Mini-BESTestとは?14項目・28点の動的バランス評価
Mini-BESTestは、反応的ステップ、感覚条件の変化、方向転換、障害物、二重課題歩行などを含む14項目・各0〜2点、合計28点で動的バランスを評価する尺度です。採点で特に迷いやすいのは、No.2の試行選択、No.3・No.6の左右処理、No.14の二重課題TUGです。
このページでは、PTが評価条件をそろえて再現しやすいよう、準備・実施・採点・記録・cut-off/MDC/MCIDの読み方を整理します。記事後半には、初回評価と再評価で使えるA4記録シートPDFも掲載しています。
正式な教示・採点は公式日本語版を確認
この記事では尺度全文を転載せず、実施時に間違えやすいポイントを中心に整理しています。実際の評価では、BESTest公式サイトで公開されているMini-BESTest日本語版の教示・採点基準を基準にしてください。

採点で迷いやすいルール|No.2・3・6・14を先に確認
Mini-BESTestの採点では、14項目すべての細かな基準を覚える前に、試行数・左右の扱い・補助具・身体介助・二重課題TUGのルールを押さえておくことが重要です。ここを取り違えると、初回評価と再評価の比較がずれやすくなります。
| 確認項目 | 採点の要点 | 記録しておくこと |
|---|---|---|
| 総得点 | 14項目を各0〜2点で採点し、合計28点です。 | 総得点と実施条件 |
| No.2 つま先立ち | 2回実施し、良い方の試行を採点します。 | 必要に応じて各試行の所見 |
| No.3 片脚立位 | 左右それぞれ2回実施し、各側では良い試行を採用します。その後、左右のうち得点が低い側を総得点に用います。 | 左右それぞれの保持時間 |
| No.6 側方ステップ | 左右を実施し、得点が低い側のみを総得点に用います。 | 左右差と採用した側 |
| 補助具 | 各項目で補助具を使用した場合は、1点減点します。 | 補助具の種類と使用状況 |
| 身体介助 | 何らかの身体介助が必要な場合、その項目は0点です。 | 介助の有無と内容 |
| No.14 二重課題TUG | 通常TUGと二重課題TUGを比較します。二重課題によって歩行が10%を超えて遅くなった場合は1点減点し、カウントや歩行への干渉も確認します。 | 両方の時間と干渉の内容 |
No.14は、時間だけを見て終わらせないことがポイントです。二重課題によって歩行が遅くなるだけでなく、カウントを続けると歩行が止まる、歩行するとカウントが止まるといった課題間の干渉も採点に関係します。通常TUGと二重課題TUGの時間に加えて、実際に何が起きたかを残しておくと採点根拠を振り返りやすくなります。
Mini-BESTestの14項目と4セクション
Mini-BESTestは、BESTestのうち予測的姿勢調整、反応的姿勢制御、感覚指向性、動的歩行に相当する4セクションから選ばれた14項目で構成されます。ただし、尺度としては14項目全体で動的バランスを評価するよう開発されているため、セクション小計だけで障害機序を決めないことが大切です。
| セクション | 項目 | 主に観察する場面 |
|---|---|---|
| 予測的姿勢調整 |
1. 立ち上がり 2. つま先立ち 3. 片脚立位 |
自発的な動作に先行する姿勢調整 |
| 反応的姿勢制御 |
4. 前方への補償ステップ 5. 後方への補償ステップ 6. 側方への補償ステップ |
外乱後のステップ反応と平衡回復 |
| 感覚指向性 |
7. 固い床・開眼での立位 8. フォーム・閉眼での立位 9. 傾斜面・閉眼での立位 |
支持面や視覚条件が変化したときの姿勢保持 |
| 動的歩行 |
10. 歩行速度の変化 11. 頭部回旋を伴う歩行 12. ピボットターン 13. 障害物またぎ 14. 二重課題TUG |
歩行中の課題変更、方向転換、障害物、二重課題 |
公式用紙にはセクションごとの小計欄があります。小計や失点項目は「どの条件で崩れたか」を整理する材料になりますが、最も低いセクションをそのまま介入すべき障害システムと決めるのではなく、個々の動作所見や追加評価と組み合わせて解釈します。
準備物と安全確保
Mini-BESTestでは、実施条件をそろえることが再評価の比較に重要です。公式日本語版では、被験者は平らな靴で実施するか、靴と靴下を脱いで実施します。靴や補助具などの条件が変わった場合は、得点と一緒に変更内容を記録してください。
| 物品 | 確認ポイント |
|---|---|
| フォーム | 公式版で示されている条件に近い、厚さ約10cmのフォーム |
| 椅子 | 肘掛け・キャスターのない安定した椅子 |
| 傾斜板 | 閉眼での傾斜面立位に使用 |
| ストップウォッチ | 立位保持時間やTUGを計測 |
| 約23cmの箱 | 障害物またぎに使用 |
| 3mの歩行スペース | TUGなどで距離をそろえる |
反応的ステップ課題では転倒を防げる位置で実施する
前方・後方・側方への補償ステップでは、検者が支えを外したあとに被験者がバランスを崩す可能性があります。公式教示でも、検者が被験者を受け止められる準備をしておくことが示されています。患者の医学的状態や施設の安全基準も確認したうえで実施してください。
実施手順|条件と採点ルールを先にそろえる
Mini-BESTestを再現しやすく実施するには、評価を始める前に公式用紙、使用物品、被験者条件、補助具を確認し、採点後まで同じ条件を記録する流れにすると整理しやすくなります。
- 公式日本語版と必要物品を準備する
実施項目と教示、採点基準を確認し、フォーム、椅子、傾斜板、箱、3mの歩行スペースなどを準備します。 - 被験者条件を記録する
靴、補助具、身体介助の有無などを確認します。再評価でも可能な範囲で同じ条件にそろえます。 - 公式版の教示に沿って実施する
独自の採点基準を追加せず、公式版に記載された教示と実施条件を基準にします。 - No.2・No.3・No.6の試行数と左右処理を確認する
複数試行や左右の得点を誤って二重に加算しないよう、採用した試行・側を明確にします。 - No.14では通常TUGと二重課題TUGを記録する
時間だけでなく、カウントや歩行への干渉も確認します。 - 総得点と特徴的な所見を残す
点数だけでは分からない左右差、不安定になる条件、実際の生活場面との関連を記録します。
カットオフ・MDC・MCID|対象ごとの目安として読む
Mini-BESTestには、すべての疾患・年齢・転倒定義に共通する万能なcut-offはありません。cut-off、MDC、MCIDはそれぞれ意味が異なるため、対象集団と研究条件を確認して使い分けます。
- cut-off:転倒者・非転倒者など、特定のアウトカムを分類するための目安
- MDC:測定誤差を超えた変化かどうかを判断する目安
- MCID:臨床的に意味のある変化量を解釈するための目安
| 対象 | 報告例 | 何を示す値か | 解釈時の注意 |
|---|---|---|---|
| パーキンソン病 | 19点未満 | 6か月以内の反復転倒を予測した研究でのcut-off | 反復転倒というアウトカムに対する研究値です。 |
| パーキンソン病 | 21.5 / 28 | 転倒者を識別した研究でのcut-off | 19点の研究とは対象・転倒定義・研究設計が異なります。 |
| パーキンソン病 | MCID 3.4〜4.0点 | 介入前後の変化量の解釈 | パーキンソン病を対象とした研究値として扱います。 |
| 慢性期脳卒中 | MDC95 3.0点 | 測定誤差を超える変化量の目安 | 研究対象は地域在住の慢性期脳卒中者です。 |
| 健常成人 | 50歳以上で年齢層別の基準値報告あり | 年齢に応じた参考値 | 患者群の転倒cut-offとは別の情報として扱います。 |
同じパーキンソン病でもcut-offが複数報告されているのは、誤りではありません。誰を対象に、何を「転倒」と定義し、どの期間を評価した研究なのかによって値は変わります。「Mini-BESTestが何点なら転倒する」と1本の数値だけで判断せず、転倒歴、生活場面、歩行状態、前回値などと合わせて解釈します。
結果の解釈|総得点→失点項目→生活場面の順で見る
Mini-BESTestの結果は、総得点だけで介入内容を決めるのではなく、どの課題で何が起きたかまで確認します。総得点は尺度としての中心的な結果として残し、失点項目やセクション小計は追加評価へつなげる情報として使います。
- 総得点を確認する
初回値と再評価値を比較します。対象疾患でMDCやMCIDが報告されている場合は、変化量を解釈する参考にします。 - どの項目で失点したかを見る
反応的ステップ、感覚条件、方向転換、障害物、二重課題など、不安定になる条件を分けます。 - 左右差と動作の特徴を確認する
片脚立位や側方ステップでは、総得点に入らない側の情報も臨床所見として残せます。 - 生活場面と結び付ける
実際の転倒場面、屋外歩行、方向転換、狭い場所、二重課題などとの一致を確認します。 - 必要な追加評価を決める
筋力、疼痛、感覚、注意、歩行能力など、失点の背景として考えられる要素を個別に確認します。
たとえば側方ステップが低得点でも、「反応的姿勢制御が低いからステップ練習」と即決するのではなく、左右差、ステップ開始、歩幅、筋力、疼痛、課題理解などを確認します。Mini-BESTestは、追加評価を選ぶための入口として使うと結果を介入へつなげやすくなります。
記録テンプレ|電子カルテへ残す項目
公式採点用紙に加えて、電子カルテには総得点、左右・試行情報、実施条件、特徴的な所見を残しておくと、再評価時に点数が変わった理由を確認しやすくなります。下のA4記録シートv2も、この考え方に合わせてNo.2・No.3・No.6・No.14の記録欄を整理しています。
【Mini-BESTest】 合計:__ / 28点 セクション小計:予測 __ / 6、反応 __ / 6、感覚 __ / 6、動的歩行 __ / 10 No.2 つま先立ち: 試行1__ / 試行2__ / 採用__ No.3 片脚立位: 右 試行1 __秒 / 試行2 __秒 左 試行1 __秒 / 試行2 __秒 総得点への採用側:右・左 No.6 側方ステップ: 右__ / 左__ / 採用側:右・左 No.14 二重課題TUG: 通常TUG __.__秒 二重課題TUG __.__秒 10%ルール:該当・非該当 カウント/歩行への影響:____ 実施条件: 靴____ 補助具____ 身体介助____ フォーム____ 傾斜板____ 歩行環境____ 特徴的所見:____ 生活場面との関連:____ 次回比較ポイント:____
このテンプレは所見を整理するための補助記録です。正式な教示・採点は、公式日本語版を確認してください。
Mini-BESTest記録シートPDF
採点結果に加えて、No.2の2試行、No.3の左右各2試行、No.6の左右と採用側、No.14の通常TUG・二重課題TUG・10%ルール・課題干渉までA4用紙1枚にまとめたい場合は、下の記録シートv2を利用できます。実施条件、特徴的所見、生活場面との関連、次回比較ポイントも同じ用紙に残せます。
このPDFはrehabilikunblogで作成した補助記録シートです。公式の教示・採点用紙を置き換えるものではないため、採点は公式版、条件・結果・所見の整理は補助記録シートと役割を分けて使用してください。
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Mini-BESTestで起こりやすい採点ミス
Mini-BESTestでは、採点基準そのものだけでなく、試行数・左右処理・補助具・実施条件を毎回そろえることが重要です。特に再評価では、条件差を能力変化と誤解しないようにします。
| よくあるミス | 問題点 | 対策 |
|---|---|---|
| No.3・No.6を左右とも総得点へ加える | 本来の28点満点とは異なる採点になります。 | 左右は実施し、低い側のみを総得点に用います。 |
| No.2・No.3の試行ルールをそろえない | 初回と再評価で採用する試行が変わります。 | No.2は2試行の良い方、No.3は各側2試行の良い方を確認してから左右を比較します。 |
| 補助具を使用しても同じ点数にする | 公式の採点ルールと異なります。 | 補助具を使用した項目は1点減点し、使用状況を記録します。 |
| 身体介助をして採点を続ける | 身体介助が必要な項目の扱いが不統一になります。 | 身体介助を要した項目は0点として記録します。 |
| No.14を時間だけで判定する | カウントと歩行の干渉を見落とします。 | 時間差に加えて、カウント停止や歩行停止などの干渉も確認します。 |
| 最低セクションをそのまま介入対象にする | セクション小計だけで障害機序を決めてしまいます。 | 総得点と各項目の動作所見を確認し、必要な追加評価につなげます。 |
| 再評価で靴・補助具・用具が変わる | 点数差が能力変化か条件差か分かりにくくなります。 | 可能な範囲で条件をそろえ、変更点があれば記録します。 |
よくある質問
各質問をタップ(クリック)すると回答が開きます。
Mini-BESTestはどのくらいの頻度で再評価しますか?
すべての患者に共通する「○週ごと」という標準的な再評価間隔はありません。介入によって変化が期待できる期間、評価目的、病状変化、患者負担などから再評価時期を決めます。対象疾患でMDCやMCIDが報告されている場合は、前回値との差を解釈する際の参考にします。
Mini-BESTestだけで転倒リスクを判断できますか?
Mini-BESTestの得点だけで転倒の有無を確定することはできません。cut-offは対象疾患、転倒の定義、研究条件によって異なります。転倒歴、歩行状況、認知・注意、服薬、生活環境などと合わせて総合的に判断します。
4セクションの小計で障害タイプを判断できますか?
セクション小計は失点パターンを整理する参考になりますが、Mini-BESTestは14項目全体で動的バランスを評価する尺度として開発されています。最も低いセクションだけで障害機序や介入内容を決めず、個々の課題で見られた動作と追加評価を組み合わせて解釈します。
BBSとMini-BESTestはどう使い分けますか?
Mini-BESTestには、反応的ステップ、感覚条件の変化、方向転換、障害物、二重課題歩行などが含まれています。BBSとの使い分けは、対象者の能力と「何を明らかにしたいか」で決めます。両尺度の違いを詳しく確認したい場合は、下の比較記事で整理しています。
次の一手|評価目的から尺度を選ぶ
参考文献
- BESTest. Mini-BESTest Japanese version [Internet]. Revised 2013 [cited 2026 Aug 12]. Available from: BESTest official website
- Franchignoni F, Horak F, Godi M, Nardone A, Giordano A. Using psychometric techniques to improve the Balance Evaluation Systems Test: the mini-BESTest. J Rehabil Med. 2010;42(4):323-331. DOI: 10.2340/16501977-0537
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- Lopes LKR, Scianni AA, Lima LO, de Carvalho Lana R, Rodrigues-De-Paula F. The Mini-BESTest is an independent predictor of falls in Parkinson disease. Braz J Phys Ther. 2020;24(5):433-440. DOI: 10.1016/j.bjpt.2019.07.006
- Godi M, Arcolin I, Giardini M, Corna S, Schieppati M. Responsiveness and minimal clinically important difference of the Mini-BESTest in patients with Parkinson’s disease. Gait Posture. 2020;80:14-19. DOI: 10.1016/j.gaitpost.2020.05.004
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

