【骨粗鬆症と生活習慣】問診で飲酒歴や喫煙歴を聴取することは重要

病態理解を深める
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リハビリくん
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こんにちは! リハビリくんです!

   

今回は飲酒や喫煙等の生活習慣・生活習慣病と骨折リスクの関係性について解説させて頂きます!

   

医療機関に入院している患者様、施設に入所している利用者様、地域で生活する高齢者、いずれであっても転倒予防は、リハビリテーション専門職に期待される1つの重要なポイントになると思います。

  

当然、転倒を発生させないのが1番望ましいのですが実際問題、転倒を0にするのは至難の業です。そのため、骨粗鬆症の影響により脆弱性骨折を特に発生しやすい対象者について、より注意しないといけないことを理解することが重要だと思います。

   

そこで、骨粗鬆症の病態理解を深めることが重要となりますが、加齢等の影響による原発性骨粗鬆症だけではなく、続発性骨粗鬆症の存在がポイントになります。生活習慣や生活習慣病も骨粗鬆症の発症に密接に関わっています。

  

今回この記事で、骨粗鬆症の病態理解から、生活習慣や生活習慣病がどのように骨折あるいは骨粗鬆症に関与するのか解説したいと思います。

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です

現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!

  

主な取得資格は以下の通りになります

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級


「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!

  

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原発性骨粗鬆症と続発性骨粗鬆症

生活習慣と骨粗鬆症を理解するうえで、疾患の病態をまずは整理しておく必要があります。

骨粗鬆症は低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患と定義され、原発性骨粗鬆症と続発性骨粗鬆症に分類されます。

原発性骨粗鬆症は低骨量をきたす骨粗鬆症以外の疾患、または続発性骨粗鬆症の原因を認めないものとなります。主には加齢や閉経などによる骨粗鬆症ということになります。

一方、続発性骨粗鬆症は、糖尿病などの代謝性疾患や甲状腺機能亢進症、性線機能低下症、副甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患、関節リウマチなどの炎症性疾患への罹患、ステロイドなどの薬剤使用によるものなど様々であり、不動などによる筋力低下やアルコール多飲、喫煙、低体重などもリスクとなることが知られています。

これらのリスクを有する患者では、特に転倒による脆弱性骨折に注意する必要があります。

生活習慣と生活習慣病はどちらも骨折に関与している

普段何気なく行っている生活習慣も骨折リスクと密接に結びつくことがあります。また、いわゆる生活習慣病である2型糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、慢性閉塞性肺疾患は骨折リスクとなることが知られています。

また、それ以外の生活習慣病として、肥満症、メタボリックシンドローム、脂質異常症、高血圧症、睡眠障害、サルコペニア・フレイル、認知症も骨密度とは独立した骨折危険因子とされています。

骨折防止対策を図るうえで大切なポイントとなる生活習慣・生活習慣病と骨折との関係性について後述させていただきます。

生活習慣と骨粗鬆症の関係性

飲酒と喫煙は骨粗鬆症のリスクと考えられており、実際に骨粗鬆症の予防と治療ガイドラインでも2006年版までは「過度のアルコール摂取」と「喫煙」は骨粗鬆症のリスク因子として薬物治療の開始基準になっていました。

近年、エビデンスレベルに関する概念が確立するにつれて、システマティックレビューなどが中心となってきました。そこで、飲酒や喫煙は倫理的にも無作為化割り付けのスタディデザインに馴染まないこともあり、現在では骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015の収載からは外れています。

しかし、過度のアルコールの飲酒や喫煙が骨粗鬆症のリスクであることは間違いありません。事項にて飲酒と喫煙との骨粗鬆症の繋がりについて解説していきます。

飲酒と骨粗鬆症について

過度のアルコール摂取はどの程度のことをいうのでしょうか。過度のアルコール摂取とは、1日3単位以上のアルコール摂取と定義されております。アルコール3単位とはアルコールの度数にもよりますが、日本酒だと3合程度、ビールだと中瓶3本程度となります。

アルコール摂取はアルコールそのものがリスクとなるというよりは、アルコール代謝の過程で発生するアセトアルデヒドがリスクとなると考えられています。

喫煙と骨粗鬆症について

喫煙については、摂取されるニコチンにより末梢血管の収縮が起こることや、骨折治癒にも悪影響が出ることが報告されています。

また、ニコチンは副交感神経に作用することが知られていますが、骨への作用のメカニズムについては明らかではありませんでしたが、近年ニコチンは迷走神経を介し血中RANKL/OPG比を上昇させることが明らかになりました。

RANKLは骨吸収を担う破骨細胞分化に必須のサイトカインであり、OPGはそのRANKLに結合して機能をブロックする可溶型受容体となります。つまりRANKL/OPG比が上昇すると、破骨細胞分化や機能が活性化され、骨吸収が充進することが骨粗鬆症のリスクとなることが考えられます。

アルコールは骨形成を抑制し、喫煙は骨吸収を活性化することから、飲酒と喫煙の両方を生活習慣にもつ人は、二重に骨粗鬆症のリスクを負うことになります。これらの人は、特に骨粗鬆症や脆弱性骨折の発生に注意が必要となります。

生活習慣病と骨粗鬆症の関係性

糖尿病と骨粗鬆症について

2型糖尿病は代表的な生活習慣病の1つであり、糖代謝障害により発症します。終末糖化産物(AGEs)の番積により、酸化ストレスや骨芽細胞の機能障害をきたすこと、またAGEsの受容体であるRAGEを介して血管障害が誘導されることなどが知られています。

また、骨密度が低下する1型糖尿病に対して2型糖尿病は骨密度が低下していないか、むしろ増加しているにもかかわらず骨の脆弱性が増大し、大腿骨近位部骨折のリスクも上昇することが報告されています。

2型糖尿病では、特に骨の材質特性が影響を受け、高血糖による酸化ストレスやAGEsの蓄積により、骨密度は保たれているにもかかわらず、材質劣化型の骨粗鬆症を呈すると考えられています。

骨強度は骨密度がその70%を、残りの30%を骨質が規定しているとされており、骨質は骨の構造特性と材質特性などにより規定されます。骨密度が保たれているため、骨密度測定などで発見されにくく、一方で骨質については現時点で骨粗鬆症の投薬開始基準がなく、骨折の発生には十分に注意が必要となります。

糖尿病については、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【糖尿病患者のリハビリにおけるリスク管理についての記事はこちらから

COPDと骨粗鬆症について

長期間のタバコ煙を主体とする有害物質の吸入曝露による肺の慢性的な炎症はCOPDの誘引となります。また、治療のために使用するステロイドや、酸素吸入などによる不動状態の持続が、さらなる骨粗鬆症のリスクとなります。

COPDの罹患患者では骨密度低下に基づく骨粗鬆症の診断基準で診断された患者割合より、骨折患者の割合のほうが高いことが報告されています。また、COPDの罹患患者では、骨質劣化型の骨粗鬆症も合併していることが示唆されています。

実際、COPD患者では皮質骨の多孔化など、構造特性の劣化が報告されていますが、酸化ストレスなどによる材質特性への影響も併存していると考えられます。

CKDと骨粗鬆症について

CKDはステージが浅い段階でも骨折リスクが増大することが知られていますが、eGFR<60ml/分/1.73m2では大腿骨近位部骨折の既往率が増大することが報告されています。

CKDステージ3以降では二次性副甲状腺機能亢進症を発症し、骨折リスクが増大すること、酸化ストレスにより材質劣化型の骨粗鬆症も合併するとされています。

CKD患者では骨密度低下でも脆弱性骨折の発生を予測することができますが、骨折リスクは骨密度低下から予測されるものより過大であることからも、転倒リスクの増大や材質劣化の関与が示唆されています。

慢性腎臓病(CKD)については、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【増加する慢性腎臓病(CKD)患者についての記事はこちらから

ロコモティブシンドロームと二次骨折について

ロコモティブシンドロームとは、日本整形外科学会が提唱している概念で、骨や関節、筋肉など運動器の衰えが原因で、「立つ」「歩く」といった移動機能が低下している状態のことをいい、転倒により発症する脆弱性骨折のリスクとなることが考えられます。

逆に、骨折(特に大腿骨近位部骨折)によってロコモティブシンロームを発症することも多く、二次骨折発生の大きな要因となっていると考えられます。

まとめ

生活習慣は様々な形で骨の健康に影響します。そのため、問診で飲酒や喫煙歴を聴取することは重要な理学療法評価の1つとなります。

お酒をたくさん飲む方、喫煙者、糖尿病患者は骨粗鬆症の診断歴がなくとも続発性骨粗鬆症のリスクがあるつもりで接する必要があります。

そして、骨粗鬆症のリスクが高く、更には転倒歴を有する方に対しては、転倒予防策に特に力を入れる必要があります。骨粗鬆症のリスクと転倒リスク因子を組み合わせて考えることで、効果的な転倒予防策を講じることができると考えます。

転倒予防策については、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【入院患者の転倒予防策についての記事はこちらから】【在宅で生活する高齢者の転倒予防策についての記事はこちらから

リハビリくん
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参考文献

  1. 東浩太郎.骨粗鬆症発症のメカニズム.CLINICAL PRACTICE OF GERIATRICS.p116-123.
  2. 山内美香,杉本利嗣.生活習慣病と骨粗鬆症.日本内科学会雑誌.104巻,11号,p2414-2420.
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