Jendrassik法のやり方と記録【PDF付き】

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Jendrassik 法のやり方と記録|腱反射が出にくい時の増強手順

Jendrassik maneuver(ジェンドラシック操作/ジェンドラシック増強法)は、深部腱反射( DTR )が通常条件で出にくいときに、遠隔筋収縮を使って反応を高める増強法です。特に下肢の膝蓋腱反射( KJ )やアキレス腱反射( AJ )で使いやすく、脱力づくり、合図、打鍵のタイミングをそろえることで、評価の再現性を上げやすくなります。

本記事では、Jendrassik 法をいつ追加するか、どう実施するか、通常条件と JM 後をどう記録するかを、現場でそのまま使える形に整理します。反射検査全体の位置づけや上肢・下肢の基本手順は 反射検査 完全ガイド で補い、本ページでは「出にくい反射をどう標準化するか」に絞って解説します。

評価の型は、個人の努力だけで身につくとは限りません。教育体制や相談環境が弱いと感じるなら、学び方と環境の整え方を先に整理しておくと動きやすくなります。 PT キャリアガイドを見る

標準手順(下肢 DTR )

結論からいうと、 Jendrassik 法は脱力位の確保 → 合図の統一 → 短い遠隔筋収縮 → 直後に軽快な打鍵の順でそろえると使いやすくなります。増強法そのものより、通常条件を整えたうえで追加することが重要です。最初から JM に頼るのではなく、まずは体位と脱力をそろえます。

  1. 体位:端座位で下腿を自然にぶら下げ、振り子運動が保てる程度まで脱力を確認します。
  2. 説明:「合図で指をサッと引いてください。歯は噛みしめなくて大丈夫です」と短く伝えます。
  3. 遠隔筋収縮:両手の第 2〜3 指をフック状に組ませ、合図に合わせて素早く水平に引き合うよう指示します。持続はおよそ 2 秒です。
  4. 打鍵:検者は合図の直後に腱を軽快に 1 回打鍵します。強打や連打は避けます。

KJ は膝蓋腱中央、 AJ は軽い背屈位でアキレス腱を打鍵します。打鍵角度は腱に対しおおむね 45 °前後を目安にし、同一点を何度も叩かないことが大切です。上肢の DTR では、まず注意分散や体位調整を優先し、必要時に遠隔筋収縮を応用します。

誘発手段の比較(使い分け)

Jendrassik 法は有用ですが、毎回の第一選択とは限りません。力みが強い症例では注意分散、痛みや恐怖が強い症例では呼吸誘導のほうが反応を整えやすいことがあります。迷いにくい順番は、「脱力と体位」→「注意分散」→「呼吸誘導」→「 JM 追加」です。

スマホでは表を横スクロールできます。

誘発手段の比較(成人・ 2026 年版)
手段 やり方 有効な場面 注意点
Jendrassik 法 両手を組み、合図で素早く引き合う KJ・ AJ の反応増強に有効 食いしばり禁止、連打しない
注意分散 握り拳、会話、別課題など 緊張が強いとき、上肢 DTR の評価 課題が強すぎると代償が増える
呼吸誘導 自然な呼気に合わせて打鍵 力みや疼痛が強いとき 息こらえや過換気を避ける
軽ストレッチ 腱・筋のテンションを軽く整える 腱の位置が取りにくいとき 過度な牽引や痛みは避ける

判定と記録( 0〜4+・略記の統一)

Jendrassik 法を使ったときは、通常条件 → JM 後の順で記録すると比較しやすくなります。例として、 KJ 1+/4 → 2+/4( JM+ )、 AJ 0/4 → 1+/4( JM+ )のように残すと、「通常条件ではどの程度か」「増強でどこまで変わるか」が明確になります。

略記は院内で統一します。 KJ =膝蓋腱、 AJ =アキレス腱、 JM = Jendrassik maneuver とし、 SOAP では通常条件と誘発条件を混ぜないことが大切です。左右差、体位、疼痛、不安、寒冷、説明の入り方まで条件として残しておくと、再評価時のぶれを減らせます。

Jendrassik 法の使いどころ 4 ステップを示したフロー図
図:Jendrassik 法は「通常条件で確認 → 要時のみ JM を追加 → JM 後の反応を確認 → 通常 / JM 後を分けて記録」の流れでそろえると、再評価でも比較しやすくなります。

Jendrassik 法の記録シート( PDF )

通常条件と JM 後を並べて残すと、反射の変化を比較しやすくなります。今回の記録シートは、「要時のみ JM を追加」という実務の流れに合わせて、 KJ 右・ KJ 左・ AJ 右・ AJ 左を 1 枚で整理できる形にしています。教育や申し送りでも使いやすいよう、 Step 3 の表の余白と視認性を調整した版です。

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記録の型をそろえたい場面、通常条件と JM 後の変化を残したい場面で使えます。

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現場の詰まりどころ(よくある失敗)

Jendrassik 法は、増強法を追加すれば解決する検査ではありません。実際には、脱力づくり、説明、打鍵位置、記録の書き分けで詰まりやすく、そこが曖昧だと結果の解釈もぶれます。新人教育では、次の 5 点を先にそろえるだけでも再現性が上がります。

  • 脱力が不十分なまま始める:下腿が振り子状に揺れていない、足底が床や台に触れていると、反射が過小評価されます。
  • 歯の食いしばりを許容する:顎や体幹まで力むと、不要な緊張が入りやすくなります。
  • 打鍵位置が安定していない:腱以外を叩くと、 JM の有無以前に反応がぶれます。
  • 通常条件と JM 後を分けて記録していない:比較できず、再評価で困りやすくなります。
  • 反応が弱いときに連打する:反射の疲労や防御的緊張を招きやすいため、 2〜3 試行で切り上げます。

出ない/出すぎる時の対処

出ない場合:脱力不足、腱テンション過多、打鍵面のズレ、不安・寒冷などが背景にあることが多いです。体位を再調整し、腱を触診で再確認したうえで、声かけ・呼吸誘導・注意分散・ JM の順に試します。反応が弱い場合でも、連打せず少し間を置いて再確認します。

出すぎる場合:痛み、恐怖、過緊張で反応が過大化していることがあります。誘発をいったん外し、自然な呼気タイミングで軽く打鍵します。痙縮が強いケースでは姿勢や支持条件を見直し、同一筋群への過度なストレッチや押さえ込みが入っていないかも確認します。

禁忌・注意(中止基準)

術後直後、深部静脈血栓が疑われる下肢、強い疼痛や皮膚損傷部位では、 Jendrassik 法よりもまず打鍵や体位の安全性を優先します。抗凝固療法中は皮下出血リスクにも配慮し、強打や反復打鍵は避けます。顎口腔の食いしばりや Valsalva を誘発しないよう、「歯は噛みしめない」と事前に明示しておくと安全です。

高齢者や骨粗鬆症患者では、端座位での転落や過緊張にも注意します。必要に応じて足台や支持を併用し、増強法にこだわるより、通常条件で取れる範囲を丁寧に確認します。動画記録はプライバシーと負担感に配慮し、同意を得たうえで最小限にとどめます。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. Jendrassik maneuver の正式名称と読み方は?

英語表記は Jendrassik maneuver で、日本語では「ジェンドラシック操作」「 Jendrassik 法 」「ジェンドラシック増強法」などの表記があります。院内マニュアルや記録ではどれか 1 つに統一し、略記は JM としておくと運用しやすくなります。

Q2. いつ JM を追加すればよいですか?

最初から毎回使うのではなく、通常条件での脱力、体位、打鍵位置を整えても反応が乏しいときに追加します。実務では、「通常条件 → 注意分散や呼吸誘導 → 要時のみ JM 」の順で考えると、解釈がぶれにくくなります。

Q3. 何回くらい繰り返して評価すればよいですか?

同じ条件での繰り返しは 2〜3 回を目安にします。それ以上は反射の疲労や防御的緊張を招きやすく、かえって判定がぶれます。反応が弱い場合でも、連打するより、打鍵位置・角度・脱力を見直して少数回で判断するほうが実務的です。

次の一手


参考文献

  • Ertuglu LA, Karacan I, Yilmaz G, Türker KS. Standardization of the Jendrassik maneuver in Achilles tendon tap reflex. Clin Neurophysiol Pract. 2017;3:1–5. DOI | PubMed
  • Passmore SR, Bruno PA. Anatomically remote muscle contraction facilitates patellar tendon reflex reinforcement while mental activity does not: a within-participants trial. Chiropr Man Therap. 2012;20:29. DOI | PubMed
  • Hayes KC, Sullivan J, Gandevia SC. Jendrassik maneuver facilitation and fractionated patellar reflex times. J Appl Physiol. 1972;32(3):290–295. DOI
  • Zimmerman B, Menon RS. Deep Tendon Reflexes. In: StatPearls [Internet]. 2025–. PubMed

略語凡例:DTR=深部腱反射、 KJ =膝蓋腱、 AJ =アキレス腱、 JM = Jendrassik maneuver。

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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