癌患者が感じる4つの苦痛|Total Painの概念で痛みを評価

病態理解を深める
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リハビリくん
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いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!

   

この記事は「癌患者が感じる4つの苦痛」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

   

癌の治療成績は向上しつつありますが、依然として生命を脅かす疾患として人々を悩ませています。日本のがん対策においては、診断後早期からの緩和ケアと良質なリハビリテーションの重要性が高まってきています。

  

癌患者の苦痛は、多面的で複雑となります。癌性疼痛に対しては、Total painという概念に沿ってアセスメントすることが重要になります。癌のリハビリテーションで重要なポイントは、患者の身体機能・苦痛を考慮し、病期に合わせた目標設定のもと患者の強みを生かした訓練を提供することになります。

   

癌患者に対するリハビリテーションは、緩和医療における非薬物療法として重要な役割を担っています!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

登録理学療法士

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

近年は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の知識や技術の定着における手段も多様化しております。以前は職場内の勉強会であったり、外部の研修会に参加するなどが一般的でありましたが、現在では働き方改革、ライフワークバランスなどの用語が浸透したことも有り、昔ほど「勉強しなさい。」と言われることはなくなったと思います。

  

しかし、医療職として、患者様や利用者様の未来を預けられた療法士として、やはり知識のアップデートは必要だと思います。何より、新しい知識や技術を取り入れていった方が、自分自身が療法士として充実した日々を送ることに繋がるはずです。そこで、今の時代にあった勉強方法は何だろうか?という話になりますが、そんな人の味方になってくれるのが「リハノメ」です。

    

「リハノメ」は時間にとらわれず、電車などの通勤中、お昼休みの手が空いた時間、寝る前のちょっとした時間、つまり「隙間時間」で動画を閲覧し、知識や技術をアップデートすることができます。忙しい現代人に適した学習形態、気軽に始められる価格設定にもなっているため、是非一度ご利用してみてはいかがでしょうか?

    

QOLはどのように低下するのか

ヒトが生きていくうえで、生活の質(QOL)は命と同様に重要となります。QOLに影響を及ぼすものにはどのようなものがあるでしょうか。

世界的に広く用いられている健康関連QOL評価尺度のSF-36の構成要素で考えると「身体機能」「日常役割機能」「体の痛み」「全体的健康感」「活力」「社会生活機能」「日常役割機能」「心の健康」の8つが挙げられています。

疾病に罹患することで、これらの要素に支障をきたした場合、疾病の治癒・軽快により、QOLに支障をきたした問題も解決されることもあります。しかし、疾病が重症であるほど解決は難しくなります。

問題の解決が困難な場合、あるいは困難であることが予想される場合には、QOLを治療目標とする専門的なアプローチ、すなわち緩和ケアが必要となります。

がん対策におけるリハビリテーションと緩和医療の重要性

日本では悪性腫瘍が1981年からの死亡原因の第1位となっており、政府は疾病対策上の最重要課題として、がん対策に取り組んでおります。

2006年に「がん対策基本法」2007年に「がん対策推進基本計画」が策定され、すべてのがん患者およびその家族の苦痛の軽減ならびに療養生活の質の維持向上が課題の1つとして掲げられました。

その結果、課題解決に向け、がん患者リハビリテーションならびに緩和ケアが医療保険の診療報酬対象となり、厚生労働省委託事業の研修会が開始されるなど行政と医療が一体となった啓発活動が展開されてきました。

2016年には「がん対策基本法」が改定され、がん患者の療養生活の維持向上に関して、「がん患者の状況に応じて緩和ケアが診断のときから適切に提供されるようにすること」「がん患者の状況に応じた良質なリハビリテーションの提供が確保されるようにすること」と明記されました。

その改定後、2017年から開始された『第3期がん対策推進基本計画』では、全体目標の1つに「尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築」が掲げられ、がんのリビリテーションと、がんと診断されたときからの緩和ケアは、重点課題の1つとなりました。

このように、日本のがん対策において、リハビリテーションと緩和医療の重要性は年々高まっています。

がんのリハビリテーションの目的については、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【がんのリハビリテーションの目的についての記事はこちらから

緩和ケアとは

がんの診断・再発・積極的な抗がん治療中止などの人生を揺るがす悪いニュースは、患者とその家族に大きな心理的衝撃を与えます。

また、痛みなどの身体症状はつらく日常生活や活動・社会的役割に支障をきたすこともあります。

緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題・心理社会的問題・スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって苦しみを予防し、和らげることでQOLを改善させるアプローチとなります。

がん患者の苦痛・苦悩

苦悩とは「命や生活の質を根底から脅かす、個人的に苦痛なこととして認識される嫌な体験」と定義されていますが、がん患者では病期の進行とともに、より多面的で複雑なものとなります。

緩和ケアでは、患者の苦痛を身体的苦痛といった一面だけでなく、精神的・社会的・スピリチュアルな苦痛が互いに影響し合い形成されていることを理解する必要があります。

そして、それらを総体として捉えるtotal painという概念に則ってアセスメントし、治療計画を立案していきます。

身体的苦痛

代表的な身体的苦痛として、疼痛が挙げられます。その有病率は非常に高く、半数以上のがん患者が疼痛の症状を有することが分かっています。

疼痛に限らず、身体的苦痛は病状の進行に伴い様々な症状の出現頻度が上昇することが特徴となります。

疼痛の他にも、全身倦怠感・食欲不振・便秘・不眠・呼吸困難・悪心嘔吐・混乱・腹水・不穏・腸閉塞と様々な身体的苦痛が出現することが分かっています。

がん患者の身体的苦痛については、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【がん性疼痛の評価方法についての記事はこちらから

精神的苦痛

がん患者の精神的苦痛、不安や抑うつを含む包括的な概念として、distress(気持ちのつらさ)があります。

distressについては「多要因の不快な感情体験であり、がんやその症状・治療に向き合うための機能にかかわり得る精神的・社会的・スピリチュアルな要素」と定義されています。distressが持続すると適応障害やうつ病へ移行することがあります。

精神的苦痛については、評価法HADSに関連付けて他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【HADS(評価法)を徹底解説についての記事はこちらから

社会的苦痛

がんの療養中には、経済的な問題、就労・社会復帰の問題、療養場所や介護などの問題、更に、それまで目を向けていなかった家族内の問題や人間関係、遺産や相続の問題などに対峙しなければならないことがあります。

スピリチュアルな苦痛

耐え難い苦痛は、人間としての尊厳を損なわせる要因となります。さらに、死期が近づくと自己の価値に思いを巡らし、生きる意味と価値の根源的な苦悩・苦痛を生みます。Murataは終末期がん患者のスピリチュアルな苦痛を「自己の存在と意味の消失から生じる苦痛」と定義しています。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

今回はがんに対する緩和ケアについてまとめさせて頂きました!

緩和ケアと最も関係の深いものが痛みになります。通常医学的には、痛みというと怪我や手術などの傷の痛み(誰にでも原因がすぐ理解できる痛み)を指すことが多いですが、一言で「痛み」といってもこの言葉には多面的・多層的な意味があります。

患者さまから 「私のこの痛みは誰も分かってくれない」 という言葉を耳にしますが、これは痛みの複雑さ、他人の痛みを真に理解することがいかに難しいかを端的に表しています。

がんの痛みを含む難しい痛みに対する治療を効果的に行う場合には、特にトータルペインの考え方が何より重要です。がんを患う患者様にしっかりと寄り添うことが出来るように心掛けて参りましょう!

参考文献

  1. 辻哲也.がんリハビリテーション最前線.理学療法学.2015年,第42巻,第4号,p352-359.
  2. 辻哲也.緩和ケア主体の時期のがんリハビリテーション診療.Jpn J Rehabil Med.2020,57,p828-835.
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