理学療法士が主任・係長・科長へ昇進する方法|任用要件と 90 日ロードマップ
昇進は「頑張り」より「成果の見せ方」で決まる。 理学療法士のキャリアガイドを見る(全体の流れ)
主任・係長・科長などの昇進は、年収や裁量の拡大につながる一方で、「何をすれば評価されるのか」が曖昧なまま走りやすい領域です。本記事では、院内の任用要件を確かめたうえで、 90 日で “評価される成果” を積むための実行手順を、現場のやり方に落とし込みます。
キャリアアップの全体像( 5 ルート)から整理したい場合は、まず 理学療法士のキャリアアップ総まとめ( 5 ルート)で方向性を決めてから、昇進ルートの設計に入ると迷いが減ります。
昇進・役職化とは?|“肩書き” ではなく “役割” が増える
昇進は「主任になった/係長になった」で終わりではなく、チームの成果を上げる役割が増えることを意味します。現場で評価されやすいのは、①患者アウトカムの改善、②業務の安定運用(事故・クレーム・返戻などの減少)、③人材育成(新人が育つ、離職が減る)といった “組織への貢献” が見える状態です。
逆に、臨床が優秀でも「自分が頑張っているだけ」だと、役職者に求められる “再現性” が示せず、任用の材料になりにくいのが現実です。
昇進で見られる 3 つの評価軸|成果・再現性・巻き込み
院内の評価制度は施設ごとに違いますが、昇進の判断に乗りやすい要素は共通しています。まずは次の 3 軸で、自分の活動を “言語化” できる状態を作ります。
| 評価軸 | 見られるポイント | 具体例 | 証拠(残すもの) |
|---|---|---|---|
| 成果 | 部署の目標に効いているか | 転倒・インシデント低下、カンファの質向上、アウトカム改善 | 指標の前後比較、月次レポート、症例サマリ |
| 再現性 | 仕組み化できているか | 手順書、チェックリスト、教育コンテンツ化 | 資料(版管理)、研修スライド、運用ログ |
| 巻き込み | 他者を動かせるか | 委員会運営、多職種連携、後輩の自走支援 | 議事録、合意事項、役割分担表 |
最初にやること|任用要件と評価制度を “書面” で確認する
昇進で一番多い詰まりは、「頑張っていたのに、そもそも任用要件に乗っていなかった」パターンです。まずは次の項目を、人事・上長・規程から確認して、評価の土俵を合わせます。
| 確認項目 | 見る場所 | 確認のコツ | メモ(残し方) |
|---|---|---|---|
| 役職の定義(主任/係長/科長) | 職務規程、組織図 | 期待役割(臨床/管理/教育)の比率を聞く | 役割の箇条書き( 5 行で要約) |
| 任用要件(経験年数・研修等) | 人事資料、評価制度 | 「必須」と「望ましい」を分ける | 必須条件だけ別枠でメモ |
| 評価指標(何が点になるか) | 評価シート、面談票 | “成果” と “行動” を分けて整理 | 自分の実績を 1 対 1 で対応付け |
| 評価面談の時期 | 年間スケジュール | 逆算して 90 日計画を置く | カレンダーに固定枠を入れる |
90 日ロードマップ|“昇進できる人” の動き方
ここからは、任用要件を確認したうえで「評価の材料」を作る手順です。ポイントは、やることを減らして、成果を見える形で残すことです。
| 期間 | やること | 成果物 | 上長への見せ方 |
|---|---|---|---|
| 1–2 週 | 任用要件・評価項目の確認/部署課題の 1 点絞り | 課題の定義( 1 枚) | 「何を改善するか」を合意 |
| 3–6 週 | 小プロジェクト開始(会議体・役割分担・指標) | 議事録、役割表、指標のベースライン | 週次で 1 行報告(前進した点だけ) |
| 7–10 週 | 運用を “仕組み化” (手順書/チェックリスト) | 運用資料(版管理) | 「再現性」を強調して共有 |
| 11–12 週 | 成果の可視化(前後比較)/面談資料を整える | 成果サマリ( 1 枚) | 面談アジェンダを提示して相談 |
半年で成果が見える “小プロジェクト” 例(すぐ使える)
昇進で強いのは、個人の頑張りより “チームが回る仕組み” を作った実績です。現場で取り組みやすいテーマを、成果が残りやすい形にしておきます。
| テーマ | 狙い | 指標(例) | 成果物 |
|---|---|---|---|
| 転倒・リスク運用の標準化 | 安全と説明責任 | 転倒件数、ヒヤリ報告、対策実施率 | チェックリスト、カンファ手順 |
| 新人教育の “型” 作り | 育成の再現性 | 到達目標の達成率、独歩テスト項目 | 教育カリキュラム、評価表 |
| カンファの質改善 | 意思決定の速度 | 議題の明確化率、決定事項の実行率 | 議事録テンプレ、進行台本 |
| 多職種連携の導線整備 | 連携の摩擦低下 | 依頼対応の遅延、申し送り不備 | 依頼フォーム、連携フロー |
| 記録・請求のミス減らし | 返戻・監査リスク | 修正件数、返戻件数、記録漏れ | 監査チェック、ダブルチェック手順 |
評価面談で勝つ|アジェンダと “OK / NG” 早見
面談は「実績を話す場」ではなく、役職者としての期待役割をすり合わせる場です。よくある失敗は、成果を “頑張り” の言葉で語ってしまい、評価者が判断できない状態になることです。
| 観点 | OK(評価されやすい) | NG(評価されにくい) | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 成果の示し方 | 前後比較+影響範囲(部署への効果) | 「頑張りました」で終わる | 指標の推移を 1 行で書く |
| 再現性 | 手順書・教育資料で “誰でも回る” | 自分がいないと回らない | 成果物 URL / 版数 / 実施回数 |
| 巻き込み | 役割分担と合意形成を説明できる | 他部署のせいにする | 合意事項(議事録)を残す |
| 次の提案 | “次の 90 日” を提案して任用に乗せる | 現状の不満だけを伝える | 次の計画を 3 行で添える |
現場の詰まりどころ|よくある失敗と立て直し
昇進を狙うほど、臨床・教育・委員会が重なって “頑張るほど忙しい” 状態になりがちです。ここでのコツは、作業量を増やさずに「成果が残る形」へ寄せることです。
| 失敗 | 起きる理由 | 立て直し | 明日やる 1 手 |
|---|---|---|---|
| 委員会を “参加” で終える | 運用の成果物が残らない | 議事録とチェックリストを自分の担当にする | 議事録テンプレを 1 つ作る |
| 教育が “口伝え” だけ | 再現性が評価されない | 到達目標と評価表を作って “見える化” | 新人の到達目標を 5 行で書く |
| 成果が個人の武勇伝になる | 組織への貢献が伝わらない | 前後比較とチーム効果で語る | 指標を 1 つ決めて測る |
| 忙しすぎて燃え尽きる | 役割が増えても設計がない | “やめる仕事” を決め、成果物に集約 | やらないことを 3 つ書く |
FAQ(よくある悩み)
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昇進したいのですが、何から始めればいいですか?
まずは任用要件と評価項目を “書面” で確認し、部署課題を 1 つに絞って 90 日計画に落とします。最初の 2 週間で「課題の定義( 1 枚)」を作り、上長と合意できると、以降の行動がブレにくくなります。
上長にどう切り出すとスムーズですか?
「昇進したい」より先に、「部署課題を改善する小プロジェクトを提案したい」と伝えるのが通りやすいです。面談では、成果(前後比較)と再現性(手順書)を中心に、次の 90 日計画まで提案します。
臨床が忙しくて、委員会や教育まで手が回りません
役割を増やすのではなく、成果が残る形に “集約” します。たとえば教育は「到達目標+評価表」、委員会は「チェックリスト+議事録」に寄せると、作業量を増やさずに再現性が残ります。
参考文献
- Hartviksen TA, Sjolie BM, Aspfors J, et al. Healthcare middle managers’ experiences developing leadership capacity and capability in a public funded learning network. BMC Health Serv Res. 2018;18:433. doi:10.1186/s12913-018-3259-7
- Lyons O, George R, Galante JR, et al. Evidence-based medical leadership development: a systematic review. BMJ Leader. 2021;5(3):206-213. doi:10.1136/leader-2020-000360 / PubMed
- Stanley D, Blanchard D, Hohol A, Hutton M, McDonald A. Health professionals’ perceptions of clinical leadership: a pilot study. Cogent Medicine. 2017;4(1):1321193. doi:10.1080/2331205X.2017.1321193
- Hult M, Terkamo-Moisio A, Kaakinen P, et al. Relationships between nursing leadership and organizational, staff and patient outcomes: a systematic review of reviews. Nursing Open. 2023;10(9):5920-5936. doi:10.1002/nop2.1876 / PubMed
- West M, Armit K, Loewenthal L, Eckert R, West T, Lee A. Leadership and leadership development in health care: the evidence base. 2015. PDF
おわりに
昇進は「要件確認 → 課題を 1 点に絞る → 小プロジェクトで成果化 → 手順書で再現性を残す → 面談で次の 90 日を提案」の順に進めると、忙しさを増やさずに評価へつながります。まずは任用要件と評価項目を “書面” で確認し、 90 日で出せる成果を 1 つ決めて動き始めてください。
転職や条件交渉まで視野に入れて比較したい場合は、面談準備に使えるチェックリストも含めて マイナビコメディカルの面談準備(チェック&職場評価シート)を手元に置いて、判断材料を早めに揃えておくのがおすすめです。
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

