【くも膜下出血と細菌性髄膜炎の診断】二次性頭痛の訴えを見逃すな

病態理解を深める
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リハビリくん
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こんにちは!リハビリくんです!

  

今回は頭痛と「細菌性髄膜炎」および「くも膜下出血」の関連についてまとめさせて頂きます。

  

頭痛についてはリハビリテーションを行う患者様・利用者様が訴えることもありますし、私たち自身も発生する可能性が比較的高い症状だと思います。大抵の頭痛が一次性頭痛という命に関わらない頭痛になりますが、同様の頭痛であっても二次性頭痛については命に関わる危険な症状になります。細菌性髄膜炎・くも膜下出血による頭痛は、二次性頭痛であり命に関わる疾患であるため、早期治療が必要になります。

  

くも膜下出血で特徴的な所見として、「バッドで殴られたような頭の痛み」というものがありますが、全てのくも膜下出血でこのような所見を認めるわけではありません。このような時に、ただの頭痛だと判断して様子をみてしまうことも少なくないですが、治療の開始が遅延することで、助かる命が助からなくなる可能性もあります。

  

そのため、今回こちらの記事で、細菌性髄膜炎・くも膜下出血について知識を深め、患者や利用者が頭痛を訴えた時、あるいは家族や友人、自分に頭痛症状が出現したときに、適切な対応ができるように準備していきましょう!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です

現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!

  

主な取得資格は以下の通りになります

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級


「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!

  

3学会合同呼吸療法認定士/認知症ケア専門士/透析技術認定士/糖尿病療養指導士/終末期ケア専門士等の医療系資格の勉強はアステッキをご利用するのも良いと思います。独自のeラーニング講座と専用アプリが搭載されており、隙間時間に学習を進めることができます!

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頭痛について

頭痛は、外来診療において遭遇することの多い症状の1つになります。一般的に頭痛は、緊張性頭痛や片頭痛・群発頭痛などの「一次性頭痛」と、細菌性髄膜炎やくも膜下出血などの器質的異常から来る「二次性頭痛」に大別することができます。

頻度として多いのは一次性頭痛になりますが、命にかかわる疾患が潜んでいることがあるのは二次性頭痛になります。

リハビリテーション病棟で頭痛を訴える患者に遭遇したとき、病院によっては実施できる検査が制限されることがあります。そのため、命にかかわる疾患であるかどうかを、その場で診断すること自体が難しいケースもあるかと思います。

そのため、適切な情報収集と診察を行い、専門医へ紹介するかどうかの見極めが必要になります。「細菌性髄膜炎」と「くも膜下出血」の診察とその診断的意義について後述していきます。

尤度比について

問診や診察という「検査」で得られた結果が、診断の確率をどれだけ高めることができるかという指標を知っておくことは実際の診療に役立ちます。

どのような検査にも様々な要因によって偽陽性や偽陰性が含まれます。つまり、目的とする病態をすべて正しく判別できる検査はほとんどありません。そのため、検査前と比べて診断確率が著しく上がる検査が診断に有用であるといえます。

診断確率について、検査の前後には下図の式で表せる尤度比という概念があります。尤度比は、ある疾患の有無によって、ある検査・所見がどのくらい陽性になりやすいか、もしくはなりにくいかを示す指標になります。

尤度比

感度・特異度と何が違うのかと思った方もいると思うので解説すると、臨床医学では感度・特異度という表現をし、内科などで診断する場面では尤度比という表現をするようです。

検査が陽性のときにその病気の可能性がどのくらいあるかを示す指標を陽性尤度比(LR+)逆に検査が陰性のときにその病気の可能性がどのくらい低くなるかを示す指標を陰性尤度比(LR-)といいます。陽性尤度比が10を超えると確定診断に良い検査と判断され、逆に陰性尤度比が0.1より小さくなると除外診断に良い検査とされます。

尤度比の有効性の指標

一方で、尤度比が1となる検査では検査前確率と検査後確率が変化せず「実施すること自体が意味のない検査」ということになります。

細菌性髄膜炎

発症頻度と予後

元々、子供に多い病気で知られています。元気な子どもであっても、通常は鼻や喉に住みついている細菌が、脳や脊髄を包む髄膜の奥まで入り込んで起こる病気になります。

細菌性髄膜炎を予防するワクチンが導入される前の日本では、年間約1,000人の子どもが細菌性髄膜炎にかかっていました。そのうち、ヒブによる髄膜炎に年間約600人、肺炎球菌による髄膜炎に約200人がかかり、2つの菌による髄膜炎で亡くなる子どもは50人近くにもなります。また、発症が10代後半に多い髄膜炎菌による髄膜炎もあります。

その後、小児へのワクチン接種が浸透するにつれ小児の細菌性髄膜炎の発症数は減少しています。しかし、成人にとっても怖い病気であり、発症する可能性は誰にでもあると言えます。

成人における細菌性髄膜炎は致死率が20%前後とされており、さらに生存者の約30%に感音性難聴や脳神経障害などの後遺症が残ります。発症頻度は低いが成人における細菌性髄膜炎は依然として予後が悪い疾患となっています。

症状

成人髄膜炎の典型的な症状は、発熱・頭痛・嘔吐・羞明感・項部硬直・意識障害等になります。そのうち、発熱・項部硬直・意識障害を髄膜炎の三徴といいます。

髄膜炎患者の95%に、この三徴のうち2つ以上を認め、99〜100%に少なくとも1つ以上の徴候を認めます。先行して抗菌薬が投与されている場合には、これらの典型的な症状が出現しにくくなります。

さらに、髄膜炎は炎症性疾患となるため、発熱を伴うことが原則ではありますが、高齢者の場合は発熱がみられないこともあります。

一般的に細菌性髄膜炎の経過は、急激に発症することが主ですが、患者背景や起炎菌によって経過は変化することがあります。例えば、髄膜炎菌が起炎菌のときは電撃的経過を辿るが、高齢者のリステリア髄膜炎では亜急性の経過を示します。

髄膜炎の3徴候の1つとなる意識障害は危険な病態になります。意識障害については、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【意識障害の評価方法:JCSとGCSについての記事はこちらから

髄膜刺激徴候/jolt accentuation of headacheの診断的意義について

髄膜炎の診断のためには、最終的に脳脊髄液検査が必要になります。髄膜炎の臨床症状については前述の通りだが、経過や背景によって必ずしもそういった徴候が出現しないことがあります。どのようなときに髄膜炎を疑い脳脊髄液検査を計画するべきなのか過去の研究から考察します。

297名の髄膜炎を疑われた患者に対して、髄膜刺激徴候の感度・特異度・陽性的中率・陰性的中率の検証したところ、「項部硬直」は感度30%、特異度68%、陽性的中率27%、陰性的中率73%、Kernig徴候とBrudzinski徴候についてはほぼ同一結果となり感度5%、特異度95%、陽性的中率27%、陰性的中率は72%となりました。

中でも、陽性尤度比および陰性尤度比については、1前後でありいずれの髄膜刺激徴候も髄膜炎の診断的意義が低いことが示されています。

Jolt accentuation of headacheは、患者に2〜3回/秒の速さで水平方向に頭部を回旋させたときに頭痛の増悪がみられる現象となります。髄膜炎診断における感度は97.1%、特異度は60%であり陰性尤度比は0.049となります。

これは、髄膜炎の疑いのある症例においてjolt accentuation of headache の徴候を認めないときには髄膜炎の可能性をほぼ否定できることを示しています。逆に陽性であるときは、まだまだ髄膜炎の可能性は否定できないので脳脊髄液検査を行うべきとなります。

診断に向けて最も重要なことは適切な情報収集や診察によって、あらかじめ患者の検査前確率を十分に上げてから次の検査を検討することになります。

そのため、検査が限られた環境では髄膜炎の典型的な症候や臨床経過を十分理解しておくことや、何よりも髄膜炎の可能性をまず疑うことが重要になります。

くも膜下出血

発症頻度と予後

くも膜下出血の発症要因は、脳動脈瘤・脳動静脈奇形・脳動脈解離などが指摘されています。中でも、脳動脈瘤によるくも膜下出血が最も多く、重症度も高くなります。

くも膜下出血の年間発症率は国や地域による較差が認められます。日本では年間で10万人当たり約20人の発症で、諸外国に比べると高い傾向にあり、近年は女性での死亡率が増加してきています。脳血管疾患に占めるくも膜下出血の割合は約10%であり、くも膜下出血中、脳動脈瘤破裂によるものが約80%を占めます。

しかし、頭痛を主訴に救急外来を受診した患者のうち、くも膜下出血と診断されるのは0.66%と遭遇することが多い疾患とは言えないと思います。それでも、再出血を起こすと重症化する可能性が高く、死に至るケースも少なくありません。

日本のくも膜下出血による急性死亡率は27%とされており、その予後は依然として不良といえます。例え、死に至らなくとも何らかの神経障害を残し、日常生活に支障をきたすこともあります。

また、発症時に神経障害がほとんどなかったとしても、くも膜下出血を初診時に診断できなかった場合、1年以内での死亡や障害が残存する可能性が4倍高くなります。

そのため、例え軽症のくも膜下出血であったとしても発症後はできるだけ早く確定診断し、適切な処置を行うことが重要となります。初診時において、くも膜下出血が見逃されてしまう可能性は、4.9〜13%とされています。

症状

くも膜下出血のエピソードとしては、「今までに経験したことのないような激しい痛み」「突然バットで殴られたような痛み」と表現される激しい頭痛で発症します。

ただし全てのくも膜下出血で激しい頭痛が見られのではなく、全体の80%程度に認める症状ということを理解する必要があります。

発症のタイミングとしては、激しい身体活動のない、通常の日常生活を送っているときが最も多く、頭痛発症の際には、嘔気嘔吐・項部硬直・羞明感・意識障害・脳神経障害などの神経巣徴候など随伴症状を1つ以上伴うことがあります。

過去の研究結果によると、くも膜下出血発症時、頭痛は74%・嘔気嘔吐は77%・意識障害は53%・項部硬直は35%の症例に認めております。これらの身体所見の中でも項部硬直が陽性尤度比6.6と、くも膜下出血の診断に最も強く関連しております。

症状が軽微な「くも膜下出血」は見逃されやすい

くも膜下出血は重篤な疾患であり、早期診断が最も重要となります。典型的な経過であれば診断は比較的容易ですが、初診の段階で見逃される場合も一定数います。

初診時にくも膜下出血と診断できなかった頭痛患者32例のうち、2/3以上の症例で頭痛が軽度でありました。さらにCTを設置する医療機関への受診は11例であり、実際にCTを実施されたのは3例でありました。32例の初診時の診断結果は、感冒(6例)急性胃腸炎(3例)頚椎捻挫(2例)緊張性頭痛(2例)等だが、診断が明らかとならなかった症例が14例と最も多くなりました。

14例いずれも症状が軽微であったことから異常なしと判断され自宅に帰宅となっております。これまでも、くも膜下出血の見逃しは問題とされてきましたが、その他の過去の報告においても、そのほとんどが軽症例となります。

くも膜下出血の発症様式として激しい頭痛が印象的であるためか、軽度の頭痛で受診する症例では、患者自身がまさかそんなに深刻な病気だとは考えもせず、さらには初療医が、いずれの頭痛にも分類されず、その原因がわからないと感じながらも「くも膜下出血」を疑うことができないことが「見逃し」の一番の問題となっています。特に、消化器症状など随伴症状を伴わない頭痛のみの症例は、感冒や一次性頭痛と診断されることが多くなってしまいます。

軽症のくも膜下出血を見抜くには

くも膜下出血を疑うべき頭痛の特徴は、突然発症で即座に痛みがピークに達するものであるといわれています。つまり、患者に頭痛の発症時期を尋ねると「新聞を読んでいたとき」のように発症時の状況を具体的に話すことができます。

また、くも膜下出血による頭痛は鎮痛剤などで一時的に軽減することはあっても、数時間程度で消失することはなく、数日間継続することが多いという特徴があります。

以上から頭痛がたとえ軽度であっても、短時間で痛みのピークに到達し、頭痛が比較的持続する場合にはくも膜下出血の可能性を疑う必要があります。

くも膜下出血の画像所見

頭部CTは発症から6時間以内で実施された場合、陽性尤度比230と、くも膜下出血の確定診断に有効な検査となります。そのため、くも膜下出血が疑われた症例に対しては速やかに頭部CTを実施するべきです。

典型的な画像所見であればその診断は比較的容易となります。一方、出血量が少なく軽症である場合や発症から時間が経過した症例では診断が困難なこともあります。

くも膜下出血見逃しの医療者側の問題として、CT所見の見落としがあります。診察する医師の習熟度に左右されます。例え軽症であっても、くも膜下出血が疑われる場合は血腫の検出にとらわれず「シルビウス裂の描出に左右差がある」「左右のシルビウス裂の描出が悪い」など本来描出されるはずの脳槽が明瞭ではないといった所見に注目することが重要となります。

また、血腫は頭頂部のくも膜顆粒に吸収される脳脊髄液の流れに乗るため、軽症症例の亜急性期では血腫が頭頂部にしかみられないこともあります。

頭部MRIのFLAIR画像は、血腫が非常に少ない場合や後頭蓋窩に限局する血腫については頭部CTを上回る診断能力を有しているとされるため、効果的です。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では、見逃すと怖い「細菌性髄膜炎」と「くも膜下出血」についてまとめさせて頂きました。

頭痛の原因として見逃すと命に影響を及ぽす可能性のある「細菌性髄膜炎」と「くも膜下出血」の診察について解説させて頂きました。

診察するうえで、その疾患を疑わなければ診断から遠ざかってしまいます。有効な診察と検査を効率良く行い、適切なタイミングで専門医療機関に紹介するためには、それぞれの疾患に特徴的な症状を十分に理解しておく必要があります。

また、診断のために最も重要なのは患者や家族から得られる臨床経過などの情報でありますが、患者から私たちが求めるキーワードを直接的に求めることは難しいと考えるべきです。つまり、断片的な情報と身体所見から疾患を疑い、関連するキーワードをさらに患者や家族から引き出す技術が必要です。

今回、頭痛をテーマに様々な話をさせて頂きましたが、てんかんについても意識障害を認めた際に注意しなければならない病態の1つとなります。てんかん発作については、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【てんかん発作の症状と対応方法についての記事はこちらから

リハビリくん
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参考文献

  1. 加川瑞夫,鰐渕博.くも膜下出血と頭痛.日本内科学会雑誌.第82巻,第1号,p55-59.
  2. 今尾幸則,渡曾祐隆.初療機関でくも膜下出血と診断できなかった頭痛患者に関する検討.脳卒中の外科.2016,44,p283-287.
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