【CI療法:麻痺側上肢を機能改善させる集中的訓練】推奨グレードA

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リハビリくん
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こんにちは!リハビリくんです!

   

今回はCI療法について、反復的課題指向型アプローチとトランスファーパッケージの重要性から解説させて頂きます!

  

CI療法は麻痺肢を集中的・強制的に使用させ、麻痺肢の機能改善を図り、同時に獲得した機能を日常生活へ転移させるアプローチ法となります。麻痺の機能改善とADLの向上が期待することができて、エビデンスもグレードAとなっておりますので、積極的な実施が期待されています。

  

寝たきりや要介護状態になる原因疾患として、脳血管障害は高い割合を占めているため、これらの疾患への対応は重要なポイントになるかと考えられます。そこで、この記事でCI療法について解説させて頂き、脳卒中後の麻痺肢に対するリハビリテーションの1つの選択肢になれば幸いです。

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です

現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!

  

主な取得資格は以下の通りになります

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級


「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!

  

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脳卒中後の麻痺肢に対するリハビリテーションの歴史

従来の脳卒中後の麻痺肢に対するリハビリテーションは、麻痺の回復が上肢は下肢に比べて不良であることから、非麻痺肢を使用した代償的アプローチが主流となっていました。

しかし近年、脳損傷後の脳の可塑的変化が可視化できるようになり、損傷を免れた脳領域が損傷部位の機能を代償する機能的再構成が起こることが明らかにされました。

これらの知見をもとに、脳の可塑的変化を促進させる治療法として「ニューロリハビリテーション」という概念が提唱されました。ニューロリハビリテーションの代表的なものとしてCI療法がその1つであり、CI療法とは脳の可塑的な変化をもたらすとされる使用依存性脳機能再構築の仮説に基づいた治療法となります。

その効果は大規模ランダム化比較試験で実証されており、日本では2003年に導入されています。脳卒中治療ガイドライン2015でもグレードAと推奨され、適応者への積極的な実施が望まれています。

CI 療法の概要

CI療法は麻痺肢を集中的・強制的に使用させ、対象者ごとに適切に段階づけされた課題練習により麻痺肢の機能改善を図り、同時に獲得した機能を日常生活へ転移させるアプローチ法となります。

CI療法のコンセプトの原点は、Taubらの動物実験によるものです。サルの感覚入力を遮断すると徐々に感覚障害のある麻痺肢を使用しなくなり、非麻痺肢での代償が強化され、より麻痺肢を使用
しないという悪循環に陥りました。

この現象を「学習された不使用」と提唱しています。このサルの非麻痺肢を拘束したところ再び麻痺肢を使用し始め、その後長期的に麻痺肢を使えるようになることを見出しました。その後OstendorfらとWolfらによって臨床応用され、TaubらがCI療法の原法を築きました。

CI 療法の構成要素

CI療法は「拘束」という言葉から非麻痺肢を拘束する側面が強調されがちであるが、それは1つの要素に過ぎません。CI療法は日常生活での麻痺肢の使用促進を目的とし、大きく分けて3つの要素と、さらに細かい要素から構成されています。

反復的課題指向型アプローチ

課題指向型アプローチはShumway-CookらとCarrらによって提唱され、運動制御におけるシステム理論と運動学習理論を基盤としたアプローチ法となります。

個人の能力や環境を考慮し、明確な目標をもって日常生活場面に関連する課題を選択し、段階づけを行いながら反復して練習していく方法になります。CI療法における反復的課題指向型アプローチには、分離運動の促進など段階的練習項目である shapingと機能をもとにした活動項目を練習するtask practiceの2種類が含まれます。

Shaping

Shaping とは心理学領域でのオペラント条件づけ学習を応用したもので、段階的に課題の難易度を上げて動作や目標を達成する方法となります。

課題の難易度は、対象者の上肢機能からみてやや高く設定します。練習に使用する物品や環境は、目標とする動作や活動を達成するために必要な関節運動によって決定します。反復練習における過度の疲労や中断を回避するため、難易度や課題の数に幅をもたせた構成にします。

シェーピングプログラムは、主に基本的な課題群から選択された10~15の課題で構成され、個人に合わせて作成されます。各課題は通常、10~30秒の試行回数で行われ、10回の試行が終わるごとに課題が変更されます.

一度に変更されるシェイピング難易度は1つだけです。セラピストの継続的な関与が必要となります。 課題練習は、個々の機能的な課題の反復練習で、およそ15~20分かかります。

休息は必要に応じて提供され、励ましの言葉は不定期(例:5分ごと)に与えられ、課題終了時にはどのように行われたかについてのフィードバックを行います。

Task practice

対象者自身が希望する活動を実現できるように、実際的な運動や物品を使用した課題(食事・家事・書字・趣味活動など)を設定します。

Task practiceは項目立てされておりませんが、shapingと同様に段階的に難易度を上げていきます。Task practiceは、対象者自身が価値を感じている活動に近いため、課題の難易度によっては失敗し、意欲低下にもつながる恐れがあるため注意が必要となります。

非麻痺肢の拘束

しかし近年、拘束の有無による治療効果の違いはないという報告が増えてきています。あくまでも麻痺肢での量的な練習と、日常生活における適切な使用が重要であるため、そこが達成できるのであれば拘束する必要はないと考えられます。

CI療法では、対象者に麻痺肢の使用を意識づけ、練習中の非麻痺肢による代償を抑制するため非麻痺肢をミトンやスリングで拘束することがあります。

生活に自主トレや麻痺側使用の習慣を落とし込む作業(TP:transfer package)

トランスファーパッケージはshapingやtask practiceなどの反復的課題指向型アプローチによって得られた機能改善を、日常生活に移行できるよう行動変容を促す手法となります。

臨床環境から現実世界(日常生活)に学習転移させるための行動変容を設計していくことがポイントになります。

CI療法におけるTPの有無による効果を比較検討した報告では、TPを使用した群は、使用しない群と比較してCI療法終了時から6か月後において有意に麻痺肢機能と使用頻度が改善したと報告されています。

CI 療法の適応

適応基準は、①「母指を含めた3本指のIP関節およびMP関節が10度以上随意伸展可能」かつ②「手関節が20度以上随意伸展可能」な比較的運動麻痺が軽度な症例とされています。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事ではCI療法について、反復的課題指向型アプローチとトランスファーパッケージの重要性を踏まえ、まとめさせて頂きました。

CI療法は作業療法士を中心に実践している施設が多いかもしれません。しかしリハビリテーションの目標は、対象者自身が麻痺した身体を日常生活で使用し、時に代償手段を活用しながらも自分らしい生活を再び送れるように支援することです。

そのため、理学療法士も積極的に参画することで対象者の移動能力を含め、新たに獲得した麻痺肢機能を使用しどのような生活が送れるか、どのような役割が担えるかなど、1人ひとりに寄り添った支が可能になると考えられます。

CI療法は対象者の機能改善だけでなく、生活の質を向上させる可能性を秘めています。CI療法のコンセブトを理解し、目の前の対象者に適したアプローチをチーム協働で展開することが重要であると考えます。

CI療法の効果を最大限に引き出すためには、患者と医療従事者間の信頼関係が成り立っていることが前提条件としてあると思います。対話を高いレベルで行うためには、コーチングの技術を身につけていると有利に働きます。コーチングについては、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【医療におけるコーチングについての記事はこちらから】

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参考文献

  1. 増田雄亮,補永薫,松永玄,鈴木研,近藤国嗣.通所リハビリテーションにおいて修正 CI 療法を実施した一事例.作業療法.2017,36巻,6号,p626-633.
  2. 唐松友,澤田辰徳,竹林崇,友利幸之介.課題指向型訓練とTransfer package における上肢機能評価と作業遂行評価の特徴.日本臨床作業療法研究.2014,No1,p21−25.
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