【うつ病症状セルフチェック方法】簡易抑うつ症状尺度:QIDS-J

評価法
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リハビリくん
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いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!

   

この記事は「簡易抑うつ症状尺度:QIDS-J」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

    

超高齢化が進む本邦において、高齢者ができる限り自立し、心身共に豊かな生活を送ることができるように支援する必要性が高まっています。そのためには、高齢者に生じやすいうつを正しく把握し、うつ状態に陥っていることにできるだけ早く気付き、適切に対処していくことが重要になります。

   

実際に医療や介護における臨床場面において、うつ病の影響により「生活に支障をきたしている」「活動性が低下している」「リハビリテーションを行う意欲がない」患者様および利用者様を目にすることがあります。

   

こんなときに、うつ病を評価する術をもっていないと何も解決することができません。うつ病の評価を適切に行い、うつ病の疑いがあるのであれば早期に治療して、うつ病を改善させる必要があります。しかし、そうはいっても、うつ病の評価は不慣れな方が多いと思います。そこでこの記事を読むことで下記の事項を理解できるようにしたいと思います!

  

  • 高齢者とうつ病の関係性について
  • 簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)とは
  • 大うつ病性障害とは何か
  • 16の評価項目と採点方法
  • 評価用紙は?(無料ダウンロードできます)
  • 重症度判定およびカットオフ値について

   

簡易抑うつ症状尺度:QIDS-Jを用いたうつ病の評価を行う際に、様々な疑問を抱えることがあると思います。そんな方のために、こちらの記事をご用意しました。是非、最後までご覧になってください!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

登録理学療法士

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。

  

療法士の働き方に対する記事の 1 つが右記になりますが、"理学療法士は生活できない?PTが転職を考えるべき7つのタイミング"こちらの記事は検索ランキングでも上位を獲得することができております。興味がある方は、こちらの記事も目を通してくれると幸いです☺

高齢者のうつ病は身体機能やQOLを低下させる

高齢になると加齢に伴う身体機能の変化、退職や子どもの自立に伴う社会的役割の喪失、配偶者や兄弟・友人との死別など、これまでとは異なる衰退や喪失といったライフイベントが増え、うつになりやすい時期となります。

高齢者のうつは、生活の質や身体機能の低下を招く要因の1つであり、国内外の研究において抑うつが要支援・要介護認定のリスク要因となりうることが報告されています。

また、高齢者に起こりうる最も多い病的な心理症状が何か考えると、うつ病ということになります。超高齢社会となり、高齢者の数が激増している中、高齢者に対するうつ病の評価尺度の必要性は更に高まっていると言えます。

簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)とは?うつ病セルフチェック

簡易抑うつ症状尺度(Quick Inventory of Depressive Symptomatology:QIDS -J)は、16項目の自己記入式の評価尺度で、うつ病の重症度を評価できるほか、アメリカ精神医学会の診断基準 DSM-IVの大うつ病性障害の診断基準に対応しています。

睡眠、食欲・体重、精神運動状態に関する項目について設問に答えていくことで、簡易的にうつ度がチェックできます。選択項目によって点数が加算され、総得点が 0~27 点中の何点かによって、うつ度の重症度を確認することができます。

簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)は、世界的に知られた精神科医 John Rush 先生によって開発され、世界 10 カ国以上で使用されています。日本語版は、慶応大学医学部の藤澤大介先生のグループによって作成されています。

大うつ病性障害とは?

前の項目にて出てきた、大うつ病性障害というキーワードについて説明します。

うつ病は「気分障害」の一つであり、単極性と双極性に分類されます。単極性には、気分が落ち込むなどの抑うつ状態がみられる「大うつ病性障害」と「気分変調症(持続性抑うつ障害)」があります。気分変調症は、軽度の抑うつ状態が2年以上続くものです。

そして、うつ病の抑うつ状態に加えて、気分が高揚する躁状態(躁病エピソード)を持つものを「双極性障害(躁うつ病)」といいます。

「大うつ病性障害」を気分が落ち込むなどの抑うつ状態と説明しましたが、具体的には、下記のようなエピソードがみられる場合の「うつ病」を大うつ病性障害と表現しております。

  • 抑うつ気分(ほとんど一日中、あるいは毎日)
  • 興味・喜びの喪失(ほぼすべての活動で興味や喜びの低下)
  • 食欲の変化(食欲低下、亢進)
  • 睡眠の変化(不眠や過眠)
  • 精神運動の変化(焦燥や制止)
  • 疲労感(倦怠感、気力の減退)
  • 無価値観、罪責感
  • 集中力の変化(考えがまとまらない、決断ができない)
  • 死についての反復思考(希死念慮、自殺企図)

簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J) 採点方法

各項目が大うつ病性障害の症状に対応しているので、うつ症状の評価やスクリーニングに使えるほか、合計点を算出することでうつ状態の変化を評価することができます。

睡眠に関する項目(第1~4項目)、食欲・体重に関する項目(第6~9項目)、精神運動状態に関する2項目(第15、16項目)は、それぞれの項目で最も点数が高いものを1つだけ選んで点数化します。

それ以外の項目(第5、10、11、12、13、14項目)は、それぞれの点数を書き出します。

うつ病の重症度は、睡眠、食欲・体重、精神運動、その他6項目を合わせて9項目の合計点数(0点から27点)で評価します。

今回ご説明した簡易抑うつ症状尺度:QIDS-Jとは異なるうつ病の評価方法として、高齢者用うつ病評価尺度:GDS15がございます。このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【高齢者用うつ病評価尺度:GDS15についての記事はこちらから

簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J) 評価項目

【睡眠に関する項目】
● 寝つき

0.問題ない(寝つくのに30分以上かかるようなことはない)

1.寝つくのに30分以上かかることもあるが、1週間の半分以下である。

2.寝つくのに30分以上かかることが、週の半分以上ある。

3.寝つくのに60分以上かかることが、週の半分以上ある。


● 夜間の睡眠
0.問題ない(夜間に目が覚めるようなことはない)。

1.眠りが浅く、何回か短時間、目が覚めることがある。

2.毎晩少なくとも1回は目が覚めるが、短時間でまた眠ることができる。

3.毎晩1回以上目が覚め、そのまま20分以上眠れないことが、週の半分以上ある。


● 早く目が覚めすぎる

0.問題ない(ほとんどの場合、目が覚めるのは起きなくてはいけない時間の、せいぜい30分前である)。

1.週の半分以上、起きなくてはならない時間より30分以上早く目が覚める。

2.しばしば、起きなくてはならない時間より1時間以上早く目が覚めてしまうが、また眠ることができる。

3.起きなくてはならない時間よりも1時間以上早く起きてしまい、もう一度眠ることができない。


● 眠りすぎる

0.問題ない(夜間、眠りすぎることはなく、日中に昼寝をすることもない)。

1.24時間のうち、昼寝を含めて眠っている時間は、10時間ほどである。

2.24時間のうち、昼寝を含めて眠っている時間は、12時間ほどである。

3.24時間のうち、昼寝を含めて12時間以上眠っている。


● 悲しい気持ち
0.悲しいとは思わない。

1.悲しいと思うことは、半分以下の時間である。

2.悲しいと思うことが、半分以上の時間ある。

3.ほとんどすべての時間、悲しいと感じている。


【食欲・体重に関する項目】
● 食欲低下
0.普段の食欲とかわらない、または、食欲が増えた。

1.普段よりいくぶん食べる回数が少ないか、量が少ない。

2.普段よりかなり食べる量が少なく、食べるよう努めないといけない。

3.まる1日ほとんどものを食べず、無理をしてでも食べようと自分で言い聞かせたり、誰かに食べるよう説得されたときだけ食べることができる。


● 食欲増進
0.普段の食欲とかわらない、または、食欲が減った。

1.普段より頻回に食べないといけないように感じる。

2.普段とくらべて、食べる回数が多かったり、量が多かったりする。

3.食事の時も、食事と食事の間も、何かを食べたいという衝動にかられている。


● 体重減少(最近2週間で)

0.体重は変わっていない、または、体重は増えた。

1.少し体重が減った気がする。

2.1キロ以上やせた。

3.2キロ以上やせた。


● 体重増加(最近2週間で)

0.体重は変わっていない、または、体重は減った。

1.少し体重が増えた気がする。

2.1キロ以上太った。

3.2キロ以上太った。


● 集中力・決断
0.集中力や決断力は普段とかわりない。

1.ときどき注意が散漫になったり、決断しづらくなっているように感じる。

2.ほとんどの時間、注意を集中したり、決断を下すのに苦労する。

3.ものを読むこともできなかったり、ちょっとしたことですら決められない。


● 自分についての見方

0.自分は、他の人と同じくらい価値がある人間だと思う。

1.普段よりも自分を責めがちである。

2.自分が他の人に迷惑をかけていると、かなり信じている。

3.ほとんどいつも、自分のあれこれの欠陥について考えている。


● 死や自殺についての考え
0.死や自殺について考えることはない。

1.人生がむなしいように思え、生きている価値があるかどうか疑問に思う。

2.自殺や死について、1週間に数回、数分間にわたって考えることがある。

3.自殺や死について1日に何回か細部にわたって考える。または、具体的な自殺の計画を立てたり、実際に死のうとしたりしたことがあった。


● 一般的な興味

0.周りの人やあれこれの活動に対して、これまでと同じように関心を持っている。

1.周りの人やあれこれの活動に対して、これまでより関心が薄れている感じがする。

2.前は好きだった活動のうち、一つか二つのことにしか興味を持てなくなっている。

3.前は好きだった活動に、ほとんどまったく興味がなくなっている。


● 意欲と活動のレベル

0.これまでと同じように活動できる。

1.これまでよりも疲れやすい。

2.日常の活動(例えば、普通に出勤したり、家事をこなしたりすること)にとりかかったり、それをやりとげるのに、大きな努力が必要である。

3.ただエネルギーがないという理由だけで、日常の活動のほとんどが実行できない。

【精神運動状態に関する項目】

● 動きが遅くなった気がする
0.これまでと同じくらいの速さで考えたり、話したり、動いたりしている。

1.頭の働きが遅くなっていたり、話し方が単調になっているように感じる。

2.質問に答えるのに数秒かかってしまい、考えが遅くなっているのがわかる。

3.質問されると、どうにか頑張って、何とか答えられるような状態である。

● 落ち着かない
0.取りたてて着かないということはない。

1.しばしばそわそわしていて、手をもんだり、座り直したりせずにはいられない。

2.動き回りたい衝動があって、かなり落ち着かない。

3.ときどき、座っていられなくて、歩き回ったりする。

簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J) 評価用紙

簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)の評価表(質問紙)をダウンロードできるようにしておきました!評価表が必要な方はこちらからどうぞ☺

簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J) カットオフ値

  • 正常:0点 ~ 5点
  • 軽度のうつ病疑い:6点 ~ 10点
  • 中等度うつ病疑い:11点 ~ 15点
  • 重度のうつ病疑い:16点 ~ 20点
  • 極めて重度のうつ病疑い:21点 ~ 27点

うつ病 AI 無料チェック ユビー

うつ病の原因と、関連する病気を AI で無料チェックすることができるサイトがうつ病症状検索エンジン「ユビー」になります。こちらのサイトでは「うつ」がどの病気に関連するのかを無料でチェックすることができます。ユビーでは、3 分間程度で回答することができる質問に答えるだけで以下のサポートを受けることができます。

  • 症状の原因、関連する病気、対処法がわかる
  • 適切な診療科、近所の病院・クリニックがみつかる
  • 回答結果を医療機関に連携できるから、診療がスムーズになる

うつ病で悩んでいる人にとって、受診をするという行為自体が辛いものになる可能性がございます。スマホ 1 台で手軽にセルフチェックすることができる「ユビー」を導入として試してみることは有用であると考えられます。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「簡易抑うつ症状尺度:QIDS-J」をキーワードに考えを述べさせていただきました。

簡易抑うつ症状尺度は、各項目が大うつ病性障害の症状に対応しているので、気分の落ち込みなどがみられる典型的なうつ症状の評価やスクリーニングに効果的となります。

16項目あり、採点による点数も 0〜27 と幅があるため、信頼性や妥当性も高い評価となると思います。一方、項目がやや多いのと自己記入式ということがあるため、ある程度の認知機能が保たれていないと正確な評価が行えない可能性があります。

重度のうつ病になってから評価するというよりは、少し気分の落ち込みが生じ始めた頃に、スクリーニング検査として行い、精神科への受診へと繋げるような目的で使用できるといいと思います!

今回ご説明した簡易抑うつ症状尺度:QIDS-Jとは異なるうつ病の評価方法として、HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)がございます。このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)についての記事はこちらから

参考文献

  1. 臼田謙太郎.臨床研究で使用する自己記入式抑うつ評価尺度の特徴.武蔵野大学心理臨床センター紀要.第13号,2013年,p55-65.
  2. 伊藤絵梨子,田髙悦子.高齢者のうつ.日本地域看護学会誌.Vol.21,No.2,2018,p75-78.
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