Lawton IADL を“退院支援の実装”に落とす|下位項目別の介入テンプレ

評価
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Lawton IADL を“退院支援の実装”に落とす:合計点ではなく「どこで詰まるか」から介入を組む

IADL は「弱点の特定 → 事故予防 → 代償の実装」を同じ順番で回すと、連携と再評価が一気に整います。 評価 → 介入 → 再評価の型を 3 分で確認する( #flow ) 面談準備チェック( A4 )と職場評価シート( A4 )も無料公開しています。

Lawton IADL(ロートンの尺度)は、IADL(手段的日常生活動作)を「生活管理力」として短時間で把握できる代表尺度です。大事なのは合計点で結論を急がないこと。下位項目の具体像からリスクを予測し、代償(ツール・サービス)/環境/教育を“セット”で実装し、 1〜2 週で再評価できる形に落とし込みます。

なお運用上は、性別で採点レンジが異なる版(例:女性 0–8、男性 0–5 )が使われることがあります。施設の採用版(質問票・運用手順)を優先し、同一版・同一条件での経時比較を徹底してください。

IADL 低下で生じる生活の支障と介護ニーズ【まず“どこに困りごとが出るか”を可視化】

IADL が低下すると、単なる「手伝いが必要」では済まず、安全・衛生・金銭・服薬・社会参加といった生活の根幹に連鎖します。結果として見守り・代行・同意能力の代替が必要となり、家族や介護サービスの負担増につながります。下表は、代表的な支障と介護ニーズの対応関係です。

IADL 低下 → 生活の支障 → 介護ニーズ(俯瞰)
IADL 領域 生活の支障 起こりうるリスク 必要となる介護・支援
服薬管理 飲み忘れ・重複服用・中止指示の不履行 急変・再入院・副作用 薬の仕分け代行、服薬見守り、薬局連携(例:月 1 レビュー)
金銭管理 請求滞納、詐欺被害、家計破綻 ライフライン停止、資産流出 支払い自動化、代理人カード、成年後見等の検討
買い物・調理 食料確保不全、栄養の偏り、火気事故 低栄養、火傷・火災 買物代行・配食、IH 化、見守り調理
家事・洗濯 居住環境の不潔化、衣類管理不良 転倒・感染・褥瘡リスク増 家事援助、清掃サービス、週次ルーティン化支援
交通機関の利用 通院・買物・社会参加の断絶 受診中断、閉じこもり、迷子 送迎・デマンド交通、同行、生活圏再設計(宅配活用)
電話・連絡 受診予約 / 緊急連絡ができない 治療遅延・詐欺応答 短縮ダイヤル設定、連絡カード、連絡プロトコル整備

スコアから介入へ:PT / OT の意思決定フレーム(合計点は“入口”)

合計点は重症度の目安にすぎません。重要なのは、下位項目の具体像危険予測代償・環境・教育再評価の循環を作ることです。

合計点帯と初期プラン(再評価スケジュール)
合計点 生活像の仮説 優先課題 再評価
6–8 概ね自立・弱点が限定 高リスク領域の事故予防(見守り設計) 2–4 週(教育定着・ヒヤリ確認)
3–5 部分自立・環境 / 認知の影響が大きい 代償と環境整備の“実装” 1–2 週(サービス導入後の効果検証)
0–2 広範支援・安全最優先 多職種連携・見守り体制(責任分界) 1 週以内(早期フォロー)

Lawton IADL と TMIG-IC(老研式)の使い分け【“目的”で選ぶ】

どちらも IADL 系ですが、得意領域が異なります。退院支援で「具体行動に落としたい」なら Lawton生活機能を広く拾って説明したいなら TMIG-ICが合わせやすい、という整理が実務では便利です(※採用している尺度と運用手順は施設方針を優先)。

Lawton IADL と TMIG-IC の違い(実務の選び方)
比較軸 Lawton IADL TMIG-IC(老研式)
向いている目的 退院支援で「弱点 → 介入 → 役割分担」を具体化 高次生活機能を広く俯瞰し、説明・スクリーニングに使う
アウトプット 下位項目から“そのまま”介入計画へ落としやすい サブスケールで生活の広がりを捉え、支援方針の共有に向く
注意点 採用版(採点レンジ、面接 / 家族情報 / 模擬の扱い)を統一 「できるか」ではなく直近の“実施状況”で判定し、支援条件を併記
迷ったとき 退院後の事故(服薬・金銭・火気・移動)を減らしたいとき 生活機能の全体像を広く拾い、経時変化を見たいとき

現場の詰まりどころ:点は取れているのに、在宅で事故が起きる理由

  • “できる” と “実際にやっている” がズレる:面接が「能力評価」になり、普段の生活(頻度・支援条件・失敗パターン)が抜ける。
  • 代償が “単品” になる:ツールだけ導入して、環境(置き場所・手順)と教育(分岐)がセット化されない。
  • 責任分界が曖昧:家族・ケアマネ・薬局・事業所で「誰が何を確認するか」が決まらず、見落としが起きる。
  • 再評価が遅い:導入直後の 1〜2 週で詰まりが出るのに、フォローが 1 か月後になる。

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下位項目別の具体介入(代償/環境/教育+ PT / OT の専門性)

以下は臨床でそのまま使える手順レベルの介入です。施設 SOP と主治医指示を優先し、対象者の認知・視覚・上肢機能・歩行安全性に合わせて調整してください。

服薬管理:一包化+アラーム+レビューを“セット化”

  • 代償:一包化(朝・昼・夕・就寝)、ピルケース(曜日 × 時刻)を患者と一緒にセットアップ。
  • 環境:服薬スポットを固定(例:ダイニング左上棚)、視認性の高い位置に「服薬カレンダー」。
  • 教育:“飲み忘れに気づいたとき”の分岐(時間帯別)をカード化。
  • PT / OT の役割:手指巧緻性・視覚注意・二重課題に配慮した実動作訓練(開包 → 取り出し → 服用 → 記録)。
  • 評価指標:残薬量、 1 日の服薬完了チェック率、アラームへの反応時間。

金銭管理:支払いの“自動化”と詐欺ガード

  • 代償:固定費の口座振替 / クレカ自動化、代理人カード(利用上限付き)。
  • 環境:請求書トレーを「到着 → 処理済み」で二分、月末ルーティンをカレンダー化。
  • 教育:電話詐欺の想定トークと拒否スクリプトを練習(役割演技)。
  • PT / OT の役割:支払い動作の連続課題(書類分類 → スマホ / ATM 操作 → 記録)を遂行機能訓練として設計。
  • 評価指標:滞納ゼロ、怪しい通話の報告件数、家族ダブルチェックの遵守率。

買い物:迷いを減らす“プロンプト設計”

  • 代償:定期配送の固定、標準買物リスト(写真付き)をスマホに実装。
  • 環境:キャッシュレス 1 方式に統一(例: IC カードのみ)。
  • 教育:店舗での手順書(入店 → カゴ → リスト → レジ → 袋詰め)を持ち歩きサイズで。
  • PT / OT の役割:実店舗での同行訓練(視空間探索・二重課題歩行・決済操作)。
  • 評価指標:買い忘れ件数、レジ所要時間、支援依存度。

調理:安全最優先の IH 化+タイマー

  • 代償:ミールキット導入、電子レンジ中心のレシピ、包丁はセーフティタイプ。
  • 環境:コンロは IH へ、自動消火・タイマー・センサーを活用。
  • 教育:三品ローテ(汁・主菜・副菜)を 7 日テンプレに。
  • PT / OT の役割:台所レイアウト最適化(到達距離・立位耐久)、段取り訓練(前工程 → 後工程)。
  • 評価指標:自炊回数、配食依存率、火気ヒヤリ件数。

家事・洗濯:ルーティン × ラベリング

  • 代償:家事援助の曜日固定、乾燥機活用、ネット分けの簡素化。
  • 環境:収納に写真ラベル、掃除道具を各部屋に分散配置。
  • 教育: 1 日 1 タスク( 5–10 分)方式で「達成感」を維持。
  • PT / OT の役割:安全な持ち上げ動作・バランス練習、疲労マネジメント。
  • 評価指標:室内清潔度(主観+写真)、洗濯完了率。

交通:生活圏を“再設計”

  • 代償:デマンド交通に登録、通院は送迎サービスへ集約。
  • 環境:受診は午前中に固定、乗換最少ルートのみ使用。
  • 教育:迷い時のプロトコル(立ち止まる → 人に聞く → 家族へ連絡)。
  • PT / OT の役割:外出同行で実地評価+訓練(地図アプリ、券売機操作、歩行耐久)。
  • 評価指標:単独移動成功回数、ヒヤリ件数、迷い時間。

電話・連絡:ショートカットと台本

  • 代償:スマホの短縮ダイヤル(家族・主治医・ケアマネ)。
  • 環境:受話器の定位置化、着信音量の最適化。
  • 教育:受診予約・緊急時の台本(スクリプト)を練習。
  • PT / OT の役割:注意・記憶課題を絡めた電話ロールプレイ。
  • 評価指標:自発発信成功率、誤発信 / 無応答件数。

退院支援プロトコル(テンプレ)

  1. 弱点抽出:下位項目 × 課題 × リスクを 1 行で要約(例:服薬 0 点=重複服薬の危険)。
  2. 介入選定:代償(サービス / ツール)+環境調整+教育+家族役割をセットで。
  3. 書面化:ケアマネ共有文に「提案・根拠・期限・再評価項目」を明記。
  4. 実装&訓練:自宅 / 模擬環境で実動作訓練( PT / OT が主導)。
  5. 再評価: 1–2 週で効果検証。未達なら代替案に即切替。

連携文例(コピペ)

例|ケアマネ宛:
「IADL:服薬 0、金銭 0。重複服薬と請求遅延あり。
対策:①一包化+アラーム+服薬カレンダー、②固定費の自動化+代理人カード。
再評価: 2 週後。目標=飲み忘れゼロ / 滞納ゼロ。」

まとめ

IADL 低下は生活の安全・衛生・経済・治療継続を直撃します。合計点に頼らず下位項目の具体像から、代償・環境・教育・訓練を一体で設計し、 1–2 週の再評価で回す——それが療法士の専門性です。

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参考文献

  1. Lawton MP, Brody EM. Assessment of Older People: Self-Maintaining and Instrumental Activities of Daily Living. The Gerontologist. 1969;9(3 Part 1):179–186. DOI: 10.1093/geront/9.3_Part_1.179
  2. Koyano W, Shibata H, Nakazato K, Haga H, Suyama Y. Measurement of competence: reliability and validity of the TMIG Index of Competence. Arch Gerontol Geriatr. 1991;13(2):103–116. DOI: 10.1016/0167-4943(91)90053-s / PubMed: 15374421

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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