- 結論:退院支援では LSA で「外出」、 NRADL で「息切れ込みの ADL 」を分けて見ます
- このページで答えること:退院後に外出が落ちる理由を 2 軸で切り分ける
- 先に見る 3 要素:外出は LSA × NRADL × 支援条件で決まります
- 図解:LSA と NRADL の使い分け
- LSA と NRADL の違い:退院支援で何が決まるか
- 退院前に 5 分でそろえる:在宅復帰の見立てフロー
- 記録の型:合計点だけで終わらせず、条件と局面を残します
- 配布物:LSA と NRADL の比較・記録シート
- 現場の詰まりどころ:よくある失敗 → 回避の手順
- 症例で確認:LSA は伸びたが、NRADL がボトルネックで “ 買い物 ” が詰まった例
- よくある質問(FAQ)
- 次の一手
- 参考文献
- 著者情報
結論:退院支援では LSA で「外出」、 NRADL で「息切れ込みの ADL 」を分けて見ます
在宅復帰の見立てで迷いやすいのは、「病棟では歩けるのに退院後は外出が減る」「 ADL は保てても、息切れで家事が回らない」といったズレです。ここを 1 つの尺度でまとめず、生活範囲と呼吸負荷を分けてみると、家族説明・申し送り・支援設計が通りやすくなります。
このページで決めるのは、退院支援で LSA と NRADL をどう使い分けるかです。採点の細かな手順や全項目の深掘りよりも、どの場面でどちらを先に使うか、どう記録して次の一手につなぐかに絞って整理します。
同ジャンル回遊(最短導線)
生活範囲(外出)と社会参加の評価は、ハブで全体像を固定してから読むと「どれを使うか」で迷いにくくなります。
関連: ADL・IADL 評価ハブ(選び方・運用フロー) / LSA の評価方法(各論) / NRADL の評価方法(各論)
このページで答えること:退院後に外出が落ちる理由を 2 軸で切り分ける
退院支援で知りたいのは、「歩けるか」だけではありません。実務では、移動能力 × 環境 × 支援 × 疲労・息切れの掛け算で生活が崩れます。ここを 1 つの尺度に押し込むと、退院後に「想定外」が増えやすくなります。
このページで答えるのは、LSA=外出の広がり(どこまで/どの頻度で/どの支援で)と、NRADL=息切れで崩れる ADL(ペース・休憩・酸素条件)を分けて、退院後の支援設計に落とす方法です。反対に、採点の詳細や全項目の解説は各論ページに任せ、このページでは抱え込みすぎません。
先に見る 3 要素:外出は LSA × NRADL × 支援条件で決まります
LSA は「どこまで行けているか」を、到達レベル × 頻度 × 自立度で捉えます。一方で、NRADL は「その生活を息切れ込みで回せるか」を、動作の負荷・ペース・休憩・酸素条件で整理できます。両者に支援条件を重ねると、退院後に外出が落ちる理由を「身体だけ」にしない見方ができます。
※表は横にスクロールできます。
| 要素 | ここで見ること(最小セット) | ズレが出る典型 | 対策の方向 |
|---|---|---|---|
| 生活範囲( LSA ) | 「どこまで行くか」「週何回か」「同伴・補助具は必要か」 | 病棟は自立でも、退院後は外出頻度が急落する | 場所+頻度+支援(同伴・移動手段)で目標を固定する |
| 呼吸負荷( NRADL ) | 息切れで落ちる工程(歩く・入浴・買い物など)と条件(ペース・休憩・酸素) | 「できる」が「続かない」「途中休止が増える」 | ペース/休憩/酸素条件を固定し、落ちる工程を先に潰す |
| 支援(環境・資源) | 交通・段差・距離・同伴者・サービス(訪問/通所) | 体は動いても、環境が原因で外出が成立しない | 移動手段・導線・サービス導入で “ 実行可能性 ” を上げる |
※表は横にスクロールできます。
| 支援が十分(同伴・移動手段・環境が整う) | 支援が不足(同伴なし・交通難・段差など) | |
|---|---|---|
| NRADL が保てる(息切れで崩れにくい) | LSA が伸びやすい:外出 “ 実行 ” を増やす設計へ | LSA が伸びにくい:呼吸より “ 環境要因 ” が主因になりやすい |
| NRADL が低い(息切れで崩れやすい) | LSA は条件付き:休憩・ペース・酸素条件で成立させる | LSA が落ちやすい:工程分解+支援セットを同時に組む |
図解:LSA と NRADL の使い分け
比較表に入る前に、まずは全体像を 1 枚で固定すると読み進めやすくなります。 LSA はどこまで外出できるか、NRADL はどの動作が息切れで崩れるかをみる評価として整理すると、退院支援での役割分担がぶれにくくなります。
LSA と NRADL の違い:退院支援で何が決まるか
まずは「見ているもの」をずらさずにそろえることが重要です。両者は競合ではなく、弱点を補完する関係です。 LSA は外出の広がりを決め、NRADL は息切れで崩れる工程を特定します。
※表は横にスクロールできます。
| 観点 | LSA(生活範囲) | NRADL(呼吸器 ADL ) |
|---|---|---|
| 主に見るもの | 外出の「広がり」+頻度+自立度(同伴・補助具) | 息切れで崩れる ADL を「ペース・休憩・酸素条件」で整理する |
| 強い場面 | 退院後の外出・買い物・受診・社会参加の見立て、生活目標の具体化 | COPD など呼吸器疾患、労作時の息切れが強い人の ADL 設計 |
| つまずきやすい点 | 地域特性(交通・地形)や支援資源で差が出やすい | 同じ動作でも条件(酸素・ペース・休憩)で点が動きやすい |
| 併用すると強い組み合わせ | FAI / TMIG-IC / LSNS-6(頻度・機能・孤立リスク) | 6MWT / mMRC / Borg / SpO₂(運動耐容能・自覚症状・安全) |
| このページの結論 | LSA で「どこへ・どの頻度で・どの支援で」を決め、NRADL で「息切れで崩れる工程」を潰して在宅運用に落とします | |
退院前に 5 分でそろえる:在宅復帰の見立てフロー
尺度を増やすより先に、条件をそろえると再評価と申し送りが強くなります。退院前は、次の順で情報を集めると回りやすいです。
- 参照期間を固定する(例:過去 4 週間)
- LSAで、生活範囲(段階)+頻度+自立度(同伴/補助具)をセットで聴取する
- NRADLで、ペース・休憩・酸素条件を「同条件」で確認し、崩れる工程を特定する
- 工程を言語化する(例:買い物=移動 → 店内歩行 → 荷物保持 → 会計 → 帰宅)
- 支援設計を 3 点セットで決める(場所+頻度+必要支援)
- 再評価の予定を先に書く( 2 ~ 4 週後、同条件で LSA / NRADL を回す)
記録の型:合計点だけで終わらせず、条件と局面を残します
合計点だけでは、支援設計に必要な情報が抜けやすくなります。退院支援で効くのは、条件と介助が増える局面を 1 行で残すことです。これだけで再評価と申し送りが安定します。
※表は横にスクロールできます。
| 区分 | 書くこと(例) | コツ |
|---|---|---|
| 条件 | 場所、補助具、同伴、時間帯、酸素流量、休憩の取り方 | 条件が変わると比較不能なので、まず固定して残す |
| 結果 | LSA:段階・頻度・自立度/ NRADL:息切れで落ちた工程 | 合計だけでなく「落ちた工程」をセットで残す |
| 局面 | 荷物保持、階段、入浴、屋外歩行、屋内家事の「途中休止」 | 介助が増える “ 瞬間 ” を 1 行で書く |
| 次の一手 | 代償(道具・サービス)/環境/教育を誰が担当するか | 「誰が・どこで・どう補う」を具体化する |
| 再評価 | いつ、同条件で、同一指標を回すか | 再評価まで書けると説明力が上がる |
配布物:LSA と NRADL の比較・記録シート
退院前と退院後で、LSA の外出範囲・頻度・支援と、NRADL の息切れで落ちる工程・条件を並べて残したいときは、配布用の A4 シートを使うと整理しやすくなります。記事の内容に合わせて、比較前にそろえる条件 → 比較記録 → 統合判断 → 再評価予定の順で書ける形にしています。
プレビューを表示する
現場の詰まりどころ:よくある失敗 → 回避の手順
このゾーンでは、現場で止まりやすい点だけを先に潰します。
- ページ内アンカー:よくある失敗へ
- ページ内アンカー:回避の手順へ
- 同ジャンルの関連: 退院支援の進め方(情報整理の型)
よくある失敗(OK / NG 早見)
※表は横にスクロールできます。
| 場面 | NG(起きがち) | OK(こう直す) | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 外出の見立て | 「外出できるか」だけで判断する | LSA で「場所+頻度+支援(同伴・補助具)」の 3 点セットにする | 同伴の有無、移動手段、頻度(週何回) |
| 息切れの解釈 | NRADL を合計点だけで共有する | 落ちた工程(例:買い物の店内歩行、入浴)を 1 行で添える | 途中休止の局面、休憩の取り方、酸素条件 |
| 再評価 | 毎回条件が違い、前後差が読めない | 酸素条件・ペース・補助具・同伴の有無を固定して再評価する | 条件テンプレ( 1 行)をカルテに固定する |
| 支援設計 | 訓練だけで解決しようとする | 代償(道具・サービス)/環境/教育を同時に組む | 誰が何を担当するか(家族・訪問・地域資源) |
回避の手順(チェック)
- LSA:参照期間を固定し、「場所+頻度+支援」を必ずセットで聴取する
- NRADL:ペース・休憩・酸素条件を固定し、「落ちた工程」を 1 行で残す
- 工程分解:買い物・入浴・外来受診など、破綻しやすい活動を工程に分けて詰まりを特定する
- 3 点セット:場所+頻度+必要支援(同伴・道具・サービス)で目標を書き、再評価を先に決める
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、書き方や手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。評価・記録・報告の「型」をまとめて整理したい方は、PT キャリアガイドも参考になります。
PT キャリアガイドを見る症例で確認:LSA は伸びたが、NRADL がボトルネックで “ 買い物 ” が詰まった例
※下記は理解用のモデルケースです(カットオフの提示ではありません)。見るべきは「点数」より、どの工程が詰まり、何を変えたら動いたかです。
※表は横にスクロールできます。
| 時点 | LSA(生活範囲) | NRADL(呼吸器 ADL ) | 詰まった工程 | 打ち手(支援設計) |
|---|---|---|---|---|
| 退院前 | 院内中心。外出は家族同伴で月 1 回程度 | 速歩・荷物保持・連続歩行で息切れが増える | 買い物:店内歩行 → 荷物保持 → 会計後の帰宅で途中休止 | 退院後 2 週は “ 外出を増やす ” より、工程の詰まりを特定して条件を固定する |
| 退院後 2 週 | 近所の外出が週 1 回へ(同伴あり) | 同条件なら家事は回るが、買い物は途中休止が残る | 荷物保持+帰宅(ペースが上がる局面) | ペース指導、休憩ポイント固定、荷物は分割、必要時は宅配を併用する |
| 退院後 1 か月 | 受診・買い物が週 1 ~ 2 回(同伴は状況で選択) | 連続歩行の余裕が改善し、“ 詰まる工程 ” が減る | 階段・段差(天候で悪化) | 移動手段の選択肢を追加し、天候不良時の代替手段も先に決める |
この症例で重要なのは、LSA を “ 外出を増やす指標 ” として使いながら、NRADL で「どの工程が息切れで崩れるか」を特定し、ペース・休憩・荷物・移動手段をセットで変えた点です。点数は結果であり、実務では「条件が再現できるか」と「詰まる工程が減ったか」を追うと、退院後のズレが減ります。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 退院前にまず 1 つだけ選ぶなら、 LSA と NRADL のどちらを優先しますか?
結論として、外出や受診、買い物まで見たいなら LSA、息切れで ADL が崩れるなら NRADLを優先します。迷うときは、退院後に破綻しやすい活動が「外出(範囲・頻度)」か「家の中の家事(呼吸負荷)」かを 1 つ決めると、優先指標がぶれにくくなります。
Q2. LSA が高くても、退院後に外出が減るのはなぜですか?
生活範囲は、移動能力だけでは決まりません。交通・段差・同伴者の都合・不安・疲労・息切れなど、環境と支援で落ちます。LSA は「どこまで行けるか」だけでなく「どの支援があれば行けるか」を整理できるため、同伴の有無、移動手段、頻度をセットで聴取して支援設計に落とすのがコツです。
Q3. NRADL はどう運用すると、退院支援で使いやすくなりますか?
NRADL は、条件(ペース・休憩・酸素設定)で読みが変わりやすい指標です。退院支援では、条件を固定したうえで「落ちた工程(例:入浴、買い物の店内歩行)」を 1 行で残すと、申し送りと指導が通りやすくなります。
Q4. 「できる」と「している」が混ざって、評価がぶれます
混ざりやすいので、意図的に分けるのが安全です。外出の “ 実行(頻度)” は LSA で、息切れで “ できなくなる工程 ” は NRADL で整理します。さらに工程分解(買い物=移動 → 店内 → 荷物 → 会計)を入れると、支援設計が具体になります。
Q5. 家族説明は、どの言い方だと伝わりやすいですか?
おすすめは、場所+頻度+必要支援の 3 点セットです。たとえば「近所のスーパーは週 1 回、見守り同伴があれば可能」「入浴は途中で休憩が必要なので、手すりと動線調整を先に入れる」のように、生活行動に翻訳して共有すると合意形成が速くなります。
次の一手
- 全体像から戻る: 生活範囲・社会参加の評価ハブ
- 退院支援に落とす: 退院支援の進め方(情報整理の型)
参考文献
- Baker PS, Bodner EV, Allman RM. Measuring Life-Space Mobility in Community-Dwelling Older Adults. J Am Geriatr Soc. 2003;51:1610-1614. DOI: 10.1046/j.1532-5415.2003.51512.x
- Peel C, Baker PS, Roth DL, Brown CJ, Bodner EV, Allman RM. Assessing mobility in older adults: The UAB Study of Aging Life-Space Assessment. Phys Ther. 2005;85(10):1008-1019. DOI: 10.1093/ptj/85.10.1008
- 松本友子, 田中貴子, 松木八重, 木下めぐみ, 住本恭子, 千住秀明. The Nagasaki University Respiratory ADL questionnaire:NRADL の反応性の検討. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌. 2008;18(3):227-230. DOI: 10.15032/jsrcr.18.3_227
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


