮の評価法について

痙縮の評価法について、臨床的なものについて解説していきます。

modified Ashworth Scale(MAS)

痙縮の臨床的評価法としては、MASが広く使用されています。恐らくリハビリテーション専門職であれば養成校でも誰もが学習してきていると思います。

こちらは、1964年にAshworthが考案した半定量的な5段階の評価方法(Ashworth Scale)を、1987年にBohannonとSmithが6段階に変更した(modified Ashworth Scale)ものになっています。徒手による関節の他動運動の抵抗量を段階付けする評価となっております。

modified Ashworth Scale(MAS)

modified Tardieu Scale(MTS)

MTSはMASと同様に他動的に関節を屈曲・伸展させる手技により痙縮を評価します。1954年にTardieu Scaleとして報告された後、1969年に修正が加えられ1999年に再度修正が加えられました。

MTSは測定肢位と筋の伸張速度が規定されており、関節可動域と筋の反応の質をそれぞれ測定します。

modified Tardieu Scale(MTS)

Tone Assessment Scale

Tone Assessment Scaleは、MASを測定する際の姿勢などが定められていない経緯から、信頼性の高い測定方法を目指して作成された評価法となっています。それぞれの関節において評価方法が定められているのが特徴です。

その他の臨床的な指標

痙縮を含めた筋緊張の評価項目は、Fugl-Mey-er Assessmentや Stroke Impairment Assess-ment Setなどの総合評価指標に含まれています。

まとめ

最後までお読み頂いてありがとうございます!

この記事では、痙縮の病態と評価方法について解説させて頂きました!

痙縮についてまとめさせて頂くと、痙縮とは、伸張反射が低閾値で腱反射が亢進しており、クローヌスが起こりやすい状態を示しております。そのような状態を呈するのは、筋紡錘からの入力は正常ですが、反射回路の制御に支障をきたしているためです。

しかしながら、痙縮についてはその病態が完全に解明されていないため、上位運動ニューロン症候群に付随する症候をまとめて「痙縮」と表現することもありますし、それも間違ってはいないと思います。

冒頭で説明したように、痙縮というものは厄介な症状であり、身体機能およびADLの低下、生命予後に関わる症状であると考えます。痙縮がみられる患者様や利用者様に、痙縮の知識が不足したまま漠然とリハビリテーションを行っていても十分な治療効果が出ないかもしれません。

経験談ですが、患者様や利用者様もご自身の痙縮の症状に悩まれているケースが多い印象があります。そのような時には専門性を活かした確かな知識で、優しく丁寧な説明が必要になるはずです。痙縮に対する理解を深め、適切な支援ができるようにしていきましょう!

痙縮を理解するうえで筋緊張における基本的知識は欠かすことができないと考えられます。このテーマについては、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【筋緊張低下と筋力低下と支持性低下の違いについての記事はこちらから

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参考文献

  1. 長谷公隆.痙縮の病態生理.バイオメカニズム学会誌.2018,Vol. 42,No.4,p199-204.
  2. 武田湖太郎.痙縮の評価法 : 徒手的手法と生体工学的手法.バイオメカニズム学会誌.2018,Vol. 42,No.4,p211-218.
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