Lawton IADL の評価方法|1 点の境目・5 分手順・記録シート
Lawton IADL は、在宅で生活が回るかを 5〜10 分で把握しやすい代表的な IADL 尺度です。この記事で答えるのは、どう測るか、どこが 1 点の境目か、判定をどうそろえるかです。合計点のあとの介入設計まで広げすぎず、まずは測り方をぶらさないことに絞って整理します。
対象読者は、病棟・外来・訪問で「Lawton IADL を取ることはあるが、自己申告だけで終わりやすい」「1 点の境目が担当者でずれやすい」と感じている PT / OT / ST です。退院後の支援設計そのものは別記事に任せ、このページでは面接の進め方 → 模擬確認 → 判定 → 記録までを 1 ページでそろえます。
現場の詰まりどころ|“ 点は付いたが判定がそろわない ”を先に潰す
Lawton IADL は簡便なぶん、自己申告だけで採点したり、「 1 回できた 」をそのまま 1 点にしたりすると、担当者ごとに解釈がずれやすい尺度でもあります。短時間でもぶれないよう、次の 3 つだけ先に固定します。
- 手順は 5 分手順で固定する(前提確認 → 本人 → 代理情報 → 模擬 → 判定)
- 落とし穴は よくある失敗( NG )で先に回避する
- 採点後の支援設計は、Lawton IADL を使ったあとに何を決めるかに切り分ける
IADL(手段的日常生活動作)とは
IADL( Instrumental Activities of Daily Living /手段的日常生活動作)は、買い物・料理・洗濯・掃除・金銭管理・服薬管理・電話・交通機関の利用など、在宅自立と社会参加に不可欠な「応用的 ADL 」です。
ADL が自立でも IADL に難しさがあれば、地域生活・独居継続・復職に支障が出ます。身体機能だけでなく、注意・記憶・遂行機能、住環境、地域資源、支援体制まで含めて判断するのが実務上のポイントです。
Lawton(ロートン)IADL 尺度の基本
| 観点 | 要点 |
|---|---|
| 目的 | 在宅生活の自立度、生活管理力、地域生活の維持に必要な能力を簡便に把握します。 |
| 構成 | 基本は 8 項目(電話、買い物、食事準備、家事、洗濯、交通、服薬、金銭)です。採点法には複数の運用があるため、施設の採用版を優先します。 |
| 採点 | 合計点だけでなく、どの工程で詰まって 0 点になったかを文章で補足することが重要です。 |
| 使いどころ | 退院前評価、在宅生活の見通し確認、家族説明、経時比較、支援調整の入口として使いやすい尺度です。 |
Lawton IADL の評価方法(やり方: 5 分手順)
ポイント:「前提確認 → 本人への聞き取り → 代理情報で照合 → 模擬で 1 項目確認 → 判定理由を記録」の順にそろえると、短時間でもぶれが減ります。可能なら電話検索→発信、服薬手順の説明、買い物手順の説明などを 1 項目だけでも模擬すると、自己申告だけより判定が安定します。
また、痛み・息切れ・めまいなどの安全確認は先に済ませ、服薬・金銭・交通のように事故につながりやすい項目は優先して確認します。ここでは「支援をどう入れるか」まで決めるより、まず採点の根拠をそろえることが目的です。
| 手順 | やること | 誰から情報を取る | ミスしやすい点 | 記録の型(短文) |
|---|---|---|---|---|
| 1. 前提確認 | 生活形態、支援の有無、生活範囲、直近 1 か月の変化を確認 | 本人 → 家族/介護者で照合 | 「していない」=「できない」と誤解する | 「生活形態:○○。支援:○○。最近の変化:○○。」 |
| 2. 本人への聞き取り | 8 項目について、普段のやり方・頻度・困りごとを聞く | 本人 | 過大/過少申告をそのまま採点する | 「本人申告:○○は可能。根拠:○○。」 |
| 3. 代理情報で照合 | 家族/介護者に同項目を確認し、ズレの理由を言語化する | 家族/介護者 | 代行されている事実が抜ける | 「介護者情報:○○は△△が代行。ズレ:○○。」 |
| 4. 模擬で確認 | 電話検索→発信、服薬手順説明、買い物の段取り説明などを短く模擬する | 本人(必要時見守り) | “ 1 回だけできた ” を 1 点にしやすい | 「模擬:○○は手順○○まで自力。詰まり:○○。」 |
| 5. 判定と記録 | 0 / 1 を決め、境目になった理由を 1 行で残す | 担当者(必要時チーム共有) | 合計点だけで終える | 「0 点項目:○○。境目:○○。判定理由:○○。」 |
Lawton IADL の評価方法(項目別の境目・観察ポイント)
ここでは、臨床で迷いやすい「 1 点の境目 」を、項目ごとに短く整理します。コツは、「できる/できない」で終わらせず、検索 → 計画 → 実行 → 安全 → 継続のどこで止まるかを分けて見ることです。
| 項目 | 項目の趣旨(要約) | 1 点の目安(境目の考え方) | 0 点の例 | 観察・確認ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 電話の使用 | 必要な相手へ連絡し、用件を伝えられるか | 連絡先の把握 → 検索 → 発信 → 用件伝達まで遂行できる | 受けるだけ/番号準備を他者に依存 | 検索から発信までを連続で見て、中断点を特定する |
| 買い物 | 必要な物を選び、会計し、持ち帰れるか | 計画〜購入〜会計〜帰宅を一貫して行える | 少額のみ可/常時付き添いが必要 | 品目選択、決済、袋詰め、荷物重量まで確認する |
| 食事の準備 | 安全に食事を準備・配膳できるか | 献立立案〜調理〜配膳まで継続して行える | 温めのみ/監視が必要 | 火気、刃物、衛生、同時並行の手順管理を見る |
| 家事 | 住環境を基準以上の清潔さに維持できるか | 清掃・片付けをおおむね自立で続けられる | 全般介助が必要/関与しない | 週次ルーティン、疲労、転倒リスクを確認する |
| 洗濯 | 洗う、干す、畳む、収納まで自己管理できるか | 各工程を自分で段取りし完了できる | 他者依存が大きい/工程が飛ぶ | 設定選択、干す、収納までの中断の有無を見る |
| 交通機関の利用 | 単独で移動計画を立て、実行できるか | 一人で運転可、または公共交通を自立利用できる | 常時付き添い必須/外出自体を行わない | 行先設定、乗換、支払い、時間管理、安全意識を確認する |
| 服薬管理 | 薬の仕分け・時刻管理・服用を自己管理できるか | 準備から時刻管理まで含めて自分で行える | 準備されれば服用可/自己管理は不可 | 頓用や中止指示の理解、飲み忘れの自己修正を見る |
| 金銭管理 | 支払い、予算、家計管理を行えるか | 小口から大口まで概ね自立処理できる | 大口は介助必須/請求処理が困難 | 請求書処理、暗証番号、詐欺リスクの把握を見る |
採点と結果の読み方
結論:固定のカットオフだけで判断するより、合計点+ 0 点項目の中身+判定条件をセットで残すほうが実務では役立ちます。同じ 0 点でも「準備されれば可」「一部工程のみ可」「 1 回はできるが継続困難」では意味が違うため、必ず文章で補足してください。
また、Lawton IADL には採点法のバリエーションがあります。版が違うまま比較すると解釈がぶれるので、採用版、情報源、模擬の有無、見守り条件を同時に残すことが大切です。
| 合計点 | 読み方の目安 | 測定時に追加で残したいこと |
|---|---|---|
| 6–8 点 | 概ね自立だが、弱点項目の条件差に注意する | どの条件なら成立し、どこで崩れるか |
| 3–5 点 | 部分的な支援や環境の影響を受けやすい | 能力の問題か、環境因子か、代行か |
| 0–2 点 | 広い範囲で支援が必要で、判定理由の明記が重要 | 高リスク項目、情報源、模擬での中断点 |
記録の書き方(そのまま使える短文テンプレ 3 つ)
「できない」だけで終わらせず、どの工程で詰まるか、何を根拠に判定したか、同条件で再評価できるかまで 1 行でそろえると、担当者間のブレが減ります。
| 場面 | テンプレ(例) | 書くべき要素 |
|---|---|---|
| 判定理由を残す | 「Lawton IADL:○ / 8。0 点:服薬。理由:ピルケース準備は他者依存、本人は時刻管理のみ可。」 | 合計点、0 点項目、詰まり工程、代行の有無 |
| 自己申告と乖離あり | 「本人申告では買い物可。家族情報では会計で支援あり。模擬では品目選択は可、支払い手順で中断。」 | 乖離の有無、模擬の中断点、情報源 |
| 環境因子が強い | 「交通:能力だけでなく、地域の坂道とバス本数の影響が大きい。判定条件として地域環境を併記。」 | 能力と環境の切り分け、地域要因、条件 |
評価用紙( A4 )・ダウンロード
院内様式がある場合はそちらを優先してください。記録をそろえたい場合は、採用版、情報源、0 点項目、判定理由、再評価日まで 1 枚で残せる記録シートを使うと運用しやすくなります。
この PDF は、原票の全文掲示を目的としたものではなく、測定条件と判定理由をそろえるための記録用紙です。初回評価、退院前カンファ、訪問導入時の再評価で使いやすい形にしています。
Lawton IADL 記録シート( A4 )
採用版、情報源、高リスク項目、判定理由、再評価日を A4 1 枚で整理できる PDF です。
プレビューを表示(もう一度タップで閉じます)
よくある失敗( NG )と対策
Lawton IADL は簡便な分、“ 点は付いたが判定理由が残らない ”ことが起きやすい尺度です。下の 4 つを潰すと、測り方の再現性が上がります。
| NG | 起こりやすい原因 | 対策 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 自己申告だけで採点する | 遠慮、見栄、失見当、代行の事実が出にくい | 本人 → 介護者の順で照合し、模擬を 1 項目入れる | 「乖離:あり/なし」「模擬での中断点:○○」 |
| “ 1 回できた ” を 1 点にする | 持久性、安全、継続性が評価に入っていない | 継続可能性と安全面を必ず補足する | 「継続:可/困難」「安全:見守り要」 |
| 環境の影響を能力と混同する | 交通事情、店舗距離、決済方法で点が左右される | 能力と環境を分けて書き、条件を併記する | 「環境因子:○○」「判定条件:○○」 |
| 合計点だけで終える | 0 点項目の意味が埋もれる | 0 点項目と判定理由を 1 行追加する | 「0 点項目:○○」「境目:○○」 |
ミニ FAQ(判定の境目)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
所要時間は?誰に聞けばいい?
目安は 5〜10 分です。まず本人に聞き取りし、次に家族・介護者の情報で照合します。可能なら、電話検索→発信などを 1 項目だけでも模擬で確認すると判定が安定します。
付き添いがあれば電車に乗れる人は 1 点ですか?
施設運用として、付き添いがあれば公共交通で移動できるケースを 1 点に含める場合があります。大切なのは、採点ルールを記録に残し、安全面の付記もそろえることです。
家族がピルケースを用意すれば 1 点ですか?
いいえ。服薬管理は、仕分けから時刻管理まで本人が自立しているかで見ます。「準備されれば服用できる」は 0 点として扱うほうが実務ではぶれにくいです。
性別で項目数を変える必要はありますか?
運用には複数の版があるため、施設の採用版を優先してください。採点ルール、情報源、模擬の有無を記録に残し、同一条件で比較することが重要です。
次の一手
参考文献
- Lawton MP, Brody EM. Assessment of Older People: Self-Maintaining and Instrumental Activities of Daily Living. The Gerontologist. 1969;9(3 Pt 1):179-186. DOI: 10.1093/geront/9.3_Part_1.179 / PubMed: 5349366
- 日本老年医学会. 手段的日常生活動作( IADL )尺度. 公式 PDF
- Wei L, Hodgson C. Clinimetrics: The Lawton-Brody Instrumental Activities of Daily Living Scale. J Physiother. 2023;69(1):57. DOI: 10.1016/j.jphys.2022.06.007 / PubMed: 36528506
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


