Jendrassik法は「通常条件で出にくい反射」に追加する増強法
Jendrassik maneuver(Jendrassik法/ジェンドラシック増強法)は、通常条件で下肢の深部腱反射(DTR)が出にくいときに、遠隔筋収縮を加えて反応を増強する方法です。基本は、まず体位・脱力・打鍵条件を整え、それでも反応が乏しい場合に追加します。
本記事では、いつJendrassik法を追加するか、手指をどう使ってどのタイミングで打鍵するか、通常条件とJM併用をどう分けて記録するかに絞って解説します。膝蓋腱反射(KJ)やアキレス腱反射(AJ)そのものの基本手順ではなく、「出にくい反射へ増強法をどう追加し、再評価できる形で残すか」を確認したい方向けの記事です。

先に基本手順を確認したい場合:
深部腱反射(DTR)の体位・打鍵・判定を確認する
Jendrassik法のやり方|4ステップ
Jendrassik法では、通常条件を先に確認し、遠隔筋収縮を行っているタイミングで腱を打鍵することがポイントです。最初からJMを使うと通常条件での反応が分からなくなるため、「通常条件 → 必要時のみJM」の順番をそろえます。
- 通常条件で反射を確認する:検査する下肢を支持し、対象筋の脱力、腱の位置、体位を整えた状態で反応を確認します。
- 両手の指を掛ける:左右の手指を屈曲させ、互いの指が外れにくいようフック状に掛けてもらいます。
- 合図で左右へ引き合う:「合図で両手を左右に引いてください」など、短い説明を使って遠隔筋収縮を行います。
- 引き合っている最中に打鍵する:検者は手指を引き合っているタイミングで対象の腱を打鍵し、通常条件との反応差を確認します。
膝蓋腱反射やアキレス腱反射の体位、腱の探し方、反射ハンマーの使い方そのものは通常のDTR検査と同じです。Jendrassik法を追加する前に、まず通常条件の再現性を整えることを優先します。
「何秒引くか」より打鍵のタイミングをそろえる
Jendrassik法では、単純に「強く引く」「長く引く」ことよりも、遠隔筋収縮と反射誘発のタイミングをそろえることが重要です。文献でも実施方法は完全には統一されておらず、臨床で一律に「必ず2秒」などと固定するより、使用した方法と打鍵のタイミングをそろえて比較するほうが実務的です。
タイミングの基本
「引いてください」と合図したあと、手指を引き合っている最中に打鍵します。引き終わって完全に力を抜いてから打鍵する方法とは分けて考えます。
JMを追加する前に確認する3点
反射が弱いからといって、すぐにJendrassik法を追加するわけではありません。先に脱力・腱の位置・検査条件を確認し、それでも反応が乏しい場合にJMを追加すると、通常条件との差を解釈しやすくなります。
- 脱力:検査する筋に随意的な力みが残っていないか、下肢の支持方法や関節位置を確認します。
- 腱の位置:対象となる腱を触知し、打鍵する位置がずれていないか確認します。
- 検査条件:左右比較や再評価で、体位・支持方法・打鍵部位が大きく変わっていないか確認します。
Jendrassik法は、通常条件を整える代わりに使うものではありません。まず通常条件を確認し、そのうえで「増強を加えるとどう変わるか」を見るために追加します。
Jendrassik法の実施方法は文献で完全には統一されていない
Jendrassik maneuverという名称は広く使われていますが、具体的な遠隔筋収縮の方法は文献によって一定ではありません。手指を組んで引き合う方法、歯の噛みしめ、両者を組み合わせる方法などが研究されており、それぞれで反射増強が報告されています。
そのため、「歯を噛みしめる方法だけが正しい」「食いしばりは禁止」などと一律に決めるのではなく、実際に使用した条件を明確にすることが重要です。
本記事と記録シートでは、臨床で条件をそろえやすいよう、手指を掛けて左右へ引き合う方法を基本条件として扱います。同じ評価の中で、手指の引き合いに加えて噛みしめなど別の増強刺激を無意識に追加すると条件が変わるため、比較するときは使用する方法をそろえます。
記録で重要なこと
「JMあり」とだけ書くより、施設内で採用する実施方法を統一しておくと再評価しやすくなります。異なる増強方法を使った場合は、使用した条件が分かるように記録します。
通常条件とJM併用は分けて記録する
Jendrassik法を使用した場合は、通常条件で得られた結果をJM併用時の結果で上書きしないようにします。本記事では再評価時の比較性を優先し、「通常条件ではどうだったか」と「増強するとどう変わったか」の両方を残す方法を推奨します。
例えば、院内で0〜4+表記を使用している場合は、次のように記録できます。
- KJ右:1+(通常条件)→ 2+(JM併用)
- KJ左:1+(通常条件)→ 2+(JM併用)
- AJ右:誘発困難(通常条件)→ 1+(JM併用)
KJ、AJ、JMなどの略記を使用する場合は、施設内で表記を統一します。重要なのは略語そのものではなく、通常条件と増強条件をあとから区別できることです。
JMによって反応が出現・増強した場合も、その所見だけで神経学的な結論を決めるのではなく、左右差、他の腱反射、筋力、感覚、筋緊張など他の所見と合わせて解釈します。
Jendrassik法の記録シート(PDF)
通常条件とJM併用時の結果を並べて残せるよう、KJ右・KJ左・AJ右・AJ左を1枚で整理できる記録シートを用意しています。「通常条件で確認 → 必要時のみJMを追加 → 条件を分けて記録」という流れで評価したい場面に使用できます。
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Jendrassik法で迷いやすい5つのポイント
Jendrassik法では、増強刺激そのものよりも、通常条件とJM条件の切り分けが曖昧になることに注意します。次の5点をそろえておくと、左右比較や再評価でも結果を読み返しやすくなります。
- 最初からJMを使う:通常条件でどの程度反射が得られるのか分からなくなります。先に通常条件を確認します。
- 引き終わってから打鍵する:遠隔筋収縮と打鍵のタイミングがずれます。手指を引き合っている最中に打鍵します。
- 毎回違う説明をする:動作開始のタイミングや力の入り方が変わります。短い合図をそろえます。
- 複数の増強条件を混ぜる:手指の引き合いと噛みしめなどを混在させると、どの条件で得られた反応か分かりにくくなります。
- JM併用時の結果だけを書く:通常条件との差が分からなくなります。通常条件とJM併用を分けて残します。
JMで反射が出たときはどう解釈する?
通常条件では反応が乏しく、JM併用で反応が得られた場合は、「増強条件では反射を誘発できた」という情報として扱います。通常条件で得られた所見とJM併用時の所見を分けて残すことで、次回評価でも同じ条件で比較できます。
一方、JMを使っても反射が得られない場合は、増強を繰り返すことだけにこだわらず、体位、脱力、腱の位置、打鍵方法を再確認します。そのうえで、左右差や他の神経学的所見と合わせて評価します。
安全面はJMより体位と検査条件を優先する
Jendrassik法を追加する場合も、まず通常の腱反射検査を安全に行える体位と支持条件を確保します。疼痛が強い、安定した姿勢を保てない、手指を掛けて引く動作が難しいなどの場合は、JMを無理に実施する必要はありません。
また、増強を強くするために全身を過度に力ませると、通常条件との比較が難しくなります。強い反応を出すことより、同じ体位・同じ説明・同じ実施条件で比較できることを優先します。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. Jendrassik法は何秒間行えばよいですか?
実施方法は文献でも完全には統一されておらず、臨床で一律に「必ず2秒」とするより、手指を引き合っているタイミングで打鍵し、再評価でも同じ方法を使うことが重要です。
Q2. 歯も食いしばってもらう必要がありますか?
必須とはいえません。Jendrassik法には複数の実施方法があり、手指の引き合い、歯の噛みしめ、それらの組み合わせが研究されています。本記事では条件をそろえやすくするため、手指を引き合う方法を基本とし、別の増強条件を無意識に混ぜない運用としています。
Q3. JMで反射が出た場合、通常条件のスコアは変更しますか?
本記事では、通常条件の結果をJM併用時の結果で置き換えず、両方を分けて記録します。「KJ 1+(通常)→ 2+(JM併用)」のように残すと、増強による変化を再評価時にも確認できます。
Q4. 最初からJendrassik法を使ってもよいですか?
通常条件との比較が目的であれば、まずJMなしで反射を確認し、体位・脱力・打鍵条件を整えても反応が乏しい場合に追加するほうが結果を整理しやすくなります。
次の一手
参考文献
- Ertuglu LA, Karacan I, Yilmaz G, Türker KS. Standardization of the Jendrassik maneuver in Achilles tendon tap reflex. Clin Neurophysiol Pract. 2018;3:1–5. DOI | PubMed
- Passmore SR, Bruno PA. Anatomically remote muscle contraction facilitates patellar tendon reflex reinforcement while mental activity does not: a within-participants experimental trial. Chiropr Man Therap. 2012;20:29. DOI | PubMed
- Kawamura T, Watanabe S. Timing as a prominent factor of the Jendrassik manoeuvre on the H reflex. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1975;38(5):508–516. DOI | PubMed
- Hayes KC, Sullivan J, Gandevia SC. Jendrassik maneuver facilitation and fractionated patellar reflex times. J Appl Physiol. 1972;32(3):290–295. DOI
- Zimmerman B, Menon RS. Deep Tendon Reflexes. In: StatPearls [Internet]. PubMed
略語凡例:DTR=深部腱反射、KJ=膝蓋腱反射、AJ=アキレス腱反射、JM=Jendrassik maneuver。
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

