理学療法士を辞めたいと感じたら(結論:原因を 7 型に分け、48 時間で軽くしてから判断する)
「辞めたい」は珍しくありません。ただし、原因が混ざったまま動くと、配置転換で解決できた悩みまで転職で消耗したり、逆に守るべき安全ラインを見逃して悪化しやすいです。
本記事は、辞めたい理由を 7 型に分け、48 時間でできる即効対処と 1〜3 ヵ月の立て直し、最後に 残る/変える/転職の判断フローまでを 1 ページに整理します。転職を視野に入れる場合は、全体手順は 理学療法士の転職ガイド(固定)にまとめています(同一タブで開きます)。
先に確認する安全ライン(迷う前に「守る」)
次のいずれかが強い場合は、改善の工夫より先に安全の確保を優先してください。迷いが強い時ほど、外部の相談窓口を使うほうが判断が速くなります。
- 心身の不調:睡眠が崩れて戻らない/出勤前に強い動悸・吐き気が続く/強い抑うつが続く
- ハラスメント:人格否定、過度な叱責、孤立化、業務と無関係な私的強要などが反復
- 過重労働:長時間労働が常態で、休息や回復が確保できない
外部相談の入口として、労働問題全般を扱う 総合労働相談コーナー や、働く人のメンタルヘルス相談窓口をまとめた こころの耳(相談窓口案内) が参考になります。
“辞めたい”の典型 7 型(まずは原因の棚卸し)
複数当てはまる場合は、主因(いちばん苦しいもの)と増悪因子(追い打ち)に分けると対処が具体化します。
| 型 | よくある状況 | 最初の 1 手(48 時間) | 次の深掘り |
|---|---|---|---|
| 1. 生産性・単位圧 | 担当数が多く、休憩・記録が消える | 同系症例の連続配置+割り込みバッファを 30〜60 分固定 | 忙しすぎて辛い:単位圧・書類負担の見直し |
| 2. 書類・評価負担 | 記録・計画・尺度の頻度と締切が逼迫 | 記録テンプレ(定型句+チェック欄)を 1 つ作る | 忙しすぎて辛い:単位圧・書類負担の見直し |
| 3. 人間関係 | 上司との期待値ずれ/連携の摩擦/孤立 | 事実→影響→代替案の 3 点メモで相談(本文テンプレ参照) | (必要なら)外部相談窓口を検討 |
| 4. 成長実感の薄さ | 症例が偏り、学びと成果が結びつかない | 週 1 テーマを 1 つに絞り、担当症例に直結させる | 認定・専門・学習ロードマップ系の記事へ |
| 5. 将来性不安 | 昇進構造/スキルの可搬性が見えない | 「 1 年後に増やしたい役割」を 1 行で言語化 | キャリアアップ 5 ルート記事へ |
| 6. 給与・生活 | 可処分所得が増えず、生活が苦しい | 固定費(家賃・通信)と手当の有無を棚卸し | 給料で生活できない?の判定と打ち手 |
| 7. 働き方ミスマッチ | 急性期/回復期/訪問など「忙しさの質」と相性が悪い | 部署別マップで “合う環境” を先に仮置き | 部署別スケジュール・働き方ハブへ |
部署別の忙しさマップ(成人・2026 年版)
「忙しい」の中身は部署で違います。忙しさの質が合わないと、努力が報われにくいです。まずは “合う環境” を仮置きしましょう。
| 部署 | 忙しさの質 | 向いている人 | 短期対処 | 配置転換候補 |
|---|---|---|---|---|
| 急性期 | 変動・突発対応が多い | 切替が速い/救急が好き | 同系症例の連続化、役割境界を明確化 | 回復期・外来 |
| 回復期 | 件数は安定、会議・書類が多い | 計画設計・教育が得意 | 評価の段階化、会議資料の型化 | 外来・通所 |
| 外来 | 時間厳守、回転が速い | 要点化・説明が得意 | 再診テンプレ、説明の定型化 | 回復期・訪問 |
| 訪問 | 移動・事務の比率が高い | 自己管理・家屋評価が得意 | ルート最適化、道具の事前積載 | 通所・外来 |
| 老健 | 多職種協働、ADL 中心 | 生活期の目標設定が得意 | 集団プログラム導入、評価の簡素化 | 通所・回復期 |
| 通所 | 定型運用、曜日差が出やすい | グループ運営・安全管理が得意 | 曜日別の負荷分散、役割固定 | 外来・老健 |
早めに気づくための自己チェック 10(“黄色信号” を見逃さない)
「辞めたい」が強くなる前に出やすいサインです。2 つ以上が続くなら、まずは仕事量ではなく回復できる設計を優先します。
- 出勤前の強い憂うつ感・動悸が続く
- 遅刻・欠勤・早退が増える
- 同種の記録ミスが反復
- 患者対応を回避しがち
- 睡眠の質が落ちる
- 身体症状(頭痛など)が増える
- 自己効力感が下がる
- 回復しない疲労感が続く
- 安全基準を守れない兆しがある
- 飲酒・間食が急増する
まず 48 時間でやる即効対処(明日を軽くする)
- 記録テンプレを 1 つだけ作る(定型句+チェック欄、先頭 3 行に「目的・要点・次の一手」)
- 同系症例の連続配置で周辺作業を共通化(準備・片付け・説明をまとめる)
- 割り込み専用バッファを固定(毎日 30〜60 分、先に確保)
- 上長への相談メモを作る(事実・影響・代替案の 3 点)
- 睡眠と栄養の底上げ(就床/起床の固定+昼たんぱく)
上長に相談するときの「 3 点メモ」(そのまま使える)
口頭だけだと、感情と印象で終わりやすいです。メモは短く、事実→影響→代替案の順にします。
- 事実:担当数、会議頻度、移動距離、評価件数、記録時間など “数で言えるもの” を 1〜2 個
- 影響:休憩が取れない、記録が後ろ倒し、安全基準が守れない兆し、学習が止まる など
- 代替案:同系症例の連続化、バッファ固定、評価の段階化、担当再配分 など “こちらから提案”
1〜3 ヵ月の中期プラン(立て直す)
- 担当配分と目標単位の再設計(重症/軽症のバランス、連続化)
- 評価の段階化(スクリーニング⇄詳細評価)で “毎回フル評価” を避ける
- 学習テーマを週 1に絞り、担当症例と結び付ける
- 配置転換の準備(見学・希望条件の言語化)
- 転職も視野なら、比較表→書面確定の順で進める(全体手順は固定ガイドへ)
“残る/変える/転職” の判断フロー(期限は 3 ヵ月)
迷いが長引くほど消耗します。おすすめは、主因を 1 つに絞り、期限( 3 ヵ月)を先に決め、達成条件で分岐するやり方です。
| 分岐 | 選ぶ条件(目安) | この 3 ヵ月でやること | 判定の合格ライン |
|---|---|---|---|
| 残る | 主因が職場内で解決可能、協力者がいる | 相談メモ→代替案実行→再評価日を決める | 残業・休憩・記録の “詰まり” が改善 |
| 変える(配置転換等) | 働き方ミスマッチが主因、部署で忙しさの質が違う | 見学・希望条件の言語化・異動の打診 | 1 日の回復余地が確保できる |
| 転職 | 改善の見込みが薄い/安全ラインを割る/期限内に変化がない | 条件棚卸し→候補 3〜5 件比較→書面確定 | 入職後のミスマッチ要因が潰れている |
退職の話を進める前の注意(手続きで揉めないために)
退職は雇用形態や合意状況で扱いが変わります。原則として、期間の定めのない雇用では「解約申入れから 2 週間」で終了する旨が民法に整理されています(公的資料でも周知されています)。一方で、有期雇用などは例外もあるため、就業規則・雇用契約・状況を確認した上で進めるのが安全です。
- 公的資料の例:都道府県労働局の解説(民法 627 条の周知)
- 困ったら:総合労働相談コーナーで相談(無料)
現場の詰まりどころ/よくある失敗(ここで悪化しやすい)
辞めたい気持ちは「仕事量」だけでなく、詰まり方の設計ミスで増幅します。よくある失敗と、最小の修正を整理します。
| よくある失敗 | なぜ悪化するか | 最小の対策 |
|---|---|---|
| 原因を全部まとめて「辞めたい」にする | 打ち手が拡散し、判断が遅れる | 主因 1 つ+増悪因子 1 つに絞る |
| 相談が「気持ち」だけで終わる | 相手が動けず、改善が起きない | 事実・影響・代替案の 3 点メモで相談 |
| 転職の準備を “求人探し” から始める | 比較軸がなく、ミスマッチが再発 | 条件棚卸しを先に作る(面談準備チェックも活用) |
転職を視野に入れて面談の準備を整えるなら、マイナビコメディカルの面談準備チェック(ダウンロード)も、条件の言語化に使いやすいです(同一タブで開きます)。
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FAQ(よくある質問)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
何年目で「辞めたい」が増えやすいですか?
体感としては 1 年目の夏〜秋、3 年目前後に山が来やすいです。役割が増える一方で、仕事の設計(記録・割り込み・学習)が追いつかないことが多いです。まずは原因を 7 型に分け、主因 1 つに対して 3 ヵ月の期限を置くと迷いが減ります。
忙しすぎる時、交渉の材料は何を出せばいいですか?
数で言える材料が強いです。担当構成(重症/軽症)、移動距離、評価件数、会議頻度、記録時間の “どれか 1〜2 個” を出し、同系症例の連続化やバッファ固定など代替案を添えて相談します。
給料が主因なら、まず何から確認しますか?
処遇テーブルと評価制度(昇給条件)を確認し、「上がる条件」を行動に落とします。同時に市場比較をして、交渉か転職かの判断材料にします。
人間関係が主因のとき、どこが安全ラインですか?
安全が脅かされる場合は、職場内解決に固執しないことが大切です。ハラスメントが疑われる場合は記録を取り、外部の相談窓口も検討してください。公的な入口として 総合労働相談コーナー が案内されています。
退職を切り出す前に、最低限やっておくべきことは?
(1)主因の言語化、(2)引継ぎの見取り図(担当・期限・誰に渡すか)、(3)有休・社保など手続きの確認、(4)相談メモ(事実・影響・代替案)です。雇用形態によって扱いが変わるので、困ったら早めに相談窓口を使うと揉めにくいです。
参考文献
- 宮城労働局:退職の申出は 2 週間前までに(民法 627 条の周知資料)
- 厚生労働省:総合労働相談コーナーのご案内
- 厚生労働省:こころの耳(相談窓口案内)
- 厚生労働省:こころの耳電話相談
- 労働者健康安全機構ほか:過重労働による健康障害を防ぐために(啓発資料)
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


