【喀痰吸引手技のポイント】吸引前のアセスメントにより合併症を防ぐ

喀痰吸引 方法 臨床での悩み
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リハビリくん
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こんにちは!リハビリくんです!

  

今回は喀痰吸引についてまとめさせて頂きます。

  

早速ですが、喀痰吸引って凄く難しい行為ですよね。

  

私の勤務する職場では、喀痰吸引に関する講習を受けて、吸引シュミレーターQちゃんを用いた実技練習をして、現場で看護師の指導のもと喀痰吸引を行うといったステップになっております。

  

私もこのような順序で臨床で喀痰吸引を行うようになったのですが、最初のうちは躊躇しながら喀痰吸引を実施していた記憶があります。

  

その後、呼吸療法認定士を取得する経緯で解剖学的な要素を学んだり、現場で経験を積む中で、不安感は軽減していきましたが、今でも、喀痰吸引はリスクがある行為で難しいものだと思っています。

  

そこでこちらの記事にて、喀痰吸引の概要から吸引手技、合併症予防まで解説していきたいと思います!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です

現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!

  

主な取得資格は以下の通りになります

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級


「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!

  

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気管吸引が必要な理由

気道分泌物は気道粘膜から分泌され、異物や菌を排出する機能があります。健康な人でも1日50〜100mL程度分泌されると言われ、通常は唾液と共に嚥下されたり、気管粘膜の繊毛運動による運搬中に蒸発・再吸収されております。そこで処理しきれない分泌物は、痰として咳嗽により体外に排出されます。

分泌物の自己喀出が困難な場合は、分泌物貯留により気道閉塞等の恐れがあるため、吸引で取り除く必要があります。

気管吸引の重要な目的は、気道を開放することで呼吸困難感を軽減することと、肺胞でのガス交換を改善することになります。

【気管吸引が必要と考えられるケース】

  • 気管チューブ挿入中
  • 意識障害による自己喀出困難
  • 咳嗽力の低下
  • 呼吸筋力の低下
  • 粘稠度の高い気道分泌物

気管吸引に必要な解剖生理

気管は成人で直径約2〜2.5cm、長さ約10〜12cmとなります。気管〜気管支は、気管軟骨・気管支軟骨により支持されています。末梢側には軟骨はなく、虚脱しやすい状態となっています。

上気道には常在菌が存在していますが、下気道は気道の浄化作用により無菌状態に保たれています。気管吸引を行う際は清潔操作が必須です。

気管吸引で除去できる範囲は、基本的に気管分岐部までに制限するべきです。末梢側の吸引を行うのであれば、医師が気管支鏡で確認しながら行うのが安全です。

気管切開を行うと起こること

  • 上気道を使った呼吸ができない
  • 加湿や加湿がまったくできていない
  • 分泌物が固形化しやすくなり、結果的に呼吸筋が疲労しやすくなる

気管吸引を行う前に

気管吸引前の排痰援助では、「加湿」「咳嗽」「重力」がポイントになります。分泌物が気管支より末梢に貯留している場合、加温加湿や咳嗽、体位ドレナージ等の呼吸理学療法により、分泌物
を気管吸引で除去できる気管分岐部辺りまで移動させる必要があります。

吸引前のアセスメント

気管吸引は苦痛を伴い低酸素血症等、多くの合併症のリスクがある医療行為となります。アセスメントにより必要性を総合的に判断して実施します。

  1. 呼吸困難感や努力呼吸などの症状がみられる
  2. 気管チューブ内に分泌物がある
  3. 副雑音を聴取
  4. グラフィックモニタの変化
  5. 酸素飽和度の低下

日本呼吸療法医学会が発行している気管吸引ガイドラインでも、気管吸引が適応となる状態とアセスメントについて記載されているため、興味がある方は以下のリンクよりご参照ください。

日本呼吸療法医学会:気管吸引ガイドライン2013

吸引手技のポイント

吸引圧について

吸引圧は最大で20kPa/150mmHgが推奨されており、これを超えないようにチューブを閉塞させて調整します。基本的にはカテーテル挿入時は吸引圧をかけず、カテーテルを引き抜きながら吸引圧をかけます。

吸引カテーテルのサイズ

患者様が挿入している気管チューブの内径の1/2以下の太さとなるカテーテルを選択します。太いカテーテルでは低酸素血症や無気肺のリスクが高くなり、細いカテーテルでは効率的に吸引できず時聞が長くなることで低酸素血症のリスクが高くなります。

吸引時間について

吸引圧をかけるのは10秒以内で、カテーテル挿入から抜去の操作は15秒以内で行います。分泌物が取れる位置があれば、そこで少しの間、カテーテルを抜去するのを止めて分泌物をとりましょう。

気管チューブを挿入する長さ

特に注意したいポイントになります。気管分岐部に当てないように、気管チューブ先端から出ない長さ、もしくは先端から1〜2cm出る程度に留めましょう。あらかじめ気管チューブの長さを確認し、挿入する長さを決めておいたほうが確実です。

吸引カテーテルで気管分岐部に触れると迷走神経が刺激され、不整脈の発生や心停止に繋がる可能性があります。絶対に気管分岐部に当たらない位置までの挿入に留めましょう。

感染防止策

標準予防策を遵守しましょう。分泌物が周囲に飛散することで院内感染のリスクが増加します。気管吸引前後に手指衛生を行い、個人防護具(PPE)を着用します。

清潔操作

気管吸引では滅菌されたカテーテルをシングルユース(使い捨て)で使用します。手袋は滅菌手袋もしくは清潔な未滅菌手袋を着用します。

閉鎖式吸引カテーテル

閉鎖式吸引は、人工呼吸器回路の接続を外さずに気管吸引を行う方法です。開放式吸引と比べ、肺容量の維持の点で優れています。

口鼻腔吸引

口腔・鼻腔・咽頭部の上気道に貯留した分泌物の吸引は、気管吸引の手技に準じて行います。気管吸引と同様に合併症として粘膜損傷や咽頭への刺激により迷走神経反射の可能性があるため、愛護的に行う必要があります。

挿入長の目安としては、口腔:約10cm、鼻腔〜咽頭部:15〜20cmとなります。

カフ上部吸引について

気管チューブのカフ上部に貯留した分泌物は、気管チューブに付いている専用のポートから除去します。主に吸引器やシリンジを使用し吸引します。

口腔や鼻腔に存在する常在菌の中には、病原性の高い菌があります。それらを含む上気道の分泌物の下気道への垂れ込みは、誤嚥性肺炎や人工呼吸器関連肺炎(VAP)の原因となります。気管吸引前に口鼻腔やカフ上部の分泌物を吸引することで、リスクの軽減が期待できます。

合併症の原因と予防

気管吸引の合併症は不適切な手技により発生することも多く、適切な手技での実施がまず大事です。その上で、各合併症の原因を知り予防することが必要です。

気管・気管支粘膜の損傷

カテーテルが気道粘膜に接触することで起こります。また、咳嗽や体動により気管チューブが気管壁に当たり損傷することもあります。

損傷を予防するには、気管チューブ先端から出ない長さで挿入することが重要です。そして、カテーテルを無闇に上下に動かさないようにしましょう。万が一気管分岐部に当たった場合、少し引き抜いてから吸引圧をかけるようにしましょう。

低酸素血症

気管吸引により気道内の酸素濃度が低下し発生します。開放式吸引では、人工呼吸器回路の開放による換気中断やPEEP低下も原因となります。

低酸素血症を予防するためには、気管吸引中の酸素飽和度をモニタリングすることがまず重要になります。場合によっては、閉鎖式吸引カテーテルの使用や気管吸引前後の高濃度酸素投与を検討するといいと思います。

徐脈・頻脈・不整脈

吸引カテーテルの接触刺激や痛み刺激が交感神経を刺激し、頻脈や不整脈を誘発します。一方で副交感神経反射(迷走神経反射)を引き起こすと徐脈・心停止の原因となります。また、低酸素血症から致死的不整脈につながることもあります。

心疾患のリスクが高い症例では、心電図モニタを確認し安定している時に吸引したほうが安全です。気管吸引前後に高濃度酸素投与の検討や医師による気管支鏡下での吸引が適切なケースもあると思います。

血圧変動

血圧上昇は咳嗽や、痛み刺激が交感神経を刺激することで起こります。血圧低下は、副交感神経反射(迷走神経反射)によるものと、咳嗽により胸腔内圧上昇に起因する心拍出量低下から発生します。

血圧や心電図モニタを確認し、安定している時に実施していきましょう。咳嗽反射の有無や強弱の確認をしていくのも重要になります。

このテーマについては、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【血圧の正常値と管理方法についての記事はこちらから

無気肺

頻繁な開放式吸引の実施による回路開放に伴い、PEEPが消失し肺胞虚脱が発生します。また、長時間の吸引操作等の誤った手技によっても発生します。気管吸引後に酸素飽和度の低下が持続する時は、無気肺を生じている可能性があります。

予防策としては、閉鎖式吸引カテーテルの使用が挙げられます。また、気管吸引前後に用手的換気を実施することも効果的です。

頭蓋内合併症(頭蓋内圧上昇、脳浮腫増悪)

交感神経の刺激や、咳嗽反射により胸腔内圧が急激に上昇し、頭蓋内圧を上昇させます。

予防としては、循環動態が安定している時に実施し、咳嗽の有無や強弱の確認しましょう。頭蓋内圧上昇の軽減を図るため頭部挙上も効果的です。

このテーマについては、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【隠された頭痛の原因についての記事はこちらから

気道感染

吸引カテーテルや手袋などが細菌で汚染されていると、気道感染を起こすことがあります。

開放式吸引では滅菌されたカテーテルをシングルユースで使用しましょう。手袋は滅菌手袋もしくは清潔に管理された未滅菌手袋を使用する必要があります。吸引前後での手指衛生など標準予防策を遵守しましょう。

まとめ

最後までお読み頂きありがとうございます!

この記事では喀痰吸引についてまとめさせて頂きました。

喀痰吸引は侵襲性があり、リスクがある行為となるため、正しい知識を持ち正確な手順で行わなければなりません。しかし、リハビリテーションを行う上では、必要不可欠な行為でもあり、リハビリテーションの効果を高めるためにも必要となります。

筆者の経験としては、気管チューブを挿入の長さについては、誤った認識をして、必要以上の長さを入れてしまっている医療従事者が一定数いるのではないかと考えています。気管分岐部に触れてしまうことは非常に危険な行為ですので、少しでも不安がある方は、今一度ご確認して頂ければと思います!

リハビリくん
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参考文献

  1. 高橋仁美,玉木彰.喀痰吸引の実際.理学療法学 .第38巻,第6号,2011,p471-476.
  2. 佐久間佐織,渡邉順子,樫原理恵.看護師の気道吸引における情報収集と吸引手技の実態調査─ 吸引前の情報収集と吸引手技、フィジカルアセスメント教育経験との関連 ─.日本看護研究学会雑誌.Vol.40,No.4,2017,p677-684.
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