
こんにちは! リハビリくんです!
今回は肺炎予防のための食形態と栄養管理について解説させて頂きます!
2021年度の日本人の死因割合は、第5位が肺炎で5.1%、第6位が誤嚥性肺炎で3.4%、肺炎と誤嚥性肺炎を合わせると8.5%となります。肺炎と誤嚥性肺炎を分けて考えてこの結果なので、肺炎の恐ろしさがよくわかりますね。
筆者は基本的に70歳を越えるような高齢の方々が入院している医療機関に努めておりますが、本当に肺炎は怖いと日々痛感しております。高齢ということもあり、やはり日々体調を崩したり熱発してしまう患者様が多いのですが、原因は高い確率で肺炎あるいは誤嚥性肺炎となります。
また、昨日まで元気にリハビリテーションを実施してくれた患者様が、ある日肺炎を発症されて禁食となり、数日後には永眠してしまうことも何回も経験してきました。
そこで今回、肺炎予防について食形態と栄養管理のことを中心に解説していきたいと思います。

【簡単に自己紹介】
埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です
現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!
主な取得資格は以下の通りになります
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!
3学会合同呼吸療法認定士/認知症ケア専門士/透析技術認定士/糖尿病療養指導士/終末期ケア専門士等の医療系資格の勉強はアステッキをご利用するのも良いと思います。独自のeラーニング講座と専用アプリが搭載されており、隙間時間に学習を進めることができます!
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肺炎について

肺炎は以下の3つに区分することができます。
- 市中肺炎(CAP):病院外で日常生活をしている人に発症する肺炎
- 医療介護関連肺炎(NHCAP):入院48時間以上経過した患者に新たに出現した肺炎
- 院内肺炎(HAP):医療ケアや介護を受けている人に発症する肺炎。下記の項目を1つ以上満たす
- 療養病棟に入院もしくは介護施設に入所している
- 90日以内に病院を退院した
- 介護を必要とする高齢者、身体障害者である
- 通院で断続的に血管内治療(透析、抗菌薬、化学療法、免疫 抑制薬等)を受けている

①CAPは、診断において敗血症予防や重症度分類を重視し、②NHCAPと③HAPの場合、医学的重症度の前に老衰、疾患終末期、誤嚥性肺炎を繰り返す患者については、QOLを重視しての緩和ケアへの治療も推奨します。しかし、これらの老哀、疾患終末期、誤嚥性肺炎のハイリスクを明確に判断するエビデンスに乏しく、医療者の経験に基づく予後予測に依存している場合が多い印象があります。入院肺炎症例は、誤嚥性肺炎が多くNHCAPやHAPでは頻度が高いことが報告されています。
誤嚥を繰り返す高齢者への対応

誤嚥性肺炎は40代まではほとんどみられず、50代から発症数が増え、年代が増えるごとに発症リスクが高くなります。
75歳以上では若年者の約10倍罹患するといわれております。誤嚥性肺炎による死亡者は、2030年には年間で男性77,000人、女性52,000人程度まで増加すると予測されています。
誤嚥性肺炎による死亡を減少させるための手段として、「口腔ケア」や「口腔機能訓練」の重要性が示されております。そのため、質の高い口腔ケアや口腔機能訓練を実施していくことで、誤嚥性肺炎による死亡者数を減少させることができると考えられます。
また、死亡動向を観測していくことや、口腔ケアや口腔機能訓練の有効性を継続して評価していくことも必要になります。
高齢者においての誤嚥のリスク評価はとても重要です。誤嚥性肺炎については、誤嚥するリスクと誤嚥により肺炎を発症するリスクは別に考える必要があります。

上記のような症状や疾患を有する患者は、誤嚥性肺炎のリスクが高く、繰り返し発症する可能性も高いと言えます。誤嚥による肺炎のリスク因子に該当する患者は肺炎のリスク患者といえます。
慢性呼吸器疾患、糖尿病、アルコール中毒、肝硬変、慢性腎不全、脾臓摘出後等の基礎疾患を持つ患者、免疫能が低下低下している場合(ステロイド、免疫抑制剤、胆がん罹患など)、介護施設入所者、誤嚥性肺炎に罹患して日が浅い人も肺炎罹患のハイリスク群であるといえます。
誤嚥のリスク評価としては水飲みテストや反復唾液嚥下テスト(RSST)を挙げることができます。このテーマについては、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【反復唾液嚥下テスト(RSST)についての記事はこちらから】【水飲みテストの種類と評価結果についての記事はこちらから】
高齢者の肺炎を早期発見するためのアセスメント
高齢になると免疫反応が低下し肺炎症状が表在化しにくくなります。発熱は肺炎の症状の1つであり、若年者の肺炎ではほとんどの症例に発熱がみられますが、高齢者では約半数しか発熱を認めません。
かえって高齢者では、倦怠感に伴う活動性低下、食欲低下の症状が頻発します。診療所見で高齢者に認めやすいのは頻呼吸(呼吸数>20回/分)であり、発熱がなくても倦怠感があり呼吸数が増加している場合には肺炎を疑い、X線検査を行うべきです。

また、肺炎罹患時の脱水は高齢者にとって注意するべき初見になります。発熱による発汗と過換気によって体液損失状態であるのに関わらず、意識状態が低下しているため、水分補給が困難な場合が多くなります。
そのため、静脈栄養による水分補給が必要となります。高齢者でみられる肺炎は、高張性か等張性の脱水を伴うことが多いので等張液を欠乏に応じて投与するべきです。高齢者は心臓や腎臓の予備能が少ないため輸液過多にならないように注意が必要です。
低栄養状態は高齢者の肺炎リスクとなります。栄養管理が肺炎の回復に有用であることも知られています。
高齢者の肺炎患者では体重変化が重要です。通常の体重と比較して10%以上の低下が、高い致命率に関連し重篤と考えられます。5〜10%の減少は潜在的に重症と言えます。

高齢者の栄養問題について
多くの先進国において高齢化が大きな問題となっています。日本の高齢化率も 2019年時点で28.4%、75歳以上の割合は14.7%と報告されています。
高齢化に伴い身体機能は低下しますが、認知機能の低下も伴う場合があります。認知症の有病率は65歳以上の高齢者で16%に及ぶと推定されています。
フレイルは老化に伴う種々の機能変化を基盤とし、様々な健康障害に対する脆弱性が増加している状態、すなわち健康障害に陥りやすい状態を示しています。フレイルは要介護状態になる前の段階であり介護予防との関連性が強くなります。
Fried らが提唱するフレイルの診断基準は
- 体重減少
- 主観的疲労感
- 日常生活活動量の減少
- 身体能力(歩行速度)の減弱
- 握力(筋力)の低下
以上、5項目のうち3項目が該当すればフレイルと診断されます。またサルコペニアは「転倒、骨折、身体機能低下、死亡などの負のアウトカムの危険が高まった進行性かつ全身性の骨格筋疾患」という定義になります。
フレイルは要介護へと進展する可能性が高い一方で、適切な介入によって改善するとされています。このテーマについては、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【フレイルの症状と予防についての記事はこちらから】
サルコペニアの診断
基準としては、65歳以上の高齢者を対象として骨格筋量低下が必須条件とされ、それに筋力低下または身体機能低下のどちらかが加わればサルコペニアと診断されます。
フレイルやサルコペニアについては、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【フレイルとサルコペニアの違いについての記事はこちらから】
フレイル、サルコペニアいずれにおいても栄養管理は重要です。誤嚥性肺炎の嚥下障害は、サルコペニアの原因を合併することが多くなります。誤嚥性肺炎患者は高齢者に多く、抗菌薬などの治療のため入院で低活動となり、呼吸器疾患を患いやすい人は低栄養であり、肺炎という侵襲状態に陥ります。
常食を食べていた人が絶食となったり、または嚥下調整食を摂取開始となると、どうしてもエネルギー不足へ陥ります。嚥下調整食学会分類2013は、0〜4というコードを設定して食形態の統一が可能になりました。
しかし、この分類は段階のみが記されており、食べる前後の栄養状態の把握や栄養成分、量については設定されておりません。本来であれば、食形態だけでなく栄養面の充足も含めて考えていく必要があります。

誤嚥性肺炎を発症すると多くの医師は、「とりあえず禁食で」という指示を出し、その後1〜2週間程度、静脈栄養のみで肺炎治療の抗菌薬200kcal程度の栄養補給を継続することがあります。
そして肺炎治療は終了したが、低栄養状態に陥いってしまったり、更に嚥下機能まで低下してしまうことも起こりえます。肺炎で入院している状況に絶食期間が生じると、体力を取り戻すために治療期間が延長し、嚥下機能がさらに低下してしまうわけです。
誤嚥性肺炎を発症した高齢者に、3日以内に理学療法を開始すると死亡率が有意に低下することが示唆されています。誤嚥性肺炎を発症した入院患者に対して、適切なリハビリテーションと栄養管理を行えるかどうかが鍵となります。
常食と比較した嚥下食の特徴
嚥下食は飲み込みや咀噌、口腔内保持などの嚥下機能低下のレベルに応じて、飲み込みへの配慮を行い、安全な経口摂取ができるように調整した食事です。
嚥下食は、嚥下機能に重点を置くため、エネルギー確保が困難であるという問題点があります。ソフトやミキサー形態にすることで通常食と比較して半分程度のエネルギーとなってしまうからです。
その結果、嚥下食の栄養価も低下します。通常食と比較して最初から不足しているエネルギーやたんぱく質強化は、管理栄養士と調理スタッフがタッグを組んで低栄養対策へ取り組むべきです。常食摂取者が間食するのとは異なり、嚥下食摂取者は病院・施設からの栄養補給のみに委ねられています。
物性、粘度は問題なくても美味しくなければ食への意欲が湧かず、ら食事拒否へと抵抗を示す患者も存在します。彩り、味、香りは嚥下食においても重要なポイントであります。
在宅でも同様に料理担当者の力量、栄養への関心の有無は、在宅生活の存続を大きく左右します。SNSの普及により各栄養補助食品会社のホームページやYouTubeにおいて動画で示された嚥下調整食の調理法や工夫などが簡単に閲覧できます。これらを上手に活用することが望ましいと考えます。
誤嚥性肺炎を予防し安全に食べる方法
まずは嚥下評価を行い、その後にゼリー食などから段階的摂食訓練において通常食に近づく事ができるようにアプローチを行います。
しかし段階が上がるにつれて、いろいろな食形態や食品、硬さ、調理内容などが組み合わさると誤嚥や窒息のリスクも当然上昇してしまいます。
特に水分補給は最後まで嚥下障害における問題となることがあります。栄養補給用の胃瘻は終了できたが、経口からの水分補給が困難であり、水分補給のためだけに胃瘻を継続して使用することもあります。
臨床現場において嚥下食提供時の食べる順番にも医療者は注意を払うべきです。経口摂取回数も1回から2回、3回へと順調に進むと注意の目が他患へ向き、患者本人も自分で食べる喜びで自己流となることがあります。
嚥下障害患者における安全に食べるための観察項目を確実に周知して挑むべきです。食形態はできるだけ普通食へ近づけるように、嚥下食提供を継続するだけでなく、食形態アップの試食にもチャレンジしていきましょう。
とろみ茶やとろみの水分を嫌う高齢者が多いので、定期的に水分とろみ再評価の働きかけを行い、水分拒否へつながらないように支援します。
誤嚥性肺炎を包括的に評価して安全に食べるためのアプローチとは、購下機能だけでなく全身状態、栄養状態まで含めた13項目で評価を可視化できるKTバランスチャートが効果的です。
まとめ
最後までお読み頂きありがとうございます!
この記事では高齢者の肺炎と誤嚥性肺炎について、まとめさせて頂きました。
高齢者は免疫反応が低下するため、肺炎を発症しても発熱を伴わないことがあります。このようなときは、倦怠感に伴う活動性低下、食欲低下、普段と比較して呼吸数が増加していないか確認して、発熱以外の症状から肺炎を疑うことができるスキルが求められます。
また、肺炎を発症した場合も状況に応じてリハビリテーションを実施する機会があると思います。このような時は栄養管理を意識してリハビリテーションを実施する必要があります。
肺炎を発症しているときは、禁食となり末梢点滴のみとなっている可能性があります。このような時に機能改善を目的とした負荷量が高いプログラムを実施すると逆効果になるかもしれません。状態を考慮してリハビリテーションプログラムを立案するようにしましょう。
肺炎対策として最も重要なことは、発症しないように予防することだと思います。不顕性誤嚥のスクリーニングのために開発された咳テストという評価法があります。このテーマについては、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【咳テストの評価方法についての記事はこちらから】

参考文献
- 大類孝,海老原孝枝,荒井啓行.高齢者肺炎・誤嚥性肺炎.日本内科学会雑誌.第99巻,第11号,p88-93.
- 野原幹司.嚥下からみた誤嚥性肺炎の予防と対策.日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌.2019年,第28巻,第2号,p179-185.