ABMS-2の評価方法|5項目・6段階と記録の残し方
ABMS-2(Ability for Basic Movement Scale II)は、寝返り・起き上がり・座位保持・立ち上がり・立位保持の5項目を、それぞれ1〜6点で評価する基本動作の評価尺度です。5項目の合計点は5〜30点となり、急性期を中心に、基本動作能力や離床レベルの変化を短時間で共有したい場面で活用できます。
ABMS-2を臨床で活用する際は、合計点だけでなく、手すりの使用、介助方法、疼痛やめまい、ベッドの高さなどの評価条件も一緒に残すことが重要です。条件をそろえて再評価することで、点数の変化が本人の能力によるものか、環境や介助方法によるものかを判断しやすくなります。
この記事では、ABMS-2の評価項目と点数、評価から再評価までの流れ、記録時の注意点を解説します。印刷して使えるPDF記録シートと、5項目の合計点・内訳を確認できる自動計算ツールも掲載しています。
ABMS-2の全体像
- 評価項目:5項目
- 各項目:1〜6点
- 合計点:5〜30点
- 主な用途:基本動作能力や離床レベルの共有、経時変化の確認
ABMS-2とBMSの選び方に迷っている場合は、ABMS-2とBMSの違いを先に確認すると、病期や評価目的に応じて整理しやすくなります。
ABMS-2は5種類の基本動作を6段階で評価する
ABMS-2では、起居動作から立位までの5種類の基本動作を、共通する1〜6点の段階で評価します。同じ評価形式で記録できるため、どの基本動作で介助を要しているか、どの項目が改善したかを確認しやすいことが特徴です。
| 項目 | 評価する基本動作 | 点数 |
|---|---|---|
| 寝返り | 背臥位などから側臥位へ姿勢を変える動作 | 1〜6点 |
| 起き上がり | 臥位から端座位へ移行する動作 | 1〜6点 |
| 座位保持 | 端座位などの座位姿勢を保持する能力 | 1〜6点 |
| 立ち上がり | 座位から立位へ移行する動作 | 1〜6点 |
| 立位保持 | 立位姿勢を保持する能力 | 1〜6点 |
5項目をそれぞれ1〜6点で評価するため、合計点は最低5点、最高30点です。合計点が高いほど基本動作能力が高い状態を示しますが、臨床では合計点だけでなく、各項目の内訳を確認してください。
たとえば、同じ合計点でも「起き上がりが低い症例」と「立ち上がりが低い症例」では、必要な介助、リスク管理、練習内容が異なります。合計点は全体的な変化の把握に用い、項目別点数は介入対象や申し送り内容を考えるために活用します。
ABMS-2の点数は合計点と項目別点数をセットで見る
ABMS-2の結果は、5項目の合計点だけで判断せず、項目別点数と評価条件をセットで解釈します。合計点が上がっていても、評価環境や介助方法が前回と異なれば、本人の基本動作能力が改善したとは限りません。
| 確認する視点 | 見る内容 | 臨床での使い方 |
|---|---|---|
| 合計点 | 5項目を合計した5〜30点 | 基本動作能力の全体的な推移を確認する |
| 項目別点数 | 寝返りから立位保持までの各点数 | 介助が必要な動作や改善した動作を特定する |
| 評価条件 | 手すり、ベッド高、履物、介助、症状など | 前回と同じ条件で比較できるか確認する |
再評価では、合計点の差だけでなく「どの項目が何点変化したか」を確認します。さらに、前回と同じ条件で評価できているかを照合すると、変化の解釈がしやすくなります。
ABMS-2は、特定の合計点だけで歩行自立や退院可否を一律に判断する尺度ではありません。病態、意識状態、循環・呼吸状態、認知機能、転倒リスク、実際のADLなど、ほかの評価結果と組み合わせて判断してください。
ABMS-2記録シートPDF
ABMS-2を紙で記録したい場合は、5項目の点数だけでなく、評価条件や所見も残せるPDF記録シートを使用できます。A4縦で印刷し、ベッドサイド評価や再評価時の記録に利用してください。
記録シートのプレビューを表示する
記録シートには、評価日と点数に加えて、使用した支持物、介助方法、症状、次回の再評価条件を残します。紙面に条件が残っていると、担当者が変わっても同じ条件を再現しやすくなります。
ABMS-2自動計算ツール
ABMS-2自動計算ツールでは、5項目について1〜6点を選択すると、合計点と項目別の入力内容が自動で表示されます。その場で合計点を確認したい場合や、手計算による入力ミスを防ぎたい場合に利用してください。
5項目の入力が完了すると、合計点と各項目の内訳を一覧で確認できます。表示された評価結果はコピーできるため、PDF記録シートや院内記録へ転記する前の確認にも使用できます。
自動計算ツールは点数の集計と入力内容の確認に適しています。一方、手すりの有無、介助方法、疼痛やめまい、再評価条件などを記録として残す場合は、PDF記録シートと使い分けてください。
自動計算ツールとPDFの使い分け
- 自動計算ツール:合計点と5項目の内訳をその場で確認する
- PDF記録シート:評価条件、介助方法、症状、所見まで残す
ABMS-2の評価・記録・再評価の流れ
ABMS-2は、安全確認後に5項目を評価し、合計点と項目別点数、評価条件を記録したうえで、同じ条件で再評価します。点数を付けるだけで終わらせず、次回も同条件で比較できる記録を残すことが重要です。

1.評価前に安全条件を確認する
最初に、離床や基本動作評価を実施できる状態か確認します。医師からの安静度、意識状態、疼痛、めまい、呼吸状態、循環動態、点滴やドレーンなどのライン類、転倒リスクを確認してください。
前回の評価から全身状態が変化している場合は、点数を付けることよりも安全確保を優先します。必要に応じて評価を中止し、医師や看護師へ相談してください。
2.5項目をそれぞれ1〜6点で評価する
寝返り、起き上がり、座位保持、立ち上がり、立位保持の順に、各項目の状態を確認します。評価中は、どの程度の声かけ、見守り、支持物、身体介助を必要としたかも観察します。
判定の境界で迷った場合は、点数だけを無理に確定して終わらせず、実際に行った介助や動作所見を記録してください。施設や病棟内で判定方法を統一しておくと、評価者間のばらつきを抑えやすくなります。
3.合計点と項目別点数を記録する
各項目の点数を記録し、5項目の合計点を算出します。合計点だけを記載すると、どの動作が改善または低下したか分からなくなるため、項目別点数を必ず残してください。
たとえば「ABMS-2合計20点」だけでなく、「寝返り5、起き上がり4、座位保持5、立ち上がり3、立位保持3」のように内訳を記録すると、介入対象や申し送り内容を共有しやすくなります。
4.評価条件と所見を記録する
点数と一緒に、手すりの使用、ベッドや座面の高さ、履物、介助者の位置、身体介助を行った部位、疼痛やめまい、ふらつきなどを記録します。
「介助あり」だけでは、次の評価者が介助方法を再現できません。「骨盤を軽く支持」「立ち上がり初動のみ介助」「右手すり使用」など、短くても具体的な表現にします。
5.同じ条件で再評価する
再評価では、可能な範囲で前回と同じ手すり、ベッド高、履物、介助位置、声かけで実施します。同じ条件で比較することで、本人の基本動作能力がどのように変化したかを判断しやすくなります。
条件を変更した場合は、その内容を必ず記録してください。環境調整によって点数が上がった場合も臨床的には重要な変化ですが、身体機能の改善と環境による効果を分けて解釈する必要があります。
ABMS-2の記録で残したいポイント
ABMS-2の記録では、点数、評価条件、動作所見、次回条件の4点を残すと、再評価や多職種共有に活用しやすくなります。点数だけでは分からない「どの条件ならできたか」を記録してください。
| 記録欄 | 記録する内容 | 記載例 |
|---|---|---|
| 安全条件 | 評価実施に関係する症状やライン類 | めまいなし、疼痛NRS 2、点滴ルート確認済み |
| 項目別点数 | 5項目それぞれの評価結果 | 立ち上がり3点、立位保持3点 |
| 支持物・環境 | 手すり、ベッド高、座面高、履物 | 右手すり使用、ベッド高45cm、病棟靴 |
| 介助方法 | 介助した部位、タイミング、程度 | 立ち上がり初動で骨盤を支持 |
| 動作所見 | 不安定性、代償、症状など | 立位直後に後方動揺あり |
| 次回条件 | 再評価時にそろえる条件 | 同じ手すり、同じ履物、同じ座面高で再評価 |
動作所見を言語化するときは、動作全体を長文で書くのではなく、開始姿勢、動作中に詰まった場面、必要だった介助、終了姿勢の順に整理すると記録しやすくなります。観察内容の整理に迷う場合は、動作分析のやり方も参考にしてください。
記録例
ABMS-2:寝返り5点、起き上がり4点、座位保持5点、立ち上がり3点、立位保持3点、合計20点。右手すり使用、ベッド高45cm。立ち上がり初動で骨盤支持を要し、立位直後に軽度の後方動揺あり。次回も同条件で再評価する。
ABMS-2で起こりやすい記録上の失敗
ABMS-2で起こりやすい失敗は、点数だけを残し、評価条件や介助内容を記録しないことです。前回と今回で条件が異なると、点数の変化を正しく比較できなくなります。
| よくある失敗 | 問題点 | 対策 |
|---|---|---|
| 合計点だけを記録する | 改善・低下した動作が分からない | 5項目の内訳を必ず残す |
| 支持物を記録しない | 手すりの有無による違いを比較できない | 使用した手すりや支持物を記録する |
| 介助ありとだけ書く | 介助部位やタイミングを再現できない | 介助した部位と場面を短く記録する |
| 症状を記録しない | 能力低下と疼痛・めまいの影響を区別できない | 評価時の症状と中止理由を併記する |
| 毎回条件が異なる | 点数差が能力変化によるものか判断しにくい | 次回の再評価条件を1行で固定する |
監視と身体介助の記録が混在する
「見守り」「近接監視」「軽介助」などの用語が評価者によって異なると、点数や申し送り内容がずれやすくなります。施設内で用語の使い方をそろえ、身体に触れた場合は、触れた部位と介助した動作局面を記録してください。
疼痛やめまいの影響を残していない
能力的には動作可能でも、疼痛、めまい、呼吸苦、血圧変動などにより十分に実施できないことがあります。「できた・できなかった」だけでなく、実施を制限した症状を残すことで、次回の評価条件やリスク管理につながります。
再評価ごとに環境条件が変わる
ベッド高、手すり、履物、介助者の立ち位置、声かけが変わると、点数が変化する可能性があります。標準とする評価条件を決め、条件を変えた場合は変更点を記録してください。
ABMS-2を臨床で活用する場面
ABMS-2は、基本動作の到達段階や介助量を短時間で共有し、同条件で経時変化を追いたい場面に向いています。とくに、離床開始前後や全身状態が変化しやすい時期では、5項目を共通の枠組みで確認できることが利点です。
- 初回評価で基本動作能力の全体像を把握する
- 離床範囲や必要な介助量を多職種で共有する
- 前日または前回評価からの変化を確認する
- 低い項目を確認し、介入対象を絞る
- 病棟スタッフへ安全に実施できる条件を伝える
- 退院先や転院先へ基本動作能力を申し送る
ABMS-2だけで、実際の病棟ADLや自宅環境での動作をすべて評価できるわけではありません。必要に応じて、ADL評価、歩行評価、バランス評価、認知機能評価、動作分析などを組み合わせます。
急性期で離床レベルを共有する目的にはABMS-2が使いやすい一方、回復期から退院前にかけて動作を細かく分解し、移乗や歩行まで含めて確認したい場合はBMSが適することがあります。評価尺度の選択は、病期だけでなく「評価結果から何を決めたいか」で判断してください。
ABMS-2に関するよくある質問
各質問をタップまたはクリックすると回答が開きます。
ABMS-2は何項目を評価しますか?
寝返り、起き上がり、座位保持、立ち上がり、立位保持の5項目です。各項目を1〜6点で評価します。
ABMS-2の合計点は何点ですか?
5項目をそれぞれ1〜6点で評価するため、合計点は最低5点、最高30点です。合計点が高いほど基本動作能力が高い状態を示しますが、臨床では項目別点数と評価条件も確認してください。
ABMS-2は合計点だけを記録すればよいですか?
合計点だけでなく、5項目の内訳、手すりやベッド高などの評価条件、介助方法、疼痛やめまいなどの所見も記録します。内訳と条件を残すことで、再評価時の変化を解釈しやすくなります。
再評価で最も重要なことは何ですか?
前回と同じ条件で評価することです。手すり、ベッド高、履物、介助者の位置、声かけなどを可能な範囲でそろえます。条件を変更した場合は、その内容を記録してください。
ABMS-2とBMSはどちらを使えばよいですか?
急性期で基本動作や離床レベルを短時間で共有したい場合はABMS-2が使いやすいです。回復期から退院前に、動作の詰まりを細かく分解し、移乗や歩行まで確認したい場合はBMSが適することがあります。詳しくは、ABMS-2とBMSの違いをご覧ください。
自動計算ツールとPDFはどのように使い分けますか?
合計点と5項目の内訳をその場で確認したい場合は自動計算ツール、項目別点数、評価条件、動作所見、次回条件まで記録として残したい場合はPDF記録シートが向いています。
自動計算ツールの結果はコピーできますか?
5項目をすべて入力すると、各項目の点数と合計点をまとめてコピーできます。コピーした内容は記録作成時の確認に利用できますが、正式な記録には評価条件や動作所見も併記してください。
ABMS-2の次に確認したい評価
ABMS-2で基本動作の全体像を確認した後は、低い項目や臨床上の課題に応じて、動作分析やほかの評価へつなげます。合計点を算出することを目的にせず、次に確認する動作や介入内容を明確にしてください。
- 基本動作評価ハブ:基本動作評価の全体像と関連尺度を確認する
- ABMS-2とBMSの違い:病期や目的に応じた使い分けを確認する
評価や記録の運用が定着しにくい場合
評価方法を整えても共有が回らない場合は、教育体制、記録文化、人員配置など、職場環境側の要因が影響していることがあります。現在の環境を整理する材料として確認してください。
参考文献
- Tanaka T, Hashimoto K, Kobayashi K, Sugawara H, Abo M. Revised version of the ability for basic movement scale (ABMS II) as an early predictor of functioning related to activities of daily living in patients after stroke. J Rehabil Med. 2010;42(2):179-181. doi: 10.2340/16501977-0487. PubMed PMID: 20140415.
- Gu R, et al. The Ability for Basic Movement Scale II Can Predict the Functional Status and Discharge Destination in Convalescent Stroke Patients. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2020;29(2):104484. doi: 10.1016/j.jstrokecerebrovasdis.2019.104484. PubMed PMID: 31753717.

