【摂食嚥下障害に対する理学療法評価】PTが行うべき6つの評価方法

摂食・嚥下
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リハビリくん
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いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!

   

この記事は「摂食嚥下障害」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

   

摂食嚥下障害に対するリハビリテーションでは、多職種による専門的な介入が要求されます。理学療法士(physical therapist:PT)の専門性は運動機能に対する貢献であることから、摂食嚥下障害に対しては「姿勢」や「呼吸機能」への介入が特に求められると思います。

 

しかし、「姿勢」や「呼吸機能」と言われても具体的にどのような評価を行っていけばいいのか少し難しい分野だと思います。そのため、摂食嚥下障害に対するPTの専門性を活かした理学療法評価を6種類、紹介していきたいと思います。

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

登録理学療法士

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

近年は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の知識や技術の定着における手段も多様化しております。以前は職場内の勉強会であったり、外部の研修会に参加するなどが一般的でありましたが、現在では働き方改革、ライフワークバランスなどの用語が浸透したことも有り、昔ほど「勉強しなさい。」と言われることはなくなったと思います。

  

しかし、医療職として、患者様や利用者様の未来を預けられた療法士として、やはり知識のアップデートは必要だと思います。何より、新しい知識や技術を取り入れていった方が、自分自身が療法士として充実した日々を送ることに繋がるはずです。そこで、今の時代にあった勉強方法は何だろうか?という話になりますが、そんな人の味方になってくれるのが「リハノメ」です。

    

「リハノメ」は時間にとらわれず、電車などの通勤中、お昼休みの手が空いた時間、寝る前のちょっとした時間、つまり「隙間時間」で動画を閲覧し、知識や技術をアップデートすることができます。忙しい現代人に適した学習形態、気軽に始められる価格設定にもなっているため、是非一度ご利用してみてはいかがでしょうか?

    

摂食嚥下障害のリハビリは言語聴覚士の役目?

摂食嚥下障害に対するリハビリテーションは言語聴覚士の役目という認識がある方もいらっしゃると思いますが、理学療法士や作業療法士の関わりも重要な要素となります。

例えば、理学療法士であれば、摂食嚥下障害を誘発する食事場面にて、シーティングによる食事を行う環境調整、バランス練習による座位保持能力の強化、腹筋群の筋力増強練習による咳嗽反射の強化など多様な方法での食支援ができると考えられます。

また、食事は重要な生活行為の1つであり、生命を維持する手段に留まらず趣味や嗜好を兼ねる重要な活動になります。

嚥下というワードに対して、「食べる」行為としての「嚥下」に限定するものではなく、食事の認識・口腔への移送・咀嚼・食塊形成・嚥下という一連の工程でなされるものだと考えることが重要です。

上肢、体幹、頭頚部のすべての機能を総動員させた結果が摂食嚥下機能になります。

限局的な口腔顔面に対する介入ではなく、全身に視点を向けた評価と介入がなされることで、ご本人が納得いく食形態で食事を行うことができるようになる可能性もあります。

また、多職種で適切に介入を行うことで、家族団らんの場で食事をすることや、友人との会食に参加することが可能になり社会的交流が促進されることも考えられます。

このように食事は活動から参加に繋がる重要な生活行為になるため、摂食嚥下機能に対する質が高いリハビリテーションを提供できるように知識を深めていく必要があります。

理学療法士に必要な基礎知識

嚥下の機構

摂食嚥下障害では、咽頭・喉頭の機能障害が誘発され誤嚥性肺炎の発生に繋がります。理学療法士も正常の嚥下というものが、どのようなメカニズムになっているのかを理解しておく必要があります。

正常であれば、口腔から食道へ移送する際に、喉頭挙上による喉頭蓋の屈曲が気管への侵入の防御的な作用をなしております。

この防御的なメカニズムは嚥下関連筋が協調的に作用することでなし得ている機構です。

具体的には、舌骨と喉頭の運動が重要であり、下顎の固定による舌骨上筋の収縮が舌骨を前方に牽引します。

さらに舌骨が挙上位で固定されることで甲状舌骨筋が収縮して甲状軟骨と輪状軟骨が舌骨側に挙上され食道入口部が開大します。

同時に奥舌の収縮とともに喉頭蓋が後方へと反転し喉頭口を閉鎖します。

誤嚥というものは、この防御的な反応が弱化しているがために発生しているということになります。

姿勢の異常と嚥下障害

姿勢に異常を来した場合の嚥下に与える悪影響は重要なポイントになります。解剖学的要素も含めて解説していきます。

正常な形状を有する脊柱は矢状面から見て、頚椎と腰椎は前弯し、胸椎と仙骨は後弯しています。

しかし、高齢者などは加齢に伴い構造変化が生じ、生理的弯曲が果たす役割が破綻します。

高齢者の姿勢の特徴として多いのは、胸椎後弯増強、腰椎後弯、骨盤後傾、膝関節屈曲位となり、立位でも座位でも背中が丸くなったような姿勢です。

このような姿勢になると顔が下を向いてしまうため、高齢者は頭頸部を過伸展させ顔の向きを正面に保持しています。この姿勢は舌骨上筋と舌骨下筋にストレッチが加わってしまい、筋長の長い舌骨下筋が舌骨と喉頭を下方に牽引してしまいます。

機能的な嚥下には喉頭挙上が要求されため、姿勢の変化により舌骨が十分に挙上することができないと、食道入口部の開大や喉頭口の閉鎖が不十分となり誤嚥を引き起こします。

このように、姿勢の問題は機能的で安全な嚥下には切っても切り離せない重要な因子となっています。

摂食嚥下障害の理学療法評価

理学療法における嚥下機能評価は、身体機能との関連性について評価され、全身の姿勢調節を含めた多くの情報が多職種と共有される。身体機能と嚥下機能に直結する運動機能評価を紹介する。

相対的喉頭位置

頚部最大伸展位における喉頭位置は、前頚筋群が伸張された状態で甲状軟骨上端の位置がオトガイと胸骨間でどのような割合の位置にあるかを表す検査です。

位置の指標は、オトガイ(genio)と甲状軟骨(thyroid)上端間の距離(GT)と甲状軟骨上端と胸骨(sternum)上端間の距離(TS)であり、喉頭の高さを示す評価となります。

GT/(GT+TS)×100で算出された値を相対的喉頭位置と定義します。

測定肢位はベッド上で側臥位とし、痛みが生じない範囲で他動的に頚部最大伸展位を保ち、テープメジャーを用いて測定します。高齢者においては0.41+0.05%が基準となっています。

舌骨上・下筋群の筋力(GSグレード)

背臥位で頚部を他動的に最大前方屈曲位にし、下顎を引いて保持するよう指示してから手を離し、自力で静止保持するまで頭部が落下する程度を4段階のグレードで評価します。

GSグレードの判定基準
1.完全落下:途中で保持できず床上まで落下するもの
2.重度落下:頚部屈曲動域の2分の1以上落下するが止まるもの
3.軽度落下:可動域の2分の1以内で落下が止まるもの
4.静止保持:最大屈曲位で落下せずに止まるもの

Seated Side Tapping Test(SST)

座位におけるバランス能力を評価し、よりダイナミックな能力と嚥下機能を関連付ける評価となっています。前述で説明した通り、バランスの障害が姿勢異常を形成することがあるため、嚥下障害に対する評価として必要となります。

対象者を背もたれのない座面高41cmの椅子に着座させ、両上肢を側方挙上させた状態で指尖から10cm遠方かつ72cmの高さに目標物を設置します。測定は、できるだけ速く交互に10回叩く所要時間を計測します。

SSTの説明はこちらから:大阪府立大学 研究推進本部

立ち直り反応(righting reaction)

姿勢反射では、中脳レベルで立ち直り反応が統合されています。ある抗重力姿勢を保持するときには、ゆっくりとした軽微な外乱が加わります。または抗重力姿勢を連続して動作させる際にできるだけ左右対称の位置関係を一直線に保つような正中位へ姿勢を立ち直らせる一連の反応になります。

姿勢が崩れた体軸の傾斜に対して、立ち直り反応の有無について嚥下時間が検討されており、傾斜条件でも立ち直り反応の出現が認められれば正中位と比して差を生じず、傾斜条件で立ち直り反応が出現しなければ嚥下時間が延長すると報告されています。

咳嗽時最大呼気流速(Peak Cough Flow:PCF)

嚥下障害患者では誤嚥の有無に加え、誤嚥した唾液や飲食物を咳嗽にて十分排出できるかどうかが肺炎発症リスクに関連します。

効果的な咳轍は、喉頭侵入した試料を喀出する防御的な作用であり、誤嚥性肺炎の予防のためにも重要な指標となります。

咳嗽の評価には、運動的側面からの評価として PCFが有効だと考えられます。誤嚥リスクの高い患者ではPCFと予備吸気量の間に相関があるとの報告や、誤嚥を認めている症例では、呼気立ち上がり時間やPCF 値、咳嗽加速度など呼気相に関連する指標が低下しており、喉頭レベルの機能障害が咳漱の運動的側面に影響する可能性が示されています。

PCFにおける文献:咳嗽力評価の臨床的意義と今後の研究

大腿四頭筋筋力

大腿四頭筋の筋力は、基本動作や歩行能力などに関連するに留まらず、大腿四頭筋の筋力低下を示す患者は嚥下障害を発症するリスクも高いことが報告されています。

大腿四頭筋の筋力測定は理学療法士の得意分野であるため、評価して多職種と情報共有きましょう。

まとめ

最後までお読み頂いてありがとうございます!

この記事では、摂食嚥下障害に対して有効な理学療法評価について解説させて頂きました!

摂食嚥下障害への介入は、多職種がそれぞれの専門性を発揮し、それらを掛け合わせることで改善が見込まれます。

嚥下機能は、姿勢や動作能力などを土台として達成される運動機能であり、PTが実践する基礎的な運動機能改善は嚥下障害に対する介入の下準備になる必要があります。

具体的な運動機能評価と姿勢、呼吸などを含めた積極的な関与が要求されます。

何よりも重要なことは、理学療法士として評価した情報を言語聴覚士を中心とした多職種に発信し、チームとして患者様、利用者様の摂食嚥下障害に向き合うことだと考えます。

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