FRAXの使い方|入力項目・結果の見方・15%の意味

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FRAXは「10年骨折確率」を計算するツールです

FRAX(Fracture Risk Assessment Tool)は、年齢、性別、骨折歴、喫煙、グルココルチコイド使用などの臨床的危険因子と、必要に応じて大腿骨頸部BMDを入力し、将来10年間の骨折確率を推定するツールです。結果は、主要骨粗鬆症性骨折と大腿骨近位部骨折の2つの10年確率として表示されます。

この記事では、FRAX公式ツールへ何を入力するのか、BMDなしでも計算できるのか、結果をどう読むのか、日本でよく使われる「FRAX 15%」は何を意味するのかを整理します。PT・OTが使う場合は、FRAXだけで転倒やリハビリの可否を判断せず、身体機能や生活環境と分けて評価することが重要です。

FRAXの使い方を対象と入力項目、計算、結果確認、結果解釈の4段階で示した図
FRAXは、入力した臨床的危険因子から2つの10年骨折確率を算出し、骨密度や骨折歴、治療開始基準などと合わせて解釈します。

FRAXの使い方|入力→計算→結果確認の順に進めます

FRAXを使うときは、最初に国を「Japan」に設定し、臨床的危険因子を順番に入力します。現在の公式計算ツールでは、BMDの有無にかかわらず10年骨折確率を計算できます。

FRAX公式ツールで確認する主な入力項目
項目 入力する内容 確認ポイント
年齢 40〜90歳の範囲を基本に入力 年齢は骨折確率へ大きく影響する
性別 女性/男性 公式ツールの選択肢に沿って入力する
身長・体重 cm、kg BMIの算出にも使用される
骨折歴 既往骨折の有無 骨折部位や時期によるリスク差は標準FRAXだけでは十分に表現されない
両親の大腿骨近位部骨折 父または母の既往 本人の骨折歴とは別項目
現在喫煙 現在の喫煙状況 過去の喫煙歴ではなく公式項目に沿って判断する
グルココルチコイド 使用の有無 投与量による差は標準FRAXの二値入力だけでは十分に表現されない
関節リウマチ 有無 続発性骨粗鬆症とは別の入力項目
続発性骨粗鬆症 該当する原因疾患などの有無 病態の確認が必要な場合は診療情報と照合する
アルコール 3単位/日以上 公式ツールの定義に沿って入力する
大腿骨頸部BMD BMDまたは対応するT-score 任意項目。BMDなしでも計算できる

入力時に重要なポイント

FRAXには、BMD以外の臨床的危険因子について「不明」という入力欄がありません。公式FAQでは、家族歴などの情報が得られない場合は「No」と入力すると説明されています。ただし、これはFRAX計算上の仕様であり、「危険因子が存在しないことを確認できた」という意味ではありません。臨床記録では、確認できなかった情報を区別して残すと再確認しやすくなります。

FRAX公式計算ツールを開く

BMDなしでも計算できます|入力するなら大腿骨頸部BMDです

FRAXは、BMDがなくても計算できます。年齢、性別、身長、体重、骨折歴などの臨床的危険因子を入力すれば、BMDなしの10年骨折確率を算出できます。

FRAXにおけるBMDの扱い
状況 FRAX計算 考え方
BMDなし 計算できる 臨床的危険因子を用いて10年骨折確率を推定する
大腿骨頸部BMDあり 計算できる 臨床的危険因子と大腿骨頸部BMDを組み合わせて計算する
腰椎BMDのみ その値をFRAXのBMD欄へ代用しない FRAXのBMD入力部位は大腿骨頸部
total hip BMDのみ その値をFRAXのBMD欄へ代用しない 大腿骨頸部BMDとは区別する

FRAX公式FAQでは、FRAXモデルへ入力するBMDとして大腿骨頸部BMDを使用し、腰椎やtotal hipのBMDを代用しないよう説明されています。腰椎と大腿骨頸部で骨密度に大きな乖離がある場合などは、FRAXの数値だけでは捉えきれない可能性があるため、DXA全体の結果と合わせて解釈します。

FRAXの結果|2つの10年骨折確率を確認します

FRAXの計算結果では、1つの「FRAXスコア」が出るわけではありません。基本的に、主要骨粗鬆症性骨折と大腿骨近位部骨折の2種類の10年確率を確認します。

FRAXで表示される2つの10年骨折確率
結果 意味 含まれる骨折
主要骨粗鬆症性骨折 今後10年間に主要骨粗鬆症性骨折を生じる確率 臨床的椎体骨折、前腕骨折、大腿骨近位部骨折、上腕骨近位部骨折
大腿骨近位部骨折 今後10年間に大腿骨近位部骨折を生じる確率 大腿骨近位部骨折

たとえば「主要骨粗鬆症性骨折10%」と表示された場合、これは「必ず骨折する」「10人に1人がこの患者と同じ経過をたどる」という個人の確定予測ではなく、入力した危険因子をもとに算出された10年間の骨折確率です。

また、FRAX公式ツールそのものが「高リスク・中リスク・低リスク」という3段階へ自動分類するわけではありません。どの確率から治療や追加評価を検討するかは、国・地域のガイドライン、骨折歴、BMD、年齢、背景疾患などを合わせて判断します。

FRAX 15%とは|誰にでも使う治療カットオフではありません

日本でFRAXを調べると「15%」という数値を目にしますが、FRAXが15%以上なら全員が骨粗鬆症で、全員が薬物治療を開始するという意味ではありません。

「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版」では、原発性骨粗鬆症の薬物治療開始基準を判断する一部の場面で、FRAXによる主要骨粗鬆症性骨折の10年確率15%以上が用いられます。

FRAX 15%を単独で判断しない

15%という基準が問題になるのは、脆弱性骨折の有無、BMD、年齢、家族歴、続発性骨粗鬆症などを確認したうえでの特定の場面です。まず診断基準と治療開始基準全体を確認し、その一部としてFRAXを位置づけます。

FRAX 15%を読むときの整理
状況 FRAX 15%の位置づけ
大腿骨近位部骨折または椎体の脆弱性骨折がある FRAX 15%だけを待って治療適応を判断する場面ではない
脆弱性骨折がなく、BMDがYAM 70%以下または−2.5SD以下 FRAX 15%とは別に診断・治療開始基準を確認する
脆弱性骨折がなく、BMDがYAM 70%超80%未満 条件を満たす場合、主要骨粗鬆症性骨折の10年確率15%以上が薬物治療開始判断の一要素になる
75歳以上 15%という固定値をそのまま適用する基準ではない

さらに、2025年版の基準を実務で用いる際は、グルココルチコイド使用、関節リウマチ、続発性骨粗鬆症などの有無にも注意が必要です。これらは病態ごとに別の評価や治療基準が必要になる場合があります。

とくにステロイド使用患者では、日本のグルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の評価体系とFRAXを混同しないことが重要です。詳しくはステロイド使用者の骨折リスク評価で整理しています。

FRAXだけでは判断できないこと|転倒や骨折の詳細は別に確認します

FRAXは骨折リスク評価に有用ですが、骨折につながるすべての要因を標準FRAXだけで表現しているわけではありません。特にPT・OTでは、FRAXに入っていない情報を別評価で補うことが重要です。

標準FRAXだけでは十分に反映されない主な情報
確認したい情報 FRAXとの関係 追加で確認すること
転倒歴・転倒頻度 標準FRAXの基本入力項目ではない 直近の転倒、歩行、バランス、移乗、環境を評価する
既往骨折の数 標準FRAXでは基本的に有無として入力する 複数骨折があるか確認する
骨折からの経過期間 最近の骨折による差を標準FRAXだけでは十分に表現しない 骨折部位と発生時期を確認する
グルココルチコイド投与量 標準FRAXは基本的に有無で入力する 薬剤名、投与量、投与期間を確認する
腰椎BMD FRAXへ直接入力するBMDではない 大腿骨頸部BMDとの乖離を含めDXA結果全体を見る
身体機能・生活環境 FRAXの直接入力項目ではない 筋力、バランス、歩行、補助具、段差、夜間動線などを確認する

FRAX公式サイト内では、標準FRAXから得られた確率に対して、最近の骨折、骨折回数、グルココルチコイド曝露量、転倒回数、2型糖尿病の罹病期間、腰椎BMDなどを考慮するFRAXplusの調整機能も案内されています。ただし、標準FRAXと追加調整を同じものとして扱わず、使用する機能と解釈方法を区別します。

PT・OTでの使い方|FRAXと転倒リスク評価を分けて統合します

PT・OTがFRAXを見るときは、FRAXの確率をそのまま「リハビリを実施できる/できない」という基準へ置き換えないことが重要です。FRAXが示すのは骨折確率であり、現在の移動能力や、その日の運動負荷に耐えられるかを直接示す尺度ではありません。

実務では、次の3つに分けると整理しやすくなります。

  1. FRAXで骨折確率を確認する:主要骨粗鬆症性骨折と大腿骨近位部骨折の10年確率を確認します。
  2. 転倒・身体機能を別に評価する:転倒歴、歩行、バランス、筋力、移乗能力、補助具などを確認します。
  3. 生活環境と医療情報を統合する:住環境、夜間動線、骨折歴、DXA、薬剤情報などを合わせ、必要な対策や医師への共有事項を整理します。

PT・OTがFRAXを使うときのポイント

「FRAXが低い=転倒しても問題ない」「FRAXが高い=運動を行わない」という使い方ではありません。骨折しやすさと転倒しやすさを分けて評価し、必要な運動、転倒予防、環境調整、多職種連携へつなげます。

記録では計算条件と2つの結果を残します

FRAX結果を記録する場合は、単に「FRAX 〇%」と書くよりも、どちらの骨折確率なのかを明確にします。BMDを入力したかどうかも残しておくと、後から結果を比較しやすくなります。

記録例:FRAX(Japan、BMDなし)にて、主要骨粗鬆症性骨折の10年確率○%、大腿骨近位部骨折の10年確率○%。転倒歴あり。歩行・バランスおよび生活環境は別途評価し、骨折予防に必要な介入と医師への情報共有を検討する。

FRAXと転倒評価の役割の違いをさらに整理したい場合は、骨折リスク評価と転倒リスク評価の統合も参考になります。

FRAXのよくある質問

FRAXはBMDがなくても計算できますか?

はい。大腿骨頸部BMDは任意項目で、BMDがなくても年齢、性別、身長、体重、骨折歴などの臨床的危険因子から10年骨折確率を計算できます。BMDがある場合は、大腿骨頸部BMDを用いて計算します。

FRAXに腰椎BMDを入力してもよいですか?

FRAX公式FAQでは、BMDとして大腿骨頸部を使用します。腰椎やtotal hipのBMDを大腿骨頸部BMDの代わりに入力しません。腰椎BMDはFRAXとは別にDXA結果として確認します。

FRAXが15%以上なら薬物治療になりますか?

15%だけで決まりません。日本の原発性骨粗鬆症の薬物治療開始基準では、脆弱性骨折の有無、BMD、年齢、家族歴などを確認したうえで、特定の条件において主要骨粗鬆症性骨折の10年確率15%以上を判断材料として用います。

家族の骨折歴が分からない場合はどう入力しますか?

FRAX公式FAQでは、BMD以外に「不明」という選択肢はなく、家族歴などの情報が得られない場合は「No」と入力するとされています。ただし、臨床記録では「確認できなかった」のか「ないことを確認した」のかを区別しておくと、その後の再確認に役立ちます。

FRAXが低ければ転倒リスク評価は不要ですか?

不要にはなりません。転倒歴、歩行・バランス能力、補助具、住環境などは標準FRAXの基本入力項目ではありません。FRAXの値とは別に転倒リスクを評価し、両者を統合して骨折予防を考えます。

次の一手|骨折リスク評価全体へ戻って使い分けを確認します

FRAXは骨折リスク評価の一部です。DXA、既往骨折、転倒リスク、身体機能をどの順番で確認するか迷う場合は、骨折リスク評価全体の入口から整理すると役割が分かりやすくなります。


参考文献

  1. FRAXplus. FRAX Calculation Tool. FRAX公式計算ツール. Accessed September 20, 2026.
  2. FRAXplus. Frequently Asked Questions. FRAX公式FAQ. Accessed September 20, 2026.
  3. 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会. 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版. 東京: ライフサイエンス出版; 2025. 日本骨粗鬆症学会 ガイドライン
  4. Fujiwara S, Nakamura T, Orimo H, Hosoi T, Gorai I, Oden A, Johansson H, Kanis JA. Development and application of a Japanese model of the WHO fracture risk assessment tool (FRAX). Osteoporos Int. 2008;19(4):429-448. PubMed
  5. Kanis JA, Johansson H, Oden A, McCloskey EV. A brief history of FRAX. Arch Osteoporos. 2018;13(1):118. PMC
  6. McCloskey EV, Harvey NC, Johansson H, Lorentzon M, Liu E, Vandenput L, et al. Fracture risk assessment by the FRAX model. Climacteric. 2022;25(1):22-28. PubMed

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に、臨床・教育活動に取り組んでいます。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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