【低栄養スクリーニング】8種類のアセスメントで栄養管理と栄養ケア

栄養管理
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リハビリくん
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いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!

   

この記事は「低栄養スクリーニング」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

  

近年、積極的な栄養管理がリハビリテーションのアウトカムを向上させるとの報告が増えています。なぜ栄養管理によりアウトカムが向上するかというと、リハビリテーションを実施する患者は、低栄養を合併していることが多く、栄養状態の改善と身体機能の改善との間には密接な関連があるためです。

  

また、低栄養の患者にリハビリテーションを実施する行為は、却って逆効果になることがあります。患者に不利益を与えないためにも、リハビリテーションの効果を最大限に活かすためにも栄養管理は重要なものになります。

   

こちらの記事では、栄養スクリーニングツールと低栄養の診断についてまとめていきたいと思います!

リハビリくん
リハビリくん

【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

現在、理学療法士として得意としている分野は「脳卒中」「褥瘡」「栄養」「呼吸」「摂食・嚥下」「フレイル・サルコペニア」についてです。そのため、これらのジャンルの記事が中心となっております。

  

主な取得資格は以下の通りです

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。

  

こちらの記事は検索ワードのランキング 2 位を獲得しております。"理学療法士は生活できない?PTが転職を考えるべき7つのタイミング"興味がある方は、こちらの記事も目を通してくれると幸いです☺

低栄養のアセスメント

近年、リハビリテーションを行う患者における栄養評価の重要性が見直されています。リハ患者において低栄養の合併は高頻度にみられ適切なりハ処方のためにも早期の栄養スクリーニングが必要になります。

特に低栄養の病態把握はリハビリテーションの方針決定の参考となるため、低栄養の病態を捉える能力は、重要なスキルになります。

妥当性の確認されている栄養スクリーニングツールとしては、PG-SGA、MNA-SF、GNRI、CONUT、MST、MUST、NRS-02、PNIなど多くのツールが挙げられますが、それぞれ長所や短所があるため状況によって使い分ける必要があります。

栄養スクリーニングと栄養アセスメントの違い

スクリーニングは、「ふるい分け」という意味になりますので、栄養スクリーニングと栄養アセスメントの違いを一言でいえば、栄養アセスメントを行う必要があるかどうかを、栄養スクリーニングによって炙り出すということになります。

したがって、栄養スクリーニングは、全ての患者を対象に問診・視診・触診など、簡便で誰もが理解できるような指標を使用して実施することが理想となります。

栄養スクリーニングは患者にとって非侵襲的であることが望ましいと考えられます。外来初診時に実施可能な手技で、より簡便で普遍的に、すべての医療機関や患者に応用できる方法が検討されています。

一方、栄養アセスメントの目的は、栄養学的側面から状態を詳細かつ包括的に調査・診断することになります。そのため、身体計測や生化学的検査を実施し、それらから得られた情報を組み合わせ総合的に判断することになります。

栄養スクリーニングと比較した場合、栄養アセスメントは複雑で、専門的な技術や知識が必要になります。この習熟のためには、判定者には十分なトレーニングが必要で、多くの検査を行うことから、栄養スクリーニングと比較して時間と費用を要すると言えます。

栄養スクリーニングツール

栄養スクリーニングツールは、低栄養ハイリスク患者の抽出のみならず、低栄養の病態把握、リハと栄養管理の方針決定やモニタリング、効果判定に使用することができます。

ツールによって評価項目は異なりますが、それぞれ妥当性が確認されている栄養スクリーニングツールを次項にて紹介していきます。

SGA(主観的包括的栄養評価)

栄養サポートチーム活動なとにおいて広く使用されてきた評価尺度です。栄養歴や身体所見の情報から栄養状態を主観的・包括的に評価する方法であり、高齢リハ患者の栄養評価尺度としても妥当性が確認されています。

詳細な項目を含むため、低栄養の病態のアセスメントにも有用です。評価に特別な機器は不要ですが、再現性を確保するためには評価者のある程度のトレーニングが必要になります。

このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【主観的包括的栄養評価:SGAについての記事はこちらから

MNA-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form)

65歳以上の高齢者を対象とした評価尺度で、食事歴・体重减少・BMI(Body MassIndex)・疾病の状態・精神状態などから栄養状態を評価します。

入院リハ患者において、入院時評価とリハアウトカムとの関連性が報告されています。BMIの算出が困難な症例では下腿周囲長にて代用することが可能であり、身長や体重測定が困難な場面でも使いやすいツールとなります。

入院や外来リハ患者に対するスクリーニングツールとしては良いが、変化に対する反応性がやや乏しく、短期的なモニタリングや栄養ケアの効果判定には不向きともいえます。

より詳細なアセスメントを要する場面では、MNA-SFではなくMNA を用いれば、低栄養の病態に関する詳細なアセスメントも可能になります。

このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【MNA®-SF:簡易栄養状態評価表についての記事はこちらから

MNA-SFの評価表をダウンロードできるようにしておきました!評価表が必要な方はこちらからどうぞ☺

GNRI (Geriatric Nutritional Risk Index)

65歳以上の高齢者を対象に開発された評価尺度で、高齢脳卒中リハ患者の予後予測に使えることが報告されています。

GNRIは血清アルブミン値と現体重、理想体重を用いて算出することができます。

14.89×血清アルブミン(g/dL)+41.7×〔現体重(kg)÷理想体重(kg)]

理想体重(kg)は、身長(m)×身長(m)×22で算出することができます。そのため、GNRIは身長・体重・血清アルプミン値の3つの項目のみで、簡便に低栄養リスクを評価することができます。

もともとは、透析患者の低栄養アセスメントツールとして使用されてきましたが、入院・外来リハ患者に対する栄養スクリーニングツールとしても広く使用されるようになってきていています。

このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【GNRI:理想体重比とアルブミン値を用いた高齢者の栄養評価法についての記事はこちらから

CONUT (Controlling Nutritional status)

CONUT(コニュート)は2003年のESPEN(欧州静脈経腸栄養学会)でスペインのゴンザレスらが発表した栄養評価法になります。

一般的に測定されている検査項目であるアルブミン(ALB)、 末梢血リンパ球数(TLC)、総コレステロール(T-cho)値をスコア化し、3つのスコアを積算して求めたCONUT値を栄養評価の指標として用います。

CONUT値は蛋白代謝、免疫能、脂質代謝という3つの指標を反映したもので、栄養レベルは正常、軽度異常、中等度異常、高度異常の4段階に評価されます。

診察や問診を必要としないため、簡便かつ客観的に評価することができます。近年、心不全患者や入院リハ患者に対する使用例の報告が増えてきています。

CONUTについては、他の記事で詳しくまとめています!《栄養アセスメントCONUTとは?ALB|TLC|TC検査値で評価》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️

MST (Malnutrition Screening Tool)

栄養状態を評価するためのスケールは多くありますが、MSTは体重減少と食事摂取量に関する2つの項目から簡易的にスケーリングを行える点が大きな特徴です。

評価項目が少ないため、入院患者や施設入居者だけではなく、外来患者などこまめな観察ができないケースでも評価が行いやすくなっています。

また、リハビリテーションを行う高齢者の予後予測に適しているとされています。

一方で、詳細な評価ができないため、より正確に状態を把握するには、他の栄養評価スケールを併用する必要があります。

MSTについては、他の記事で詳しくまとめています!《【MST:低栄養リスクの評価方法】体重と食事摂取量の2項目で判定》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️

MUST (Malnutrition Universal Screening Tool)

英国静脈経腸栄養学会が作成した成人用の低栄養スクリーニングツールとなります。

BMI・体重減少率・最近の食事摂取状況の3項目をスコア化し、合計したスコアで低栄養リスクを判定する方法になります。

細かい病態の把握や短期のモニタリングにはあまり向いていないが、維持期や地域リハの現場では使いやすい評価法となっています。

NRS-2002 (Nutritional Risk Screening-2002)

MUSTに含まれる BMIと体重減少率、食事摂食状況に疾患の重症度を加えた、急性期リハ患者や入院リハ患者の評価に適した低栄養スクリーニングツールとなっています。

NRS-2002については、他の記事で詳しくまとめています!《【NRS2002:栄養スクリーニング】評価表無料ダウンロード可能》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️

PNI (Prognostic Nutritional Index)

[PNI=(10×Alb)+(0.005×TLC)]
Alb:アルブミン TLC:総リンパ球数

PNI≦40:切除吻合禁忌 40<PNI:切除吻合可能

Onodera らが提唱した血清アルブミンと総リンパ球数を用いた栄養指標になります。消化器がん術後合併症を予測する栄養評価尺度として作られたスクリーニングツールであり、リハ患者におけるPNIの有用性は定まっておりません。

GLIM基準とは?低栄養の診断基準

ここまでに、信頼性や妥当性が認められた低栄養スクリーニングツールを紹介させていただきましたが、低栄養というものが重要視されてからそれほど年月が経過していないこともあり、低栄養については、まだ世界的に基準などは確立していないと思います。

しかし、わりと最近となる 2018 年に GLIM 基準という基準が発表されております。GLIM 基準については、今後ますます一般的になる可能性も高いため、理解を深めておく必要があると考えます。

低栄養とは、栄養のバランスが負に傾き、体組成変化と健康障害に対する脆弱性を呈した状態になります。

GLIM基準による低栄養の診断方法によれば、栄養スクリーニングツールの評価だけではなく、低体重や体重減少、筋肉量変化などを低栄養の診断に必須としています。

また、欧州臨床栄養代謝学会と米国静脈経腸栄養学会が合同で発表した低栄養分類では、成人の低栄養は病態別に3種類に分類できると提唱しました。

1つが炎症ではなく栄養摂取不足による飢餓関連低栄養、2つめが慢性炎症による慢性疾患関連低栄養、3つめが急性炎症による急性疾患または外傷関連低栄養となります。

これは炎症による栄養状態の悪化に着目した分類であり、リハビリの強度や内容を検討するうえで参考になる病態分類となります。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!こちらの記事では、栄養スクリーニングツールと低栄養の診断方法について解説させて頂きました!

栄養はリハを行うためのエネルギー源でありながら、減弱した筋肉を再構築するための原材料でもあります。

低栄養を放置したままの積極的なリハは逆効果となり、低栄養を更に進行させる原因ともなります。栄養状態の評価を行うことは、リハビリテーションを行う上での重要なスキルとなります。

参考文献

  1. 溝上祐子,石川環.栄養スクリーニング・アセスメント・栄養管理の概要.日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌.2013年,17巻,1号,p1-10.
  2. 百崎良,安保雅博.リハビリテーションにおける栄養スクリーニング.Jpn J Rehabil Med .2017,54,p82-86.
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