
こんにちは! リハビリくんです!
今回は誤嚥や窒息への対策の重要性について解説させて頂きます!
不慮の窒息って本当に怖いですよね。前日までいつもの様子でリハビリを行っていた患者様が、翌日出勤してみたら窒息で永眠していたという経験が何度もあります。
窒息は予期しにくいところがあり、安定していたはずの人が訪室してみたら窒息していたということが経験上多くあります。そういった場合、私も当然ショックを受けますが、恐らくその場に居合わせた看護師や介護士は、私とは比較できないくらい強い衝撃を受けていると思われます。
不慮の窒息に遭遇した時、その時どのような対応ができるかによって、後の気持ちが大きく異なると考えられます。そこで今回、窒息と誤嚥への対応についてまとめていきたいと思います。

【簡単に自己紹介】
埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です
現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!
主な取得資格は以下の通りになります
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!
3学会合同呼吸療法認定士/認知症ケア専門士/透析技術認定士/糖尿病療養指導士/終末期ケア専門士等の医療系資格の勉強はアステッキをご利用するのも良いと思います。独自のeラーニング講座と専用アプリが搭載されており、隙間時間に学習を進めることができます!
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呼吸ケアにおいて誤嚥や窒息に対するアプローチは重要
近年、呼吸ケアや嚥下障害に対する啓発が進み、包括的呼吸リハビリテーション、摂食嚥下リハビリテーションが広まりつつあります。
しかし、呼吸ケアは急性期を中心としたアプローチにとどまることも多く、誤嚥や窒息に対して十分な評価治療が行われない状態が続いてきました。
現在、平均寿命が延び、複数の疾患とともに長い人生を過ごすことが当たり前となる時代となっております。
そんななかで、加齢に加え様々な原因での摂食嚥下障害が認められることから、誤嚥性肺炎を罹患する患者や、窒息に至るケースが多くなっています。これらの対応は在宅を含め、急性期から終末期までのすべての時期で重要となります。
高齢者の不慮の事故
高齢者の不慮の事故について件数が多いものから挙げると「誤嚥などの不慮の窒息」「転倒・転落」「不慮の溺死および溺水」「交通事故」「自然災害」「火災」となります。
不慮の事故は前期高齢者から増え始め、後期高齢者になると加齢とともに急速に増加します。その内訳に注目すると、誤嚥などの不慮の窒息が最も多く確認されるものの、人口当たりの発生率をみると誤嚥などの不慮の窒息は減少しています。
この件については、誤嚥および摂食嚥下に関しての注目が集まり嚥下食や摂食下リハビリテーション、口腔ケアなどの啓発によりもたらされた結果であると考えられます。しかしながら誤嚥などの不慮の窒息事故の総数は依然多い状態が続いているため、更なる対策は必要となります。
事故数 2位となった転倒・転落についてですが、こちらのテーマについては、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【入院患者の転倒予防策についての記事はこちらから】【在宅で生活する高齢者の転倒予防策についての記事はこちらから】

肺炎の種類について
肺炎は以下の3つに区分することができます。
- 市中肺炎(CAP):病院外で日常生活をしている人に発症する肺炎
- 医療介護関連肺炎(NHCAP):入院48時間以上経過した患者に新たに出現した肺炎
- 院内肺炎(HAP):医療ケアや介護を受けている人に発症する肺炎。下記の項目を1つ以上満たす
- 療養病棟に入院もしくは介護施設に入所している
- 90日以内に病院を退院した
- 介護を必要とする高齢者、身体障害者である
- 通院で断続的に血管内治療(透析、抗菌薬、化学療法、免疫 抑制薬等)を受けている

平成8年の厚生省長寿科学統合研究事業によると70歳以上の高齢者の肺炎の80.1%が誤嚥性肺炎とされています。
CAPにおいては肺炎球菌やインフルエンザ菌が多く、耐性菌も少なく死亡率も低いことが多いのに対して、HAPはMRSAや縁膿菌に代表される耐性化の可能性が高いグラム陰性菌であることも多く、死亡率も高いとされています。
NHCAPが対象とする集団は、老人保健施設や在宅介護、長期療養型病床に入院している患者となります。当然、高齢の方が多く、基礎疾患を複数持ち合わせる患者も含まれるため、予後の延長だけでなく、苦痛の緩和も治療の重要な目的とされます。
肺炎については、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【高齢者の肺炎の特徴と分類についての記事はこちらから】
誤嚥性肺疾患の病態での4区分
誤嚥性肺炎
食事時の誤嚥、食事時以外の唾液の誤嚥、夜間の逆流性誤嚥を繰り返すことにより発症します。6割は発熱を伴い急性の経過を伴うが、4割は比較的慢性の経過を伴います。
逆流性誤嚥性肺炎(メンデルソン症候群)
元々は妊婦の麻酔中に発生する誤嚥性肺炎を指していました。消化管の運動不全、手術後の症例に多く確認され、胃液・胆汁などの強陵性消化液を逆流性に誤嚥し、急速に重症の呼吸不全をきたします。
間質性肺炎や急性肺障害をきたすことも多く、「急速に回復するもの」「急性呼吸促追症候群の進行を伴うもの」「細菌の重複感染をきたすもの」以上3パターンいずれかの経過をわたり全体的な致死率は30~50%となります。
症状出現するには、pH3未満の液体が比較的大量に吸い込まれる必要があるといわれ、急性の呼吸困難、頻呼吸、頻脈、チアノーゼ、気管支痙縮、発熱、しばしばビンク色の泡状の痰をきたします。胃酸の刺激が強い折には胃酸抑制薬や消化管運動賦活薬が使用されます。
人工呼吸器関連肺炎(VAP)
気管内挿管による人工呼吸導後48時間以降に発症する肺炎で、発症率は9〜24%となります。
気管切開もしくは気管内揮管の状況下においては気道内への口腔内残渣、睡液などの誤嚥は必発で、睡液・口腔内汚染物の誤嚥によりきたされ、両側、背側に多く発生、口腔ケアの有効性が特に高い病態となります。
びまん性誤嚥性細気管支炎(DAB)
食事時の小量誤嚥、食事時外の睡液の誤嚥、夜間の逆流性誤嚥を繰り返すことにより広範囲の肺に細気管支炎像をきたします。
びまん性に呼吸細気管支領城中心に異物巨細胞を伴う炎症性細胞浸潤を認める細気管支炎であり、その発生率は、全剖検例の0.6~1.0%、誤嚥性肺疾患の剖検のうち16~21%とされます。
多くは発熱・明確な痰・咳嗽の増悪の自覚がなく慢性の経過を示しますが、体調の悪化、誤嚥物の増加により誤嚥性肺炎へ移行することもあります。
誤嚥性発熱の2形態
誤嚥性発熱は「一過性誤嚥性発熱」と「感染性発熱」に分類することができます。
全身状態の低下、繰り返し継続することで発熱が明らかにならないこともありますが、誤嚥の多くは発熱を伴います。
誤嚥物の直接的な刺激による一時的な発熱と、誤嚥を繰り返すことによりもたらされる感染性の発熱があり、一過性誤嚥性発熱はクーリングでの経過観察で多くは改善しますが、繰り返す折には食事内容や環境の設定が必要になります。
感染性発熱においては早期に短期間、適切な抗菌薬を投与することが推奨されます。
窒息の病態について
窒息を起こす条件
窒息は嚥下障害の増悪に伴い、リスクが上がるものと理解されていることが多いと思います。自然
な死の進行における終末期の窒息において多くはその経過を辿ります。
しかし、軽度の嚥下障害や明らかな嚥下障害が認められない方においての身体衰弱や呼吸器疾患、環境の変化に伴う興奮状態、認知症状の増悪により、食事が進むにつれて呼吸や食事のパターンの異常により窒息をきたすことも多く、臨床上問題の多い突然死の原因となります。
窒息を導く因子としては、認知機能の低下、食事の自立度の低下、白歯部咬合の喪失が挙げられます。
一般的な窒息を防ぐポイントとしては、直径15mmで窒息の危険性は高まり、直径10mmで窒息の危険性はないとの報告もあります。
窒息を起こす環境
窒息物は、薬剤やそれらを包むシート、袋などの食物以外が52.5%と多くみられます。そのため、処方薬形や分包方法の工夫による改善が可能だと考えられます。他には、患者や利用者にシートや袋の状態で薬剤を提供するのをやめ、スタッフが薬剤を口の中に直接いれるという取り組みも効果的です。
窒息による救急搬送は昼食・夕食時間に集中し、死亡者は夕食・昼食・朝食の順に多くみられます。こういったデータから、夕食時のスタッフの人員を1人増やすような取り組みも効果的だと考えられます。
窒息した場合の経時的変化

低酸素状態に陥った後、中枢神経の機能維持可能とされる時間は大脳においては8分間とされています。1秒でも早く気道を確保し呼吸を再開させることが望まれます。
誤嚥窒息の対処方法
臨床現場での実際
実際に誤嚥による窒息を起こした時に医療機関で行われる手技は、吸引、異物除去、背たたき、呼吸介助、ハイムリックなどが基本となると思います。
あるアンケート結果では、何もできなかった方が20%ほど確認されており、それらの患者は全員死亡しております。何もできなかったスタッフ全員が「患者さんに申し訳なかった」「家族の方に申し訳なかった」とそのつらい気持ちを今でも持ち続けています。
窒息を起こした時、間違いなく現場はパニック状態になると思われます。パニック状態での現場において、瞬時に対応し、その結果へのストレスを抱え込まないようにするには、多人数で複数の手段を用い迅速に対応し十分なことを行ったと自覚できることが重要になるかと思います。
実際の対応方法
掻き出す
窒息の原因物を直接、指や道具を使って取り除きます。実際の臨床現場では、軽度の窒息に対しては、ほとんどの場合掻き出すことで改善します。誤嚥物を押し込まないコツが必要になります。
吸い出す・吸引する
通常の吸引処置と異なり、高い吸引圧で様々な器具を使って吸い出します。
その他の方法
押し出す、背たたき法、背部叩打法、胸部圧迫法、ハイムリック法、軸捻法などがあります。これらの施療による改善の後、呼気・呼吸介助による異物排出を行います。
まとめ
最後までお読み頂きありがとうございます!
この記事では誤嚥や窒息への対策の重要性についてまとめさせて頂きました。
誤嚥は、病態異常に伴う変化においても出現しますが、病態の自然経過および老化においても出現する症状となります。
そのため、誤嚥による不慮の窒息事故は、いつ誰に発生するのか予測仕切ることは難しいです。高齢者だけではなく、若い人が窒息により突然死するニュースを目にすることがあるくらいです。
誤嚥や窒息を防ぐためには、摂食嚥下能力の評価も重要になります。様々な評価方法がありますが、このテーマについては、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【反復唾液嚥下テスト(RSST)についての記事はこちらから】【嚥下障害におけるスクリーニングテストについての記事はこちらから】

参考文献
- 鈴木隆雄.高齢者の事故予防.日本セーフティプロモーション学会誌.Vol.11(2),2018,p13-19.
- 塚谷才明,小林沙織,平岡恵子,田中妙子,金原 寛子,南田菜穂,山本美穂,酒井尚美.急性期病院での食事による窒息事例の検討.日摂食嚥下リハ会誌.21(2),p99–105,2017.