- 足関節の整形外科テストは「骨折除外→捻挫鑑別」の順で考える
- 足関節の整形外科テスト|最小セット早見表
- 初回評価フロー|危険所見を確認してから必要なテストを選ぶ
- 骨折除外|Ottawa Ankle Rulesを最初に確認する
- 外側靱帯損傷|前方引き出しと内反ストレスを使い分ける
- ハイアンクル|圧痛・外旋ストレス・Squeezeを組み合わせる
- アキレス腱断裂|Thompson(Simmonds)を確認する
- 内側痛・足底しびれ・DVTは症状がある場合に追加する
- 足関節の整形外科テスト記録シート|PDF・Excel
- 足関節テストでよくある失敗と回避方法
- よくある質問
- 次の一手|部位別テストと測定条件をそろえる
- 参考文献
- 著者情報
足関節の整形外科テストは「骨折除外→捻挫鑑別」の順で考える
足関節の整形外科テストは、いきなり前方引き出しテストや内反ストレスを行うのではなく、急性外傷ではまず骨折の可能性を整理し、受傷機転と痛み部位から必要なテストを選ぶことが重要です。中心となるのは、Ottawa Ankle Rules、Thompson(Simmonds)、前方引き出し、内反ストレス、シンデスモーシスに対する圧痛・外旋ストレス・Squeezeです。
本記事では、PTが初回評価で迷いやすい「何を最初に確認するか」「どの痛みにどのテストを追加するか」「何を記録するか」を最小セットに整理します。DVTや足底のしびれは全例に行う足関節テストではなく、症状やリスクがある場合の追加確認として扱います。記事後半には、同じ順番で評価を残せるA4記録シートのPDF版とExcel原本も用意しています。
足関節の整形外科テスト|最小セット早見表
急性足関節外傷では、骨折の可能性を整理してから、受傷機転と疼痛部位に合うテストへ進むのが基本です。すべてのテストを一律に行う必要はありません。
※表は横にスクロールできます。
| 疑う病態 | 主な確認・テスト | 見る所見 | 記録する内容 |
|---|---|---|---|
| 骨折 | Ottawa Ankle Rules | 骨性圧痛・4歩荷重 | 圧痛部位+受傷直後/評価時の荷重可否 |
| アキレス腱断裂 | Thompson(Simmonds) | 下腿圧迫に対する足部底屈 | 底屈反応+疼痛部位+受傷機転 |
| 外側靱帯損傷 | 前方引き出し/内反ストレス | 疼痛・左右差・移動量・終末感 | どの操作で、どこに症状が出たか |
| シンデスモーシス損傷 | 圧痛+外旋ストレス+Squeeze | 遠位脛腓間に一致する疼痛 | 圧痛部位+誘発された疼痛部位 |
| 内側靱帯損傷 | 外反ストレス(必要時) | 内側痛・不安定感・左右差 | 内果周囲の疼痛部位+終末感 |
| 足底の神経症状 | Tinel(足根管)+感覚確認 | 足底への放散・感覚変化 | 症状の分布+誘発条件 |
DVTはこの表の「整形外科テスト」には含めません。下腿の腫脹や疼痛、DVTのリスク因子、呼吸困難や胸痛などがある場合に、安全管理として別に確認します。
初回評価フロー|危険所見を確認してから必要なテストを選ぶ
実務では、①骨折などの安全確認 → ②受傷機転と疼痛部位 → ③アキレス腱・外側靱帯・シンデスモーシスなどの仮説 → ④必要なテストだけ追加と整理すると、痛みの強い足関節へ不要なストレスを加えにくくなります。
これは足関節外傷に対する公式の単一診断アルゴリズムではなく、複数の確認事項を初回評価で整理するための実務フローです。明らかな変形や強い疼痛などがあり評価を安全に続けられない場合は、特殊テストを完遂することより医療評価を優先します。

痛み部位と受傷機転から次のテストを選ぶ
テスト名から選ぶのではなく、どこが痛むか、どの方向へ捻ったかから仮説を絞ります。
※表は横にスクロールできます。
| 主な症状 | 考える病態 | 追加する確認 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 外果前方〜前外側痛 | 外側靱帯損傷 | 前方引き出し/内反ストレス | 疼痛が強ければストレスを繰り返さない |
| 足関節前上方・脛腓間痛 | シンデスモーシス損傷 | 圧痛+外旋ストレス+Squeeze | 単独テストだけで決めない |
| 内果周囲痛 | 内側靱帯損傷/骨折 | Ottawa確認後、必要時に外反ストレス | まず内果の骨性圧痛を確認する |
| 踵〜下腿後面痛 | アキレス腱損傷 | Thompson(Simmonds) | 断裂疑いでは強い負荷を加えない |
| 内果後方〜足底のしびれ | 足根管部の神経症状 | Tinel+感覚分布 | 捻挫テストの必須項目ではない |
骨折除外|Ottawa Ankle Rulesを最初に確認する
急性の外傷性足関節痛では、ストレステストより先に画像検査が必要となる可能性を整理します。Ottawa Ankle Rulesは、すべての足関節痛に使うテストではなく、急性の足関節・中足部外傷に対する臨床判断ルールです。
足関節痛がある場合
足関節部に外傷性疼痛があり、次のいずれかを認める場合は画像評価が必要となる可能性を考えます。
- 外果の後縁遠位6 cmまたは尖端の骨性圧痛
- 内果の後縁遠位6 cmまたは尖端の骨性圧痛
- 受傷直後と評価時の双方で4歩歩けない
中足部痛がある場合
- 第5中足骨基部の骨性圧痛
- 舟状骨の骨性圧痛
- 受傷直後と評価時の双方で4歩歩けない
PTが所見を整理する場合も、診断や画像検査の指示を単独で行うためではなく、「どこに骨性圧痛があり、受傷直後と現在の荷重がどうだったか」を医師へ共有できる形にしておくことが重要です。
外側靱帯損傷|前方引き出しと内反ストレスを使い分ける
外側足関節捻挫を疑う場合は、受傷機転と外側の圧痛を確認したうえで、必要に応じて前方引き出しテストと内反ストレス(距骨傾斜)を追加します。
前方引き出しでは前方移動の左右差や終末感、内反ストレスでは外側部の疼痛や関節の開き方を確認します。「陽性/陰性」だけでは再評価しにくいため、疼痛部位・左右差・移動量の印象・終末感をそろえて記録します。
急性期で腫脹・疼痛・防御収縮が強いと、靱帯の安定性を読み取りにくくなります。その場で判定を確定させるために何度もストレスを加えるのではなく、初回所見を残し、必要に応じて再評価します。
ハイアンクル|圧痛・外旋ストレス・Squeezeを組み合わせる
外旋を伴う受傷機転や、通常の外側捻挫より前上方・遠位脛腓間に痛みが目立つ場合は、シンデスモーシス損傷を考えます。
評価では、まず遠位脛腓間の圧痛を確認し、必要に応じて外旋ストレスやSqueezeを追加します。重要なのはテスト名ではなく、誘発された痛みが遠位脛腓間に一致しているかです。
シンデスモーシス損傷は単一テストだけで確定せず、受傷機転、圧痛、荷重時症状、複数の誘発テストを合わせて解釈します。
アキレス腱断裂|Thompson(Simmonds)を確認する
下腿後面の急な痛み、踏み込みや蹴り出しの異常、アキレス腱部の腫脹などがある場合は、アキレス腱損傷を疑います。
Thompson(Simmonds)テストでは、腹臥位などで下腿三頭筋を圧迫し、足部の底屈反応を確認します。圧迫しても底屈反応が乏しい、または消失している場合は完全断裂を強く疑う所見になります。
一方、底屈反応が残っていることだけで、部分断裂などを含むすべてのアキレス腱損傷を除外できるわけではありません。受傷機転や局所所見から損傷が疑われる場合は、強いストレッチやカーフレイズを先に行わず、医師の評価につなげます。
内側痛・足底しびれ・DVTは症状がある場合に追加する
三角靱帯、足根管、DVTは重要な鑑別・安全確認ですが、すべての足関節捻挫で同じようにテストする項目ではありません。症状と受傷機転、リスクに応じて追加します。
内果周囲が痛い場合
まずOttawa Ankle Rulesに沿って内果の骨性圧痛を確認します。骨折の可能性を整理したうえで、外反機転や内側靱帯損傷が疑われる場合に、必要最小限の外反ストレスを検討します。
内果後方〜足底にしびれがある場合
足根管部のTinel徴候と足底の感覚分布を確認します。叩打で症状が再現するかだけでなく、どこへ放散したか、立位・歩行・夜間などで症状が変化するかを記録します。
下腿腫脹や疼痛、DVTのリスクがある場合
DVTを疑う場合は、Homans徴候を足関節の特殊テストとして積極的に繰り返すのではなく、一側性腫脹、疼痛・圧痛、リスク因子などを整理して医師へ共有します。
DVTの診断は単一の身体所見では行わず、臨床確率評価やD-dimer、超音波検査などを組み合わせて判断されます。呼吸困難や胸痛など肺塞栓を疑う症状がある場合は評価・運動負荷を中止し、施設の緊急対応手順に従います。
足関節の整形外科テスト記録シート|PDF・Excel
足関節評価では、テスト名だけでなく受傷機転・疼痛部位・荷重条件と、各テストで得られた所見、次の対応を同じ形式で残すと再評価しやすくなります。
記録シートv3は、STEP 1「骨折除外」→ STEP 2「受傷機転・疼痛部位から仮説を選ぶ」→ STEP 3「必要なテストだけ実施」の順で記録できます。足底の神経症状とDVT文脈は、全例の必須項目ではなく「該当する場合のみ」の追加確認として分けています。
足関節の整形外科テスト記録シート v3
印刷・閲覧にはPDF版、施設の記録様式に合わせて編集したい場合はExcel原本を使用できます。
PDF版のプレビューを開く
足関節テストでよくある失敗と回避方法
足関節評価でブレやすいのは、テストを知らないことよりも、実施する順番と結果の残し方です。
※表は横にスクロールできます。
| よくある失敗 | 問題 | 修正方法 |
|---|---|---|
| 骨折確認より先にストレステストを行う | 疼痛を増やし、評価を続けにくくなる | 急性外傷では骨性圧痛と荷重条件を先に整理する |
| Ottawaを「今4歩歩けるか」だけで判断する | ルールの荷重条件が不足する | 受傷直後と評価時の双方を確認する |
| 陽性/陰性だけ記録する | 再評価で所見を比較できない | 疼痛部位・左右差・移動量・終末感を残す |
| Squeeze単独でハイアンクルと判断する | 単一所見への依存になる | 受傷機転・脛腓間圧痛・外旋ストレスなどと組み合わせる |
| Thompsonで底屈したため腱損傷なしとする | 部分損傷などを見落とす可能性がある | 受傷機転・局所所見も合わせて判断する |
| DVT疑いでHomans徴候を繰り返す | 診断に必要な情報整理から外れる | 症状・リスク因子を整理し、医師への報告を優先する |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
痛みが強い急性期でも前方引き出しや内反ストレスを行いますか?
必ず行う必要はありません。まず骨折の可能性、受傷機転、圧痛部位、腫脹、荷重可否などを確認します。疼痛や防御収縮が強く靱帯の安定性を読み取りにくい場合は、無理にストレステストを繰り返さず、必要に応じて再評価します。
Ottawa Ankle Rulesの「4歩」は、今歩ければ陰性ですか?
「現在4歩歩けるか」だけではありません。原則として、受傷直後と評価時の双方で4歩荷重できるかを確認します。加えて、足関節痛では内果・外果後縁遠位6 cmまたは尖端の骨性圧痛、中足部痛では第5中足骨基部と舟状骨の圧痛を確認します。
ハイアンクルを疑う決め手となるテストはありますか?
単一テストだけで確定するのは困難です。受傷機転、遠位脛腓間の圧痛、荷重時症状、外旋ストレス、Squeezeなどを組み合わせ、誘発された疼痛が遠位脛腓間に一致するかを確認します。
Thompsonテストが陰性ならアキレス腱損傷は除外できますか?
下腿圧迫で底屈が保たれていることだけで、すべてのアキレス腱損傷を除外できるわけではありません。受傷機転や局所所見から損傷が疑われる場合は、強い負荷を加えず医師の評価につなげます。
次の一手|部位別テストと測定条件をそろえる
足関節では、テストを増やすよりも骨折の可能性を先に整理し、痛み部位と受傷機転から必要なテストだけを選び、同じ条件で再評価することが重要です。
- 他部位のテストも確認する:整形外科的テスト一覧(部位別ハブ)
- 測定条件と記録をそろえる:関節可動域(ROM)検査のやり方|条件固定・記録・中止基準
参考文献
- Agency for Clinical Innovation. Ottawa ankle rules (adult). Emergency Care Assessment and Treatment. Published December 2023. Official guidance
- Stiell IG, Greenberg GH, McKnight RD, et al. A study to develop clinical decision rules for the use of radiography in acute ankle injuries. Ann Emerg Med. 1992;21(4):384-390. doi: 10.1016/S0196-0644(05)82656-3
- Gomes YE, Chau M, Banwell HA, Causby RS. Diagnostic accuracy of the Ottawa ankle rule to exclude fractures in acute ankle injuries in adults: a systematic review and meta-analysis. BMC Musculoskelet Disord. 2022;23(1):885. doi: 10.1186/s12891-022-05831-7
- Martin RL, Davenport TE, Fraser JJ, et al. Ankle stability and movement coordination impairments: lateral ankle ligament sprains revision 2021. J Orthop Sports Phys Ther. 2021;51(4):CPG1-CPG80. doi: 10.2519/jospt.2021.0302
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- Reiman MP, Burgi C, Strube E, et al. The utility of clinical measures for the diagnosis of Achilles tendon injuries: a systematic review with meta-analysis. J Athl Train. 2014;49(6):820-829. doi: 10.4085/1062-6050-49.3.36
- National Institute for Health and Care Excellence. Venous thromboembolic diseases: diagnosis, management and thrombophilia testing. NICE guideline NG158. Published March 26, 2020. Updated August 2, 2023. NICE
- Ambesh P, Obiagwu C, Shetty V. Homan’s sign for deep vein thrombosis: A grain of salt? Indian Heart J. 2017;69(3):418-419. doi: 10.1016/j.ihj.2017.01.013
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

