結論:給料が低いと感じたら「相場 → 制度 → 交渉」の順で対処し、見切りラインで転職判断を
「給料が低い」と感じるときは、感覚だけで動くと損をしがちです。まず地域の相場と自院の制度(賞与・固定残業・評価)を分解して「どこがズレているか」を可視化し、改善余地があるなら交渉、改善できないなら見切りラインで転職を検討するのが最短ルートです。
この順番にすると、感情ではなく「数字と制度」で判断でき、交渉してもダメだったときに次の一手(転職)へスムーズに移れます。
現場の詰まりどころ:給料の悩みが長引く 3 つの理由
給料の不満は「低いかどうか」より、何が原因で上がりにくいのかが見えないと解決しません。つまずきやすいポイントを先に押さえると、無駄な消耗を減らせます。
| 詰まりどころ | 起きやすい状況 | 最初の一手 |
|---|---|---|
| 相場を知らない | 同じ地域・同じ働き方のレンジが分からず、比較対象が曖昧 | 「同圏内 × 同職種 × 同勤務形態」の求人を 10 件以上で横比較 |
| 制度がブラックボックス | 昇給・賞与・評価が「雰囲気」で運用され、説明がない | 就業規則・評価基準・賃金規程の有無を確認 |
| 交渉材料が整理できない | 頑張っているが、成果が「数字・役割」で示せない | 稼働・加算・教育・業務改善を「定量+具体例」でメモ化 |
相場確認チェック:まず「今の立ち位置」を見える化する
スマホでは表を横にスクロールできます。ここを飛ばすと、交渉も転職も「なんとなく」になりやすいので、最初に分解して整理します。
| 確認項目 | 見るべきポイント | チェック方法 |
|---|---|---|
| 総支給の分解 | 基本給/各種手当/固定残業/賞与(支給条件と算定方法) | 給与明細・労働条件通知書・就業規則 |
| 固定残業の有無・時間数 | 「◯時間分含む」表記、超過分の追加支給が明確か | 雇用契約・募集要項・賃金規程 |
| 残業代の実支給 | 1 分単位か/切り捨てがないか/申請が機能しているか | 就業規則・実際の明細・申請フロー |
| 賞与テーブル | 規程(月数・算定)と実績の乖離、支給条件(評価・在籍要件) | 就業規則・過去実績(可能なら複数年) |
| 休日・有給 | 年間休日、取得の現実性(休める設計か) | 就業規則・勤務表・同僚ヒアリング |
| 業務設計(訪問など) | 稼働目標、キャンセル時の保証、移動時間の扱い | 運用ルールの確認・面談で具体質問 |
| 地域相場 | 同圏内の月給レンジ/時給レンジ、経験年数別の傾向 | 公的統計・求人票の横比較 |
見切りライン:改善が難しいなら転職検討に切り替える 7 指標
交渉で改善する余地がある一方、制度や文化が原因だと「頑張っても変わらない」ことがあります。ここは見切りを早めるほど、消耗を減らせます。
| 指標 | NG サインの例 | 解説/対処 |
|---|---|---|
| 固定残業 | 固定残業時間が過大/超過分の追加支給が曖昧 | 制度設計の問題です。根拠の提示がないなら「改善困難」と判断しやすい領域です。 |
| 残業の取り扱い | 申請できない空気/サービス残業が常態化 | 労務姿勢の問題で、短期で改善しにくい傾向があります。証跡(明細・勤務実態)を残します。 |
| 賞与テーブル | 規程が低水準/年ごとのブレが大きく読めない | 法人業績・配分思想の影響が大きく、個人交渉だけで上げにくい領域です。 |
| 評価制度 | 昇給根拠が不透明/面談が形骸化 | 評価指標の開示を依頼します。拒まれる場合、市場価値が上がりにくい環境の可能性があります。 |
| 基本給と手当のバランス | 基本給が低く、手当で帳尻合わせ | 将来の昇給や退職金、各種給付に不利になりやすい構造です。テーブル改定が必要なケースがあります。 |
| 成長機会 | 教育・配属の幅・役職パスが閉じている | 経験の横展開が難しいと、給与交渉の材料が育ちにくくなります。早めに環境を変える判断も現実的です。 |
| 兼業・副業 | 全面禁止/ガイドライン不在で運用が恣意的 | 時間単価の最適化が難しく、収入の分散もできません。制度化の見込みが薄いなら転換検討の材料になります。 |
給与交渉の準備:成功率を上げる 4 ステップ
交渉は「お願い」ではなく「提案」に寄せるほど通りやすくなります。ポイントは、相場と貢献をセットで示し、代替案まで用意することです。
- 相場レンジの仮説化:地域相場と経験年数・役割をもとに、希望レンジ(最低ラインと目標ライン)を言語化します。
- 根拠の棚卸し:稼働、加算、教育、業務改善、委員会、資格などを「数字+具体例」で整理します。
- 条件の優先順位:基本給/賞与/残業の扱い/役割(職務)を並べ、譲れない順に決めます。
- 代替案と退路:役割拡張(係・教育担当など)を代替案にしつつ、改善がなければ転職に切り替える前提を固めます。
交渉テンプレ:面談/メールで使える言い回し
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
面談での言い回し(例)
「直近 1 年の稼働・加算寄与・教育活動を整理しました。地域相場と役割を踏まえ、基本給の見直しをご相談したいです。代替案として、◯◯の企画推進や新人教育の主担当も引き受け可能です。」
面談で詰まりやすい切り返し(例)
- 「前例がない」:前例の有無より「評価指標と賃金テーブル」を確認し、基準に沿った見直しの余地があるかを質問します。
- 「今は難しい」:難しい理由(業績・制度・評価)を特定し、次回改定時期と条件(何を満たせば上がるか)を明確化します。
- 「役割が変われば」:役割定義・目標・期限をセットにして合意し、曖昧な「頑張れば上がる」を避けます。
メールテンプレ(例)
件名:給与条件のご相談(◯◯部署/氏名) ◯◯部長 お世話になっております。◯◯部署の氏名です。 直近 1 年の実績(稼働・加算寄与・教育活動)を資料に整理しました。 地域相場と現在の役割を踏まえ、基本給(または賞与テーブル)の見直しについて ご相談させていただけますでしょうか。代替案として、◯◯の役割拡張も可能です。 ご多忙のところ恐縮ですが、◯月◯週のいずれかで面談枠をご調整いただけますと幸いです。 よろしくお願いいたします。
転職のサインとタイミング:損を減らす考え方
転職は「逃げ」ではなく、条件と成長機会を最適化する手段です。判断の軸を持つほど、ブレずに動けます。
- サイン:制度の開示を拒む/不払いが是正されない/評価が恣意的/将来像が描けない。
- タイミング:賞与支給後、年度切替前後、配属改編期など「収入の取りこぼし」を減らせる時期を逆算します。
- 次の職場選び:就業規則、残業運用、賞与テーブル、教育体制、配属の幅を「入職前」に具体質問で確認します。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q. 新卒・若手の見切りラインはありますか?
A. 学びの密度は重要ですが、固定残業と残業代の実支給だけは早期に可視化してください。制度に改善余地がなく、成長機会も閉じている場合は、1〜2 年で環境を変える判断も十分に現実的です。
Q. 地方と都市、どちらが有利ですか?
A. 都市部はレンジが広がりやすい一方、家賃や通勤などの生活コストが増えやすい傾向があります。月給だけでなく、手取りと固定費から「可処分所得」で比べると判断しやすくなります。
Q. 資格取得は年収アップに直結しますか?
A. 資格手当は職場依存です。手当の有無だけでなく、役職・評価・担当領域に反映されるか(昇給につながる設計か)まで確認すると、投資回収の見通しが立ちます。
おわりに
給料の悩みは、「相場の確認 → 制度の分解 → 交渉 → 見切りラインで判断」という順番にすると、焦りが減って意思決定が速くなります。面談前の準備を整えたいときは、面談準備チェックと職場評価シートがまとまったマイナビコメディカルのまとめを起点にすると、条件整理が一気に進みます。
参考
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」結果の概況(令和 6 年)公式ページ
- 厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会/理学療法士・作業療法士需給分科会」資料一覧
- 公益社団法人日本理学療法士協会「統計情報」会員・分布データ
- 総務省統計局「消費者物価指数( CPI )」公式ページ
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下
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