パーキンソニズムとは?パーキンソン病との違いと症状について解説

病態理解を深める
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リハビリくん
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いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!

   

この記事は「パーキンソニズム」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

   

パーキンソニズムを呈する疾患の一群をパーキンソン症候群と呼びます。パーキンソニズムを呈する疾患は、パーキンソン病を始めとして進行性核上性麻痺や多系統萎縮症など様々な変性疾患があります。

  

パーキンソン病およびパーキンソン症候群ともに、早期からのリハビリテーションが重要となりますが、病態や経過について類似する点もあれば、相違するところもあるため、それらを理解し、リハビリテーションプランを構築することが重要になります。この記事では、パーキンソンニズムを呈する疾患についての基礎知識をまとめさせて頂きます!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

登録理学療法士

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

近年は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の知識や技術の定着における手段も多様化しております。以前は職場内の勉強会であったり、外部の研修会に参加するなどが一般的でありましたが、現在では働き方改革、ライフワークバランスなどの用語が浸透したことも有り、昔ほど「勉強しなさい。」と言われることはなくなったと思います。

  

しかし、医療職として、患者様や利用者様の未来を預けられた療法士として、やはり知識のアップデートは必要だと思います。何より、新しい知識や技術を取り入れていった方が、自分自身が療法士として充実した日々を送ることに繋がるはずです。そこで、今の時代にあった勉強方法は何だろうか?という話になりますが、そんな人の味方になってくれるのが「リハノメ」です。

    

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パーキンソニズムとは

変性疾患としては、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、多系統萎縮症、レビー小体型認知症、非変性疾患としては、血管障害性パーキンソニズム、特発性正常圧水頭症、向精神薬などによる薬剤性パーキンソニズムなどが当てはまります。

このほかに、インフルエンザ脳症の後遺症や練炭などの一酸化炭素中毒の後遺症・外傷後パーキンソニズムなどがあります。

パーキンソン症候群には、「治療が可能であるもの」「症状の改善が期待できるもの」「現時点では治療効果が期待できないもの」に分類されます。

パーキンソン病とは

日本では有病率は人口10万人当たり100〜150人と推定されており、パーキンソニズムを呈する変性疾患の中で最も患者数が多くなっています。

人口構成の高齢化に伴い有病率は増えてきています。発症年齢は50〜65歳に多く、40歳以下で発症するものは若年性パーキンソン病と呼ばれます。

パーキンソン病の症状

運動症状・非運動症状に分類することができます。

運動症状

初発症状は振戦が最も多く、次に動作の拙劣さが続きます。痛みで発症する症例もあり、姿勢反射障害、すくみ足が初発症状となることはあまりありません。

パーキンソン病は片側の上肢または下肢から発症し、病気の進行とともに症状は対側にも及びます。進行は緩徐であり、症状の左右差については進行してからも維持される症例が多くなります。

すくみ足は、方向転換を行うとき、狭い場所を通過するときに障害が目立ちます。二重課題の能力は運動に限らず思考も低下します。1つのことに意識を集中すると、他のことに気を配れなくなります。

非運動症状

上記の運動症状に加えて、多彩な非運動症状が認められます。最近ではこの症状の一部である嗅覚異常について、発症前症状としても注目されています。

脱抑制性の病的精神状態・衝動制御障害(病的賭博・買い物依存・性行動亢進・過食・爆発的攻撃行動など)については、他人からみて今行う必要のないことに没頭して寝食や服薬、排泄を忘れる反復常同行動などがあり、若年者に多い特徴となっています。

このほか睡眠障害(昼間の過眠・REM睡眠行動異常)自律神経障害(便秘・頻尿・発汗異常・起立性低血圧)嗅覚の低下、痛みやしびれ、浮腫など様々な症状を伴うことが知られるようになり、パーキンソン複合病態として認識すべきとの考えも提唱されています。

診断基準について

以下の4項目を満たした場合、パーキンソン病と診断します。

  1. パーキンソニズムがあり、次のいずれかに該当する (1)典型的な左右差のある安静時振戦(4〜6Hz)がある (2)歯車様強剛・動作緩慢・姿勢反射障害の中から、2つ以上が存在する。
  2. 脳CTまたはMRIに特異的異常がない。
  3. パーキンソニズムを起こす薬物・毒物への曝露がない。
  4. 抗パーキンソン病薬(ドパミン受容体刺激薬またはL-ドパ)にてパーキンソニズムに改善がみられる。

画像所見について

脳CTまたはMRIに特異的異常を認めないことが特徴になります。

治療について

すべての治療は対症療法になります。症状の程度によって適切な薬物療法や手術療法を選択します。

薬物療法

パーキンソン病治療の基本薬はドパミン受容体刺激薬とL-ドパになります。L-ドパの長期使用に伴う副作用として、効果持続時間が短くなり、次の服薬の前に薬効が切れるwearing-off現象の出現があります。

Wearing-offを回避するためにL-ドパを追加すると、ドパミン受容体が過剰に刺激されてジスキネジアが出現することがあります。

手術療法

手術療法は、薬物治療にて効果が不十分な主要運動症状および運動症状の日内変動とジスキネジアに対して行います。手術療法については、脳深部刺激療法(視床下核刺激術、淡蒼球刺激術、視床刺激術)と定位的破壊術(視床破壊術、淡蒼球破壊術)がありますが、現在は脳深部刺激療法、なかでも視床下核刺激術が主流になっています。

パーキンソン秒の症状や診断基準、治療法について解説させて頂きましたが、パーキンソン病のQOL評価については、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【PDQ-39を解説!パーキンソン病QOL評価についての記事はこちらから

進行性核上性麻痺(PSP)

進行性核上性麻痺は、核上性注視障害・姿勢反射障害による易転側性が目立つパーキンソニズムおよび認知症を主症状とします。

症状

40歳以降で発症することが多く、特徴としては以下の1〜4が当てはまります。

  1. 垂直性核上性眼球運動障害(上下方視の制限)
  2. 発症早期(発症1〜2年以内)から姿勢の不安定さや易転倒性(すくみ足・立ち直り反射障害・突進現象)を認める
  3. 無動あるいは筋強剛があり、四肢末梢よりも体幹部や頚部で症状が強い
  4. 進行性の構音障害・嚥下障害、前頭葉性の進行性認知障害(思考の緩慢化、想起障害、意欲低下)を認める

初発症状はパーキンソン病に似ていますが、安静時振戦は稀で、歩行時の易転倒性・すくみ足・姿勢反射障害が目立ちます。

進行するにつれて、頚部の後屈と反り返った姿勢、垂直性核上性眼球運動障害、構音障害や嚥下障害、想起障害と思考の緩慢を特徴とする認知症や注意力低下が出現するようになります。

そして、徐々に歩行不能となり立位保持もできなくなります。ADL低下は速く、車椅子が必要となるのに2〜3年、臥床状態になるのに4〜5年という研究結果も報告されています。平均罹病期間は5〜9年という報告もあります。

治療

抗パーキンソン病薬への反応は不良となっています。一時的には抗うつ薬やドロキシドパで症状が改善することがありますが、治療手段がほとんどないのが現状になります。

大脳皮質基底核変性症(CBD・CBS)

大脳基底核および大脳皮質の神経細胞が脱落し、タウ蛋白という異常なタンパク質が蓄積する変性疾患です。大脳基底核の症状であるパーキンソン病様の運動症状(筋肉の硬さ、運動の遅さ、歩行障害など)と大脳皮質の症状(手が思うように使えない、動作がぎこちないなど)の両者を併せ持つことが特徴となります。

症状

発症年齢は40〜80歳代が多く、平均60歳代となります。症状は、大脳基底核の症状と大脳皮質の症状に分類されます。

  1. 大脳皮質徴候:前頭葉・頭頂葉の徴候がみられます。認知機能障害・四肢の失行・行動異常・失語・皮質性感覚障害・他人の手徴候などが出現します。
  2. 体外路徴候:パーキンソニズム(無動・筋強剛・振戦・姿勢保持障害)、ジストニア、ミオクローヌス、転倒などが出現します。

上記神経所見は、病初期から顕著な一側優位性がみられることが多いのが特徴となります。発症から臥床状態になるまでの期間はPDよりも短い(5〜10年)と報告されています。

治療

L-ドパや他の抗パーキンソン病薬への反応は不良となります。抗うつ薬・ドロキシドパ・経頭蓋磁気刺激などが試みられていますが、効果はあっても一時的となります。

無動・筋強剛に対してL-ドパが、ジストニアに対して抗コリン薬・筋弛緩薬が試みられます。ミオクローヌスに対してクロナゼパムが有効ですが。眠気・ふらつきの副作用があります。

ボツリヌス注射は、ジストニアや開眼困難などの眼瞼の症状に有効となります。

多系統萎縮症(MSA)

主要症候は小脳症候、パーキンソニズム、自律神経障害となります。 発病初期から前半期にはいずれかの主要症候が中心となりますが、進行期には症状が重複します。

症状

発症年齢は30歳以降となっています。

  1. 脳症候:歩行失調(歩行障害)と声帯麻痺、構音障害、四肢の運動失調または小脳性眼球運動障害
  2. パーキンソニズム:筋強剛を伴う動作緩慢。姿勢反射障害(姿勢保持障害)が主で(安静時)振戦などの不随意運動の出現は稀
  3. 自律神経障害:排尿障害、頻尿、尿失禁、頑固な便秘、勃起障害、起立性低血圧、発汗低下、睡眠時障害(睡眠時喘鳴・睡眠時無呼吸・REM睡眠行動異常)など
  4. 錐体路徴候:腱反射亢進とバビンスキー徴候・チャドック反射陽性、他人の手徴候・把握反射・反射性ミオクローヌス
  5. 認知機能・精神症状:幻覚(非薬剤性)、失語、失認、失行(肢節運動失行以外)、認知症・認知機能低下

日本の研究結果によると、中央値として発症後約5年で車椅子生活、約8年で臥床状態となり、罹病期間は9年程度と報告されています。

治療

パーキンソン症状に対しての抗パーキンソン病薬は、初期にはある程度有効となります。

自律神経症状や小脳失調症には、それぞれの対症療法を行います。呼吸障害には非侵襲性陽圧換気法などの補助が有用であり、進行具合によっては気管切開を必要とする場合があります。

レビー小体型認知症(DLB)

レビー小体型認知症の診断には、社会的あるいは職業的機能や、通常の日常活動に支障をきたす程度の進行性の認知機能低下を認めることが必須となります。

症状

病初期には記憶障害が目立たない場合があり、記憶以外の認知機能(注意・遂行機能、視空間認知など)の障害や、REM睡眠行動異常、パーキンソニズム、自律神経症状、嗅覚障害、うつ症状などの有無に留意することが早期診断のポイントとなります。

中核的特徴

1〜3については早期から出現し臨床経過を通して持続することが多い

  1. 注意や明晰さの著明な変化を伴う認知の変動
  2. 繰り返し出現する構築された具体的な幻視
  3. 認知機能の低下に先行することもあるREM睡眠行動異常
  4. 特発性のパーキンソニズムの以下の症状のうち1つ以上:動作緩慢、寡動、静止時振戦、筋強剛

支持的特徴

抗精神病薬に対する重篤な過敏性、姿勢の不安定性、繰り返す転倒・失神または一過性の無反応状態のエピソード、高度の自律機能障害(便秘・起立性低血圧・尿失禁など)、過眠、嗅覚鈍麻、幻視以外の幻覚、体系化された妄想(アパシー)、不安、うつ

治療

パーキンソン病治療薬は幻覚や妄想を生じやすくなるため注意が必要です。コリンエステラーゼ阻害薬(認知症治療薬)が有効なこともあります。

脳血管性パーキンソニズム(VP)

多発性脳梗塞に伴う歩行障害を主体としたパーキンソニズムとなります。

症状

パーキンソン病の症状と異なる部分が多いことが特徴です。

  1. 振戦:出現頻度は低く、たとえ出現しても一定の姿勢をとった時のみ生じます。典型的な静止時振戦が生じることはほとんどありません。歩行は小刻みで緩慢であるが、開脚位をとり、PDの前傾屈曲位の歩行とは異なります。
  2. 筋強剛:高頻度に出現するものの程度は軽く、持続性の鉛管様抵抗であって歯車様抵抗は認めません。
  3. 多発梗塞の特徴:多発梗塞の特徴を反映して、緩徐進行性ないし階段状に進行します。進行が一旦停止したり一定の改善を示すこともあります。

脳血管性病変の増加に対応して、運動機能は徐々に進行します。パーキンソン病よりも速く歩行不能になり、車椅子生活に移行し、認知障害や尿失禁が加わって臥床状態へと移行していきます。

治療

パーキンソン病治療薬の反応は不良となります。

正常圧水頭症(NPH)

成人に発症する水頭症で、髄液圧が正常範囲にあるため正常圧水頭症と呼ばれます。

原因がはっきりしない特発性正常圧水頭症(iNPH)と、くも膜下出血・外傷・髄膜炎などの原因が明らかな続発性正常圧水頭症とに分類されます。

iNPHは高齢者に発症し、ゆっくり進行していくことが特徴になります。

症状

歩行障害、排尿障害、認知症の3つの症状が主徴となります。歩行障害が最も頻度が高く、次いで認知障害、排尿障害の順になります。症状が発現する順序は患者によって異なります。

歩行は小刻み、すり足になって、歩行時とくに方向変換時にふらつきが強くなるのが特徴です。 パーキンソン病の歩行とやや似ていますが、正常圧水頭症の場合、手拍子のような外的刺激を与えても歩行の改善はみられません。

薬剤性パーキンソニズム

向精神薬の中にはパーキンソニズムを出現・悪化させる薬剤があります。胃腸薬や降圧薬もパーキンソニズムを出現・悪化させることがあります。

急激に進行したパーキンソニズムをみた場合には、薬剤性パーキンソニズムの出現や合併の可能
性を考慮するべきです。

急速な症状の進行が最も大きな特徴であり、詳細に服用歴を聴取することが重要になります。黒質変性はすでに始まっているが、未発症であるパーキンソン病が薬物により顕在化させられる場合もあります。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!この記事では、パーキンソニズムを引き起こす疾患についてまとめさせて頂きました!

パーキンソニズムを呈する疾患は、パーキンソン病を始めとして様々な疾患があります。

それぞれ症状や特徴・経過が異なります。そのため、各疾患について知識を深めることで、リハビリテーションや、初期の段階の診断において役立つと思います。

参考文献

  1. 米田稔彦.パーキンソニズムの評価と治療.理学療法学.1998年,第25巻,第8号,p532-536.
  2. 高橋裕秀,篠原幸人.脳血管性パーキンソニズム.日本内科学会雑誌.平成15年,第92巻,第8号,p82-88.
  3. 山本悌司.薬剤性パーキンソニズム.日本内科学会雑誌.平成15年,第92巻,第8号,p77-81.
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