- リスクマネジメント委員会の役割と運用|インシデントから「重点リスク」を決めて年次評価まで回す
- 5 分で分かる|委員会が回る最短フロー(集計→重点化→対策→評価)
- インシデント集計から「重点リスク」を決める手順
- 指標( KPI )の作り方|「減ったか」だけで詰まらない
- 年次評価と次年度計画|「 1 枚で振り返る」から逆算する
- 現場の詰まりどころ|先に “迷う場所” へショートカットする
- よくある失敗|「報告会」で止まる委員会のパターン
- 回避の手順/チェック|会議前・会議中・会議後に “やること” を固定
- A4 PDF(印刷用)|委員会の自己点検+重点リスク計画シート
- よくある質問
- 次の一手|運用を整える→共有の型を作る→環境要因も点検する
- 参考文献
- 著者情報
リスクマネジメント委員会の役割と運用|インシデントから「重点リスク」を決めて年次評価まで回す
リスクマネジメント委員会(リスク管理委員会)は、インシデント/ヒヤリハットを「集計して終わり」にせず、重点リスクを数個に絞り、対策と指標( KPI )を決め、年度末に評価して次年度へつなげるための会議体です。本記事は、 PT ・ OT ・ ST が委員として参加するときに迷いやすい「何をどう回すか」を、5 分フロー→よくある失敗→回避チェックの順で整理します。
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- サブ導線(親):医療安全委員会の施設基準と運用(総論)
- サブ導線(各論):転倒インシデント後 48 時間対応(チェックリスト)
5 分で分かる|委員会が回る最短フロー(集計→重点化→対策→評価)
迷いが出やすいのは「何を決める会議か」が曖昧なときです。委員会の仕事を①データ→②重点化→③対策→④評価→⑤現場還元に固定すると、議事録と ToDo が自然に揃います。
- 集計:インシデント/ヒヤリハットを分類(種類・場所・時間帯・重症度・職種)し、偏りを確認する
- 重点化:頻度 × 影響度、外部通知、再発性を踏まえて「重点リスク」を 3〜5 個に絞る
- 対策:リスクごとに「やること」「担当」「期限」「残すもの(様式)」を決める
- 指標( KPI ):結果指標だけでなく、実施率などのプロセス指標もセットで持つ
- 評価:年度末に達成度とボトルネックを 1 枚にまとめ、次年度の重点候補へつなげる
| フェーズ | 会議で決めること | 残すもの(証跡) |
|---|---|---|
| 集計 | 分類軸、集計期間、重症度区分、分析担当 | 集計表、傾向メモ、重大事例の一覧 |
| 重点化 | 重点リスク( 3〜5 )、優先順位、背景仮説 | 重点リスク一覧、選定理由( 1〜2 行) |
| 対策 | 具体策、担当、期限、現場導線(誰がどこで) | ToDo(担当・期限)、手順書/チェックリスト |
| 指標 | KPI(結果+プロセス)、測定頻度、報告先 | KPI 一覧、測定方法メモ |
| 評価 | 達成/未達の理由、次年度の修正点 | 年次評価 1 枚、次年度案 |
インシデント集計から「重点リスク」を決める手順
データが薄いと重点化は失敗します。最初にやるのは「重大だけでよい」という空気を外し、ヒヤリハットも含めて集めることです。分類軸を固定すると、現場の感覚が数字に乗り、改善が回り始めます。
| 観点 | 見るポイント | 例 |
|---|---|---|
| 頻度 | 件数が多い/増加傾向 | 夜間の転倒が増えている |
| 影響度 | 重症度が高い/転帰が悪い | 誤嚥性肺炎、重大な外傷 |
| 再発性 | 同パターンが繰り返す | 同じ場所・同じ時間帯で起きる |
| 外部要請 | 通知・監査・社会的関心 | 医療安全情報で注意喚起が増えた |
| 現場介入可能性 | 対策が行動に落ちる | 評価・環境調整・手順統一で減らせる |
指標( KPI )の作り方|「減ったか」だけで詰まらない
件数だけを追うと「報告しない方がよい」という逆インセンティブが起きます。結果指標に加えて、実施率・遵守率などのプロセス指標をセットにすると、改善が現場に戻りやすくなります。
- 結果指標:転倒件数、誤嚥性肺炎の発生、重大事例の件数
- プロセス指標:転倒リスク評価の実施率、スクリーニングのカバー率、手順書の遵守率、研修参加率
年次評価と次年度計画|「 1 枚で振り返る」から逆算する
年度末に揉めるのは、途中経過が追えていないからです。重点リスクごとに「対策」「担当」「 KPI 」「達成度」「ボトルネック」「次年度案」を 1 枚にまとめ、委員会で確認できる形にすると、次年度計画が自然に作れます。
現場の詰まりどころ|先に “迷う場所” へショートカットする
このゾーンは “読ませる” パートです。最初に、詰まりやすい場所へ飛べる導線だけ固定します。
よくある失敗|「報告会」で止まる委員会のパターン
| NG(起きがち) | なぜ詰まる? | OK(最小修正) |
|---|---|---|
| 集計だけで終わる | 重点化されず、現場の行動に落ちない | 重点リスクを 3〜5 個に絞り、担当と期限を決める |
| “件数” だけ追う | 報告抑制が起き、改善が見えない | プロセス指標(実施率・遵守率)を併用する |
| ToDo が曖昧 | 誰も動かず、次回も同じ議題になる | 議事録に「担当・期限・成果物(様式)」を必ず書く |
| 現場へ戻らない | 委員会が “会議室の出来事” になる | 部署内の共有導線(カンファ/申し送り/掲示)を固定する |
回避の手順/チェック|会議前・会議中・会議後に “やること” を固定
縮小して詰め込むより、「順番」と「成果物」を固定すると崩れません。以下のチェックで、委員会を “回る型” に寄せます。
| タイミング | チェック | 残すもの |
|---|---|---|
| 会議前 | 集計期間と分類軸が固定/重大事例を別枠で整理/重点候補を 3〜5 に絞る | 集計表、重点候補メモ |
| 会議中 | 重点を確定/対策を “行動” に落とす/担当・期限・様式を決める | ToDo(担当・期限)、手順書/チェックリスト案 |
| 会議後 | 部署へ持ち帰り共有/ KPI を測る導線を作る/次回までの宿題を回す | 共有記録、 KPI メモ、次回議題 |
A4 PDF(印刷用)|委員会の自己点検+重点リスク計画シート
本文の流れをそのまま院内で使えるよう、自己点検と重点リスク対策計画(年次評価)を 1 つにまとめた A4 PDF を用意しました。
PDF をこの場でプレビューする(タップで開く)
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
重点リスクは毎年いくつに絞るのが現実的ですか?
運用が回る目安は 3〜5 個です。多すぎると担当と期限が散り、議事録が “報告集” になりやすいです。まずは頻度 × 影響度で候補を出し、外部要請と再発性で優先順位をつけると絞りやすくなります。
「件数が減らない」と言われたとき、どう説明すればいいですか?
件数だけだと、報告文化や集計条件の影響を強く受けます。結果指標に加えて、評価実施率や手順遵守率などのプロセス指標を併用し、「何ができるようになったか」を示すと議論が前に進みます。
PT ・ OT ・ ST は委員会に何を持っていくと役に立ちますか?
リハ領域の重点になりやすいのは転倒・誤嚥・褥瘡・機器トラブルです。委員会に持ち込む前に、発生場面(動作・環境・時間帯)と、現場で変えられる要素(評価・動線・用具・教育)を 1 枚に整理しておくと、対策が行動レベルまで落ちやすくなります。
次の一手|運用を整える→共有の型を作る→環境要因も点検する
- 運用を整える:医療安全委員会(総論)で体制と報告ラインを固定する
- 共有の型を作る:転倒インシデント後 48 時間のチェックリストで “戻し先” を作る
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、 PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。PT キャリアナビを見る
参考文献
- 厚生労働省:医療安全対策のための医療法施行規則一部改正について
- 厚生労働省:医療事故調査制度について
- 日本医療機能評価機構:医療安全情報(医療事故情報収集等事業)
- 厚生労働省:医療安全管理のための指針(参考資料)
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


