理学療法士 1 年目の病院勤務は「優先順位の型」を先に固定すると回ります
理学療法士 1 年目の病院勤務は、知識不足よりも「今日なにを先にやるか」で迷って詰まりやすいです。結論としては、①安全確認、②評価の再現性、③記録の速さ、④報連相の質の順で整えると、現場が回り始めます。
本記事では、病院での 1 日の流れと 最初の 3 か月の進め方を、明日から使える “運用の型” にして整理します。読み終えるころには「何を先にやるか」が明確になり、焦りを減らした実務運用に切り替えられます。
病院 PT の 1 日の流れ(新人の実務)
病院勤務の 1 年目は、担当患者の治療そのものよりも、前後の準備と記録で時間を失いがちです。朝は カルテ確認と優先順位づけ、日中は 介入と情報共有、夕方は 記録・翌日準備の 3 つに分けて考えると、業務が詰まりにくくなります。
「全員を完璧に」より、「安全に遅れなく」を優先することが重要です。特に、禁忌確認・バイタル・申し送りの 3 点を固定ルーチン化すると、判断のブレが減ります。
| 時間帯 | やること | チェック項目 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 出勤〜午前 | カルテ確認・優先順位決定 | 禁忌、当日イベント、安静度 | 介入順の根拠を 1 行で残す |
| 日中 | 評価・治療・スタッフ連携 | バイタル、反応、中止基準 | 客観データを先に記載 |
| 夕方 | 記録・申し送り・翌日準備 | 未実施項目、リスク共有 | 明日の計画を 1 つ明記 |
現場の詰まりどころ(迷う前に “見る場所” を固定)
新人の詰まりは「能力」より 判断の置き場が決まっていないことが原因になりがちです。迷ったら、先に “見る場所” を固定すると戻れます。
最初の 3 か月で優先する学習と実務
1 年目の学習は「広く浅く」ではなく、「業務直結を繰り返す」方が定着します。まずは 評価の再現性を上げ、次に 記録の速度を上げ、最後に 説明力(患者・家族・他職種)を高める順番がおすすめです。
週ごとの小目標を決めると、成長実感を持ちやすくなります。たとえば「今週は立位評価の観察項目を 3 つ固定する」のように、行動を具体化すると継続しやすいです。
| 時期 | 主目標 | 具体行動 | 達成目安 |
|---|---|---|---|
| 1〜4 週 | 安全運用の定着 | 禁忌確認の型を固定 | 確認漏れゼロを継続 |
| 5〜8 週 | 評価の再現性向上 | 同一手順で再評価 | 先輩との所見差が減る |
| 9〜12 週 | 記録と説明の効率化 | テンプレ化して時短 | 残業時間の減少 |
急性期・回復期・慢性期で違う「求められ方」
同じ病院勤務でも、配属先で求められる優先順位は変わります。急性期は リスク管理、回復期は 反復と自立支援、慢性期・地域包括は 生活継続と多職種連携が軸です。
配属先に合わせて「見るポイント」を変えると、評価と介入の精度が上がります。まずは “自分の病棟で事故が起きやすいところ” から順に、チェック項目を固定していきましょう。
| 病棟タイプ | 優先テーマ | よくある詰まり | 初動の対策 |
|---|---|---|---|
| 急性期 | 安全管理と早期離床 | 中止判断に迷う | 中止基準を事前共有 |
| 回復期 | 反復と目標設定 | 訓練が漫然化 | 週単位で目標を更新 |
| 慢性期・地域包括 | 生活継続と連携 | 情報共有が不足 | 申し送り項目を固定 |
配属別:最初の 1 週間チェックリスト
最初の 1 週間は「全部できる」より、事故を防ぐ・手戻りを減らす・相談が早くなるの 3 点に絞ると回り始めます。配属先ごとに “まず固定する順番” を表にしました。
| 配属 | 1 週間の最優先 | 毎回見る項目(最小セット) | 相談のトリガー(迷う前) | 記録の 1 行テンプレ |
|---|---|---|---|---|
| 急性期 | 安全管理(中止判断を固定) | 禁忌・当日イベント/SpO2・HR・BP/意識・呼吸苦・胸痛/ライン・ドレーン | バイタル変動、症状出現、反応低下があれば “継続する前” に相談 | 「介入前→中→後の変化と、中止/継続の根拠を 1 行」 |
| 回復期 | 反復と目標(漫然化を防ぐ) | ADL の困りごと/歩行・移乗の介助量/疲労・疼痛/自主練の実施状況 | 介助量が変わらない、疲労が強い、痛み増悪が続くなら “メニュー更新前” に相談 | 「今日の介助量+変化の理由+次回 1 つ変える点」 |
| 慢性期・地域包括 | 生活継続(共有不足を防ぐ) | 転倒リスク/移動手段と見守り範囲/服薬・体調変動/家族・介護力 | 転倒リスクが上がる変化、見守り範囲変更が必要なら “提案前” に相談 | 「生活での問題→原因仮説→提案(環境/介助/福祉用具)」 |
よくある失敗と回避策
1 年目で起こりやすい失敗は、能力不足というより「型が未整備」で起こります。先に型を作っておけば、経験が浅くても再現性を上げられます。
次の表を自分用チェックとして使い、週 1 回だけ振り返る運用にすると、改善が早くなります。
| 場面 | NG | OK | 理由 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 評価前 | 禁忌確認を後回し | 最初に禁忌・バイタル確認 | 事故予防が最優先 | 確認時刻と結果を記載 |
| 介入中 | 反応悪化でも継続 | 中止基準で即判断 | 安全性を担保できる | 中止理由を客観記載 |
| 記録 | 主観中心で長文化 | 客観データ → 解釈の順 | 共有しやすく再現性が上がる | 数値と所見を分ける |
| 報連相 | 相談が遅い | 判断前に短く相談 | 手戻りを防げる | 相談内容と結論を残す |
しんどい時の整理法(辞める前に確認する順番)
「向いていないかも」と感じる時は、まず 環境要因と 自分の課題を分けて考えることが大切です。教育体制、相談のしやすさ、記録文化、人員配置など、個人努力だけでは解決しにくい要因は確かに存在します。
感情だけで判断せず、①何がつらいか、②何なら改善できるか、③いつまで試すかを 1 枚に整理してから次の行動を決めると後悔が減ります。特に「相談の型」がないと孤立しやすいので、迷ったら 状況 → 背景 → 評価 → 提案の順で短く言語化してから相談に入ると、話が通りやすくなります。
よくある質問
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理学療法士 1 年目は、まず何を勉強すべきですか?
最初は「疾患の網羅」より、配属先で毎日使う 禁忌・評価の手順・記録の型を優先してください。業務直結の反復が最短で効果的です。
病院勤務 1 年目で残業が減らないのは普通ですか?
一定期間は起こりやすいです。改善のコツは「毎日がんばる」より、テンプレ化と優先順位の固定を入れて、週 1 回だけ振り返る運用にすることです。
急性期に配属されて不安です。何から慣れるべきですか?
最初は 中止基準と 報連相の基準を先に明確化してください。安全判断の迷いが減ると、介入の質も安定します。
記録が遅くて追いつきません。どうすればいいですか?
「全部書く」から「共有に必要な最小セット」に落としてください。まずは 客観データ → 解釈 → 次回方針の順番を固定し、書き出しを毎回同じにすると速くなります。
1 年目で転職を考えるのは早すぎますか?
早い・遅いではなく、環境要因が改善可能かが判断軸です。教育体制や相談環境の改善余地を確認し、期限を決めて検討するのが実務的です。
次の一手
まずは、日々の迷いを減らすために「全体像」と「比較ポイント」を先に固定しましょう。
- 続けて読む:PT 転職の全体像( 5 分フロー )
- 比較して決める:PT 向けサービス比較
参考文献
- Wilesmith S, Mandrusiak A, Martin R, Lu A, Forbes R. Writing for the role: A qualitative exploration of new graduate physiotherapists’ transition to practice of clinical documentation. Physiother Theory Pract. 2025;41(1):115-127. doi: 10.1080/09593985.2024.2315255(PubMed: 38415627)
- Schwartz-Dillard J, Ng T, Villegas J, Johnson D, Murray-Weir M. Electronic documentation burden among outpatient rehabilitation therapists: a qualitative descriptive study and quality improvement initiative. J Am Med Inform Assoc. 2024;31(10):2347-2355. doi: 10.1093/jamia/ocae192(PubMed: 39042519)
- Etemadifar S, et al. The effect of situation, background, assessment, recommendation-based safety program on patient safety culture in intensive care unit nurses. J Educ Health Promot. 2021.(PMC: PMC8719548)
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


