【手段的日常生活活動:IADL】屋外活動の制限はQOL低下を招く

臨床での悩み
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リハビリくん
リハビリくん

こんにちは!リハビリくんです!

  

今回は、IADL(手段的日常生活動作)に着目したリハビリテーションについて解説させていただきます。

   

高齢者における手段的日常生活活動(IADL)の制限、特に外出頻度減少や行動範囲縮小といった屋外活動の制限はQOL低下を招きます。

   

また、IADLに当てはまる買い物や公共交通機関を利用しての外出といった屋外活動は、リハビリテーションにおいて目標とすることも多いと思われます。

   

そこで、屋外活動に焦点を当て、屋外活動と身体機能および精神・心理機能との関連性やIADLの充実をめざした介入方法について解説していきます。

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です

現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!

  

主な取得資格は以下の通りになります

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級


「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!

  

最近気になっている資格なのですが、2023年より、日本急性期ケア協会が主催する急性期ケア専門士認定試験が実施されるようです。急性期ケア専門士は急性期ケア・急変対応におけるスペシャリストです。 状態変化の兆候をいち早く察知し、アセスメントから初期対応、 医師への報告など急性期におけるケアの実践を行えることを目指す資格となっています!

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IADLの加齢変化

IADLはADLよりも加齢に伴い制限を来しやすいことが知られています。IADLの指標の1つに、より高次の生活機能を評価することを目的として開発された老研式活動能力指標があります。

老研式活動能力指標は13の質問項目により構成され、項目1〜5の「手段的自立」項目6〜9の「知的能動性」項目 10〜13の「社会的役割」の3つの下位尺度について評価する評価法になります。

このテーマについては、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【老研式活動能力指標の評価方法についての記事はこちらから

過去の研究による年齢別・男女別の得点データによると、65〜69歳では男女ともに平均値11.8点となりますが、80歳以降になると男性の平均値が8.7点、女性の平均値が7.6点と大きく下がっております。

ADLと比較してIADLの方が加齢の影響を受けやすい原因としては、ADLは室内での能力が得点に反映されますが、IADLは屋外で活動していないと得点に反映できない要素がありますので、歳をとるごとに屋外活動が制限されることを表していると考えられます。

Frenchay activities index(FAI)は15項目(食事の用意・食事の後片づけ・洗濯・掃除や整頓・力仕事・買い物・外出・屋外歩行・趣味・交通手段の利用・旅行・庭仕事・家や車の手入れ・読書・勤労)の応用的ADLについて、実際に行っている頻度により0〜3点で評価します。

このテーマについては、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【IADL評価法:FAIについて解説についての記事はこちらから

屋外活動と身体機能との関連について

高齢期における運動機能はIADL遂行能力を維持するために重要な機能の1つであり、筋力・バランス機能・歩行速度・歩行持久力・手指巧緻性等、様々な運動機能が地域在住高齢者のIADL制限と関連することが報告されています。

また、加齢に伴うサルコペニアも高齢者のIADL制限のリスク因子であることが知られていますが、サルコペニアが単独でみられる高齢者よりも、サルコペニアと肥満が併存したサルコペニア肥満の高齢者のほうがIADL制限を招くことが指摘されています。

屋外活動と運動機能との関連については、外出頻度や生活空間、遠方への行動範囲などさまさな屋外活動の指標を用いて調査されています。

その結果から、地域在住高齢者の屋外活動遂行のためには歩行・バランス能力を中心とした運動機能の維持・向上が極めて重要であることが報告されています。

精神・心理面がIADLに及ぼす影響について

転倒恐怖感について

転倒に対する過度の恐怖感、いわゆる「転倒恐怖感」は多くの高齢者が抱いており、地域在住高齢者では25〜55%の者が転倒恐怖感をもっていることが報告されています。

この転倒への恐怖感によって、実際には遂行能力があるにもかかわらず、ADLの制限や行動範囲の縮小といった状況を引き起こすことも多く、高齢者のQOL低下を招いています。

実際、地城在住高齢者を対象とした報告によると、19〜35%の者が転倒恐怖感により活動を制限しています。また、ADLのなかでも特にIADLが転例恐怖感の影響を大きく受けるとされています。

地域在住高齢者の転倒については、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【在宅で生活する高齢者の転倒予防策についての記事はこちらから

転倒恐怖感に対するアプローチ

何故、転倒恐怖感が生じるのでしょうか。転倒恐怖感と運動機能・精神心理機能との関連について調べた報告によると、高齢者の転倒恐怖感については、精神心理機能よりも運動機能との関連が強いことがわかっています。

高齢者の転倒恐怖感は下肢筋力・バランス能力の低下・敏捷能力の低下・歩行速度低下といった様々な運動機能低下と関連していることが多くの研究によって報告されています。

このことから、運動機能レベルが低いために自信を失い自己効力感が低くなるという側面と、転倒恐怖感が強いため活動が制限され、運動機能レベルが低くなるという側面との両面を併せ持っていると考えられます。

転倒恐怖感をもっている高齢者が自信を取り戻すことができれば、日常生活を送るうえでの活動範囲の拡大に繋がります。過度の転倒恐怖を取り除くためには、身体的なスキルを向上させ転倒に対する自己効力感を高めることが有効です。

高齢者の転倒恐怖感には運動機能のなかでもバランス能力が大きく関与しており、特に前方および左右方向の重心移動能力が重要となります。具体的には、前方ステップ練習や側方ステップ練習、応用としてクロスオーバーステップ練習やタンデム歩行練習を行うとバランス能力の向上が望めるものと考えております。

バランス能力の評価方法については、Four Square Step Testが簡便で使用しやすいと考えています。FSSTについては、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【バランス:FSSTについての記事はこちらから

IADL充実に向けたアプローチ

日常の身体活動量の重要性

IADLについては、日常の身体活動量に影響を与え、身体活動量もまたIADLに影響を与えるという相互関係性があります。

IADLの項目(料理・洗濯・掃除・買物・電話応対)にも左右されますが、買物や洗濯については日常的な運動習慣がIADLの今後の自立度に大きく関係すると報告されています。

また、外出という視点でいえば、近隣に週1日以上外出しているかどうかによって、IADL制限に強く関連していることが報告されています。

外的環境も重要な要素となります。地域に安全で行きやすい公園や散歩道の有無によって外出頻度が変わることや自宅に階段がある人の方が階段がない人に比べてIADL遂行能力が維持されるという報告もあります。

多少のバリアがある生活環境の方が、日常の身体活動量の増加につながり、高齢者の運動機能の維持やIADL制限の予防に寄与すると考えられます。

IADL充実に向けた多面的アプローチ

前述したIADLと身体機能との関連について考えると、IADLの制限を防ぐには筋力、バランス能力や歩行能力の維持向上が有効であると考えられます。

しかし、実際に筋力増強運動、バランス練習や歩行練習などのトレーニングを実施しても、運動機能の向上は認められるものの、IADLの改善効果は得られない場合も多いと報告されています。

そのため、IADL充実のためには運動機能の向上のみならず、健康状態や環境面、心理・社会的特性、認知機能などさまざまな要因を考慮した広い視点で個別の方策を考えることが重要になります。

例えば、IADL制限に認知機能が深く関わっている症例であれば、運動機能の向上を図ることを目的としたアプローチに加え、認知機能にも対しても働きかける必要があります。そのため、例を挙げると、計算や語想起などの認知課題を遂行しながらバランス・歩行練習を行うというような二重課題条件下での運動トレーニングが有用であると考えられます。

上記は認知機能にフォーカスをあてた場合となります。このように、IADL充実のためには、個々の対象者のIADL制限に対して課題特異的かつ多面的な要因を考慮したプログラムを実施していくことが重要となります。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では、IADLに着目したリハビリテーションについてまとめさせて頂きました。

地域在住高齢者におけるIADLの低下はフレイルあるいは生命予後不良の予測因子としても注目されています。

特に外出頻度の低下や、生活空間の狭小化といった屋外活動の制限は、ADLや身体機能・認知機能の低下を加速させる危険因子とされており、さらなる屋外活動の制限を引き起こすという悪循環を招く可能性があります。

対象者の個別性を重視し、日常の生活に無理なく取り入れられるIADL充実に向けたプログラムを立案し、生活習慣の1つとして定着させることでIADL障害の予防や活動的な地域生活の継続に結びついていくと考えられます。

この記事ではADLの中でもIADLについて中心に考えを述べさせていただきました。BADLについては他の記事で、より詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【ADL評価法はどれを使えばいい?についての記事はこちらから

リハビリくん
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参考文献

  1. 小林竜,野村めぐみ,小林法一.わが国における地域在住高齢者の手段的日常生活活動(IADL)維持・低下に関連する要因.The Journal of Japan Academy of Health Sciences.p60-74.
  2. 宮原洋八,西三津代,萩裕美子.地域在住高齢者の自立と運動機能、日常生活活動、社会的属性との関連.理学療法科学.2010,25(2),p217–222.
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