看護・多職種協働加算で療法士の病棟業務はどう変わる?役割・配置・運用

制度・実務
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看護・多職種協働加算で療法士の病棟業務はどう変わる?

令和 8 年度診療報酬改定で新設された「看護・多職種協働加算」は、急性期病棟で看護職員と多職種が協働し、患者の早期退院や ADL の維持・向上を支える体制を評価する加算です。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士も対象職種に含まれ、「訓練室で実施するリハ」だけでなく、病棟の生活場面にどう専門性を持ち込むかが問われる改定といえます。

この記事では、対象病棟・点数・配置の前提を整理したうえで、PT・OT・ST の病棟業務が何に変わるのかを実務目線でまとめます。制度の説明だけで終わらせず、離床・移乗・食事・トイレ・病棟歩行・セルフエクササイズの支援まで含めて、「明日から何を変えるか」が見える構成にしました。

制度理解だけで終わらせず、現場で回る形まで整理したい人へ。

臨床・記録・働き方まで含めて整理したいときは、療法士向けの全体ガイドもあわせて確認しておくと導線が作りやすいです。

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看護・多職種協働加算とは

看護・多職種協働加算は、地域の急性期医療を担う病院で、患者の早期退院や ADL の維持・向上をめざし、看護職員を含む多職種が協働して専門的な指導や診療の補助を行う体制を評価する加算です。厚労省の概要資料では、対象職種として理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、臨床検査技師が示されています。

ここで大切なのは、「人手を増やす加算」ではなく、「病棟で専門性を発揮する体制」を評価する加算だと捉えることです。日本理学療法士協会の関連資料でも、各医療職種が専門性に基づいて業務を行う体制の整備が求められると整理されています。関連記事を広く確認したい場合は、診療報酬改定の関連記事一覧 もあわせてチェックしてみてください。

対象病棟・点数・評価の前提

現時点の厚労省資料では、対象は「急性期一般入院料 4 を算定する病棟」と「急性期病院 B 一般入院料を算定する病棟」です。点数は 1 日につき、急性期一般入院料 4 の病棟で看護・多職種協働加算 1 が 277 点、急性期病院 B 一般入院料の病棟で看護・多職種協働加算 2 が 255 点と整理されています。

記事で重要なのは、点数だけを並べるのではなく、「急性期病棟での生活機能低下を防ぎ、退院につながる支援を病棟で回すための評価」と翻訳することです。療法士の読者にとっては、制度の名前よりも「訓練室の成果を病棟で再現できるか」が実務の関心になりやすいためです。

看護・多職種協働加算の対象病棟と点数(令和 8 年度改定概要ベース)
区分 対象病棟 点数 実務上の読み替え
看護・多職種協働加算 1 急性期一般入院料 4 277 点 / 日 病棟での多職種協働を通じた ADL 維持・向上の実装
看護・多職種協働加算 2 急性期病院 B 一般入院料 255 点 / 日 急性期機能を持つ病棟での専門職連携の体制評価

施設基準で押さえたいポイント

現時点の厚労省資料では、急性期病院 B 入院基本料または急性期一般入院料 4 でこの加算を算定する場合、入院基本料の看護職員 10 対 1 以上の配置に加え、看護職員を含む多職種職員 25 対 1 が配置される整理になっています。つまり、病棟運用としては「看護師がいる病棟に時々セラピストが来る」だけではなく、病棟内で継続的に関わる体制設計が前提です。

また、記事化するときは「配置基準」だけでなく、「誰が・いつ・どの患者に・何をするか」を病棟側で共有できるかまで落とし込むのが重要です。制度は体制評価でも、現場では対象患者の抽出方法、朝カンファレンス、記録様式、申し送りルールがないと運用が止まりやすいからです。

PT・OT・ST の病棟業務はどう変わるか

この改定で療法士に期待されるのは、訓練室での単発介入を増やすことではなく、病棟の実際の生活場面で専門性を発揮することです。理学療法士なら離床や移乗、病棟歩行、体位調整、活動量の引き上げ、作業療法士なら食事・更衣・整容・上肢活動・環境調整、言語聴覚士なら食事場面での評価やコミュニケーション支援など、病棟で再現される支援が中心になります。

日本理学療法士協会の資料でも、「各医療職種が専門性に基づいて業務を行う体制の整備」が求められると示されています。ここを押さえると、療法士が看護業務を代行する話ではなく、療法士としての評価・指導・再現性づくりを病棟に持ち込む話だと説明しやすくなります。

病棟での療法士業務の整理例(職種別の実務イメージ)
職種 見やすい場面 病棟での主な関わり 共有したいポイント
PT 離床、移乗、病棟歩行、トイレ移動 動作の安全性、介助量、活動量の調整、歩行導線の確認 離床手順、見守り条件、転倒リスク、日中の活動目標
OT 食事、更衣、整容、上肢活動、ベッド周囲動作 実用動作の観察、環境調整、道具選定、手順の簡素化 食事姿勢、物品配置、実施しやすい自主練、介助のコツ
ST 食事場面、会話場面、指示理解、ナースコール使用 嚥下安全性の確認、食形態の相談、伝達手段の調整 食事時の注意点、むせの観察点、意思伝達の工夫

訓練室中心から生活場面支援へ変わるポイント

これまでの急性期リハでは、訓練室で「できたこと」を病棟へ返す流れが中心になりやすい面がありました。しかし、この加算をきっかけに重要になるのは、「病棟で本当にできるか」「看護師や家族が同じやり方で支援できるか」「患者本人が繰り返せるか」という再現性です。つまり、評価の場が訓練室だけでなく、ベッドサイドや食堂、トイレ前、病棟廊下へ広がります。

記事では、病棟歩行 1 つを例にしても、歩けるかどうかだけでなく、立ち上がりの介助量、方向転換、酸素や点滴ラインの管理、病棟の混雑時間帯、疲労後の安全性まで見る視点を示すと読み手に刺さります。制度記事でも、こうした具体場面を入れると「現場で使える記事」になります。

現場の詰まりどころ

最初に詰まりやすいのは、対象患者の選び方です。病棟全員に均等に入ろうとすると運用が続きません。転倒リスクが高い、離床が遅れている、食事やトイレ場面で介助量が変わりそう、退院前に病棟動作の安定確認が必要、といった患者を優先して抽出する方が現実的です。制度の理解より先に、対象者選定のルールを作ることが大切です。

次に多いのは、看護師との役割分担が曖昧なまま始まることです。療法士が「何でも手伝う役」になると継続しません。療法士は、動作や活動の評価、再現性の高い手順化、介助方法の提案、自主練メニューの調整など、自分たちの専門性で価値を出す必要があります。ここを曖昧にしないことが、導入初期の失敗を減らします。

看護・多職種協働加算の導入で起こりやすい詰まりどころと対策
詰まりどころ 起こりやすい理由 対策
対象患者が決まらない 病棟全体を一律対象にしようとする 転倒、離床遅延、食事・排泄、退院前確認など優先条件を先に固定する
役割分担が曖昧 看護業務と療法士業務の線引きが弱い 評価・指導・再現性づくりを療法士の軸として共有する
記録がバラバラ 病棟用の共通フォーマットがない 実動作、介助量、共有事項、次回確認点の 4 項目で簡素化する
継続しない 朝の抽出や申し送りの流れが固定されていない 朝カンファ → 評価 → 共有 → 夕方申し送りの型を先に決める

導入時の運用テンプレ

導入初期は、複雑な仕組みを作るよりも、「朝カンファで対象患者を抽出 → 病棟で生活場面を確認 → 介入ポイントを共有 → 夕方に申し送り」の 1 日の型を固定する方が回しやすいです。まずは対象患者を絞り、各職種が病棟で何を見て、何を看護へ返すのかを短く言語化するだけでも、制度の趣旨に近づけます。

記録は長文よりも、①見た場面、②できたこと / できなかったこと、③介助量や注意点、④看護・家族へ共有した内容、の 4 点に絞ると使いやすくなります。とくに急性期では時間が限られるため、「病棟で再現できるか」に必要な情報が残るフォーマットにしておくと、部署全体で運用しやすくなります。

病棟導入時に固定しやすい 1 日の運用フロー例
時間帯 実施内容 主担当 残したい記録
対象患者の抽出、優先順位の確認 病棟看護師+療法士 当日対象、主な確認場面、優先理由
日中 離床・移乗・食事・歩行など生活場面の評価と支援 各療法士 実動作、介助量、危険場面、工夫した点
介入後 病棟スタッフへの共有、家族指導があれば簡潔に伝達 各療法士 共有内容、観察継続点、次回確認事項
夕方 申し送り、翌日の対象見直し 病棟看護師+療法士 継続介入の要否、注意点、翌日の課題

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

どの病棟でも算定できますか?

現時点の厚労省概要資料では、対象は急性期一般入院料 4 を算定する病棟と、急性期病院 B 一般入院料を算定する病棟です。まずは自院の病棟機能と届出区分を確認したうえで読み進めるのが安全です。

療法士は毎日病棟に入る必要がありますか?

日々の詳細運用は今後の告示・通知の確認が必要ですが、少なくとも「病棟で継続的に協働する体制」が前提です。実務上は、対象患者の抽出と生活場面の確認が毎日回る仕組みを先に作る方が現実的です。

訓練室でのリハだけでは足りませんか?

このテーマの本質は、訓練室での成果を病棟生活で再現できるかにあります。訓練室でできても、病棟の環境や時間帯、導線、人の配置が変わると介助量や危険場面は変わるため、生活場面の確認が重要です。

病棟記録は何を書けばよいですか?

長文よりも、見た場面、できたこと / できなかったこと、介助量、共有した注意点、次回の確認事項を簡潔に残す形が使いやすいです。病棟で再現したい情報が抜けないことを優先すると運用しやすくなります。

次の一手

まずは、自院でこの加算の対象となる病棟かどうかを確認し、次に「どの患者を優先して見るか」「病棟で何を確認し、何を共有するか」を 1 枚に整理してみてください。制度理解より先に、対象患者抽出と申し送りの型を作るほうが導入は進みやすいです。

関連テーマを続けて整理したい場合は、診療報酬改定の関連記事急性期リハの関連記事 をあわせて確認すると、院内共有用の整理もしやすくなります。


参考資料

  1. 厚生労働省. 令和 8 年度診療報酬改定について【全体概要版】. https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001673285.pdf
  2. 厚生労働省. 令和 8 年度診療報酬改定について【医科全体版】. https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001673286.pdf
  3. 厚生労働省. 急性期・高度急性期入院医療. https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671032.pdf
  4. 日本理学療法士協会. 令和 8 年度診療報酬改定 答申 理学療法士に関連する項目. https://www.japanpt.or.jp/pt/function/asset/pdf/20260213_relational_pt_c.pdf
  5. 日本作業療法士協会. 会員向け情報. https://www.jaot.or.jp/member/

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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