ベッドポジショニングの基本とコツ|7つのポイントを遵守し拘縮防止

褥瘡対策
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リハビリくん
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こんにちは!リハビリくんです!

   

こちらでは「ポジショニングの基礎知識」をキーワードに記事を書いていきます!

   

医療・介護の現場で欠かせないものがポジショニングになります。ポジショニングの良し悪しは褥瘡発生リスクに直接的に繋がるといえます。普段何気なく行っているポジショニングですが、その実態は、複雑な支援技術となります。医療や介護に携わるものであれば、一度はその手技を学んでいると思いますが、患者や利用者には複雑な関節拘縮などで難事例となっていることも少なくなく、思うようにポジショニングができないことがあると思います。

   

適切なポジショニングを行うには、介護する側とされる側、それらを取り巻く環境を理解することが重要になります。基本的な概念や原理と理論をうまく使い、個別に対応することがポジショニングの質の向上に繋がります。

   

  • ポジショニングの定義は?
  • ポジショニングの7つのポイント
  • 何に気をつけて身体を動かせばいいのか?
  • ポジショニングにおける物品の使い方

   

ポジショニングは褥瘡予防の観点から非常に重要な手技となります。そんなポジショニングを行ううえで色々と悩む方もいらっしゃると思います。そんな方のために、こちらの記事を読むことで上記の疑問が解決できるようにしたいと思います!是非、最後までご覧になってください!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

現在、理学療法士として得意としている分野は「脳卒中」「褥瘡」「栄養」「呼吸」「摂食・嚥下」「フレイル・サルコペニア」についてです。そのため、これらのジャンルの記事が中心となっております。

  

主な取得資格は以下の通りです

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級


   

ここ近年は新型コロナウイルスの影響もあり、外部の研修会などに参加する機会も減少していると思います。また、職場内での勉強会も規模が縮小している施設が多いのではないでしょうか?

このような状況ではありますが、医療職として知識のアップデートは必要不可欠ですよね。

こんな悩みを抱えるリハビリテーション専門職の味方になってくれるのが「リハノメ」です!

    

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ポジショニングの定義と基本

ポジショニングの定義は、いくつかの異なる記述があります。現状、褥瘡予防におけるポジショニングの定義については、明確には定められておりません。

そんななかでも、今まで提唱されてきたポジショニングの定義をいくつか紹介します。

  • 「患者が楽になるために、あるいは診断・外科手術・治療処置を容易にするために取る体位または姿勢」
  • 「身体を動かさないことから生じる悪影響に対して、予防的な対策を講じること」
  • 「皮膚統合性促進、拘縮の予防、さらに十分な換気を行うための多くの技法があり、ポジショニングとは静的ではなく動的な過程として考えるべき」
  • 「動けないことにより起こるさまざまな悪影響に対して予防対策を立てること、自然な体軸の流れを整えるとともに、安全・安楽な観点から体位を評価し、現状維持から改善に役立つよう、体位づけの管理を行うこと」

ポジショニングの7つのポイント

寝姿勢のポジショニングを行ううえで、重要となるのは下記に記述する7項目に沿ってポジショニングに行うことになります。

  1. 姿勢の捻れや傾きがないように体位を整える
  2. 頭部→上半身→下半身の順序で体位変換を行う
  3. 点ではなく面で支える
  4. 物品の使用方法を適切に
  5. 背抜きを徹底して実施する
  6. 重力を利用したポジショニングを立案する
  7. 適度に関節を動かす機会をつくる

姿勢の捻れや傾きがないように体位を整える

基本的にですが、私たちが日常で生活していて行う基本動作については、重力に反発して行う必要があります。加えて、バランスを維持するために適当に身体を調整しなくてはなりません。

この能力は、正常姿勢制御機構といわれています。特徴は以下の通りになります。

  1. 正常な筋組織の緊張状態である
  2. 相反神経支配もしくは相反抑制が適切に機能している(体のある部分を固定して、その間に身体のほかの部分を選択的に動かすことを可能にする)
  3. 共通の動作パターンによって決まる

正常姿勢制御機構は、健全な成人の脳の働きを前提とし、すべての巧緻動作の基礎となっており、自動的なバランス反応を行っていると考えられております。動きとして極微小な筋緊張の変化から体幹や四肢の大きな動きまで、広範囲にわたって制御しております。

しかし、変形・拘縮・麻痺などにより身体の捻れ が発生したり正中位を保てなくなった場合、正常姿勢制御機構が十分に機能できなくなります。

正常姿勢制御機構が十分に機能できない(動きづらい)状態が持続されると、血液の流れを悪くし、関節やその周囲へ十分な栄養を送ることができなくなります。その結果、皮膚や筋肉を硬く伸びにくくし、関節が動きにくくなるという負のサイクルに陥ります。

そのため、正常姿勢制御機構が機能するようにアライメントを調整することが重要になります。しかし、麻痺や拘縮により正中位に整えることができない症例もあると考えられますので、その対象者に適した無理のない範囲で調整を行う必要があります。

頭部→上半身→下半身の順序で体位変換を行う

人間の身体は、頭部・胸部・腹部・四肢に分節されており、それぞれが連動してダイナミックな動きや細かな動きを構成します。

頭部・胸部・腹部は特に重要な器官であり、これらにより人間の身体はコントロールされてるといっても過言ではありません。頭部・胸部・腹部では、以下の制御を行っております。

  1. 頭部はすべての動きを主導する
  2. 胸部は上肢と上半身の動きをコントロールする
  3. 骨盤は下肢と下半身の動きをコントロールする

この仕組みを理解したうえでポジショニングを行う必要があります。要するに、姿勢を整える際には、頭部→上半身→下半身の順序で身体を動かしていく必要があります。

点ではなく面で支える

身体を支える際に、点ではなく面で支えることには2つの目的があります。

1つは、体位を安定させるためです。体位を安定させるためには、物体の重心線が支持基底面に中に入っているかどうかが重要となります。重心線が基底面をはずれている場合には姿勢は「不安定」な状態となり、重心線が基底面を通る場合には姿勢は「安定」します。

そのため、寝姿勢を安定させるためには、重心線が支持基底面内に入るようにすることは当然のこと、加えて安定性を有利にするために基底面をできるだけ広くとれるようにすることが重要になります。

2つめの目的が圧分散を図るためです。歳を取ると痩せることにより、仙骨部などの骨突出の程度が強くなります。マットレスやクッションで身体を支える際には、接触面が狭い場合と広い場合では、広い面で身体を支えた方が局所の接触圧が低くなることがわかっております。

したがって、姿勢を整える際には、体位の安定と圧分散の両面から、点ではなく面で支えることを基本に考える必要があります。

物品の使用方法を適切に

上記の点ではなく面で支えるで説明したように重心線を支持基底面内に収め、広い面積で身体を支えるにはポジショニングクッション等の物品が必要になることがあります。

特にこれは、加齢による痩せにより、骨突出の程度が増強した場合、変形・拘縮や麻痺のために正常なアライメントを維持することができなくなった場合に必要性が高まります。

ポジショニングクッション等の物品も、ただ闇雲に使えばいいというわけではありません。使い方によっては、不適切な圧分散や筋緊張から苦痛・疲労を招くことがあるので、注意する必要があります。

クッションを深く挿入しすぎると、局所圧を増強させてしまうことになりますし、挿入が浅いと時間経過によりクッションが弾き出されてしまい、使用する意味がなくなってしまいます。

使用する物品の形状・素材について考慮することも必要ですが、同様に物品の挿入の深さや当て方など、使用方法も検討することでポジショニングの質の向上へと繋がります。

褥瘡予防の観点でポジショニングを行う場合、クッション等の物品の理解も重要ですが、体圧分散マットレスについての知識も欠かすことができません。このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【体圧分散マットレスの種類と選び方についての記事はこちらから

背抜きを徹底して実施する

摩擦力は身体と接触面に働き、臨床では「ずれ力」とも呼ばれています。褥瘡予防においては、重要な予防要因になっており、この摩擦力は体位変換する際にはいつでも生じるものとなっています。

臨床で行われる摩擦力への介入は「背抜き」と表現されています。日本褥瘡学会によると背抜きは「ベッドや車椅子などから一時的に離すことによって、ずれを解放する手技である」と定義されています。

私たちが一般的に考える「背抜き」は、臥床患者のベッドの頭側を挙上する際に、重力の関係で身体が下方へ下がることで生じる身体背面への摩擦力を軽減する方法として行うものだと思います。

しかし、実際には挙上されている頭を下げる際にも、仰臥位の患者を側臥位に体位交換する際にも、ベッドに接する面には摩擦力が生じています。そのため、本来ならば背抜きが行われなくてはいけませんが、ベッドの挙上時の時ほど背抜きが実施されない傾向があります。

ポジショニングにおいても背抜きを徹底することで、摩擦力の軽減や姿勢の快適化を図ることができます。

摩擦力については褥瘡発生要因の1つになります。褥瘡予防のためには発生リスクをアセスメントすることが重要になります。このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【褥瘡のリスクアセスメントスケールについての記事はこちらから

重力を利用したポジショニングを立案する

人の身体を含め、地球上にあるすべての物体は重力の影響を受けます。そのため、ポジショニングを行う際には、重力の影響を考慮することが重要になります。

脳卒中の後遺症により、右下肢の内転筋・内旋筋の緊張が亢進し、右股関節が内転・内旋位へと、それに伴い右膝関節が曲がり始めてきた症例を想像してみます。

このような症例の場合、左側臥位をとることで右下肢の内転・内旋を助長させるかもしれません。反対に右側臥位をとり重力を利用して外転・外旋方向に力を加えた方が良いと考えられます。

ポジショニングでは、ただ闇雲にクッションを入れるのではなく、重力を利用して拘縮予防・改善に向かうように介入することが重要になります。

医療でも介護でも1人の患者を24時間見続けることはできません。常に発生し続ける重力という存在をうまく味方につけたポジショニングを立案することが望まれます。

適度に関節を動かす機会をつくる

関節や筋肉は動かさないと徐々に固くなり、動きづらい状態へとなります。関節の動きが制限されると血液の流れが悪くなり、関節やその周囲へ十分な栄養を送ることができなくなり、結果として拘縮に至ります。

関節を動かさない期間について、動物実験では2〜3日で組織に拘縮が起こり始めると指摘されています。また、長時間筋肉を緊張させておくと血液の循環が悪くなり、筋肉は酸素欠乏となり乳酸の量が増加します。

その結果、痛みの発生や精神に異常を来たし、それが原因となって筋肉がさらに緊張するという過緊張状態に至ります。

以上のことから、いかなる状況であっても不動状態の持続を避け、適度な頻度で身体を動かすことが必要になります。

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まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「ポジショニングの基礎知識」をキーワードに考えを述べさせていただきました。

ポジショニングについては、リハビリテーション専門職の専門分野というわけではないと思いますが、病院や施設で働いていると基本的には頼られることが多いのではないかと思います。

また、私も経験がありますが、看護士や介護士向けにポジショニングの研修会を依頼されることもあるのではないでしょうか?そんな時に、この記事を読むことで参考になればいいと考え、まとめさせていただきました!

皆様の施設では褥瘡に対する評価はどのような方法で行っているでしょうか。本邦で最も一般的な評価法はDESIGN-R®2020になると考えられます。このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【DESIGN-R®2020:褥瘡についての記事はこちらから

参考文献

  1. 玉城有里,林直子,大城祥子,奥間政礎,久手堅みゆき.褥瘡対策において効果的なポジショニングの理解と実践.沖縄赤十字医誌.25(1),2019,p37-40.
  2. 浅田恵子.褥瘡発生予防ケア.昭和学士会誌.第74巻,第2号,2014,p115-119.
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