- 高次脳機能評価( CBA )は「どこで崩れるか」まで書けると共有しやすい
- CBA で決めること:検査前に「共有できる所見」を作る
- CBA が向く場面:検査が回らない、結果が揺れる、生活に落ちない
- CBA の 6 領域:まずは正式な枠組みで見る
- 運用フロー:固定条件 → 観察 → 必要最小の検査 → 共有文
- カルテに残す最小テンプレ: 2 ~ 3 行で共有できる形にする
- 現場の詰まりどころ:書き方が揺れて共有で使えなくなる
- よくある失敗:CBA の価値が落ちる 3 パターン
- 回避の手順:再評価の再現性を上げる最小チェック
- 記録用 PDF:高次脳機能評価( CBA )記録シート( A4 )
- よくある質問( FAQ )
- 次の一手:全体像に戻り、代表各論で実装をそろえる
- 参考文献
- 著者情報
高次脳機能評価( CBA )は「どこで崩れるか」まで書けると共有しやすい
高次脳機能評価で現場が止まりやすいのは、検査名や点数は並ぶのに、「何ができて、どこで崩れ、生活で何が困るか」が申し送りまでつながらないときです。このページでは、 ST がベッドサイドや病棟で使いやすいように、 CBA を 観察 → 仮説 → 共有文 の型として整理し、記録のブレを減らすことに絞ってまとめます。
先に結論を書くと、 CBA では ① 固定条件、② 6 領域の観察、③ 生活へのつながり、④ 共有文 の順でそろえると運用が崩れにくくなります。逆に、このページで広げすぎないのは USN や失語の個別検査のやり方です。高次脳機能全体の地図は 高次脳機能評価ハブ にまとめています。
CBA で決めること:検査前に「共有できる所見」を作る
CBA は、机上検査を増やす前に、日常場面の行動観察から高次脳機能の全体像をつかむための評価です。 ST の強みは、会話、指示理解、自己修正、話題転換などを自然なやり取りの中で拾いやすいことにあります。
大事なのは、検査を省くことではなく、観察で仮説を立てて必要最小の検査で裏を取ることです。まず共有できる所見を作ってから検査を足す順にすると、カンファや申し送りで使える評価になります。
CBA が向く場面:検査が回らない、結果が揺れる、生活に落ちない
CBA が効くのは、「今日は検査が回せない」「昨日と印象が違う」「点数はあるが生活の困りが説明できない」ときです。こうした場面では、最初に固定条件と観察をそろえるだけで再評価の精度が上がります。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 困りごと | 起きがちな問題 | CBA の打ち手 |
|---|---|---|
| 検査が実施しにくい | 覚醒、疲労、拒否、疼痛で中断する | まず観察で全体像をつかみ、次回の条件を整える |
| 結果が日によって揺れる | 薬、睡眠、時間帯、環境が固定されていない | オン / オフ、時間帯、休憩、場所、補助具を先に記録する |
| 点数が生活につながらない | 「何が困るか」が共有されない | 所見 → 生活の困り → 対応まで 1 文でつなぐ |
CBA の 6 領域:まずは正式な枠組みで見る
CBA の基本は 意識・感情・注意・記憶・判断・病識 の 6 領域です。ここを外さずに見ると、「なんとなく困っている」から「どの層で崩れているか」へ言い換えやすくなります。
ST ではこの 6 領域を土台にしつつ、会話場面で見える理解、自己修正、話題転換、実用的コミュニケーションを補足すると、介入と共有がつながりやすくなります。
| 領域 | まず見る場面 | 共有文の起点 |
|---|---|---|
| 意識 | 覚醒の安定、反応速度、疲れやすさ | 「午前は覚醒安定、午後は反応低下」 |
| 感情 | いらだち、不安、意欲低下、拒否 | 「失敗場面で不穏化しやすい」 |
| 注意 | 会話中の脱線、割込みでの崩れ、持続 | 「割込みで話題保持が崩れる」 |
| 記憶 | 直前の説明保持、約束、メモ活用 | 「口頭説明のみでは保持しにくい」 |
| 判断 | 危険理解、優先順位、状況に合う選択 | 「状況に応じた選択が遅れやすい」 |
| 病識 | 困りごとの自覚、助言受容、自己修正 | 「困りの自覚は乏しく声かけで修正」 |
運用フロー:固定条件 → 観察 → 必要最小の検査 → 共有文
現場では 4 ステップに固定すると迷いません。最重要は固定条件で、ここが抜けると「今日はできた / できない」の比較が崩れます。
- 固定条件( 薬、覚醒、疲労、時間帯、環境、補助具、休憩 )
- 観察( 会話、指示理解、話題転換、自己修正、危険行動 )
- 検査( 仮説の裏取りに必要最小だけ行う )
- 共有文( 所見 → 生活の困り → 対応を 1 文でつなぐ )
カルテに残す最小テンプレ: 2 ~ 3 行で共有できる形にする
文章量を増やすより、毎回同じ順番で書ける方が共有しやすくなります。おすすめは「固定条件 → 観察 → 生活の困り → 対応」の 4 点を 2 ~ 3 行で残す形です。
| 項目 | 何を書くか | 記録例 |
|---|---|---|
| 固定条件 | 時間帯、覚醒、場所、補助具、休憩 | 「AM・病棟談話室・眼鏡使用・眠気軽度」 |
| 観察 | 6 領域のうち主役になる所見 | 「割込みで話題保持低下、助言で修正可」 |
| 生活の困り | 病棟や ADL で何が起きるか | 「説明の途中で脱線し予定確認に時間を要す」 |
| 対応 | チームでそろえる声かけや環境調整 | 「指示は 1 ステップ、変更点は紙に残す」 |
現場の詰まりどころ:書き方が揺れて共有で使えなくなる
詰まりは「評価した」ことと「共有して次の対応が決まる」ことが別になっている点です。ここではページ内で迷わないよう、先に飛び先を置きます。
- ページ内:よくある失敗
- ページ内:回避の手順
- 同ジャンル内部リンク:USN の机上評価
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、書き方や手順だけでなく、教育体制、共通フォーマット、相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。評価・記録・報告の「型」をまとめて整理したい方は、 PT キャリアガイドも参考になります。
よくある失敗:CBA の価値が落ちる 3 パターン
以下の 3 つが混ざると、記録が読めても次の打ち手が決まりません。改善は文章力ではなく、型で解決します。
| 失敗 | 起きること | 置き換え |
|---|---|---|
| CBA と個別検査が混ざる | 記事も記録も論点が広がりすぎる | CBA は全体像、失語 / USN は別検査として役割を分ける |
| 固定条件が未記載 | 再評価の比較ができない | オン / オフ、時間帯、休憩、場所、補助具を先に書く |
| 「できない」だけを書く | 対応が決まらない | 崩れる条件と、そろえる対応まで 1 文で残す |
回避の手順:再評価の再現性を上げる最小チェック
チェックは多いほど良いのではなく、同じ条件で見直せるかが基準です。迷ったら、まず固定条件と共有文だけでも残してください。
| 項目 | OK の基準 | 記録例 |
|---|---|---|
| 固定条件 | 時間帯、覚醒、環境、補助具が書けている | 「AM・眠気軽度・談話室・眼鏡使用」 |
| 領域整理 | 6 領域のうち主役が 1 つ以上選べる | 「注意優位、病識は助言で補える」 |
| 共有文 | 所見 → 生活 → 対応が 2 ~ 3 行でつながる | 「割込みで脱線。説明は 1 テーマずつ、変更点は紙に残す」 |
記録用 PDF:高次脳機能評価( CBA )記録シート( A4 )
現場の運用をそろえるために、記録用の A4 PDF を用意しました。固定条件、 6 領域、生活の困り、共有サマリーを 1 枚で残したいときに使いやすい構成です。
PDF を本文内でプレビューする(クリックで開く)
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
CBA は失語や USN の代わりになりますか?
なりません。 CBA は高次脳機能の全体像を行動観察でつかむ評価で、失語や USN の個別検査を置き換えるものではありません。まず CBA で全体像を整理し、必要に応じて個別検査で裏を取る順が実用的です。
CBA は検査をしなくても良い、という意味ですか?
いいえ。 CBA は検査の代わりではなく、検査を使える形にする前処理です。観察で仮説を立て、必要最小の検査で裏を取り、生活の困りに対応づけて共有する流れが本体です。
評価結果の書き方で、最小のテンプレはありますか?
最小は「固定条件 → 観察 → 生活の困り → 対応」です。まず固定条件を書き、次に主役の所見を 1 文で置き、その所見が生活でどう出るか、最後にチームでそろえる対応を書くと共有しやすくなります。
ST は CBA でどこを見ると強みを出しやすいですか?
会話場面で見える反応速度、指示理解、話題転換、自己修正です。単に「会話できる / できない」ではなく、どの条件で脱線しやすいか、助言で戻れるかまで書けると、病棟での実用につながります。
次の一手:全体像に戻り、代表各論で実装をそろえる
- 全体像に戻る:高次脳機能評価ハブ
- 代表各論を実装する:USN(抹消課題)のやり方と判定
参考文献
- Morita A, Ishikawa M, Kanai K, Makisako H. 認知機能を行動から評価するための「認知関連行動アセスメント」の開発. 総合リハビリテーション. 2014;42(9):877-884. DOI: 10.11477/mf.1552110631
- Morita A. 高次脳機能障害をめぐる多職種連携に言語聴覚士が果たす役割. 高次脳機能研究. 2018;38(3):287-291. DOI: 10.2496/hbfr.38.287
- Onda S, Morita A, Ajisaka M. Clinical usefulness of the Cognitive-related Behavioral Assessment (CBA) in outpatient occupational therapy: A case study of the use of CBA between OT and patient’s family. 作業療法. 2024;43(4):586-592. DOI: 10.32178/jotr.43.4_586
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


