ブルンストロームステージ( BRS )の評価方法| 6 段階の特徴と判定のコツ

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ブルンストロームステージ( BRS )の評価方法| 6 段階の特徴と判定のコツ

BRS は「姿位」と「課題」を固定すると、判定と経時比較が一気に安定します。 評価 → 介入 → 再評価の流れを 3 分で復習する( #flow )

ブルンストロームステージ( Brunnstrom Recovery Stages: BRS )は、脳卒中後の片麻痺を回復過程(共同運動 → 分離運動)の視点から段階づける評価です。筋力テスト( MMT )のように単関節・単筋をみるのではなく、全体の動き(パターン)と分離の出現を捉えるため、チーム内の共通言語として使いやすいのが特徴です。

臨床の結論:上肢( A )・手( H )・下肢( L )を別々に Stage I–VI で判定し、シナジー内 → シナジー外(分離)の順に確認して、最も再現性の高い段階に丸めて記録します(例:BRS-A IV / H III / L V)。

ステージ目安(早見表)|まずは 30 秒で全体像

最初に「何が変わると段階が上がるのか」を掴むと、評価が速くなります。BRS は痙縮の強さそのものではなく、共同運動への依存度分離運動の広がりで捉えるとブレにくいです。

下の早見表は、臨床で使いやすいように「特徴」と「まず見るポイント」を最小セットで整理しています。

BRS 早見表(成人・臨床運用向け):段階の特徴と“まず見るポイント”
Stage 特徴(ざっくり) まず見るポイント 代表的に見やすい動き(例)
I 弛緩、随意ほぼなし 連合反応や筋収縮の兆しがあるか 触診での収縮、努力時の反応
II 痙縮出現、共同運動の兆し わずかな随意/痙縮の出現 連合反応、わずかな随意収縮
III 痙縮最強、シナジー内で随意可 共同運動(屈曲/伸展)で明確に動くか 上肢:屈曲/伸展シナジー、下肢:屈曲シナジー
IV 痙縮減退、一部の分離が出る シナジー外の“芽”が同条件で再現するか 肘単独伸展、前腕回内外、足背屈 など
V 分離が拡大、複合運動が概ね可能 分離課題が複数で安定するか 肩挙上の拡大、より難しい分離課題
VI 分離・協調が良好、痙縮ほぼ消退 協調性・反復の質(ぎこちなさが少ない) 反復課題の協調、スピードの安定

ブルンストロームステージ( BRS )の要点

BRS は上肢( A )・手( H )・下肢( L )をそれぞれ Stage I–VI で独立判定します。上肢が先に上がって手指が遅れる、下肢だけ改善が先行する、といったズレは珍しくありません。

判定が揺れるときは、「段階」より先に姿位・開始肢位・口頭指示・促通の有無を固定し、同条件で再現する段階に丸めて記録すると、経時比較が一気に読みやすくなります。

評価方法(やり方)|段取りを固定すると再現性が上がる

評価は「 I から順番」ではなく、臨床ではまず Stage III 相当(共同運動が明確か)を見て、そこから上下に分岐するとスムーズです。無理に誘発して痙縮や疼痛を増やさないよう、安全確認 → 課題 → 観察 → 記録の順で進めます。

ポイントは、シナジー内の随意を確認したあとに、シナジー外の分離を同じ条件で確認することです。

  1. 姿位と準備:背臥位または端座位(下肢の高難度は立位)。疼痛・拘縮・注意・バイタルを確認し、無理な誘発は避けます。
  2. 誘発課題:まず上肢/下肢の屈曲・伸展シナジーを確認し、次にシナジー外の分離(例:肘単独伸展、手指伸展、膝屈曲、足背屈)を確認します。
  3. 観察ポイント:痙縮の出現タイミング、随意の質、分離の可否と協調性、疲労や疼痛での変動を見ます。
  4. 判定と記録:最も再現性の高い段階に丸め、上肢/手/下肢を別々に記録します(例:BRS-A IV / H III / L V)。姿位・誘発課題・促通の有無も併記します。

上肢( A )の判定ポイント|まず Stage III を見て分岐

上肢は「共同運動が明確か( Stage III )」を入口にし、分離課題が成立すれば Stage IV–VI へ進みます。代償(体幹の回旋・側屈)で“できた”に見えるケースがあるため、開始肢位と指示を固定して確認します。

Stage III:共同運動(屈曲/伸展)の明確な出現

  • 見ること:屈曲または伸展シナジーで、明確に関節運動が出るか
  • 注意:代償(体幹)と促通の強さを揃える

Stage IV:共同運動からの分離が“一部”可能

  • 見ること:シナジー外の課題が 1 つでも同条件で再現するか
  • 例:肘単独伸展、前腕回内・回外、肘伸展位での肩屈曲の一部 など

Stage V:より難しい分離が可能(分離が拡大)

  • 見ること:分離課題が複数で安定するか( 1 回だけは採用しない)
  • 例:肩の挙上範囲の拡大、肢位保持下での分離 など

Stage VI:分離・協調が良好(反復でも崩れにくい)

  • 見ること:反復で協調が保てるか、ぎこちなさが少ないか
  • 注意:明確な回数基準より、協調性・再現性を重視して判定

Stage I–II:連合反応/わずかな収縮の確認

共同運動が明確でない場合は、連合反応や触診での収縮の有無を確認し、Stage I–II を判定します。ここは「強く誘発する」より「安全に反応を拾う」方が臨床的です。

手指( H )の判定ポイント|“手だけ遅れる”は珍しくない

手指は上肢よりも難しく、回復が遅れたり段階が揺れたりしやすい部位です。上肢( A )と同じ段階で決め打ちせず、手指としての分離(伸展やつまみ)が同条件で再現するかで判定します。

評価は短時間で疲労が出やすいので、必要なら休息を挟み、再現性が高い段階に丸めて記録します。

  • Stage III の目安:集団屈曲や鍵握りで明確に動く
  • Stage IV の目安:横つまみ、わずかな手指伸展など“分離の芽”が出る
  • Stage V の目安:より難しいつかみや集団伸展が成立する
  • Stage VI の目安:全可動域での伸展や各指の分離が比較的良好

下肢( L )の判定ポイント|座位→立位で課題が変わる

下肢は Stage III–IV を座位で確認し、Stage V–VI の一部は立位課題が入ります。転倒リスクがあるため、立位課題は支持を確保して安全に実施します。

「足背屈が出る/出ない」だけで段階を決めるより、共同運動への依存度と分離の再現性で判定するとブレにくいです。

  • Stage III の目安:屈曲シナジー(股・膝屈曲+足背屈)が明確
  • Stage IV の目安:足底をつけた膝屈曲、踵接地での足背屈など“分離の芽”
  • Stage V の目安:立位で分離課題が成立(支持下で確認)
  • Stage VI の目安:協調性や反復でも崩れにくい分離が確認できる

記録方法|段階だけでなく「条件」を 1 行添える

段階だけを書くと、次の評価者が同条件を再現できず、結果が揺れやすくなります。BRS は条件固定と相性が良いので、最小限でよいので「条件」を併記します。

おすすめは段階+条件です(姿位、誘発課題、促通の有無、疼痛・疲労)。これだけで経時比較の質が上がります。

例)
BRS-A IV / H III / L V(端座位、促通なし、疼痛 NRS 2、疲労あり)
BRS-A III / H II / L IV(背臥位、誘発課題=屈曲シナジー、促通あり)

判定のコツとよくある誤り|“最良再現性”で丸める

判定がブレる理由の多くは、患者の変動よりも評価条件の差です。とくに促通の強さ、開始肢位、口頭指示、疲労・疼痛は境界で結果を動かしやすい要素です。

一度だけ偶然できた動作で段階を上げず、休息後も同条件で再現する段階に丸めると、チーム内の合意が取りやすくなります。

よくある誤り(失敗)と対策:BRS をブレずに運用する
よくある誤り なぜ起きる? 対策(固定する項目) 記録の一言例
上肢( A )と手指( H )を同じ段階で決め打ち 近位と遠位で回復がズレる A/H/L を独立判定し、別々に目標を立てる 「A 先行、H は別課題で追跡」
一度だけできた分離で段階を上げる 疲労・注意・促通の影響 休息後に再確認し、最良再現性で丸める 「再現性優先で IV に丸め」
痙縮の強さ=筋力と解釈する Stage III は力強く見えやすい 分離運動の可否を最優先に見る 「力感より分離の再現性を採用」
評価条件が毎回違う 姿位・指示・促通が変わる 姿位、開始肢位、指示文、促通の有無を固定 「端座位、促通なし、指示文固定」

評価の全体像(他の指標を含む整理)は、評価ハブにまとめています。

臨床での使い方|共有言語として“速く”使い、詳細は併用で補う

BRS は回復の大枠を共有するのに強く、家族説明やゴール設定の足場になります。一方で微細な変化の感度は尺度によって差があるため、必要に応じて上肢機能の詳細評価などを併用し、目的に合わせて情報量を調整します。

III → IV の移行期は、共同運動に寄りすぎないようにシナジー外課題を“同条件で”繰り返し確認し、再評価で差が出るように設計すると臨床の手応えが出やすいです。

安全の目安(中止・再評価)|強い誘発で悪化させない

評価は介入ではありません。疼痛や強い痙縮を誘発してしまうと、その後の練習や ADL に影響します。中止基準を先に決め、必要なら課題を下げて再評価します。

経時比較は同条件(姿位・課題・促通の有無)で行い、段階が揺れる場合は休息後に再確認します。

  • 疼痛増悪、著明な痙縮誘発、強い疲労、 SpO2 低下などがあれば中断し、姿位や課題を調整
  • 評価後に筋緊張が上がり続ける場合は、誘発の強さ・課題選択を見直す

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 判定が日によって揺れます。どう扱えばいいですか?

A. まずは評価条件(姿位、開始肢位、口頭指示、促通の有無、疼痛・疲労)を固定し、同条件で再確認します。それでも揺れる場合は「揺れ」自体が重要な情報なので、段階だけでなく条件を 1 行添えて記録すると、次の介入設計がしやすくなります。

Q2. III と IV の境界は何を優先して決めますか?

A. 「共同運動が主か/分離の芽が同条件で再現するか」を優先します。促通や代償が強い状態で 1 回だけ出た分離は採用せず、休息後も同条件で再現するレベルに丸めるのが安全です。

Q3. 上肢が IV で手指が II のようにズレても大丈夫?

A. あり得ます。A/H/L は独立判定なので、近位が先行し手指が遅れるのは珍しくありません。ズレを“異常”と捉えるより、課題と目標を分けて運用すると臨床が進みます。

Q4. BRS だけで経過を追っていいですか?

A. チーム共有の共通語としては有用です。一方で「微細な変化」を目的にするなら、上肢機能の詳細評価などを併用し、目的に応じて感度を補うと再評価がラクになります。

参考文献

  1. Brunnstrom S. Motor testing procedures in hemiplegia: based on sequential recovery stages. Physical Therapy. 1966;46(4):357-375. DOI:10.1093/ptj/46.4.357
  2. Naghdi S, Ansari NN, Mansouri K, Hasson S. A neurophysiological and clinical study of Brunnstrom recovery stages in the upper limb following stroke. Brain Injury. 2010;24(11):1372-1378. DOI:10.3109/02699052.2010.506860PubMed
  3. Twitchell TE. The restoration of motor function following hemiplegia in man. Brain. 1951;74(4):443-480. DOI:10.1093/brain/74.4.443PubMed
  4. Huang C-Y, Lin G-H, Huang Y-J, et al. Improving the utility of the Brunnstrom recovery stages in patients with stroke. Medicine. 2016;95(31):e4508. DOI:10.1097/MD.0000000000004508

おわりに

BRS は、安全の確保 → 条件固定 → 段階づけ( A/H/L )→ 課題設定 → 再評価のリズムで回すと、チーム内のズレが減って介入が前に進みます。まずは「姿位」と「課題」を 1 つずつ固定し、同条件での再評価から始めてみてください。

あわせて、面談準備の抜け漏れ防止に使えるチェックシートもまとめています。面談準備チェック&職場評価シート( MyNavi )を必要に応じて活用してください。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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