理学療法士が忙しすぎて辞めたいときの対処法(結論:頑張りではなく「設計」を変える)
「忙しすぎて辛い」は、あなたの努力不足というより仕事の構造(担当配分・記録設計・割り込み設計)で起きやすい問題です。本記事は、単位圧・書類負担・割り込みを現場で実装できる手順に落とし込み、5 分で詰まりを特定 → 今日の一手 → 上長への相談メモ → 4 週間の改善計画までをまとめます。
先に安心材料を 1 つ。バーンアウトは「慢性的な職場ストレスがうまく管理できない状態」で起きやすく、まずは原因を 1 個に絞って設計を変えると、体感が動きます。もし「眠れない・食べられない・出勤が怖い」などが強い場合は、最優先で休息と相談(産業保健や医療)を選んでください。
5 分でできる「忙しさ」診断(原因を 1 個に絞る)
忙しさは、だいたい次の 3 つに分解できます。①単位圧(枠が詰みすぎ)、②記録・書類(後ろ倒しで残業化)、③割り込み(予定が毎回壊れる)。まずは一番しんどい原因を 1 つだけ選び、そこに最初の 1 手を当てます。
| よくある状態 | 原因(詰まり) | 最初の 1 手(今日) | 効く理由 |
|---|---|---|---|
| 単位が詰み、休憩が消える | 枠の過密+重症偏り+導線ロス | 同系症例を連続化し、午前「重め」午後「軽め+説明」へ | 準備・説明・片付けの共通化で周辺作業が減る |
| 記録が追いつかず毎日残業 | 記録タイミング未固定+毎回フル評価 | 記録バッファを 1 日 1 回固定し、評価を段階化 | 後ろ倒しを止め、更新点だけを書く運用にできる |
| 予定が常に壊れて焦る | 割り込みの受け皿がない | 割り込み専用バッファ 30–60 分を固定 | 安全余裕が生まれ、結果として残業も減る |
| 会議・書類が集中して詰む | 「その日完結」設計 | 前日ドラフト → 当日加筆の二段構えにする | 作業を分散し、締切前の破綻を防ぐ |
担当配分の再設計(重症/軽症のバランスと連続化)
忙しさを減らす近道は、単位数そのものより切替コスト(準備・移動・説明)を減らすことです。「同じことを何度もやらない配置」に寄せると、同じ 1 日でも体感が変わります。
- 同系症例を連続配置:道具・説明・介助の型が揃い、周辺作業が減ります。
- 重症/軽症の偏りを週内で均す:午前は重め、午後は軽め+家族説明・自主訓練確認などへ。
- 導線を塊で処理:病棟やフロアを「行ったり来たり」しない並びにします。
ポイントは「全部を直す」ではなく、まず明日 1 日だけ連続化を試し、体感が変わるかを見ることです。数字(歩数や移動回数)より、記録に入れる時間が確保できたかを評価指標にします。
評価・記録の省力化(テンプレ+段階化で「毎回フル」をやめる)
記録が辛い職場では、たいてい「評価がフルセット化」「書くタイミングが未固定」「様式が分散」のどれかが起きています。ここでは段階化とテンプレ化で、残業の発生源を潰します。
スクリーニング → 詳細評価の段階化(更新点だけに集中)
毎回フル評価をやめ、「変化が出たときだけ深掘り」にします。例として、回復期の運動機能なら次のように運用できます。
- 毎回(短):痛み・バイタル・安全(転倒/ふらつき)・前回からの変化点 1 行
- 週 1(中):歩行/移乗のキー所見、課題 1 つ、次回の焦点
- 節目(長):カンファ前・退院前など、必要な指標をまとめて実施
記録テンプレ(先頭 3 行で「目的・読者・要点」だけ先に置く)
テンプレは長いほど使われません。まずは先頭 3 行を固定し、本文は「更新点だけ」で OK です。
- 目的:今日は何を確認する日か(例:歩行の安全性/疼痛の増減)
- 読者:誰が読むか(看護/医師/家族)を意識した 1 行
- 要点:変化・判断・次回の焦点(最大 3 つ)
「完璧な文章」より、共有できる情報が残れば勝ちです。テンプレを運用すると、記録が「思い出す作業」から「埋める作業」に変わります。
割り込み専用バッファと日次リズム(30–60 分を固定して安全余裕を作る)
割り込みが多い職場では、予定を詰めるほど破綻します。先に割り込みを処理する枠を確保すると、結果的に残業が減り、患者対応の安全余裕も生まれます。
- 割り込み枠:毎日 30–60 分を固定(例:16:30–17:30)
- 午前:重め(評価・立ち上げ・介助量が大きい症例)
- 午後:軽め+説明(家族説明・自主訓練確認・書類の前処理)
割り込みが来たら「今すぐ」ではなくバッファで処理します。例外は、急変や転倒などの安全案件だけです。
上長への相談メモ(事実・影響・代替案|3 点セット)
「忙しいです」だけだと改善は起きません。上長が動ける形にするには、数字(事実)→現場への影響→代替案の順にそろえるのが最短です。下の雛形をコピペして、自分の職場用に置き換えてください。
相談メモ雛形(コピペ用)
件名:業務量の再配分について(安全余裕と記録時間の確保)
1)事実(過去 2 週間)
・1 日の担当枠:平均 ◯ 枠(重症 ◯、軽症 ◯)
・評価/書類:新規評価 ◯ 件/週、書類(サマリ等)◯ 件/週
・割り込み:平均 ◯ 回/日(内容:家族対応/急変対応/他職種依頼)
・時間外:平均 ◯ 分/日(主因:記録/書類/割り込み)
2)影響(患者/チームへの影響)
・記録が後ろ倒しになり、情報共有が遅れる
・割り込みで予定が崩れ、転倒リスクが上がる場面がある
・教育/振り返りの時間が取れず、業務が属人化している
3)代替案(まず 2 週間だけ試したい案)
A:同系症例の連続化(午前に重症を固め、導線を塊で処理)
B:割り込み専用バッファを毎日 30–60 分固定(例:16:30–17:30)
C:記録バッファを 1 日 1 回固定(昼前後に 20–30 分)
→ 2 週間後に「時間外」「記録遅延」「安全インシデント」を指標に効果判定したい
4 週間の改善計画(期限を切って、ダメなら次の手に移る)
改善は「いつか」だと終わりません。ここは4 週間など期限を切り、うまくいった/ダメだったを判定します。
- 1 週目:原因を 1 個に絞る(単位圧/記録/割り込み)+ 1 つだけ試す
- 2 週目:上長へ相談メモ提出(数字+代替案)
- 3 週目:運用を固定(連続化、バッファ、テンプレのどれか)
- 4 週目:効果判定(時間外/記録遅延/安全余裕)→ 継続 or 配置換え相談
もし「運用を変える裁量がない」「安全余裕が作れない」「体調が崩れている」のいずれかが続くなら、判断を先延ばしにせず、辞めたい理由と対処法(総論)のフローで次の手を整理してください。
付録:忙しい日の最小モデルスケジュール(例)
ここでは“最小”だけ載せます。詳細なモデル日課(回復期/訪問の設計図)は別記事で深掘りすると、カニバリせずに回遊も伸ばせます。
| 時間 | 内容 | 設計の意図 |
|---|---|---|
| 8:30 | 申し送り・当日目標の確認 | 迷いを減らす |
| 9:00 | 同系症例を 2–3 連続 | 周辺作業の共通化 |
| 12:00 | 記録バッファ+休憩 | 後ろ倒し停止 |
| 16:30 | 割り込み専用バッファ | 安全余裕の確保 |
| 時間 | 内容 | 設計の意図 |
|---|---|---|
| 9:00 | 午前 3 件(近接ルート化) | 移動ロス削減 |
| 13:30 | 午後 3 件(評価日を固める) | 持ち物・説明の共通化 |
| 17:00 | 記録一括+翌日準備 | 終業を守る |
FAQ
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
まず何から削るべきですか?
最優先は「毎回フル評価」をやめて段階化することです。次に、同系症例の連続配置で周辺作業(準備・説明・片付け)を統合します。
割り込みが多すぎて予定が崩れます。
割り込みが起きる前提で、毎日 30–60 分の割り込み専用バッファを固定します。安全案件だけ例外で即対応し、それ以外はバッファで処理します。
記録が終わらず残業になります。
「書くタイミングの固定」が最短です。記録バッファを 1 日 1 回作り、先頭 3 行テンプレ(目的・読者・要点)でまず埋める運用にします。
単位圧が強く、休憩が取れません。
単位数だけでなく、重症偏り・導線ロス・説明の重なりで体感が悪化します。まず「同系症例の連続化」と「午前重め/午後軽め」の配置から試してください。
それでも辛いときはどうすれば?
4 週間など期限を切って改善を試し、それでも「安全余裕が作れない」「体調が崩れる」「裁量がない」場合は、配置換えの相談や、次の選択肢整理に進むほうが後悔が減ります。
次の一手(行動)
- まずは「原因を 1 個」選び、明日 1 日だけ連続化/バッファ/テンプレを試す
- 2 週間の数字(時間外・割り込み回数・記録遅延)をメモし、相談メモに落とす
- 判断フローまで一気に整理したい場合は、辞めたい理由と対処法(総論)へ
参考文献
- World Health Organization. Burn-out an "occupational phenomenon" (ICD-11) – FAQ.
- World Health Organization. Burn-out an "occupational phenomenon" (ICD-11) – News (2019-05-28).
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


