【コーチングの3つのスキル】医療現場のコミュニケーションについて

コーチング 作業療法 臨床での悩み
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リハビリくん
リハビリくん

こんにちは! リハビリくんです!

  

今回は、医療従事者におけるコーチングについて解説させて頂きます!

    

近年、国民の医療・健康・福祉問題等に対する関心が、以前に比べてはるかに高くなってきています。マスメディアを通じ医療行為に関する事件・事故、医療に対しての不信・不満・要望等の報道が増加するなかで、医療機関に対してより高いレベルの患者サービスを要求する時代に変化しています。

   

このような社会情勢から、医療従事者にはより高いコミュニケーションスキルが求められるようになってきています。そこで、重要となるスキルがコーチングになります。

  

コーチングの技術は患者様に対しても、医療従事者間の教育においても有効になります。そこで、この記事でコーチングの基本的構造からテクニックについて解説させて頂きます。

リハビリくん
リハビリくん

【簡単に自己紹介】

埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です

現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!

  

主な取得資格は以下の通りになります

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級


「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!

  

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医療現場でのコミュニケーション

医療の現場では、さまざまなコミュニケーションが交わされます。患者・家族と医療従事者との間あるいは医療従事者間で、情報、質問、提案、要望等をコミュニケーションを通じてやりとりすることが日常となっています。

これらの伝達には目的があり、その目的に合った方法で伝えられることが求められます。相手の目標達成に向けた主体的な行動変容を促進することが目的であれば、そこに対話的コミュニケーションであるコーチングの技術を活用することができます。

コーチングの三原則である「双方向」「個別対応」「継続性」は、この目的と結びついた特性となります。また、コーチングには「気持ちよく自分の話ができる」「新しい視点に気づく」「自分ができることを新たに始め継続する」という機能があります。

様々なコミュニケーションを取る必要性がある医療の世界でもコーチングの技術を活かした対話を心掛けることで、課題解決や目標達成に向けて行動変容を促進することが期待できます。

コーチングの定義

コーチングとは、自ら考えて行動する人を育てるためのコミュニケーションスキルとなります。適切なコーチングを受けた人は、モチベーションの高い目的や目標を発見したり、行動する時の指針が明確になったり、課題の解決方法がわかったりすることで、組織や個人の目標達成や自己実現に向けて自分らしく進んでいくことができるようになります。

コーチングの基本的な構造について


上図はコーチングにおける双方向性の会話を示します。コーチはクライアントの言葉を受け止め、自分の言葉を相手に送ります。具体的には傾聴し、承認や質問、時には提案や要望を伝えます。

クライアントは話しながら自分の言葉を脳内であるいは耳で聞いていますが、このときに気づきが生まれることがあります。気づきが生まれることで、考えが整理されたり、思ってもいなかったアイデアが浮かんで目標実現への道筋がみえたりします。

このようにクライアントが自分の言葉を意識したり聞いたりして気づきが起こることをオートクラインと呼びます。

オートクラインは行動を促進します。たとえば仕事の目標や課題解決への道筋がみえたときには、行動への動機づけも同時に生まれます。優れたコーチはたくさんのオートクラインを起こすことができます。

コーチングの基本となる3つのスキル(傾聴・承認・質問)

「傾聴」

傾聴はコーチングの機能「気持ちよく自分の話ができる」に関連したスキルであり、アクティブリスニングとも言います。

聞くことは能動的な行為となります。興味・関心をもって聞かれると話しやすくなり、オートクラインが起こりやすくなります。逆に興味・関心をもって聞いてもらえなければ、話したくなくなり自分の価値にも疑問を感じるかもしれません。傾聴のポイントは次の3つになります。

興味・関心をもつ

興味・関心は「事」ではなく、相手への興味・関心となります。相手への興味・関心をもう少し詳しく考えると、「主体としての相手」への興味・関心を持つ必要があります。

その人が家族や職場、さらに地域や団体とのかかわりの中にいる主体であり、生まれてから今に至るまでと、今から将来に向けての人生の文脈の中で現在を生きている主体であることに意識を向けて傾聴すると効果的です。

相手の話を判断せずに受け止め、先入観を外して聞く

コーチのあり方としては「自分は相手のことを知らない」というスタンスが重要となります。例えば、人それぞれで個性があり、この人は「こういう考え方をする人」という前提があったりすると思いますが、その個性を含めて話を聞くと適切な傾聴ができないため、先入観を外して話を聞くべきです。

一方、クライアントには自身の固定観念に気づかせる必要があります。そのためには質問スキルが必要になります。自分が無意識に設定している価値判断の基準や固定観念に気づくことは、対話する双方にとって意味があります。質問スキルについては後述させて頂きます。

相槌を効果的に打つ

コーチング三原則の一つである「双方向」について大切なことは「問いを共有すること」とです。

コーチもクライアントも答えを知らない問いを間に置いて一緒に考えるということになります。この時に重要なことは、相槌を効果的に打てるかどうかです。相槌もただ、打てばいいという訳ではありません。レパートリーをたくさん持って適切な相槌を選択する必要があります。

相づちを打つときには、ノンバーバル(表情・しぐさ・声の大きさや抑揚・しゃべる速さ・間)等の要素が、言葉そのもの以上に相手に影響を及ぼす可能性があります。相手への影響を知るには、その人がどれだけ気持ちよく話せているかが目安の一つとなります。

「承認」

コーチングで使われる承認とは、相手がそこにいることに自分は気づいているということを相手に伝えることになります。

つまり広義の承認は存在承認となります。存在承認の行為として、挨拶する・声をかける・頼む・感謝を伝える・教えてもらう・教える・叱る・期待を伝える・話を聞く・名前で呼ぶ・誘う・笑わせる・構う・手伝う・相談する等が挙げられます。

要するに、人とかかわる言動のうちで存在否定ではないものになります。存在承認の一部として成果承認があります。成果承認は端的には褒めることですが、結果としてみえる成果だけでなく、行動や成長に対する承認も含みます。

承認の反対は「無視」になります。承認は信頼関係の構築と動機づけに寄与しています。信頼関係はコーチングの機能「気持ちよく自分の話ができる」の基盤となり、動機づけは「自分ができることを新たに始め継続する」ことを促進します。

存在承認のポイントは質より量であり、相手の期待と合うくらいの頻度が適切な量といえますが、過度よりも不足を心配したほうがいいと思います。

成果承認のポイントは、コーチング三原則の一つ「個別対応」になります。承認と一言で言っても、目標達成に向け行動が促進されるような、とびきり嬉しい承認もあれば、たいして嬉しくない承認もあるかと思います。

このような違いを生む理由として3つが考えられます。

①受け取る側のコミュニケーションスタイルと承認が合っていたかどうか

ただ「すごい」と言われて嬉しい人もいれば、自分が意識して注力した部分を正しく評価されることで喜びを感じる人もいます。結果的に評価されると嬉しい人もいれば、過程におけるチームへの貢献を称揚されることに満足を感る人もいます。

②承認された内容がそのクライアントの目標や大切にしていることと紐づいているかどうか

目標に向かって成長している実感が承認によって強化されれば、目標達成に向かう行動が促進されるはずです。

③相手との関係性

尊敬する人からの成果承認は一生の宝になるかもしれません。日ごろから承認がどのように受け取られたかを観察し、相手に合った仕方で承認を伝えることが大切です。

「質問」

コーチングの機能「新しい視点に気づく」と密接に関係するのが、質問のスキルとなります。

コーチはクライアントが意識せずに影響されている価値観や固定概念に気づいてもらうために質問をします。質問により、新しい視点に気づくことによって目標の再設定をしたり、行動の選択肢が増えたりします。

また、質問は「自分ができることを新たに始め継続する」機能にも関係します。人は問われたことを考える性質があります。たとえば失敗するたびに「なぜできなかったの?」と聞かれると、失敗したときに自動的に頭の中でその問いが浮かぶようになります。

最悪なのは「自分には能力がない」という答えとリンクすることです。逆に、失敗したとに「どうすればできるだろう」と自分に問うことが習慣化されていると、失敗の原因を検討することも含めた対処行動が起こりやすくなります。

あるいは「自分にどのような能力が身につけば成功するか」と問う癖がついていれば、成長に向かう行動を継続すると考えられます。コーチは目的・意図をもってクライアントに問いを投げかけます。

目的・意図の例としては、問題をはっきりさせる/考えを整理する/目標を設定する/アイデアを出させる/物事を具体的にする/未来を予測する/リソースを明らかにする/モデルを見つける/等を挙げることができます。

このときも「事」ではなく「その人」を中心に質問することが重要です。すなわち質問の核となるのは「そのこと(問題、目標、計画等)はあなたにとってどのような意味があるのか」「そのように考えるのはどのような経験によるのか」「そのことがあなたにどのような感情を引き起すのか」「そのことにあなたはどのように向き合うのか」といったことになります。

先ほどの相槌の例のように、意図とそれに対応する質問の例を書いてみると良いと思います。

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コーチングフローについて

コーチはコミュニケーションをコントロールします。すなわち、開始・転換・完了をします。勘違いしやすいのが、クライアントをコントロールするのではありません。そのためにも、コーチングの会話を進める型(コーチングフロー)を知っておくと役に立ちます。

コーチングフローにおいて、セットアップに時間をかけることが効果的です。何をテーマにするかを検討することが最も重要になるためです。

リハビリテーションを実施するうえで、患者とコミュニケーションをとって、目標を定めようとするのは一般的なことだと思います。しかし、患者からすれば、いきなり目標を聞かれても言語化することは難しいことも多いと思います。

この場合、患者が自分の言葉で目標を語れるようなテーマを一緒に考えるべきです。障害を患ったとしても「患者自身が人生の主役になること」はリハビリテーションにおける普遍的なテーマだと考えられます。

これが、患者の言葉として語られた時、対話が大きく進みはじめるはずです。現時点でどのようになっていきたいかという目標を確認し、その後に現状確認、望む状態と現状との間のギャップを生じている理由の明確化、ギャップを埋める行動の決定、まとめ、フォローの決定というサイクルを回すことで、医療現場でのコーチングは上手くいくと考えます。

まとめ

最後までお読み頂きありがとうございます!

この記事では医療におけるコーチングについてまとめさせて頂きました。

コーチングの技術は、あらゆる場面で応用することができる可能性を込めたコミュニケーション方法となります。

患者に対するコミュニケーションであっても、医療従事者間でのコミュニケーションであっても、コーチングの技術を活かした対話を行うことで、課題解決や目標達成に向けて行動変容を促進することが期待できます。

コーチングを活用した対話が高いレベルで行うことができるように、私自身もステップアップしていきたいと思います!

入院患者様および入所利用者に対する転倒予防策は医療従事者や介護施設で働く職員の永遠の課題であると考えます。転倒を0にしたい気持ちはみんな同じですが、そう簡単に転倒はなくなりません。こちらの記事:入院患者の転倒予防策「一向に減る気配がない転倒をどう防ぐのか」で転倒予防策について解説させて頂いているため目を通して頂けると幸いです。

リハビリくん
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医療従事者となると仕事の大部分は患者様や利用者様に対するケアや支援になりますが、それらの実態は肉体労働であり、医療従事者自身の身体を酷使しすぎてしまうことはよくあることだと思います。

 

そんな医療従事者にオススメしたいのが、こちらの枕です!

睡眠の質を高める上で、寝具を替えることは近道となりますが、身体を支える寝具においてはマットレスとともに重要なのが枕になります。枕が自分の身体に合っていないと、肩こりやいびきの原因になることもわかってきています。


参考文献

  1. 出江紳一.患者教育に活かすコーチング.Jpn J Rehabil Med.2017,54,p704-709.
  2. 石川美智子,板倉朋世.看護におけるコーチングの活用とその効果.獨協医科大学看護学部紀要.Vol.5,No.2,2011,p1-11.
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