改訂水飲みテストとは?3ml、30ml、100mlを使い分け評価

摂食・嚥下
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リハビリくん
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こんにちは!リハビリくんです!

   

今回は水飲みテストの種類と評価結果の解釈についてまとめさせて頂きます!

  

水飲みテストは摂食嚥下リハビリテーションにおいて、重要なスクリーニングテストになり、臨床での使用頻度もかなり高いと考えられます。

  

水というものは、流動性が高く誤嚥しやすい物質となります。しかし、誤嚥した際の有害性が他の物質よりも低いため、嚥下障害(特に誤嚥)の有無を調べるスクリーニングテストとして広く用いられています。

   

水があれば評価できるため、簡便に評価できるところも良いところの1つになりますが、更に嚥下機能評価法の質という観点からも有用性が認められています。この記事では、国内外で使用されている代表的な水飲みテストの種類と最新の知見を概説していきたいと思います。

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

現在、理学療法士として得意としている分野は「脳卒中」「褥瘡」「栄養」「呼吸」「摂食・嚥下」「フレイル・サルコペニア」についてです。そのため、これらのジャンルの記事が中心となっております。

  

主な取得資格は以下の通りです

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。

  

療法士の働き方に対する記事の 1 つが右記になりますが、"理学療法士は生活できない?PTが転職を考えるべき7つのタイミング"こちらの記事は検索ランキングでも上位を獲得することができております。興味がある方は、こちらの記事も目を通してくれると幸いです☺

摂食嚥下機能のスクリーニング検査

摂食嚥下のスクリーニング検査はその名の通り、摂食嚥下障害を呈する対象者を抽出するための検査になります。

摂食嚥下障害の診療において、スクリーニング検査によって嚥下障害の有無や嚥下機能に関する問題点をある程度把握することが最大の目的となります。

摂食嚥下障害におけるスクリーニング検査の目的を箇条書きで表すと以下のような項目をあげることができます。

  • 摂食嚥下障害が疑われる対象者の選別
  • 摂食嚥下障害の程度を推定
  • 摂食嚥下障害の原因を推定
  • 嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査などの精密精査が必要な対象者の選別
  • 複数のスクリーニング検査によって評価の精度を上げる
  • 患者の基本情報を聴取し多面的に評価する

摂食嚥下障害のスクリーニング検査では効率の良い検査法が求められます。そのため、以下に示したような要件を満たした検査が必要になります。

  1. 安全な検査方法である
  2. 検査が簡便である
  3. 迅速に実施することができる
  4. 低コストである

また、スクリーニング検査の方法としては、いくつか種類があり大きく分けると質問紙法と実測法に分類することができます。

質問紙法は対象者に自己記入してもらうか、対象者の家族や職員に尋ねてアセスメントします。質問紙法には以下のようなスクリーニング検査があります。

  1. 簡易嚥下状態評価票(EAT-10)
  2. 聖隷式嚥下質問紙

実測法は摂食嚥下に関する食べたり飲んだりする実際の場面を観察しながらアセスメントします。実測法には以下のようなスクリーニング検査があります。

  1. 反復唾液嚥下テスト(RSST)
  2. 改訂水飲みテスト
  3. フードテスト
  4. 咳テスト、簡易咳テスト

今回はこの中でも実測法の 2 つめにあげた水飲みテストに着目して、まとめてみたいと思います。

改訂水飲みテスト(MWST)

まず始めに、少量の水(5ml以下)を利用する水飲みテストから紹介していきます。

誤嚥のリスクを最小限に抑える目的で、少量の水を用いる検査が各国であります。日本で最もよく知られているのが 3 ml の水を使う改訂水飲みテスト(modified water swallow test :MWST)になります。改訂水飲みテスト(MWST)は、誤嚥の同定に高い信頼性を有しております。

改訂水飲みテスト(MWST)は少量(3ml)の冷水を安全に嚥下できるかを観察する検査となっています。とろみのない水分を使用するのは危険だと判断される場合は、冷水の代わりにとろみ水を用いて検査します。

方法としては、冷水 3 ml を口腔底に注ぎ、嚥下を指示します。1 回目の施行で評価点 4 点以上であれば、最大でさらに 2 回繰り返し、最も悪い点数を評価点とします。また、実施した体位などの情報も書き留めておきます。

摂食嚥下障害者を対象とした研究で、MWST(カットオフ値4点)の誤嚥検出の感度は0.70、特異度は0.88と報告されています。RSSTと比較すると感度は低くなりますが、ごく少量の水を用いるために安全性が高く誤嚥のリスクのある患者への初期評価としては使いやすい評価です。

海外には、小さじ1杯(5ml)の嚥下を複数回評価するThe Toronto Bedside Swallowing Screening Test(TOR-BSST)や、5ml から20ml までの水の評価が含まれるThe Volume-Viscosity Swal-low Test(V-VST)などがあります。

他には、Nishi-wakiらが窪田らが開発した30mlの水飲みテストを行う前に小さじ1杯(5ml)の水を飲む段階を設けています。

水飲みテスト(WST)窪田式

続いては、前述した 5 ml 以下の少量の水から少し増量して、試飲用カップ 1 杯程度の 30 ml 程度の水を利用する水飲みテストになります。

この容量で最も良く知られているのは、窪田らが開発した 30 ml の水飲みテスト(water swallow test :WST)になります。もともと本邦において、30 ml 水飲みテスト(water swallow test :WST)が開発され臨床で活用されていたのですが、摂食嚥下障害の程度によっては 30 ml の検査による嚥下自体が危険な症例もあるということが判明し、改訂水飲みテスト(modified water swallow test :MWST)が開発されたという経緯となっています。現在では被験者の状況に応じて、水飲みテスト(water swallow test :WST)と改訂水飲みテスト(modified water swallow test :MWST)の両者が使用されています。

水飲みテストの方法、手順は 30 ml の常温の水を手渡し、コップからいつも通り飲んでもらい、水を飲み終わるまでの時間や様子をプロフィールとエピソードに照らし合わせて判定するテストとなっています。

多めの量(90〜100ml)を利用する水飲みテスト

このタイプのスクリーニングテストの代表は、DePippoらの3オンス(約90ml)水飲みテストで、海外で広く施行されています。

Suiterらはこのテストを3,000例に実施し、誤嚥を検出する感度が96.5%、陰性的中率が97.9%であったと報告しています。

後に彼らは3オンス水飲みテストを発展させ、認知機能と口腔機能のチェックを含めたThe Yale Swal-low Protocol(エール水飲みテスト)を確立しています。

一方、Wuらは100mlの水飲みテストを59例に実施し、飲水速度(飲水量/秒)とむせの組み合わせが誤嚥の判定に有用であることを示しております。

容量を組み合わせて評価することも有益となりうる

近年発表された2編のシステマティックレビューで、脳血管障害患者では誤嚥検出に3オンス(90ml)の水飲みテストが推奨されること、そして、少量(1〜5ml)と多め(90〜100ml)の水飲みテストを組み合わせることで誤嚥の検出精度は向上することが結論づけられています。

日本ではMWSTが主流となっていますが、少量の水飲みテストのみでは偽陰性の確率が高くなるため、山部らは100ml水飲み嚥下の導入を提唱しております。

施設で勤務していたり、在宅場面で働いているために、VEやVFを用いた嚥下の精密検査が困難な環境にいる臨床家にとって、90-100mlの水飲みテストは、有益な手段となり得ることが考えられます。

摂食嚥下の検査は言語聴覚士の専門分野になると思いますが、理学療法士や作業療法士にも評価することができる摂食嚥下の検査をご存知でしょうか?このテーマについては、他の記事で詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【摂食嚥下障害の理学療法評価についての記事はこちらから

MWSTとフードテストの併用は有効

フードテスト(food test:FT)の手順と判定基準は以下の通りになります。

方法は約4gのプリンを舌背に置き、嚥下を指示します。スコアの付け方は MWSTとほぼ同じですが、嚥下後に口腔内を確認し、残留が中等度以上であれば3点をつけます。

MWST と共通点が多いですが、検査食は口腔底ではなく舌背前部に置くよう注意が必要です。

原法ではティースプーン一杯量のプリンを使用することとなっていますが、最近では誤嚥の際の安全性に配慮して訓練用ゼリーを用いることが増えています。MWSTとの併用で感度の高いスクリーニングテストとなります。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では、水飲みテストの種類と評価結果の解釈についてまとめさせていただきました!

近年の水飲みテストに関するシステマティックレビューでは、少量の水によるテストだけでなく、多めの水(90〜100ml)を用いたスクリーニングテストの有用性が報告されています。

日本の臨床現場では少量の水(1〜5ml)ないしは30mlまでのテストに留まる傾向が見受けられていますが、少量の水飲みテストで問題がなかった患者に対しては、多めの水(90〜100ml)を用いた水飲みテストが病態把握につながることもあります。

状況に合わせてスクリーニングテストの使い分けすることや、2種類以上の容量を併せて評価することで嚥下障害の有無をより確実に判定できると考えられます!

水飲みテスト以外の嚥下のスクリーニングテストについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【嚥下障害におけるスクリーニングテストについての記事はこちらから

参考文献

  1. 大熊るり,藤島一郎.摂食・嚥下障害スクリーニングのための聖隷式嚥下質問紙と30 ml水飲みテストの関連.日摂食嚥下リハ会誌 .2012,16(2),p192–197.
  2. 松尾貴央,松山美和,渡辺朱理,中谷謙.嚥下障害のスクリーニングテストの比較研究.日摂食嚥下リハ会誌.2016,20(1),p3–10.
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