
こんにちは!リハビリくんです!
今回は、認知症に対しコグニサイズを活用したリハビリテーションについて解説させて頂きます!
認知症というのは本当に厄介な病態であり、認知症に対する特効薬は未だ見つかっておりません。かといって、認知症高齢者が増え続けることが予想されている日本では、認知症対策は急務であり、その中の1つに認知症をどのように予防していくのかということを挙げることができます。
習慣的な身体活動の向上によって認知機能の維持・改善が期待されていますが、認知機能の衰えが疑われる高齢者では、単純な運動課題のみによって脳活動の活性化を促すことは容易ではありません。効果的に脳活動を活性化させるためには、認知課題を負荷しながら有酸素運動などを行うことが重要ということが分かってきており、その1つの方法としてコグニサイズ(cognicise)を推奨することができます。
コグニサイズとは、cognition(認知)とexercise(運動)を掛け合わせた造語であり、認知機能低下の抑制を目指した運動プログラムとなります。同時に課せられる運動課題と認知課題のどちらに対しても注意を向けながら課題を遂行することが求められ、認知機能の低下を抑制する運動介入手段の1つとして、その予防効果が期待されています。

【簡単に自己紹介】
埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です
現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!
主な取得資格は以下の通りになります
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!
3学会合同呼吸療法認定士/認知症ケア専門士/透析技術認定士/糖尿病療養指導士/終末期ケア専門士等の医療系資格の勉強はアステッキをご利用するのも良いと思います。独自のeラーニング講座と専用アプリが搭載されており、隙間時間に学習を進めることができます!
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運動による認知症予防の可能性

認知症の危険因子として、糖尿病・高血圧・肥満・喫煙・うつなどの生活習慣にかかわる要因が報告されています。なかでも身体活動の不足がアルツハイマー型認知症の発症に強く関連するとされています。
つまり、身体活動を向上させて活動的なライフスタイルを確立することは、認知症の予防のために重要な要因であり、定期的な運動習慣を有する高齢者では、将来の認知症発症のリスクが軽減されることが示されています。
さらに、高齢者を対象に有酸素運動や筋力トレーニングを行うことによって、認知機能の改善や脳容量の増大効果が得られると報告されています。このことから、積極的な運動の実施によって認知症の発症予防や遅延に繋がることが期待されています。
一方、運動の介入によって脳機能の改善や脳の器質変化への効果は確認されていますが、認知症の発症を予防もしくは遅延できたとする効果を明らかにするまでには至っておりません。
現状言えることとしては、脳機能を維持しておくことが、将来の認知症発症の予防や発症遅延に対して良好な影響をもたらすことが期待されており、その手段として運動をはじめとした身体活動の促進が有効となり得るとされています。
上述したアルツハイマー型認知症については、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【アルツハイマー病の原因と症状についての記事はこちらから】
運動のプログラム内容について
運動による習慣的な身体活動の向上には、認知機能の維持・改善に対する効果が期待されています。
しかし、認知機能の衰えが疑われる高齢者の脳賦活促進を目標にするのであれば、単純な運動課題で脳活動の活性化を促すことは難しいと考えられます。
認知機能の維持・改善に対して効果的な運動介入を実践するためには、筋力トレーニングおよび柔軟運動・有酸素運動・脳賦活を促進する運動・行動変容技法などを効率的に組み合わせたプログラム全体の構成を熟慮する必要があります。

特に、認知課題を負荷しながら(二重課題、多重課題)の有酸素運動などによって、より効率的に脳の活性化をはかることが期待できます。
その1つの方法として、有酸素運動課題に脳活性を促す認知課題を同時に負荷するコグニサイズ(cognicise)を導入することが勧められています。
コグニサイズ(脳賦活運動)の実践
コグニサイズは、国立長寿医療研究センターが発し、推奨する認知機能低下の抑制を目指した運動プログラムで、cognition(認知)とexercise(運動)を掛け合わせた造語になります。
同時に課せられる運動課題と認知課題のどちらに対しても、同程度の注意を向けながら課題を遂行することが求められます。
運動課題
運動課題では、主に全身を使うことを意識した有酸素運動が推奨されます。例えば、足踏みしながらタイミングに合わせて上肢を使って手を叩くような全身運動、ステップ台を用いた昇降運動などが当てはまります。
認知課題

コグニサイズでは、上述した運動課題を実施しつつ、認知課題を同時に遂行します。
認知課題としては、数字を逆から数えたり(100、99、98⋯)計算課題(2+3は?)や言語課題(しりとり、「か」から始まる単語を教えてください)のような比較的容易な認知負荷を付加した課題から開始します。
その後、徐々に難易度を高度(100から順に3ずつ引いていってください、歩数を数えながら歩いて、歩数が「4の倍数」の時に手を叩いてください)にすることで、認知機能への負荷と刺激が高まります。
運動課題と認知課題を同時に負荷するコグニサイズでは、認知課題に慣れてしまうと脳への刺激が低減してしまいます。
そのため、課題に慣れてきたら新たな課題に次々と移行していくことが重要です。コグニサイズでは、その課題自体を上手に遂行できるようになることが目的ではなく、身体および脳のいずれにも適度な負荷を与えて、最大の刺激を得ることが狙いとなります。
そのため、運動課題と認知課題を同時に課されることで、少し認知課題を間違えたり、運動課題への注意や集中を求められる状況を作ることが、より効果的と考えられます。
しかしながら、課題を難しくしすぎて過大なストレスを与えてしまうと負の影響を与えてしまう可能性もありますし、運動課題に注意が働かず転倒に繋がることもあるかもしれません。
そのため、達成感を味わいながら興味を持続できることも重要であり、運動および認知課題においての適度な課題選択をする工夫も必要になります。
コグニサイズの詳細なプログラムについては、国立長寿医療研究センターのホームページで、コグニサイズ専用の資料を見ることができるようになっています。大変わかりやすく、明日からの臨床に活かせるようになってますので是非ご活用ください。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事ではコグニサイズについてまとめさせて頂きました!
日本は今後も暫くの間、認知症高齢者が増え続けることが予想されています。認知症対策は急務であり、認知症の予防という観点からコグニサイズに期待が向けられています。
私見にはなりますが、コグニサイズはゲーム性があり、楽しく運動に取り組めるところがすごく良いところだと感じております。
実際に、私も臨床でコグニサイズをプログラムに取り入れて実行していますが、運動課題と認知課題の難易度を対象者に丁度良く合わせることで、程良く失敗してくれたりして、プログラム中に笑顔をみせてくれる方もいらっしゃいます。
運動課題と認知課題の組み合わせはいくらでもありますので、運動課題も認知課題も初めは簡単なものから設定して、徐々に難易度を上げていくことでリハビリを受ける方も、飽きを感じずリハビリテーションを実施することができます。
一方、失敗する程度が丁度いいとは思いますが、やはり人それぞれ個性があると思いますので、あまり難しい課題であると嫌になってしまう方もいると思います。事前にコグニサイズの目的と方法を説明したり、実施後のフィードバックを行うことで理解してもらうことも重要かもしれません!
今回、コグニサイズについて解説させて頂きましたが、全ての基本となる認知症に対するケア技法については、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【認知症の人の心をつかむケア技法についての記事はこちらから】