終末期ケア専門士の取り方【2026年版】

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はじめに|2026 年に「終末期ケア専門士」を目指す理由

終末期ケアの学び方とキャリアの流れを確認する( PT キャリアガイド )

終末期ケア専門士は、一般社団法人 日本終末期ケア協会( JTCA )が認定する、多職種向けの終末期ケア資格です。看護師の受験が目立つ一方で、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など、医療・介護職全般が対象であり、「看取り期の苦痛緩和」「意思決定支援」「家族への寄り添い」を体系的に学べるのが特徴です。回復期・地域包括ケア病棟・在宅・施設などで、終末期に関わる機会が増えているリハ職にとって、現場の悩みを整理するきっかけにもなります。

第 7 回終末期ケア専門士認定試験( 2026 年)は、申込期間が 3 月 27 日〜 9 月 20 日、 CBT 試験期間が 10 月 9 日〜 10 月 31 日と公表されています。公式テキストと Web コンテンツ( JTCA ゼミ )を軸に、 90 問 90 分の CBT 試験に臨む形式です。本記事では、 2026 年受験を目指す PT ・ OT ・ ST を含む医療・介護職向けに、受験資格の整理から 2026 年の日程、 CBT 対策の勉強ロードマップ、リハ職としての活かし方までをまとめます。細かな条件やスケジュールは変更される可能性があるため、最終的には必ず日本終末期ケア協会の公式情報をご確認ください。

終末期ケア専門士とは?(資格の位置づけ)

終末期ケア専門士は、「どこで・誰と働いていても、終末期にある人と家族により良いケアを提供できること」を目標にした資格です。対象領域には、がん・心不全・ COPD ・認知症・高齢多疾患など、いわゆる「看取り期」だけでなく、人生の最終段階に近づく過程全体が含まれます。身体症状の緩和だけでなく、心理社会的支援、スピリチュアルペインへの理解、倫理的な意思決定支援、多職種連携などが横断的なテーマとして扱われます。

看護師中心の資格と思われがちですが、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・介護福祉士・ケアマネジャーなども受験対象に含まれ、「終末期ケアに関わるすべての職種」が視野に入っています。リハ職にとっては、① 痛み・呼吸困難・倦怠感など症状を踏まえたポジショニングや負荷量設定、② 家族の希望と患者本人の意思の間で揺れる場面でのコミュニケーション、③ 「もう歩かせないほうがいいのか?」といったジレンマの整理などに、専門士としての学びを活かしやすい領域と言えます。

2026 年試験の日程と全体スケジュール

2026 年実施の第 7 回終末期ケア専門士認定試験は、受験申込から CBT 試験までの期間が比較的長く設定されています。申込は専用サイトからオンラインで行い、受験資格の確認、必要事項の入力、受験料の支払いなどを順番に進めていきます。申込完了後、受験用のマイページから試験会場・日時の予約を行う流れが一般的です。

公開されている主なスケジュールは次のとおりです。

  • 受験申込期間: 2026 年 3 月 27 日〜 9 月 20 日
  • 試験期間( CBT ): 2026 年 10 月 9 日〜 10 月 31 日
  • 試験方式: CBT 方式(全国のテストセンターで実施)

申込期間が長いぶん、「気づいたら締切直前になっていた」というケースも起こりやすいため、勤務表や家族の予定と照らし合わせながら、「申込は ○ 月中に済ませる」「 CBT 受験日は ○ 月上旬の平日午前」など、あらかじめ目安を決めておくと安心です。詳細は日本終末期ケア協会の公式サイトで最新情報を確認してください。

受験資格のポイント(医療・介護職全体が対象)

終末期ケア専門士の受験資格は、「終末期ケアに関わる医療・介護系の有資格者」であり、かつ当該資格取得後の実務経験が一定年以上あること、という 2 点が大きな柱になっています。具体的な対象職種には、看護師・保健師・医師・薬剤師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・管理栄養士・ケアマネジャーなどが含まれ、医療機関に限らず、在宅・施設・地域包括支援センターなど多様な勤務先が想定されています。

実務経験年数は、目安として「当該資格を取得してから 2 年以上」が求められます(具体的な年数や起算日は必ず受験要項で確認してください)。常勤・非常勤の別は問われず、複数の職場での勤務年数を合算できるケースもありますが、その場合も勤務証明書の記載や書式のルールに注意が必要です。「自分の経歴で要件を満たせるか不安」という場合は、早めに所属施設で勤務証明書の取り扱いを確認し、疑問点があれば協会事務局へ問い合わせておくとスムーズです。

CBT 90 問 90 分の試験概要と出題範囲

終末期ケア専門士の試験は CBT( Computer Based Testing )方式で実施され、全国のテストセンターにある専用端末を用いて受験します。問題数は 90 問、試験時間は 90 分が目安で、単純計算すると「 1 問あたり 1 分」で解いていくペース配分が求められます。設問形式としては、単純な単一選択だけでなく、組み合わせ問題や状況設定問題なども含まれ、問題文そのものもある程度の分量があります。

出題範囲は、日本終末期ケア協会の公式テキストおよび Web コンテンツ( JTCA ゼミ )をベースとしており、① 終末期ケアの理念と倫理、② 患者・家族の意思決定支援とアドバンス・ケア・プランニング( ACP )、③ 痛み・呼吸困難・せん妄・悪心などの身体症状マネジメント、④ 心理社会的支援と家族ケア、⑤ がん・心不全・呼吸器疾患・認知症など疾患別の終末期ケア、⑥ 在宅・施設・病院間の連携、⑦ グリーフケアやスタッフケアなどが典型的なテーマです。リハ職にとっては、症状緩和と活動性のバランス、ポジショニングや移乗介助のあり方なども、試験勉強を通じて整理されていきます。

公式テキストを使った勉強ロードマップ

2026 年受験を前提にした場合、勉強の軸になるのは「公式テキスト 1 冊+ JTCA ゼミの講義」です。まずはテキストを通読して全体像をつかみ、そのうえで気になる章を JTCA ゼミの動画や資料で深掘りする、という二段構えが基本になります。最初から細部まで暗記しようとするよりも、「どんな場面で、どの章が役立つのか」をイメージしながら読み進めると、臨床経験と知識が結びつきやすくなります。

仕事と勉強を両立するには、① 申込〜試験までの期間を 3 つのフェーズ(インプット期・整理期・アウトプット期)に分ける、② 平日は 15〜30 分の短時間学習、休日は 60〜90 分のまとまった時間で CBT 演習、といったラフな計画を立てるのがおすすめです。たとえば、申込後 2〜3 か月でテキストを 1 周、次の 1〜2 か月で気になるテーマを再読+ JTCA ゼミの動画視聴、残り 1 か月で CBT 形式の問題演習を集中的に行う、というイメージです。勉強の具体的な流れや時間の作り方に不安がある場合は、キャリア全体の学び方を整理している学び方の流れも参考になります。

PT ・ OT ・ ST は終末期ケア専門士をどう活かすか

リハ職が終末期ケア専門士を取得すると、「どこまで動かすか」「どこからケアに重心を置くか」という悩ましい判断に、共通の言語と根拠を持ちやすくなります。たとえば、疼痛や呼吸困難が強い患者さんに対して、ポジショニングやクッションの当て方を工夫する、呼吸補助筋の負担を減らす座位姿勢を提案する、といった介入が、終末期ケアの視点から再整理されます。また、せん妄・不安・抑うつなど心理的な側面を踏まえたコミュニケーションも、リハ場面での声かけやゴール設定に直結します。

さらに、家族が「もうリハビリはしないほうがいいのでは」「歩かせると苦しくてかわいそう」と悩んでいる場面で、「何を大切にしたいか」を一緒に言語化し、医師や看護師と共有する橋渡し役も担いやすくなります。施設や在宅では、看取り期に向かう変化を日常の関わりのなかで捉え、看護師・主治医・ケアマネジャーと連携しながらケアの方針を調整する力が求められます。終末期ケア専門士としての視点を持つことで、「最後までその人らしく生活する」ためのリハビリテーションを、多職種と一緒にデザインしていくことができます。

現場の詰まりどころ

最初のハードルになりやすいのは、「日々の業務で心身ともにいっぱいいっぱいで、勉強に手が回らない」という問題です。終末期に関わる現場では、患者さんや家族のつらさに向き合う機会が多く、スタッフ自身の感情負担も大きくなりがちです。その状態で大きな目標を掲げると、かえってプレッシャーになってしまうこともあります。こうした場合は、「今日はテキストを開くだけ」「 1 ページだけ読む」といった小さな行動から始め、うまくいかない日があっても自分を責めないことが大切です。

もう一つの詰まりどころは、「自分のケアが本当にこれでいいのか」という迷いが強く、勉強内容がかえって負担に感じられることです。倫理や意思決定支援の章では、正解が一つに決められないテーマも多く扱われます。そうした章は、「答えを出すために読む」というより、「自分の迷いを言葉にするためのヒントをもらう」と捉えると少し楽になります。また、職場の同僚や多職種カンファレンスで、学んだ内容を共有しながら対話することで、「一人で抱え込まない」形で学び続けることができます。

おわりに

終末期ケア専門士は、「終末期に関わることが多いのに、自分のケアに自信が持てない」「もっと良い関わり方があるはずだが、どこから学べばよいか分からない」と感じている医療・介護職にとって、終末期ケアの全体像を整理し直す機会になります。一方で、日々の業務と感情的な負担を抱えながら勉強を続けることは簡単ではなく、申込だけして勉強が進まないケースも珍しくありません。まずは試験日から逆算して、「この 1 年でどこまで進めるか」「今回は見送って次の年度を目指すか」も含め、自分のペースで計画を立ててみてください。

働き方や学び方を見直すときの抜け漏れ防止に。見学や情報収集の段階でも使える面談準備チェック( A4 ・ 5 分)と職場評価シート( A4 )を無料公開しています。印刷してそのまま使えますので、「終末期ケアを学びやすい職場かどうか」「自分に合った環境かどうか」を整理する道具としても活用してみてください。詳しくはマイナビ医療介護のお役立ち資料ページから確認できます。

よくある質問

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病院ではなく施設や在宅に勤めていますが、終末期ケア専門士を受験できますか?

受験資格は「医療・介護系の有資格者で、終末期ケアに関わる実務経験が一定年以上あること」が基本です。勤務先は病院に限らず、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・グループホーム・訪問看護ステーション・訪問リハ・訪問介護なども対象になり得ます。重要なのは、「終末期にある人や家族へのケアに実際に携わっているかどうか」です。自分の勤務経験が要件を満たすか不安な場合は、受験要項を確認のうえ、勤務証明書を作成してもらえるか所属施設に相談してみてください。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士でも受験する意味はありますか?

リハ職は、終末期の患者さんに対して「どこまで動かすか」「どのような姿勢や環境を整えるか」を日々判断する立場にあり、その裏側には必ず価値観や倫理、家族の思いが関わっています。終末期ケア専門士の学びは、症状緩和や意思決定支援への理解を深めるだけでなく、リハビリテーションの目標設定や介入方針をチームで共有する際の「共通言語」を増やすことにもつながります。急性期・回復期・在宅いずれの領域でも、終末期と隣り合わせのケースは少なくないため、リハ職にとっても十分に意味のある資格だと言えます。

どのくらいの勉強時間が必要ですか?仕事と両立できるか不安です。

必要な勉強時間はバックグラウンドによって大きく異なりますが、目安としては「公式テキスト 1 冊を 2〜3 回読み返し、 CBT 形式の問題演習を数回こなす」イメージです。忙しいシフト勤務の方は、平日に 15〜30 分、休日に 60〜90 分の勉強時間を確保できると、申込から試験までの半年〜 7 か月で十分に間に合わせることができます。重要なのは、一度に長時間やろうとするのではなく、小さな時間でも継続することと、「今日はここまでできた」と自分を認める習慣をつくることです。

試験は難しいですか? CBT 方式に慣れていなくて不安です。

合格率はおおむね 6〜7 割とされており、しっかり準備すれば十分に合格が狙えるレベルです。ただし、 CBT 方式の 90 問 90 分には独特の緊張感があり、事前にパソコン画面で問題を解く練習をしておくことが重要です。公式の模擬問題や市販の問題集、 CBT 対策サイトなどを活用し、「 1 問 1 分ペースで解く練習」「分からない問題にフラグを立てて後で戻る練習」を繰り返しておくと、本番でも落ち着いて対応しやすくなります。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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