【SPPBとは】3つの評価項目【カットオフ値と転倒リスクの把握】

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身体・運動機能
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この記事の内容
  1. この記事は「Short Physical Performance Battery(SPPB)」をキーワードに内容を構成しています。
  2. 高齢者の身体機能評価において、Short Physical Performance Battery(SPPB)は単なる評価ツールを超えた存在です。
  3. バランス、歩行速度、下肢筋力の 3 つの要素から算出される 0 ~ 12 点のスコアが、なぜ転倒リスクや生活自立度、さらには生命予後まで予測できるのでしょうか。
  4. 実は、SPPB の背景には 30 年以上の疫学研究と、10 万人を超える高齢者データの蓄積があります。
  5. 本記事では、SPPB の理論的背景から臨床応用のポイント、さらに最新のカットオフ値設定まで、エビデンスに基づいた実践的な活用法を詳しく解説します。
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理学療法士として以下の経験と実績を持つリハビリくんが解説します♪

リハビリくんの実績
  1. rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設
  2. 2025 年 8 月時点:185 記事公開(月間 3 万 PV)
  3. 実務経験(医療機関、介護福祉施設、訪問リハビリ等)
  4. 講師活動(脳卒中、褥瘡等をテーマに複数回講演)
  5. 脳卒中 認定理学療法士
  6. 褥瘡 創傷ケア 認定理学療法士
  7. 3 学会合同呼吸療法認定士
  8. 福祉住環境コーディネーター 2 級
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下肢機能の包括的評価方法

高齢期における日常生活活動能力は、 自立した生活を営むために重要な指標となります。基本的に歳をとると身体機能については、若い頃と比較して低下の傾向を辿ります。

特に歩行速度低下、下肢筋力低下、立位バランス低下などの下肢機能低下は ADL 能力の低下をきたす重要な身体的な要因となります。

リハビリテーションにおける ADL 評価方法といえば、Barthel Index や FIM が頭に浮かぶと思います。これらの評価方法では、移乗動作能力や歩行能力について確認する項目もありますが、全体的には下肢機能に特化しているわけではなく、日常生活を全般的に捉える評価尺度となっております。

下肢機能については転倒や事故などにも直接的に関係する特に重要な身体機能になります。例えば、病院に入院したての患者やデイサービスなどの介護保険サービスの利用が開始されたばかりの利用者に対して、簡易的に下肢の包括的評価を行うことは安全な生活を送るうえで価値が高いと考えられます。

SPPBの開発

Short Physical Performance Battery(SPPB)は、高齢者の下肢機能を評価する目的で、National Institute on Aging(NIA)によって開発され、1994 年に発表された評価尺度になります。

近年では、サルコペニアの診断基準としても用いられており、AWGS2019では SPPB 9点以下が身体機能低下の1つの判断材料となっております。

SPPBの評価方法

Short Physical Performance Battery(SPPB)は、立位バランス、歩行、立ち座り動作の 3 課題から成るパフォーマンステストになります。各課題の達成度を 0〜4 点で採点し、合計点を指標とします。

施行時間は 5 分程度と簡便であり、虚弱高齢者、高齢入院患者、心不全患者の身体機能の評価、死亡リスクの増大やADL低下の予測因子、介入効果のアウトカム指標として、国際的にも広く用いられております。

Short Physical Performance Battery(SPPB)の課題としては、ある程度対象者の身体機能が保持されていないと3項目とも最低点の0点となることが予想されます。

要介護高齢者の場合には、課題の難易度が全体的に高いことから、床効果の影響を受けることが考えられます。また、各課題の段階基準間の能力差が大きすぎると、身体能力が過小評価されたり、経時的変化の把握が不十分となる可能性があります。

立位バランステスト

立位バランステストについては、杖や歩行器などの歩行補助具を使用しないで実施します。立位バランステストは以下の3つの姿勢から判断します。

《 閉脚立位 》

両足の内側をつけた状態で10秒保持

  • 10秒可能:1点
  • 10秒未満:0点
  • 実施困難:0点

《 セミタンデム立位 》

片脚の踵ともう片脚の親指をつけた状態で10秒保持

  • 10秒可能:1点
  • 10秒未満:0点
  • 実施困難:0点

閉脚立位とセミタンデム立位がどちらも0点だった場合はタンデム立位は実施せず、歩行テストに進む

《 タンデム立位 》

片脚の踵ともう片脚のつま先をつけた状態で10秒保持

  • 10秒可能:2点
  • 3〜9.99秒:1点
  • 3秒未満:0点
  • 実施困難:0点

閉脚立位、セミタンデム立位、タンデム立位の3項目を合計した点数が立位バランステストの合計点となります。

バランスについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【バランスとバランス能力の違いについての記事はこちらから

歩行テスト

SPPBにおける歩行テストの距離は、4m歩行となっています。テストは2回行います。2回実施して得られた良い方のタイムを使用します。

歩行テストにおいては、歩行補助具を使用することもできます。その場合は2回とも同じ歩行補助具を使用する必要があります。評価者は評価用紙にテストの際に使用した歩行補助具を記載します。

また、歩行テストというとできるだけ早く歩くというイメージがあるかもしれませんが、SPPBにおける歩行テストの歩行速度は至適速度(普段歩いているような速さで無理なく歩く)で計測します。

  • 4.82 秒未満:4点
  • 4.82〜6.20 秒:3点
  • 6.21〜8.70 秒:2点
  • 8.70 秒以上:1点
  • 実施困難:0点

立ち上がりテスト

SPPBの立ち上がりテストでは5回立ち上がりテストを使用します。5回立ち上がりテストとは、5回の立ち上がりに要した時間を計測するものになります。

立ち上がりテストの測定は、座面高が40cm程度の一般的な椅子を用いて行います。座位で胸の前で腕を組んだ姿勢より開始します。

テスト実施者には「腕を胸の前で組んで、できる限り速く、5回連続立ち座りを繰り返して下さい。立ち上がる時は膝は完全に伸ばし、座る時はお尻を座面にしっかりとつけて下さい」と説明します。

  • 11.19秒未満:4点
  • 11.20〜13.69秒:3点
  • 13.7〜16.69秒:2点
  • 16.7秒以上:1点
  • 60秒以上:0点
  • 実施困難:0点

評価用紙

Short Physical Performance Battery(SPPB)の評価用紙をダウンロードできるようにしておきました!評価表が必要な方はこちらからどうぞ☺

採点方法とカットオフ値

  1. 立位バランステスト
  2. 歩行テスト
  3. 立ち上がりテスト

各項目0〜4点のいずれかで採点し、3項目を合計し、0〜12点で採点します。点数による下肢機能の判定は以下の通りになります。

  • 0〜6点:低パフォーマンス
  • 7〜9点:標準パフォーマンス
  • 10〜12点:高パフォーマンス

また、AWGS2019では、身体機能低下の基準をSPPB9点以下と定めています。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「Short Physical Performance Battery(SPPB)」をキーワードに考えを述べさせていただきました。

こちらの記事で、Short Physical Performance Battery(SPPB)における理解を深め、下肢機能の評価尺度として、臨床で活用して頂けると幸いです!

参考文献

  1. 杉本諭,古山つや子,関根直哉.Short Physical Performance Battery は要介護高齢者に対するパフォーマンステストとして利用できるか?.理学療法科学.35(2),2020,p237-243.
  2. 山田実.介護予防(フレイル対策)に対する評価・効果判定のアウトカム.理学療法学.第47巻,第5号,2020,p499-504.
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