この記事でわかること(結論)
新卒の理学療法士(PT)の初任給は、総支給で 20〜26 万円が主流で、手取りは条件にもよりますが 約 17〜22 万円が目安です。本記事は「手取り早見表」「給与明細の読み方」「面接での交渉チェックリスト」の 3 点を軸に、求人票で見落としやすい固定残業や手当の扱いまで実務目線で整理します。
結論から読みたい方は 手取り早見表 と 明細の読み方 へどうぞ。交渉が不安な方は 交渉チェックリスト をそのまま面接で使ってください(中盤に 給与交渉テンプレ への導線も用意しています)。
相場の見方(施設種別・地域差・「手当込み」に注意)
初任給は 施設種別(急性期/回復期/維持期/訪問)、地域(都市部>地方)、手当の含み方で見え方が大きく変わります。募集要項は「総支給」「基本給」「諸手当」「固定残業」の区別を必ず確認。とくに<住宅・資格・皆勤>は支給要件と金額の変動幅をチェックしましょう。
客観指標としては、厚生労働省の 賃金構造基本統計調査 がベースになります。学歴区分や年齢階級、医療・福祉の産業分類を参照して相場のレンジを掴み、求人票の提示額が「施設・地域の中央値に対して高いのか/手当込みで見せているのか」を見立てるのがコツです。
手取り早見表(概算)と計算ロジック
以下は 独身・関東例・住民税あり のざっくり目安です(社会保険・税で 18〜20%前後の控除を仮置き)。住民税は原則翌年 6 月から発生するため、入職初年度は明細がやや高く出るケースがあります。
| 総支給(月) | 手取り目安 | 想定控除率 |
|---|---|---|
| 200,000 円 | 約 164,000 円 | 18% |
| 220,000 円 | 約 181,000 円 | 18% |
| 240,000 円 | 約 199,000 円 | 17%〜19% |
| 260,000 円 | 約 216,000 円 | 17%〜19% |
| 280,000 円 | 約 234,000 円 | 17%〜19% |
計算の流れ:総支給 −(健康保険・厚生年金・雇用保険)− 所得税 − 住民税(翌年〜) ± 通勤費非課税分。固定残業代・住宅手当の扱いで実額がブレるため、早見表はあくまで目安です。詳細は 給与交渉テンプレ で「手当の課税/非課税」を含めて確認しましょう。
給与明細の読み方(固定残業の罠を回避)
明細は「支給」と「控除」を分けて読み、基本給に固定残業が含まれていないか、含む場合は時間数・超過時の割増まで明示かをチェック。住宅・通勤・資格手当は支給条件と課税区分を確認します。
| 項目 | 見方/注意点 |
|---|---|
| 基本給 | 昇給のベース。固定残業を含めないのが望ましい。含む場合は「○時間分」「超過時の割増率」を要確認。 |
| 各種手当 | 資格/職務/皆勤/住宅/通勤など。課税/非課税、支給条件(距離・世帯主など)を確認。 |
| 固定残業代 | 時間数・内訳・超過時の扱いが明記されているか。見なし時間が非現実的でないか。 |
| 社会保険 | 健康保険・厚生年金・雇用保険。標準報酬月額で決まるため、繁忙期の一時的増額で跳ねないか留意。 |
| 税金 | 所得税は月次天引き、住民税は翌年 6 月から前年所得に基づき開始。 |
求人票は「総支給」を大きく見せがちです。実際の可処分を把握するには、基本給:手当:固定残業=何:何:何かを面接で必ず聞き出しましょう。
初任給の交渉チェックリスト(質問例と一言テンプレ)
新卒でも確認すべきは「情報の透明性」です。角を立てずに条件を明確化するための質問を用意しておきましょう。ここで得た回答は内定後のミスマッチ回避に直結します。
| 質問 | 意図 |
|---|---|
| 基本給と諸手当の内訳を数値で教えてください。 | 総支給の見せ方を分解し、将来の昇給基盤を把握。 |
| 固定残業の時間数と、超過時の割増率は? | 見なしの適正と、超過分の支払い有無を確認。 |
| 住宅・通勤・資格手当の支給条件と課税区分は? | 手取りに効くか(非課税)/実質カットにならないか。 |
| 夜勤・休日出勤の有無と単価、月平均時間は? | 働き方と収入のブレ幅を把握。 |
| 昇給・賞与の評価基準と平均実績は? | 将来の年収カーブを見立てる。 |
一言テンプレ:「内訳まで理解した上で長く働きたいので、基本給・手当・固定残業の内訳と、超過時の割増と支給実績を数値で教えていただけますか。」(詳しくは 給与交渉テンプレ に文例集あり)
現場の実感(ケースで掴む相場感)
回復期リハ病棟
固定残業は少なめだが早出・委員会の時間外が発生しやすい。住宅手当の有無で手取りが 5,000〜20,000 円ほど変動。新人研修充実の代わりに初年度賞与が低めの施設も。
訪問リハ
歩合色が強い場合は件数・体制で年収差が大きい。固定給+インセンティブ型でも、初任期は移動・同行が多く歩合が乗りづらい点に留意。
急性期・外来
基本給は相対的に高めだがシフトの影響で手当構成が複雑。研究会・学会補助の有無が自己負担と学習機会に波及。
FAQ(各項目名をタップすると開閉します)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
新卒PTの「手取り」はいくらが目安?
地域・手当・住民税の有無で差はありますが、総支給 20〜26 万円に対し手取りは概ね 17〜22 万円が目安です(早見表参照)。
住民税はいつから引かれる?
原則、翌年 6 月から前年所得に基づいて天引きが始まります。入職初年度は住民税がなく、翌年以降に差が出ます。
固定残業代がある求人は避けた方がいい?
一概にNGではありませんが、見なし時間・超過時の割増・計算根拠が明記されているかを確認。超過分が別途支給されるかが分岐点です。
ボーナス(賞与)はいつから?
多くは在籍要件あり。「入職初年度は満額支給対象外」「寸志のみ」などの慣行もあるため平均実績と評価基準の両方を面接で確認しましょう。
回復期と訪問、どちらが収入は上がりやすい?
訪問は歩合色が強く上振れやすい一方、新人のうちは件数が伸びづらい傾向。回復期は安定的だが賞与テーブル次第で年収が決まります。
夜勤なしは不利?
夜勤手当がない分の上振れは期待しづらいですが、生活リズムと学習時間の確保で成長効率は上げられます。昇給基準を重視しましょう。
参考文献
- 厚生労働省. 賃金構造基本統計調査. https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chingin.html


