【失語症とリハビリテーション】病期別でリハの目的と方法を解説

病態理解を深める
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リハビリくん
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こんにちは!リハビリくんです!

    

今回は失語症のリハビリテーションについてまとめさせて頂きます!

  

言葉をうまく使うことができない「失語症」は多くの場合が後天性であり、発症直後は混乱して、気持ちの変化が激しくなることもあります。コミュニケーションを思うように取れない、自分の気持ちが表出できないということは、身体的にも厳しいものですが、精神・心理面への影響は想像し難いものがあると思います。様々な疾患・障害の中でも不安が大きい病態の1つになるはずです。

   

失語症による言語機能の回復パターンは身体機能と似たパターンを示します。つまり、急性期に急激に回復し、その後ゆるやかに改善し、いずれは機能的にはプラトーに達します。

  

身体機能は発症から半年程度経過することでプラトーに達すると考えられていますが、言語機能は身体機能と異なり、長期間にわたり回復がみられることが特徴です。そのため、発症から月日が経過していても、周囲の協力やご本人の努力次第で、失語症は少しずつ回復する可能性があります。失語症のリハビリテーションについて病期別に解説していきます!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です

現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!

  

主な取得資格は以下の通りになります

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級


「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!

  

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ICF×失語症リハビリテーション

ICFに準ずると失語リハの最重要テーマは、「失語症者の全体を捉える」ことになります。

原因疾患(脳血管疾患)により「健康状態」が破綻(脳器質的損傷)し、その影響が言語中枢に波及することで、理解障害や喚語障害など言語の「機能障害」が惹起されます。

言語の「機能障害」は、日常活動の多くの場面に影響を及ぼし、他者との円滑なコミュニケーションが困難となるなど様々な「活動制限」に繋がります。

意思疎通の困難(コミュニケーション障害)は、就労や復学・社会活動を困難にさせ、家庭内の役割も変容するなど数々の「参加制約」を引き起こします。

こうした障害の様相や深刻度は、背景因子である「環境因子」や「個人因子」によって大きく変容します。

例えば、失語症者の活動制限や参加制約は、喚語障害に対する代償支援機器や、対話者の対応の仕方などで大幅に緩和されることもあります。反対に環境因子や個人因子によっては悪化することも考えられます。

したがって失語リハビリテーションは、失語症者の生活機能全体を考慮し、個別性を重視した多面的アプローチが重要になります。言語の「機能障害」のみに焦点をあてた治療介入は、失語症者の生活機能全体を捉えたことにはなりません。

機能障害と相互に影響し合う「活動・参加状況」や、失語症者の環境因子(コミュニケーション環境、家族関係)と個人因子(性格、ライフスタイル)に対しても、個別性を尊重しつつ同時に介入することでリハの効果が期待できると考えられます。

病期別×失語症リハビリテーション

失語リハビリテーションの目的は、①言語機能の最大限の回復、②実用コミュニケーション能力の向上、③ADLの充実とQOLの維持・向上、④家族指導による失語症者にとって負担の少ないコミュニケーション環境の創出、になります。

失語リハビリテーションでは、失語症者と家族を分け隔てすることなく、双方に対して適宜に支援を行うことが重要になります。

機能回復訓練に留まらず、非言語的コミュニケーション・ツールなどを最大限に活用することで、日常コミュニケーション機能を高め、家庭や社会への参加を促し、より豊かな生活や人生を送れるように支援します。

急性期×失語症

「健康状態」(身体症状と心理状態)は極めて不安定な状態となります。医学的情報を把握し、患者の状況に応じてリハ適応性や介入時間・回数・アプローチ方法を適切に選考します。

意思疎通の欠損が大きい場合には、医療スタッフや家族との疎通性を高めるためのコミュニケーション方略の確保が最優先となります。

言語性コミュニケーションに拘らず、首肯反応や指差し行為、表情、描画などの非言語性コミュニケーションの有効性を評価し、意思疎通手段の最良ルートを模索します。

評価は限られた時間中で効率良く行う必要があります。スクリーニング簡易検査にて、失語症の存在が示唆されれば、健康状態に応じて定量的かつ客観的失語症検査を実施します。

  • 標準失語症検査(SLTA)
  • WAB失語症検査
  • トークンテスト

急性期では、機能障害に対する集中的訓練は困難なことがあります。急性期の病態は多様で症状変動も認められます。

自然回復に至るケースや、長期的に障害が残遺するケースもあります。発症当初は気付きにくい症状もあるため、一定程度の時間間隔をおいて評価を繰り返す必要がります。

また、合併症状に留意する必要があります。失語症に併発しやすい構音障害や摂食嚥下機能障害など、喫緊の問題が存在する場合は、リハ介入内容や優先順位を柔軟に考慮します。

特に、心身機能に大きな影響を与える栄養の確保や経口での食事摂取のリハビリテーションは失語症リハビリテーションと並行して進めていく必要があります。

急性期では、患者や家族に対する心理的支援も重要になります。失語症者は、不安な気持ちを伝えることや「わからない」ことを表現することが難しい場合があります。

初期の病態評価から予後予測をして、生活上問題となる点を整理したうえで患者と家族に対してコミュニケーション指導を兼ねた丁寧な心理的サポートを行う必要があります。

患者や家族はリハビリテーションを受けることで元通りの状態や生活に戻れることを期待しています。治療介入計画や治療方針の立案に際しては、患者側の特有の心理を十分に踏まえつつ、年齢や生活歴、全身状態などを総合的に勘案し、冷静に予後予測を立てる必要があります。

回復期×失語症

「健康状態」は急性期と比較すると安定しているかと考えられます。評価は、机上のテストバッテリーや病棟での生活場面の観察などから総合的に行います。

評価結果を踏まえて、発症時からの回復経過の確認、これまでのリハ方略の適正性を再検証し、障害の内容(失語タイプ・言語症状・重症度・残存能力)を踏まえたうえで予後予測やリハビリテーションのゴール再設定、最大限の機能回復を実現するための新たな方略を検討します。

この時期は「機能障害」の回復が最も期待できるため、個別的かつ集中的リハビリテーションが重要になります。言語機能障害に対する治療手技は様々なものがあります。

リハビリテーションで重要なことは、療法士は特定の1つの理論や手技に拘るのではなく、あくまでも失語症者の病態特性に適合した治療理論と手技を臨機応変に組み合わせてリハビリテーションを展開することだと考えられます。

また、失語症者の障害受容は大きな問題となる可能性があります。抑うつ症状や回復への焦燥、孤立感など複雑な心理症状を呈しやすくなる時期でもあります。失語症者の抑うつは患者のQOL低下に直結すると言われています。そのため、精神・心理面のケアは重要なポイントになります。

リハビリテーションの実施により、在宅復帰の目処が立てば、退院に向けた家族指導や環境整備を行います。医療介護連携として、介護保険分野で働くスタッフへの申し送りも重要となり、残存するコミュニケーション能力や具体的なコミュニケーション方法、訓練内容、自主課題など引き継ぎを行います。必要に応じて、コミュニケーション補助機器などの物的環境を整備します。

生活期×失語症

リハを取り巻く医療社会環境の変化に伴い、今後ますます生活期リハビリテーションが重要になると考えられます。

失語症は長期にわたって回復が期待できる障害であり、機能障害のみならず活動や参加状況、さらには環境整備などに対しても継続的支援が必要となります。

生活期の失語症リハビリテーションにおいては、失語症者と家族に対する心理社会的支援の重要性が一段と増します。

家族の介護負担感は、失語症者の居宅療養生活の安定性を左右すると考えられています。過去の研究によると、失語症者の家族には、①言葉の症状に関するストレス、②生活に関するストレス、③家庭運営に関するストレス、④感情や認知の症状に関するストレスが存在することが分かってきています。

一般的にストレスへの耐性力向上のためには、自己効力感(SE)を高めることが有効となります。SEは人間がある行動を実行する前に「この行動は、この程度まで達成することが可能だろう」という行動実現化の可能性についての予期感となります。

SEが向上することにより、行動意欲が強化され学習効率性が上昇します。失語症者の家族間における高いコミュニケーションSEは介護負担感の軽減に寄与し、介護負担感の低減は精神的健康状態の向上に貢献します。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

こちらの記事では失語症のリハビリテーションについて、まとめさせて頂きました!

失語症のリハビリテーションは言語聴覚士だけが行えばいいものではありません。理学療法士や作業療法士は当然ですが、看護師や介護士も含めた多職種およびご家族様の力で関わり合うことが重要になります。

一方で、失語症者との関わりは難しいところもあるかと思います。実際、私も経験年数が浅い頃、失語症者のリハビリテーションで悩む機会が多くありました。

基本的に、医療従事者と患者様の関係性はコミュニケーションの積み重ねにより構築されるものだと思います。失語症によりこのあたりが上手く行えないと医療従事者側のパフォーマンスも最大限に発揮できないことがあります。

そのような悔しい思いをしないためにも、失語症者の基礎知識と失語症に対するリハビリテーションの知識を深め、対応力を高めていきましょう!

失語症に対する関わり方もそうですが、心に傷を負った方に対しては、その人の心を掴むことができるような関わり方をするべきです。このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【認知症の人の心をつかむケア技法についての記事はこちらから

リハビリくん
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参考文献

  1. 綿森淑子.失語症リハビリテーションの最近の動向とICF.人間と科学 県立広島大学保健福祉学部誌.6(1),2006,p5-16.
  2. 佐野洋子,小嶋知幸.加藤正弘.失語症のリハ ビリテーションと長期予後.リハビリテーション医学.VOL37,NO.3,2000,p161-164.
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