LSAとNRADLの違い|退院支援での使い分けと注意点

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結論:生活範囲は LSA、呼吸器疾患の ADL 負担は NRADL で見ます

LSA と NRADL は、どちらも生活をみる評価ですが役割は異なります。LSA は過去 4 週間に実際に移動した生活範囲・頻度・自立度を、NRADL は慢性呼吸器疾患における動作速度・呼吸困難・酸素流量・連続歩行距離を整理する尺度です。

退院支援では、外出や生活範囲の広がりを確認したいなら LSA、息切れや酸素療法の影響を含めて ADL を確認したいなら NRADL を優先します。重要なのは、LSA の「過去 4 週間」と、NRADL の「入院版・外来版」を確認せず、退院前後の合計点だけを単純に比較しないことです。

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LSA と NRADL の違い|退院支援では何を知りたいかで選びます

最初に決めるのは、「実際の生活範囲を知りたいのか」「呼吸器疾患による ADL の制限を知りたいのか」です。両者は似た尺度ではなく、評価している対象が異なります。

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LSA と NRADL の違いと退院支援での使い分け
観点 LSA NRADL
主に知りたいこと 実際の生活範囲がどこまで広がっているか 慢性呼吸器疾患によって ADL がどの程度制限されているか
主な評価内容 生活空間、到達頻度、自立度 動作速度、呼吸困難、酸素流量、連続歩行距離
強い場面 買い物、受診、散歩、地域活動など、退院後の生活範囲を確認したい 息切れや酸素療法によって、歩行・入浴・家事などの実用性が低下している
対象を考えるポイント 生活範囲の縮小や外出機会の減少を確認したい 慢性呼吸器疾患や労作時呼吸困難が ADL の制限因子になっている
退院前後の注意点 過去 4 週間の実生活を評価するため、入院期間が参照期間に含まれる場合がある 入院版と外来版があり、一部の ADL 項目が異なる
まず選ぶなら 「退院後、実際にどこまで生活範囲が広がるか」を知りたい 「ADL はできるが、息切れや酸素条件で続かない」を詳しく知りたい
LSAとNRADLの違いと退院支援での使い分けを整理した図版
LSA は生活範囲の広がり、NRADL は慢性呼吸器疾患による ADL の制限を整理します。退院前後では、評価時期や使用した版を確認して結果を解釈します。

LSA や NRADL の採点方法まで確認する場合は、LSA の評価方法NRADL の評価方法で、それぞれの実施・採点・解釈を確認してください。

退院前後で注意すること|合計点だけをそのまま比較しない

退院支援で特に迷いやすいのが、「退院前と退院後に同じ尺度を取れば、そのまま変化量として比べられるのか」という点です。LSA と NRADL では、それぞれ確認すべき条件が異なります。

LSA は「過去 4 週間」の実生活を評価する

LSA は、評価時点から過去 4 週間に実際に移動した生活空間と、その頻度・自立度を評価します。そのため、入院や退院をまたぐ時期では、4 週間の中に異なる生活環境が混在することに注意が必要です。

たとえば退院 2 週間後に評価した場合、過去 4 週間には在宅生活だけでなく入院期間が含まれる可能性があります。この時点の LSA 得点を、退院後の生活範囲だけを表す数値として解釈するのは避けます。

退院早期は、実際に行った場所、頻度、同伴者、補助具、交通手段などを個別に確認します。在宅生活がおおむね 4 週間蓄積した時点では、退院後の生活範囲を LSA で整理しやすくなります。

ポイント:入院前の生活範囲を知りたい場合は、「現在時点の LSA」と「入院前の生活歴」を混同しません。どの期間の生活を聞いた情報なのかを記録しておくことが重要です。

NRADL は入院版と外来版を区別する

NRADL には入院患者向けの入院版外来患者向けの外来版があり、一部の ADL 項目が異なります。そのため、退院前と退院後で異なる版を使用した場合、総得点の差だけをそのまま改善量・悪化量として扱わないようにします。

さらに NRADL は、動作速度や呼吸困難だけでなく酸素流量も得点に含みます。酸素療法の導入・変更によって得点が変化することがあるため、総得点だけでなく、動作速度・呼吸困難・酸素流量・連続歩行距離の内訳と臨床経過を合わせて解釈することが重要です。

NRADL の読み方:総得点が下がっただけで、ADL が悪化したとは判断できません。酸素療法の条件が変わった場合は、どの項目によって得点が変化したのかを確認します。

LSA と NRADL はどちらを使う?3つの場面で決めます

退院支援だからといって、LSA と NRADL を両方機械的に実施する必要はありません。退院後に何が問題になりそうかを先に決めると、評価を選びやすくなります。

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退院支援での LSA・NRADL の選び方
退院後に知りたいこと 優先する評価 合わせて確認すること
外出できる範囲や頻度が気になる LSA 同伴者、補助具、交通手段、外出目的
息切れで ADL が遅い・途中で止まる NRADL 動作速度、呼吸困難、酸素流量、連続歩行距離
慢性呼吸器疾患があり、外出も減っている LSA + NRADL 生活範囲が狭い理由を、呼吸負荷と環境・支援に分けて考える

たとえば「病棟内歩行は自立しているが、退院後に買い物へ行けるか心配」という場合、歩行自立だけでは判断できません。LSA では実際の生活範囲を、呼吸器疾患がある場合は NRADL で呼吸困難や酸素療法の影響を確認し、両者を別々に整理します。

退院前から退院後まで|評価するタイミングの考え方

退院前後では、すべての尺度を同じタイミングで繰り返すより、その時点で何を確認したいかを決めて使うほうが実務的です。

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LSA・NRADL を退院支援で使うタイミング
時点 LSA NRADL 支援につなげる情報
退院前 参照する過去 4 週間に入院期間が含まれることを確認する。入院前の生活歴とは分けて扱う。 慢性呼吸器疾患が対象なら、使用した版と各項目の結果を確認する。 退院後に行きたい場所、頻度、移動手段、同伴者、呼吸負荷が問題となる ADL を整理する。
退院直後〜2週程度 実際に行った場所・頻度・支援を確認する。LSA の参照期間が入院と在宅にまたがる場合は、得点の単純比較を避ける。 実生活で息切れが問題となった ADL、動作速度、酸素条件などを確認する。 退院前の予測と実生活のズレを見つけ、支援方法を修正する。
退院後おおむね 4 週以降 在宅生活を中心とした過去 4 週間の生活範囲・頻度・自立度を整理する。 使用した版と評価条件を確認し、内訳を含めて再評価する。 生活範囲が広がった理由・止まっている理由を整理して次の目標を決める。

NRADL は点数だけでなく、問診・観察と合わせて読みます

NRADL は点数化できる尺度ですが、同じ得点でも患者さんが困っている生活場面は異なります。評価では、息苦しい動作、避けている動作、以前はできていたが困難になった動作、介助を受けている動作など、実際の生活で何が問題になっているかを確認します。

動作を観察するときは、速度や姿勢だけでなく、必要に応じて SpO₂ や脈拍、酸素療法中であれば酸素流量と症状の関係まで確認します。つまり、NRADL の役割は「100 点満点の何点か」を出すことだけではなく、呼吸器疾患によって生活のどこが制限されているかを見つけることです。

記録は「結果+条件+生活場面」で残します

退院支援では、LSA や NRADL の合計点だけを申し送るより、何が生活を制限しているのかまで残すほうが次の支援につながります。尺度としての正式な結果と、支援設計のために追加した情報は区別して記録します。

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LSA・NRADL を退院支援につなげる記録のポイント
評価 尺度として確認すること 支援設計のために追加すること
LSA 参照期間、生活空間、頻度、自立度 外出目的、同伴者、補助具、交通手段、行けなかった理由
NRADL 使用した版、動作速度、呼吸困難、酸素流量、連続歩行距離 困っている生活場面、動作手順、姿勢、休憩、症状、必要に応じて SpO₂ や脈拍
支援計画 次に広げたい生活範囲、改善したい ADL、必要な支援、再確認する時期

たとえば LSA なら「低値」で終わらず、「近所のスーパーへ家族同伴で週 1 回。単独外出は交通手段がなく実施していない」のように具体化します。NRADL も、総得点だけでなく、どの生活場面で動作速度・呼吸困難・酸素条件が問題になっているかを残すと、介入と再評価につながります。

よくある失敗|LSA・NRADL の解釈がずれる4つの場面

LSA と NRADL を退院支援で使うときは、尺度を増やすことより、対象・参照期間・使用した版・点数が変化した理由を確認することが重要です。

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LSA・NRADL の使い分けで起こりやすい失敗
よくある失敗 問題 確認すること
退院患者全員に NRADL を使う 評価目的と対象が曖昧になる 慢性呼吸器疾患や呼吸困難が ADL の制限因子になっているかを先に確認する
退院 2 週後の LSA を退院前と単純比較する 過去 4 週間に入院期間と在宅期間が混在する可能性がある どの期間を評価しているかを確認し、早期は実際の場所・頻度・支援も個別に記録する
NRADL の入院版と外来版を同じ内容として扱う 一部の ADL 項目が異なる 使用した版を明記し、総得点だけで変化を判断しない
NRADL の点数低下をそのまま ADL 悪化と判断する 酸素療法の導入・変更などによって得点が変化する場合がある 動作速度、呼吸困難、酸素流量、連続歩行距離のどこが変化したかを確認する

NRADL の実例|総得点が下がっても ADL 悪化とは限りません

2025 年の日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌では、入院中の COPD 患者で、NRADL が入院時 66 点から退院時 51 点へ低下した症例が紹介されています。

一方で、動作速度や呼吸困難の項目は改善しており、総得点低下には長期酸素療法の導入が影響していました。つまり、NRADL の総得点が下がったという事実だけでは「ADL が悪化した」とは判断できません。

退院支援でも同様に、総得点の前後差だけを見るのではなく、どの項目が変化したのか、その変化が症状・活動能力・酸素療法などの何によるものなのかを確認することが重要です。

よくある質問(FAQ)

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Q1. 退院前に LSA と NRADL のどちらか 1 つだけ使うなら?

生活範囲や外出の実態を知りたいなら LSA、慢性呼吸器疾患で息切れ・動作速度・酸素療法の影響を含めて ADL を知りたいなら NRADL を優先します。退院後に最も問題になりそうな生活場面から選ぶと判断しやすくなります。

Q2. LSA は退院後いつ再評価するとよいですか?

LSA は過去 4 週間の実生活を評価します。退院早期でも実施できますが、参照期間に入院生活が含まれる場合は解釈に注意が必要です。在宅生活を中心とした 4 週間を評価したい場合は、退院後おおむね 4 週間が一つの分かりやすい時点になります。

Q3. NRADL は退院前後の合計点をそのまま比較できますか?

使用した版と各項目の変化を確認してから解釈します。入院版と外来版では一部の ADL 項目が異なります。また酸素療法の導入・変更でも得点が変化するため、総得点だけで改善・悪化を判断せず、動作速度・呼吸困難・酸素流量・連続歩行距離の内訳を確認します。

Q4. LSA が低いのに NRADL が保たれている場合はどう考えますか?

生活範囲の狭さが呼吸負荷だけでは説明できない可能性があります。交通手段、段差、同伴者、外出目的、不安、地域資源などを確認します。LSA と NRADL を併用する価値は、生活範囲が狭い理由を「呼吸器症状」と「それ以外」に分けて考えやすくなる点にあります。

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参考文献

  1. Baker PS, Bodner EV, Allman RM. Measuring life-space mobility in community-dwelling older adults. J Am Geriatr Soc. 2003;51(11):1610-1614. DOI: 10.1046/j.1532-5415.2003.51512.x
  2. Peel C, Baker PS, Roth DL, Brown CJ, Bodner EV, Allman RM. Assessing mobility in older adults: the UAB Study of Aging Life-Space Assessment. Phys Ther. 2005;85(10):1008-1019. DOI: 10.1093/ptj/85.10.1008
  3. 松本友子, 田中貴子, 松木八重, 木下めぐみ, 住本恭子, 千住秀明. The Nagasaki University Respiratory ADL questionnaire:NRADL の反応性の検討. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌. 2008;18(3):227-230. DOI: 10.15032/jsrcr.18.3_227
  4. 田中貴子. 慢性呼吸器疾患に対する日常生活活動の評価―NRADL の意義と有用性―. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌. 2025;35(1):28-32. DOI: 10.15032/jsrcr.35.28

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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