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Lawton IADLとは(概要)
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Lawton IADL は 1969 年に提案された高齢者の手段的日常生活動作(IADL)を評価する代表尺度です。面接や観察により、各領域の「普段の生活で安定してできている最高レベル」を採点します。
研究や施設では 2 点法(自立=1/非自立=0、合計0–8)と 4 点法(0–3、合計0–24)が併存するため、経時追跡では方式の統一が必須です。伝統的性役割に依存しやすい項目(家事・洗濯など)があるため、現代では性別にかかわらず全 8 項目を評価する運用が推奨されます。
IADL は社会参加や遂行機能と関連し、退院支援・地域連携の起点となります。
評価方法(準備〜面接/観察〜採点の流れ)
評価は 10 – 15 分を目安に、本人と家族・介護者からの聴取に観察を組み合わせて実施します。入院・施設等の環境制約は減点理由とせず、普段の生活での遂行可否を基準にします。2 点法では各領域を「自立=1/非自立=0」で合計、4 点法では段階的に 0 – 3 点を付与します。
バイアス回避のため生活歴・役割分担・外部支援(配食、服薬支援、家事代行など)を補足し、カルテ・看護記録・薬歴と突合して妥当性を担保します。再評価は 3 – 4 週間間隔を基本とし、退院前カンファで初回との変化を示すと合意形成に有効です。
項目と採点(8領域)
- 電話の使用(発信・受信・番号操作)
- 買い物(計画〜支払いまで自立)
- 食事の準備(メニュー選択〜調理)
- 家事(掃除・片付け・道具管理)
- 洗濯(選別〜干す〜取り込み)
- 移動手段の利用(公共交通・タクシー手配など)
- 服薬管理(用量・時間の自己管理)
- 金銭管理(出納・振込・キャッシュレス操作)
実務メモ:基準は「普段の生活で安定してできているか」。迷う場合は補助の質(言語指示・準備・身体介助)を所見化し、同一方式で経時比較します。
各項目の判定基準や選択肢の詳細は 既存の解説記事 をご覧ください。
評価結果をリハビリにどう活かすか(PTの実装)
合計点は目安であり、どの領域が低下しているかのプロファイル解釈が介入設計の中心です。服薬・金銭の低下は遂行機能 / 注意制御の課題を、買い物・移動手段の困難は歩行耐久性・バランス・複合課題処理を示唆します。
PT は ICF に沿って活動・参加ゴールを SMART に設定し、(1)歩行耐久性+二重課題訓練、(2)段取り・時間管理を含む遂行機能トレーニング、(3)タスク特異的練習(配膳・買物リスト化・ICカード操作)、(4)環境調整(配食、ピルケース/服薬カレンダー、キャッシュレス簡素化)、(5)家族教育を組み合わせます。退院前は多職種カンファで IADL プロファイルを提示し、社会資源と結び付けて再評価計画を共有します。
介入デザインのひな型(抜粋)
- 耐久性・移動:6 分間歩行+二重課題歩行、バランス(FBS/mini-BEST)に基づく段階付け
- 遂行機能:買物シナリオで段取り訓練、タイムプレッシャー下の意思決定練習
- タスク特異:服薬は誤服薬要因を分析→ピルケース運用、金銭は少額決済の模擬反復
- 環境調整:配食・訪問薬剤、掲示/ピクトグラム、動線簡素化、転倒リスク低減
- モニタリング:3 – 4 週ごとに再評価し、変化領域に的を絞って更新
ケース例(COPD+軽度認知障害)
IADL低下:買い物0・移動0・服薬0(合計5/8)
要因:持久性低下+二重課題での注意低下
介入:歩行耐久性/二重課題訓練、買物リスト化→段取り練習、ピルケース+服薬カレンダー導入
支援:配食試行、家族へ服薬確認フロー共有
再評価:3週で買い物1、服薬1へ改善
信頼性・妥当性と限界(留意点)
Lawton IADL は臨床妥当性と実用性が示されていますが、文化・ジェンダー役割に依存しやすい項目が含まれます。特に男性では生活歴や家事分担により過小 / 過大評価のリスクがあり、性別にかかわらず全 8 項目を評価し、補助の実態を明記します。
2 点法と 4 点法の混在は外的妥当性を損ね得るため、施設内の方式統一と経時追跡での同一方式維持が不可欠です。
記録テンプレ(コピペ編集可)
【Lawton IADL(2点法)】電1/買0/食0/家0/洗1/移0/服0/金1=合計3/8
低下領域:買物・食事準備・家事・移動・服薬
解釈:遂行機能+耐久性の複合課題
目標(4週):買物1へ(買物リスト化+二重課題歩行20分)
計画:週3セッション、家族教育、配食導入、退院前再評価
関連記事・併用評価
参考文献
- Lawton MP, Brody EM. Assessment of older people: self-maintaining and instrumental activities of daily living. The Gerontologist. 1969;9(3):179–186. PubMed / DOI
- Graf C. The Lawton Instrumental Activities of Daily Living (IADL) scale. Am J Nurs. 2008;108(4):52–62. PubMed
- Hartford Institute for Geriatric Nursing. Try This: The Lawton IADL(2019改訂). PDF
- Fieo R, et al. IADL decline precedes dementia diagnosis. Innov Aging. 2017;1(1). PMC
- Cloutier S, et al. Subtle iADL change up to 10 years before dementia. Alzheimer’s Dement. 2020;16(8). PMC
- Beltz S, et al. IADL decline precedes ADL decline. BMC Geriatr. 2022;22:345. Link
- Makino K, et al. NCGG-ADL validation in Japanese cohorts. J Alzheimers Dis. 2020;76(1):229–237. PMC