【がん性疼痛の評価方法】理学療法や作業療法で癌の痛みに向き合う

病態理解を深める
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リハビリくん
リハビリくん

こんにちは!リハビリくんです!

  

今回は、がん性疼痛のアセスメント方法について解説させて頂きます!

    

がん患者の多くは、身体的な痛みだけではなく、精神的・社会的・スピリチュアルな苦痛を抱えております。それらが互いに影響し合い、日常生活に支障をきたし、QOLが維持できずに低下してしまうことがあります。

     

私も含め、リハビリテーション専門職の方であれば、リハを実施する際にも痛みの影響により、思うようにプログラムを行うことができないまま、患者の身体機能やQOLの低下を身をもって経験した方が多いのではないでしょうか。

   

がん患者を痛みから解放することは優先事項であり、苦痛の程度はリハビリテーションの内容にも大きく関わります。鎮痛剤の選択や投与については、リハビリテーション専門職が直接的に関与できる範囲ではないと思いますが、痛みのアセスメントについては私たちが直接的に関わることができる分野になります。

   

がんのリハビリテーションに携わる方の一助となることを目的に、患者様の痛みを考えるうえで必要な痛みの特徴、評価方法やWHO方式癌疼痛治療について、まとめさせて頂きます!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

現在、理学療法士として得意としている分野は「脳卒中」「褥瘡」「栄養」「呼吸」「摂食・嚥下」「フレイル・サルコペニア」についてです。そのため、これらのジャンルの記事が中心となっております。

  

主な取得資格は以下の通りです

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。

  

療法士の働き方に対する記事の 1 つが右記になりますが、"理学療法士は生活できない?PTが転職を考えるべき7つのタイミング"こちらの記事は検索ランキングでも上位を獲得することができております。興味がある方は、こちらの記事も目を通してくれると幸いです☺

痛みの定義

痛みについては、「組織の損傷あるいは損傷を引き起こす可能性、またはそのような障害の際に表現される不快な感覚や情動体験」と定義されています。

そのため、痛みは感じている本人にしかわからず、感じ方は千差万別で訴え方も様々となります。さらに、聞き手により得られる情報にも差があり評価は難しいものとなります。

したがって、痛みの知識に基づき意図的に聞いていくことが重要であり、特にリハビリテーションを行う際には痛みの包括的なアセスメントを行うことが重要となります。

Total pain(全人的痛み)

がん患者の多くは、身体的な痛みだけではなく、精神的・社会的・スピリチュアルな苦痛を抱えており、それらが互いに影響し合っています。

「患者の病気」に焦点を合わせるのではなく、患者を「病気を持った人」として捉える視点が重要
となり、患者の苦痛を緩和するためには全人的アプローチが必要になります。

このテーマについては、他の記事でさらに詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【がん患者の痛みや苦痛についての記事はこちらから

がん疼痛治療の基本

WHO(世界保健機関)が普及させた「WHO方式がん疼痛治療法」を実践することで、70〜90%の患者で効果的に痛みの軽減が得られることが明らかになっています。

こちらでは鎮痛剤の投与方法の重要性と鎮痛剤の選択方法について、わかりやすく提示されています。鎮痛剤投与方法の4原則を以下に記載します。

  1. 「経口的に」:可能な限り経口投与で行う
  2. 「時間を決めて規則正しく」:決まった時間に投与し、痛みが取れるまで段階的に増量する。薬の効果がなくなる前に次の投与を行う
  3. 「投与量は個々の患者に合わせて」:患者個々の痛みのマネジメントは、上記の2項目とともに痛みの種類、痛みの部位、最適な治療の決定について、注意深く評価を行う。適切な投与量とは、患者の痛みを患者自身が許容できるレベルまで緩和できる用量のことである
  4. 「そのうえで細かい配慮を」:患者やその家族の方に、服薬指導(鎮痛薬の名前、服用方法、注意点や保管方法など)、鎮痛薬の副作用対策の必要性や予防方法などをわかりやすく説明し書面などを渡す。また、患者の心の状態への配慮も必要である

がん性疼痛の評価方法

痛みの神経学的分類や発生メカニズムを理解したうえで、痛みのパターン、強さや性質などから適切に痛みを評価することが重要になります。

痛みの性質と強さ

痛みの部位

ボディーチャートの使用や自身の体を指しながら、痛みの部位を確認します。痛みの部位は限局的なのか全体的か、1箇所なのか複数箇所なのか評価します。尋ねるだけでなく、痛みの部位の視診触診・感覚の変化・圧痛腫脹の有無・組織の硬さなどを確認します。

痛みの始まりと経時的変化

痛みは1日の中でいつ頃あるのか、頻度はどの程度なのか、時間経過で痛みの変化はあるのかを確認します。

持続痛(安静時も含めて1日中)なのか、突出痛(何かの拍子または突然に一過性に痛みが出現する)なのか、またはその両方なのかもポイントです。

持続時間や発作的な痛みの変化は、鎮痛効果・痛みの程度の指標となります。痛みのパターンを知ることは、生活上や鎮痛薬投与時間の工夫に繋がります。

痛みの性質

特徴的な表現としては以下のようなものがありますが、痛みを表現するのは難しいこともあるので無理に当てはめる必要はありません。対象者の表現を大切にしましょう。

・体性痛→「ズキッ」「うずくような」
・内臓痛→「鈍い」「重い」「ひきつるような」
・神経障害性疼痛→「ビリビリする」「しびれるような」「電気が走る」

痛みの強さ

最大時の痛みの強さだけでなく、最小時の痛みの強さも確認します。対象者が表現しにくい場合は、理解度などに合わせて、表現しやすいスケールを選択し、そのスケールを継続して使用すると効果的です。痛みの評価スケールを紹介します。

Visual Analogue Scale(VAS)

100mmのスケールを患者に見せて、現在の痛みがどの程度かを指し示す視覚的なスケールとなっています。以前の痛みの強さを評価しても同じ地点を示すことが難しく再現性が乏しいため、認知機能が低下している方には相応しくないと考えられます。

Numerical Rating Scale(NRS)

痛みの強さの範囲を0〜10までの11段階に分けて、現在の痛みがどの程度かを指し示す段階的スケールになります。痛みの強さを自己評価できる患者が対象となります。

Verbal Rating Scale(VRS)

痛みの強さを表す言葉を並べ、順位付けをして答えてもらう段階的スケールになります。認知機能が低下した患者でも使用可能であるところが利点です。回答を得やすい反面、評価の詳細性に欠けるかもしれません。

Face Rating Scale(FRS)

患者の表情によって痛みの強さを判定する方法になります。主に、高齢者や小児に使用しますが、顔の表情を用いて評価しているため、痛み以外の様々な要因(精神的な側面等)が影響する可能性があります。

その他の方法について

痛みの評価は上述した評価スケールを使わないと評価できない訳ではありません。評価スケールに頼らず多角的な視点から痛みを評価するのもいいと思います。下記に例を示します。

  • 痛みの部位、持続時間の変化
  • 「楽になった」のような発言(言葉)
  • 表情の変化
  • 痛みを示す行動、姿勢、態度の変化
  • 痛みによりそれまでできなかった動作ができるようになる

痛みの評価方法については、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【完全版:痛みの評価方法についての記事はこちらから

痛みの影響因子

痛みは様々な因子で影響を受けます。痛みが強くなる因子や、痛みが和らぐ因子を尋ねることで、痛みの増強因子を避け、緩和因子を活かしたケアの工夫につなげることができます。

痛みの原因を診断するために必要な身体所見および画像検査

視診により皮膚転移や帯状疱疹などの痛みを確認します。四肢のリンパ浮腫、筋力低下や左右の対称性などを評価します。画像検査は全身状態や病態の把握だけでなく、痛みの評価にも重要となります。

心理・社会およびスピリチュアルなアセスメント

鎮痛薬や病状、痛みに対する患者の認識を把握します。疼痛治療やオピオイドに対する誤解や不安、信念に配慮した患者教育が必要となります。対象者が痛みを我慢しないで訴えることができるような、良好な環境である必要があります。

疼痛コントロール目標

患者の目標と医療者側の目標が一致していないと、除痛ができても患者の満足が十分に得られな
い場合があります。徐痛ができていても、満足していない為に除痛の程度を訴えられないかもしれません。そのため、痛みのアセスメントを行った後は、痛み治療の目標について患者と合意する必要があります。

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まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!こちらの記事では、がん性疼痛のアセスメントについてまとめさせて頂きました!

がん患者にとって痛みを軽減あるいは消失させることは非常に重要なことであり、そのためには痛みのアセスメントを正確に行い、がん性疼痛の特徴(痛みの部位、痛みの性質、痛みの強さ、痛みが出るタイミング等)を捉える必要があります。

がん性疼痛に限りませんが、痛みの評価は非常に難しいものだと考えられます。これについては、知識力というよりは経験値がものを言うと思いますので、痛みの評価を行うスキルを高め、多職種と連携・協働できるようにしていきましょう!

がんのリハビリテーションの目的やエビデンスについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【がんのリハビリテーションの目的についての記事はこちらから

参考文献

  1. 千葉詩織,佐藤冨美子,佐藤菜保子.医療用麻薬服薬中の外来進行がん患者のがん疼痛セルフマネジメントと痛みの関連.Palliat Care Res.2019,14(2),p113–126.
  2. 浜善久.緩和ケアの理念とがん性疼痛の特徴.信州医誌.2007,55(5),p233-238.
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