【クリニカルクラークシップとは】理学療法士やリハビリの臨床実習

臨床での悩み
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リハビリくん
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いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!

   

この記事は「クリニカルクラークシップ」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

      

リハビリの臨床実習では従来、1 人の患者様をケースにして行うスタイルが一般的な形態でありました。しかしここ近年、実習形態が大きく見直されており、クリニカルクラークシップ(診療参加型臨床実習)という方法への変更が順次進んでいることかと思います。

   

クリニカルクラークシップを取り入れた臨床実習は、学生への教育効果、過度なストレスの軽減、指導者の負担軽減、患者保護など有用性が多く挙げられます。

しかし、臨床実習を行う側の施設としては、実習形態が変更されて戸惑ったのではないでしょうか?新型コロナウイルスの影響で、臨床実習の受け入れを見送っていた施設もあると思いますし、クリニカルクラークシップについてまだまだ分からないことも多いのではないかと思います。そんな人のために、こちらの記事をまとめました!

        

こちらの記事でクリニカルクラークシップについての理解を深め、臨床実習および人材育成の一助になると幸いです。是非、最後までご覧になってください!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

登録理学療法士

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。

  

療法士の働き方に対する記事の 1 つが右記になりますが、"理学療法士は生活できない?PTが転職を考えるべき7つのタイミング"こちらの記事は検索ランキングでも上位を獲得することができております。興味がある方は、こちらの記事も目を通してくれると幸いです☺

クリニカルクラークシップとは

クリニカルクラークシップとは、欧米で活用されていた臨床実習の形態になり、英語では clinical clerkship と表記します。

日本では欧米に倣ってクリニカルクラークシップとも表現しますが、日本語では診療参加型臨床実習という名称が一般的になっています。

クリニカルクラークシップは欧米の医学校において卒業前の約 2 年間に渡り病院等の病棟、外来で行われている臨床実習がモデルとなっています。

リハビリテーション専門職(PT・OT・ST)における従来型の臨床実習では 1 人の患者様をケースにして実施するという方法が一般的でありました。評価、問題点抽出、治療プログラム立案、実行といった PDCA サイクルを一通り経験して、レポートやレジュメを作成する中で、臨床で必要となる考え方を学ぶという形態でありました。

一方、クリニカルクラークシップは、実習指導者の指導のもと、実習生についても診療チームの 1 人として参加し、実体験を通してセラピストとして修得すべきスキルと態度や倫理観を育成していく実習形態となっています。

ここまでで、クリニカルクラークシップや診療参加型臨床実習など様々な用語がでてきますが、これらは On-the-Job Training(OJT)のことになります。

クリニカルクラークシップの目的

上述の説明で既に理解されていると思いますが、クリニカルクラークシップの目的は以下の通りになります。下記は医学生のものではありますが、リハビリテーション専門職など他の医療従事者についても同様の目的となります。

診療参加型臨床実習は、学生が診療チームに参加し、その一員として診療業務を分担しながら、医師としての職業的な知識・思考法・技能・態度の基本的な内容を学ぶことを目的としている。診療参加型臨床実習の実施・改善にあたっては、その主旨が、単なる知識・技能の習得や診療の経験にとどまらず、実際の患者を相手にした診療業務を通じて、医療現場に立った時に必要とされる診断及び治療等に関する思考力(臨床推論)・対応力等を養うことにある点に留意する必要がある。

引用:「医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(文部科学省)2007 年 3 月 28 日」

こちらを理学療法士の学生に置き換えると、実習生が理学療法の実施現場での診療チームに参加し、実習指導者の指導・監督の下で理学療法士の知識、思考法、技能、 態度の基本的な部分を学ぶことになります。

OJT と OFF-JT とは?

先ほど On-the-Job Training(OJT)というワードが出てきましたが、OJT や OFF-JT は人材育成の方法論の話になります。

OJT とは On-The-Job Training の略称で、実際の職務現場で業務を通して行う人材育成のことをいいます。部下が職務を遂行していくうえで必要な知識やスキルを、上司や先輩社員などの指導担当者が随時与えることで教育・育成する方法になります。

一方 OFF-JT は Off-The-Job Training の略称で、職務現場を一時的に離れて行う人材育成のことをいいます。具体的には、外部の講師を招いて行う企業内集合研修や外部スクール、セミナーへの参加、通信教育や e₋ラーニングなどが当てはまります。

実習生ができる医療行為

医師、看護師、リハビリと職種によっても違いがあるとは思いますが、実習生はどの程度の水準までの医療行為を行うことができるのでしょうか。

法的な話になりますが、医師法第十七条では、医師でなければ医業をしてはならないとし、医師以外が医行為を行うことを禁止しています。

また、理学療法士が行う診療の補助行為は、保健師助産師看護師法第三十一条で看護師の業務独占であると規定されています。

この法制度のなかで、理学療法士が診療上の補助として理学療法を実施しても、保助看法違反に問わないことを規定したのが、理学療法士及び作業療法士法第十五条「理学療法士又は作業療法士は、保健師助産師看護師法第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として理学療法又は作業療法を行なうことを業とすることができる。」になります。

すなわち、理学療法は保助看法のもと理学療法士による実施が認められた診療の補助行為であり、理学療法士以外による実施は保助看法違反となります。

医療機関における臨床実習は、診療の補助行為としての理学療法士の実施にほかならないため、形式的には理学療法士の資格を持っていない実習生の理学療法行為は違法ということになります。

したがって、資格を持っていない実習生が理学療法行為を行うには、保助看法を意識し、違法性阻却を考慮する必要があります。違法性阻却について次項で説明します。

違法性阻却に必要な 4 つの条件

上記で説明した通り、医療関係職種の臨床実習では、学生は資格を持たないため、形式的には実習生が行う医療行為は違法ということになります。

そうはいっても、臨床経験を積まないと知識や技術は身に付かないものであり、医療従事者の質を高めるためにも臨床実習における医療行為の経験は必要不可欠と考えられます。

そのため、医療関係職種の臨床実習では、各職種ごとに違法性阻却のための条件を定めております。違法性阻却のための条件に従い実習を行うことで、実習生の医行為を認めてもらう仕組みになっています。

前川レポートとは

医学生の臨床実習について、違法性阻却のための条件を絡めながら少し歴史を振り返ります。

1948 年に制定された新医師法では、医学部を卒業した後に 1 年以上実地修練(インターン制度)を経なければ国家試験を受けられず、さらにその間は「学生でも医師でもない」という中途半端な身分のまま、ほぼ無報酬で医療行為を行わされるという制度になっておりました。

この状況に不満を持った医学生が集まり、当時隆盛だった学生運動の流れに乗り、大規模な国家試験のボイコットを行いました。これを契機として1968 年に医師法が改正、インターン制度は廃止となりました。

この後、「学生でも医師でもない」という中途半端な身分のまま、ほぼ無報酬で医療行為を行わされるということはなくなりましたが、臨床実習の内容は主として「見学」と一部の「介助」に留まり、それはそれで問題となっていました。

医学生でも指導・監督下である程度の医療行為が実施できるようにしてほしいという要望が高まりました。そして、臨床実習中の学生が行う医療行為に対する指針を示したのが、1991 年に厚生省から出された臨床実習検討委員会最終報告(前川レポート)になります。

前川レポートでは、「医学生の医行為も、その目的・手段・方法が社会通念から見て相当であり、医師の医行為と同程度の安全性が確保される程度であれば、基本的に違法性はないと解することができる。」と記されており、臨床実習で学生が行う医行為が基本的に違法性はないと解する条件として、以下の 4 つの条件を示しています。

  1. 侵襲性のそれほど高くない一定のものに限られること
  2. 医学部教育の一環として一定の要件を満たす指導医によるきめ細かな指導・監督の下に行われること
  3. 臨床実習を行わせるに当たって事前に医学生の評価を行うこと
  4. 患者等の同意を得て実施すること

この 4 条件については、医学生のみならず、歯科医師、看護師などの臨床実習においても公的な文書として明示されています。このようにして、実習生は臨床実習にて医行為を経験することができる仕組みとなっております。

リハビリの実習生の場合

リハビリテーション専門職の臨床実習における 4 条件の整備は、2017 年 12 月に厚生労働省から出された理学療法士・作業療法士学校養成施設カリキュラム等改善検討会報告書で初めて検討されました。

この報告書では「臨床実習において実習生が行うことのできる行為については、あらかじめ患者に同意を得た上で、臨床実習指導者の指導・監督の下、事前に養成施設と臨床実習施設において心身の侵襲性がそれほど高くないと判断した行為については行うことができる。なお、上記行為を行う場合には、臨床実習前に実習生の技術等に関して、実技試験等による評価を行い、直接患者に接するに当たり、総合的知識及び基本的技能・態度を備えていることを確認する必要がある。」という記載があります。

回りくどくて少し分かりにくいですが要するに、リハビリテーション専門職の臨床実習においても、臨床実習で実習生が行う医行為が基本的に違法性はないと解する、違法性阻却の条件を示して臨床実習を実施しましょう、という話になります。その条件が以下の 4 条件になります。

  1. 実習生が実施できる理学療法行為の範囲(事前に養成施設と臨床実習施設において、心身の侵襲性がそれほど高くないと判断した行為)とその水準にしたがって行う
  2. 適切な能力を有する臨床実習指導者の指導・監督の下に行う
  3. 臨床実習前に実習生の能力と適正(総合的知識及び基本的技能・態度)を評価・認定すること
  4. 対象者もしくは対象者の保護者の同意を得て実施することと事故補償の確認

見比べていただければ分かると思いますが、基本的には医学生の違法性阻却の条件と類似した内容となっております。

より詳しく確認したい方は下記リンクをご参照ください。

臨床実習教育の手引き(第6版)日本理学療法士協会

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「クリニカルクラークシップ」をキーワードに考えを述べさせていただきました。

こちらの記事がクリニカルクラークシップについての理解力向上をもたらし、臨床実習および人材育成に少しでもお力添えになれば幸いです!

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参考文献

  1. 長谷川真人,横田 一彦.診療参加型臨床実習の実践.理学療法ジャーナル.54巻,3号,p.331-336.
  2. 吉田素文.診療参加型臨床実習(クリニカル・クラークシップ)の現状.日本内科学会雑誌 .第96巻,第12号,p17-22.
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