
こんにちは!リハビリくんです!
慢性腎臓病の患者様に対するリハビリテーションについてですが、以前は「あまり推奨されていない」みたいな空気感があり、積極的にリハを行っていなかったのではないかと思います。
その後、ここ近年で腎臓リハビリテーションという言葉が話題になるようになって、やっぱりリハビリテーションを行った方が患者様のためにも良いのではないか?という意見も多くなってきています。
実際に臨床でも、慢性腎臓病を抱える患者様や透析治療を行っている患者様のリハビリテーションを経験する機会が随分増えたのではないでしょうか?
しかしながら、腎臓リハビリテーションにおけるエビデンスは不十分であり、どのようなリスク管理に留意するべきなのか、リハのプログラム・負荷量はどうするべきなのか、わからないことも多いかと思います。
そこで今回こちらの記事で、最近の腎臓リハビリテーションに対する考え方の変化および実施における注意点について解説していきたいと思います!

【簡単に自己紹介】
埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です
現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!
主な取得資格は以下の通りになります
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!
3学会合同呼吸療法認定士/認知症ケア専門士/透析技術認定士/糖尿病療養指導士/終末期ケア専門士等の医療系資格の勉強はアステッキをご利用するのも良いと思います。独自のeラーニング講座と専用アプリが搭載されており、隙間時間に学習を進めることができます!
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慢性腎臓病に対するリハビリテーションの歴史

かつて慢性腎臓病(chronickidneyisse:CKD)患者の身体活動は、運動により腎血流量や糸球体濾過量(glomerularfilttiate:GFR)の低下が生じることから安静や運動制限がとられてきました。
しかし2009年1月には身体活動の低下は心血管疾患による死亡リスクになるとして、CKD患者への運動制限の可否を見直されました。
2011年に日本腎臓リハビリテーション学会が発足し、腎臓リハビリテーションの実施にあたっては多職種との連携体制をとり、運動療法に加えてさまざまな生活指導を実践していくことの重要性が示されています。
今では腎臓リハビリテーションは必要不可欠なものとして再認識されつつあります。
CKD患者に対する適切な運動強度について
CKD患者において、嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold:AT)レベルの運動強度では、GFRは不変であるのに対し、ATの1.3倍の運動強度を行った際には腎組織重症度が高いほどGFRは低下すると報告されています。つまり高強度の運動は避けて、特にCKDの重症度が高い患者には過負荷のリスクに注意しなければなりません。

運動療法の標準的なメニューは週3〜5回、1回20〜60分の歩行やエルゴメータ運動が推奨されます。負荷量は中等度、あるいはボルグ指数12〜13(ややきつい)を指標として処方します。さらにレジスタンス運動や柔軟体操を主運動に追加して実施することが望ましいとされています。
透析患者にも運動は効果的なのか?
透析患者への運動療法の禁忌は「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2021年改訂版)」を適用しています。
2021 年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関する ガイドライン
つまり心臓リハビリテーションと同様に、自覚症状を伴う重度の大動脈弁狭窄症やコントロール不良な心不全は絶対禁忌となっております。
大動脈弁狭窄症の場合は、経カテーテル大動脈弁置換術や外科的大動脈弁置換術後には心臓リハビリテーションとして再開ができる可能性はあります。
相対的禁忌としては、重度高血圧(収縮期200mmHg、収縮期110mmHg以上)や電解質異常、左冠動脈主幹部病変などが該当します。
このあたりに関しては、主治医と連携し、その患者様に適した中止基準を定め、心電図や血圧のモニタリングを行いながら運動療法が実施可能するべきだと考えます。
透析患者では、体力指標である最高酸素摂取量(peakVO2)が同齢の70%と著明に低下しております。この値は運動を実施しないとさらに低下してしまいます。
一方、3〜10か月の運動療法を継続するとpeak VO2は25%も向上するというデータがあります。また、1週あたりの運動回数が多いほど生命予後がよく、そのほかにも除脂肪体重の増加や大腿四頭筋容量の増加、膝伸展力の向上など多くの有益な効果を認めています。
このような研究結果から、あまりに重度な状態(自覚症状を伴う重度の大動脈弁狭窄症やコントロール不良な心不全を呈する)では運動の適応になりませんが、基本的には透析をしている患者様に対してもリハビリテーションを処方するべきと言えると考えます。
透析患者特有の症状として、透析直前では体液量の増加に伴い息切れや呼吸困難感を呈する場合があります。また、透析直後には血圧低下や倦怠感などにより転倒リスクが高まります。そういった特有の症状をしっかりと押さえておくことも重要になります。
近年では透析中にも運動療法の実施が推奨されています。今後も腎臓リハビリテーションの進展をチェックしていきましょう。
疾患に対するリスク管理と理解しておくべき情報について

CKDの重症度が進行した症例では、尿毒症、呼吸困難、腎性貧血によるめまい症状を呈する可能性があります。
また、腎臓リハビリテーション実施中に腎機能が急激に悪化して上記のような症状が出現するようであれば運動療法を中止し、主治医と介入方法を協議する必要があります。
厚生労働省は2016年に、日本糖尿病対策推進会議とともに、糖尿病腎症から透析治療に移行する患者を減らすために、「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定しています。
プログラムの狙いは、糖尿病腎症が進行するリスクの高い患者を早期にみつけだし、適切な治療を行い重症化を予防することとなっております。
2018年には「高度腎機能障害患者指導加算」として、推定GFR45mL/分/1.73m2未満へと対象者が拡大されました。
こちらの制限の緩和については、従来は運動を制限した病期群であるため、強度の調整は十分に検討する必要があると考えられます。
また、糖尿病網膜症の増殖期や眼底出血直後には運動を制限すべきであり、そのほかにも末梢神経障害の有無や心血管リスクの存在に十分に留意して腎臓リハビリテーションを進める必要があるでしょう。
糸球体腎炎やネフローゼ症候群においても、従来は運動の制限が推奨されてきたが、そのエビデンスは十分ではなく、「腎臓リハビリテーションガイドライン」では「運動制限を行わないことを提案する」と記載されました。
一方で運動処方や高強度の運動負荷が与える影響についても明らかではなく、運動の程度には個別的な検討が必要であると考えられます。
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まとめ
最後までお読み頂いてありがとうございます!
この記事では、ここ近年で注目されている腎臓リハビリテーションについて、解説させて頂きました。
腎臓リハビリテーションに対する考え方については、ここ近年で大きく見直されてきている項目だと思います。そのため最新情報を取り入れつつ、確かなリハビリテーションを提供していくことが重要です。
医療機関に従事している方は、覚えがある方も多いと思うのですが、入院の原因となる主病名とは別に慢性腎不全を合併している患者様は非常に多いですよね。特に高齢者だと腎機能低下を認める場合がかなり多い印象があります。
そのため、腎臓リハビリテーションは私たちが思っている以上に身近なところにあり、慢性腎不全の重症度にあわせてリハビリテーションのプログラムを検討していく必要があります。
腎臓リハビリテーションの最新情報をキャッチできるようにアンテナを張り、適切なリハビリテーションを提供できるように努めていきましょう!
腎臓リハビリテーションを効果的に提供するためには、CKD患者におけるリハビリテーションの重要性を正確に理解することが 1 つのポイントになると考えられます。このテーマについては、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【増加する慢性腎臓病(CKD)患者】についての記事はこちらから

参考文献
- 上月正博.腎臓リハビリテーションの効果と実際―運動制限から運動療法へ―.Jpn J Rehabil Med.2018,55,p682-689.
- 伊藤修.腎臓リハビリテーション.Jpn J Rehabil Med.2017,54,p788-792.
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