理学療法士の資格は「臨床 × 更新しやすさ」で選ぶと失敗しにくい
資格は “肩書き” ではなく、臨床の再現性を上げるための学習システムです。だからこそ、闇雲に増やすよりも「今の配属・症例で使うか」「更新を現実的に回せるか」の 2 軸で選ぶのが最短ルートになります。
本記事では、PT が取り組みやすい “実務直結” の資格を 7 つに絞り、選び方の 5 ステップ、詰まりどころ、FAQ まで一気に整理します。読み終える頃には「次に何を取るか」が決まり、今週から動ける状態になります。
理学療法士にスキルアップが必要な理由
スキルアップは「勉強熱心だから」ではなく、臨床の変数が増えているから必要になります。高齢化と併存疾患の増加で、運動療法だけで完結しにくくなり、呼吸・循環・栄養・嚥下・住環境などを “横断” して考える場面が増えました。
資格は、その横断領域を体系立てて学ぶ “足場” になります。独学だと抜けやすい評価・禁忌・連携の勘所を、更新制度も含めて仕組み化できるため、忙しい現場でも学びを継続しやすいのがメリットです。
資格取得で得られる 3 つのリターン
- 判断の速さ:「何を見て、いつ止めるか」の基準が言語化される
- 連携の通訳:医師・看護・栄養・ST と “同じ言語” で話しやすくなる
- キャリアの再現性:配属替え・転職でも “持ち運べる強み” になる
失敗しない資格の選び方: 5 ステップ
資格選びで一番多い失敗は「良さそうだから」で始めて、受験資格・症例・更新で詰まることです。最初に “条件” を押さえ、次に “運用” を設計すると、途中で折れにくくなります。
下の 5 ステップで決めると、迷いが減り、準備の順番も自然に整います。とくにステップ 3 と 4(更新負荷と現場の機会)は、忙しい人ほど効きます。
- 配属・症例で選ぶ:いま多い患者像(心不全/COPD/嚥下/低栄養/在宅)を 1 つ決める
- 受験資格の “必須条件” を確認:会員歴、実務年数、講習会、症例数などの有無を先に見る
- 更新負荷を見積もる:更新周期、単位、学会参加の頻度を “年間” で考える
- 職場で機会があるか:NST 参加、嚥下カンファ、心リハ、糖尿病教室など “経験できる場” を確認
- まず 6 週間の計画を作る:テキスト/講習会/症例の棚卸しを 6 週間に分解して着手
まず押さえたい “実務直結” 資格 7 選(要点だけ)
ここでは、PT が臨床で使いやすく、かつ “学びが職場に還元されやすい” 資格を 7 つに絞って紹介します。どれも万能ではないので、自分の担当領域と症例に合わせて選ぶのが前提です。
迷う場合は、まず表で全体像を掴み、次に各資格の “向く現場” と “詰まりポイント” を見てください。最後に 1 つだけ選べば十分です。
| 資格 | 強み(何が変わる?) | 向く現場 | 準備の重さ | まずやること |
|---|---|---|---|---|
| 3 学会合同呼吸療法認定士 | 呼吸評価と介入の “型” ができる | 急性期/呼吸器/術後 | 中 | 要件と単位の棚卸し |
| 心臓リハビリテーション指導士 | 循環の安全管理と運動処方の精度が上がる | 循環器/回復期/心不全 | 中〜高 | 症例経験と講習会を計画 |
| 摂食嚥下リハ学会 認定士 | 嚥下介入の再現性と連携が進む | 回復期/老健/嚥下 | 中 | 嚥下カンファ参加を習慣化 |
| 日本糖尿病療養指導士( CDEJ ) | 運動療法の “伝え方” が武器になる | 内科/整形/外来 | 中 | 教育・症例記録の準備 |
| NST 専門療法士 | 低栄養・褥瘡・周術期の “根拠” が揃う | 急性期/回復期/褥瘡 | 中〜高 | NST の関与機会を確保 |
| 福祉住環境コーディネーター 2 級 | 退院支援・家屋調整の説明力が上がる | 訪問/退院支援 | 低〜中 | 頻出ケース(段差・手すり)を整理 |
| 介護支援専門員(ケアマネ) | 地域包括で “計画の言語” を持てる | 在宅/地域包括 | 高 | 受験資格(実務)を確認 |
迷ったらこう選ぶ(現場別の最短ルート)
- 急性期で安全管理を固めたい:呼吸 →(余裕が出たら)循環
- 回復期で合併症を減らしたい:嚥下 or NST(施設の運用で決める)
- 生活期・在宅で武器を増やしたい:住環境 →(地域連携で)ケアマネ
呼吸領域を軸にするなら、手順を “受験資格→単位→申込→勉強” の順で整理したガイドを先に読むと迷いが減ります:3 学会合同呼吸療法認定士の取り方( 2026 年版 )
現場の詰まりどころ(よくある失敗 → 先回りで潰す)
資格は “勉強” そのものより、準備の段取りで詰まります。特に多いのは「要件を後で知る」「症例や実績の書き方が分からない」「更新が回らない」の 3 つです。
下の表の “先回り” をやっておくだけで、途中離脱がかなり減ります。忙しい人ほど、まず表の 1 行目から潰すのがコスパが良いです。
| よくある失敗 | 起きる原因 | 先回りの対策 | 記録のコツ |
|---|---|---|---|
| 受験資格が足りず延期 | 会員歴・実務年数・講習会の確認が後回し | 最初に “必須条件” だけチェックして不足を埋める | 要件を箇条書きでメモし、満たした日付を残す |
| 症例・実績の書き方で手が止まる | フォーマット未整理/日々の記録がバラバラ | 必要項目を先に把握し、普段の記録を寄せる | 症例は “背景→介入→結果→考察” の 4 枠で統一 |
| 更新が回らず失効リスク | 更新単位を年度末にまとめて集めようとする | 年 2 回の “単位確保月” を固定して習慣化 | 学会・研修は参加後すぐに証明書を保存 |
| 職場で活かせずモチベが落ちる | 学びが日常業務に接続できていない | 学んだことを “1 週間で 1 つ” 実装する | カンファで 1 スライド共有など小さく還元 |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
結局、最初の 1 個はどれが無難ですか?
「今の配属で出会う患者像」に一番直結するものが無難です。迷う場合は、更新を含めて続けやすいものを 1 つ選び、そこで作った学習習慣を次の資格に横展開するのが失敗しにくいです。
資格より先にやるべき “準備” はありますか?
あります。受験資格の必須条件(会員歴・実務・講習会・症例)を最初に棚卸しし、不足を埋める計画に落とすことです。ここが曖昧だと、勉強しても申請で止まります。
更新が大変そうで不安です…。
更新は “年度末にまとめて” が一番しんどいです。年 2 回だけ「単位確保月」を固定し、学会・研修・e ラーニングを分散させると回りやすくなります。更新が難しいなら、最初から更新負荷が軽い資格を選ぶのも戦略です。
忙しくて勉強時間が取れません。
毎日 60 分より、「週 2 回 90 分」を固定するほうが現実的です。通勤や昼休みに “暗記” を詰めるより、休日に “問題→振り返り” をまとめてやる方が伸びます。まず 6 週間だけ、学習枠をカレンダーに確保してください。
おわりに
資格取得は、症例の傾向を掴む→更新負荷を見積もる→年間計画を作る→最初の 1 つを取り切るというリズムで回すと、臨床に還元しやすくなります。まずは “今の現場で一番使う領域” を 1 つ選び、今日できる棚卸しから始めてみてください。
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参考文献
- Spruit MA, Singh SJ, Garvey C, et al. An Official American Thoracic Society/European Respiratory Society Statement: Key Concepts and Advances in Pulmonary Rehabilitation. Am J Respir Crit Care Med. 2013;188(8):e13-e64. doi: 10.1164/rccm.201309-1634ST.
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- Munoz N, Posthauer ME, Cereda E, Schols JMGA, Haesler E. Nutrition strategies for pressure injury management: Implementing the 2019 International Clinical Practice Guideline. Nutr Clin Pract. 2022;37(1):46-56. doi: 10.1002/ncp.10762. PubMed
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下



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