Barthel IndexとFIMの違いは、評価範囲と介助量の細かさです
Barthel Index(BI)とFIMは、どちらも日常生活動作の自立度を評価する尺度ですが、評価できる範囲と介助量の表し方が異なります。短時間で基本ADLの全体像を把握したい場合はBI、運動項目に加えて認知面や必要な介助量を細かく共有したい場合はFIMが選択肢になります。
重要なのは、BIを「できるADL」、FIMを「しているADL」と単純に分けないことです。BIも原則として、患者が実際に行っている内容をもとに評価します。このページでは、目的、項目数、認知評価、介助量の粒度、運用負担から、どちらを主尺度にするか判断できるように整理します。ADL尺度全体から選びたい場合は、ADL評価スケール総論を先に確認してください。
Barthel IndexとFIMの違いを比較表で確認する
基本ADLを簡潔に把握するのがBI、実際に必要な介助量と認知面まで細かく表すのがFIMです。どちらが優れているかではなく、評価結果を何に使うかで選びます。

| 比較項目 | Barthel Index | FIM |
|---|---|---|
| 主な役割 | 基本ADLの自立度を簡潔に把握する | 運動・認知項目の自立度と必要な介助量を段階的に把握する |
| 項目数 | 10項目 | 18項目(運動13項目、認知5項目) |
| 得点範囲 | 一般的な0〜100点法では0〜100点 | 18〜126点 |
| 認知・コミュニケーション | 独立した評価項目はない | 理解、表出、社会的交流、問題解決、記憶を含む |
| 介助量の表現 | 項目ごとに限られた段階で判定する | 各項目を1〜7点で判定し、監視、準備、身体介助の程度を細かく表現する |
| 運用負担 | 比較的短時間で実施しやすい | 項目数が多く、採点基準の理解と評価者間の統一がより必要になる |
| 選びやすい目的 | 初回把握、定期的な概況確認、基本ADLの共有 | 詳細な介助設計、認知面を含む共有、経時的な介助量の確認 |
どちらを選ぶか迷ったときの5分フロー
尺度を選ぶ前に、「結果を何に使うか」「どこまで細かく表す必要があるか」「継続して同じ条件で評価できるか」の3点を決めます。
- 基本ADLの全体像を短時間で把握したいか
はいの場合は、BIを主尺度にしやすいです。 - 認知・コミュニケーションも含めて評価したいか
はいの場合は、認知5項目を含むFIMが適しています。 - 見守り、準備、最小介助などの違いを段階的に共有したいか
はいの場合は、各項目を7段階で評価するFIMが適しています。 - 評価者が採点基準を学び、同じ条件で継続評価できるか
十分な運用体制を確保しにくい場合は、項目数の少ないBIを主尺度とする方が安定することがあります。
| 決めたいこと | 主尺度の候補 | 理由 |
|---|---|---|
| 基本ADLの全体像 | Barthel Index | 10項目で簡潔に整理しやすいため |
| 必要な身体介助量 | FIM | 各項目の自立度と介助量を1〜7点で段階化できるため |
| 認知・コミュニケーションを含む生活機能 | FIM | 認知5項目が含まれるため |
| 多数例の定期的な概況把握 | Barthel Index | 比較的少ない項目で繰り返しやすいため |
| 家族へ介助内容を具体的に説明する | FIMを候補にする | 見守り、準備、身体介助の程度を分けて整理しやすいため |
BIもFIMも「実際の遂行状況」を同じ条件で評価する
BIとFIMの違いを、「BIはできるADL、FIMはしているADL」と覚えるのは適切ではありません。BIの運用ガイドでも、患者が理想的な条件でできる可能性ではなく、実際に行っている内容を記録することが基本とされています。
たとえば、能力的には一人でトイレ動作を行えそうでも、普段は転倒リスクのために見守りや介助を受けている場合があります。このとき、訓練室で一度できたことだけを根拠に日常生活で自立していると判定すると、実際の介護負担とのずれが生じます。
両尺度を比較するときは、次の条件をそろえてください。
- どの場所と環境で評価したか
- どの期間の普段の遂行状況を反映したか
- 補助具や装具を使用したか
- 見守りや身体介助が必要だったか
- 安全上の制限があったか
そのうえで、BIは基本ADLを比較的粗い段階でまとめ、FIMは介助量と認知面をより細かく記述する尺度として整理すると、違いを説明しやすくなります。
項目数・得点範囲・変化の捉え方
BIは10項目、FIMは18項目で構成されます。FIMは運動13項目に加えて認知5項目を含み、各項目を1〜7点で評価するため、BIより多くの情報を記録できます。
一方、項目数や得点段階が多いことだけで、すべての対象や場面においてFIMの方が変化を捉えやすいとは限りません。尺度の反応性は、対象疾患、重症度、評価時期、変化した動作によって異なります。
BIでは、高機能者が満点または満点付近に集まり、生活上の小さな変化を合計点で表しにくいことがあります。その場合は、BIの合計点だけで判断せず、変化した項目、実際の介助内容、歩行や認知などの関連評価も確認します。
BIとFIMを併用するときは主尺度の役割を決める
BIとFIMを同時に使用する場合は、両方を取ること自体を目的にせず、それぞれの結果を何に使うか決めておきます。
| 役割 | 使用例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 基本ADLの概況を共有する | BIを定期評価の主尺度にする | 合計点だけでなく、変化した項目を残す |
| 詳細な介助量を確認する | FIMを主尺度にして経時変化を追う | 評価者間で採点基準を統一する |
| 認知面を含めて生活機能を整理する | FIMの運動・認知項目を評価する | 合計点だけでなく、運動項目と認知項目を分けて確認する |
| 退院後の介助を具体化する | 尺度結果に実際の介助内容と環境条件を追加する | 点数だけで退院可否を決めない |
正式にFIMを使用する場合は、一部の項目だけを便宜的に抜き出した評価と、FIM全体の正式な得点を混同しないようにします。特定動作の介助量だけを観察した場合は、FIM総得点として扱わず、補足所見として記録します。
退院支援では、得点を取った後に、住環境、家族の介助可能量、夜間の状況、安全性などへ変換する必要があります。具体的な手順は、FIMとBIを退院支援に落とす手順で整理しています。
比較前にそろえる3つの採点条件
BIとFIMの得点差を正しく解釈するには、尺度の種類だけでなく、評価条件をそろえることが必要です。最低限、評価場面、補助具・環境、介助理由の3点を記録します。
| 確認項目 | そろえる内容 | 記録例 |
|---|---|---|
| 評価場面 | 病棟、訓練室、自宅など、どの環境の遂行状況を採用したか | 「病棟での通常動作を基準に評価」 |
| 補助具・環境 | 杖、装具、手すり、車椅子などの条件 | 「四点杖、短下肢装具、トイレ手すり使用」 |
| 介助理由 | 筋力低下、バランス低下、判断低下、安全配慮など | 「見守り理由は方向転換時のふらつき」 |
再評価では、合計点だけでなく、採点条件が前回と同じかを確認します。環境や補助具が変わった場合は、能力の変化と条件の変化を分けて解釈してください。
Barthel Index・FIM比較用のA4記録シート
BIとFIMを比較するときは、得点だけでなく、評価場面、補助具、介助理由、再評価時の変化を同じ用紙へ残すと整理しやすくなります。以下のPDFは、患者情報、採点条件、比較メモ、再評価メモをA4用紙1枚にまとめるための記録シートです。
Barthel Index・FIM比較用A4記録シートPDFを開く
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BIとFIMの使い分けで起こりやすい失敗
使い分けで起こりやすいのは、尺度の名称ではなく、評価対象、採点条件、結果の用途が曖昧なまま得点だけを比較することです。
| 失敗 | 問題点 | 対策 |
|---|---|---|
| BIを「できるADL」、FIMを「しているADL」と固定する | BIも実際の遂行状況を評価するという原則から外れる | 両尺度とも評価場面と普段の遂行状況を明記する |
| 合計点だけを比較する | どの動作や介助量が変化したか分からない | 項目別の変化と介助理由を残す |
| 評価環境が異なる | 能力変化と環境差が混在する | 場所、補助具、手すり、介助者などを記録する |
| BI満点を生活上の完全自立とみなす | 認知、IADL、屋外活動などの問題を見落とす | 目的に応じて認知評価、IADL評価、歩行評価などを追加する |
| FIMを取れば退院後の介助がすべて分かると考える | 住環境や家族の介助可能量が反映されない | 尺度結果に環境条件と家族情報を組み合わせる |
Barthel IndexとFIMに関するFAQ
Q1. Barthel IndexとFIMの最も大きな違いは何ですか?
BIは10項目で基本ADLを簡潔に評価する尺度です。FIMは運動13項目と認知5項目の計18項目を各1〜7点で評価し、認知面と必要な介助量をより細かく表現できます。
Q2. BIは「できるADL」、FIMは「しているADL」を評価する尺度ですか?
その二分法は適切ではありません。BIも原則として、理想的な条件でできる可能性ではなく、実際に行っている内容を評価します。両尺度の主な違いは、評価範囲と介助量を表現する細かさです。
Q3. BIとFIMは両方評価した方がよいですか?
必ず両方必要とは限りません。評価結果を何に使うかを決め、基本ADLの概況が目的ならBI、認知面や詳細な介助量が必要ならFIMを候補にします。併用する場合も、それぞれの役割を決めて重複評価を避けます。
Q4. 変化を捉えやすいのはFIMですか?
常にFIMが優れるとは限りません。FIMは介助量を7段階で表現できますが、尺度の反応性は対象、重症度、評価時期によって異なります。BIが満点付近の場合は、項目別変化や関連する評価も確認します。
Q5. 退院支援ではどちらを使うべきですか?
詳細な介助量や認知面を共有する場合はFIMが役立ちますが、どちらの得点も単独で退院先を決めるものではありません。住環境、家族の介助可能量、安全性、夜間の状況などを組み合わせて判断します。
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参考文献
- Mahoney FI, Barthel DW. Functional evaluation: the Barthel Index. Md State Med J. 1965;14:61-65. PubMed
- Shah S, Vanclay F, Cooper B. Improving the sensitivity of the Barthel Index for stroke rehabilitation. J Clin Epidemiol. 1989;42(8):703-709. doi:10.1016/0895-4356(89)90065-6. DOI
- Keith RA, Granger CV, Hamilton BB, Sherwin FS. The Functional Independence Measure: a new tool for rehabilitation. Adv Clin Rehabil. 1987;1:6-18. PubMed
- van der Putten JJ, Hobart JC, Freeman JA, Thompson AJ. Measuring change in disability after inpatient rehabilitation: comparison of the responsiveness of the Barthel Index and the Functional Independence Measure. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1999;66(4):480-484. doi:10.1136/jnnp.66.4.480. DOI
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

